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つきまといの罪・ストーカー規制法違反とはどのような行為が対象?
恋愛感情や好意の感情を充足する目的で特定の人につきまとい行為をした場合、ストーカー規制法違反に問われるおそれがあります。
しかし、自分のした行為はどこからが罪に問われる行為なのか、境界線が分からないという方もいるでしょう。
この記事では、どのようなつきまとい行為がストーカー規制法違反となるのかについて、違反事例や法律をもとに弁護士が解説します。また、つきまとい行為で逮捕、起訴された場合の罰則についても説明していきます。
1、ストーカー規制法違反の事例
ストーカー規制法に違反した事例を2つ紹介します。
まずは、令和元年12月、青森県八戸市の職員の男が、ストーカー規制法違反と迷惑防止条例違反の罪で略式起訴された事例です。
報道によると、男は20代の女性に対して約2年の間に10回、女性の自宅アパート付近で待ち伏せをしたほか、別の20代の女性に対して2回にわたり、女性の自宅アパートの室内を動画で撮影したとされています。なお、男は同年11月に30代の女性に対するストーカー容疑でも逮捕されており、その件では不起訴処分となっていたようです。
次に、平成13年9月に名古屋地裁で判決がくだされた事例です。
被告人は、被害者である元交際相手から一方的に交際を断られたことを逆恨みし、謝罪を求めて5日間で26回にわたり電話をかけ、被害者の自宅に2回押しかけて待ち伏せをするなどのつきまとい行為をしたとされています。また、被告人は、被害者が管理する乗用車に油性のマジックインキで落書きをし、器物を損壊させています。量刑は、懲役1年、執行猶予3年(保護観察付き)です。
判決では、犯行様態は執拗(しつよう)かつ常習的で悪質、被害者の精神的苦痛は甚大であるなどの理由から、被告人の責任は重いと認めました。一方で、被告人が被害弁償のために相当額を供託しており、反省の態度を示していて前科もなく、精神科のクリニックに通い治療に努めており、親族が更生に向けた協力を約束している点などを考慮し、執行猶予に付するのが相当だと述べられました。
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2、ストーカー規制法の規制対象となるのは?
ストーカー規制法は、犯罪の行為者に対して警告や禁止命令をおこない、悪質な場合は逮捕や処罰することで被害者を守ろうとする法律です。
被害者および加害者の性別は問いませんので、規制された行為をすれば男女関係な罪に問われます。また、ストーカー行為の罪は以前、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪でしたが、平成29年1月施行の法改正により非親告罪となっています。
ストーカー規制法では「つきまとい等」と「ストーカー行為」の2つを規制しています。
「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情やその他好意の感情が満たされないことへの怨念の感情から、特定の者およびその家族などに対しておこなわれる行為を指します。したがって、恋愛感情などとは関係なくなされたつきまとい等の行為は、同法の規制対象とはなりません。ただし軽犯罪法違反や迷惑防止条例違反など別の罪で取り締まられる可能性があります。
特定の者というのは、恋愛感情や好意の感情を抱くなどした相手です。また、家族とは、配偶者、直系もしくは同居の親族、その他特定の者と社会生活において密接な関係を有する人(恋人や会社関係者など)を指します。つまりこの法律では、特定の人だけでなく、その人と関係性が深い人への行為も規制の対象とされているのです。
「ストーカー行為」とは、同じ人に対して「つきまとい等」を繰り返しておこなうことを指します。1回限りの待ち伏せなどは、これにはあたりません。
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3、「つきまとい等」に規定される8つの行為
どのような行為が「つきまとい等」に該当するのについて、ストーカー規制法第2条で8つに分類されています。法律の制定当初にはなかった行為も定義されていますので、自分では思ってもいなかった行為が取り締まられる可能性があります。
- つきまとい・待ち伏せ・押しかけ・うろつきなど 尾行してつきまとう、会社や学校などで待ち伏せする、見張る、自宅へ押しかけたり付近をうろついたりする、進路に立ちふさがるなどの行為です。
- 行動を監視していると告げる 服装や行動内容などを電話やメール、手紙などで伝え、相手に「監視されている」と感じさせる行為です。相手の帰宅直後に「おかえりなさい」と電話する、「いつも見ているよ」とメールする、相手の自転車のカゴにメモを入れるなどの行為がこれにあたります。
- 面会・交際、その他義務のないことを要求する 「一度会って話をしたい」「ヨリを戻してほしい」「気持ちを受け取ってほしい」などのように、相手に対して義務のないことや、プレゼントを受け取るように求める行為です。
- 著しく粗野で乱暴な言動 相手の自宅前で大声をだす、車のクラクションを鳴らす、「死ね」「バカヤロー」などとののしる行為などが該当します。
- 無言電話、拒否後の連続した電話、FAX、電子メール、SNSなど 電話をかけるが何も告げずに黙っている、拒否されているのにしつこく、電話をかけ、メールを送るなどのほか、SNSを用いてメッセージを送る行為が該当します。相手が運営するブログやホームページなどへの書き込みをする行為も含まれます。
- 汚物や動物の死骸など著しく不快な物を送付するなどの行為 不快感や嫌悪感情を抱かせるような物を、自宅や会社に送りつけるなどのいやがらせ行為です。
- 名誉を傷つけるなどの行為 中傷したり名誉を傷つけたりする内容を告げる、手紙を送る、メールを送信するなどをして精神的に追い詰める行為です。
- 性的羞恥心を侵害する行為 わいせつな写真をインターネットの掲示板に掲載する、メールに添付して送る、電話で卑わいな言葉を告げるなど、相手を恥しめる行為です。
なお、実際に行動を監視していなかったとしてもこれらの行為を行うことは規制対象となるので注意が必要です。
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4、「つきまとい等」における警告と処罰
「つきまとい等」をしてから処罰を受けるまでの流れを解説します。
つきまとい等を行っている者は、まずは警告を受けます。警察署長などは、被害者の申し出を受けて、行為者に対して警告書を交付できます。警告は行政指導なので、法律上の拘束力はなく、警告に違反したことのみによる罰則はありません。しかし、申し出があった以上、被害者は怖がり、とても迷惑しているはずなので、この時点で自身の行為を認識して速やかにやめることが大切です。なお、警告に違反した行為がストーカー行為にも該当する場合は、後述のように罰則があります。
警告を無視した場合、次に受けるのは禁止命令です。被害者が警告ではなく禁止命令を要望すれば、いきなり禁止命令がだされる場合もあります。警察署長などは被害者の申し出により、または職権で、行為者に対して禁止等命令書を交付できます。
この前には、原則として行為者の言い分を聞く「聴聞」の機会が与えられますが、被害者に身の危険がおよんでいるなど緊急の場合には聴聞が後になります。警告と異なり行政処分なので、違反すると刑事罰を受けます。この時点では直ちに該当の行為をやめなければ、逮捕され重い罰を受けるおそれが高まるということです。
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(1)「禁止命令」に従わなかった場合
禁止命令に従わずストーカー行為をした場合の罰則は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」です。これ以外の禁止命令違反をした場合「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられます。
また、ストーカー行為をした場合の罰則は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」です。この場合は、すでにつきまとい等の行為が繰り返されている状況なので、被害届の提出をもって警察の捜査が始まり、逮捕される可能性があります。
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5、まとめ
ストーカー規制法が定める「つきまとい等」は、特定の相手につきまとう行為だけでなく、監視を告げる、交際を迫るなどのさまざまな行為が該当します。
自らの責任を認めて解決を図るのなら被害者との示談交渉が必要ですが、被害者と直接交渉することは非常に困難です。被害者へむやみに近づけば警告や禁止命令を受けるだけでなく、ストーカー行為とみなされて逮捕されるおそれもあるでしょう。弁護士を介して示談交渉をおこなうのが適切な方法です。また、身に覚えがないのに捜査対象となっている場合も弁護士のサポートが不可欠です。
つきまとい行為などで被害届を提出されている方、逮捕されるのではとお悩みの方はベリーベスト法律事務所へご相談ください。経験豊富な弁護士が適切に対応します。
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