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強姦(強制性交等)事件で逮捕! 釈放を目指して示談をすべき理由
強姦は被害者の尊厳を深く傷つけることから「魂の殺人」と呼ばれることもあるほどの重大犯罪です。平成29年の刑法改正では「強姦罪」から「強制性交等罪」への罪名変更および厳罰化が行われており、強姦事件で有罪判決が下された場合は厳しい刑罰が予想されます。
逮捕・勾留による身柄拘束を受けるおそれも大きい犯罪ですが、強姦事件で釈放される可能性はあるのでしょうか?
本コラムでは強制性交等罪(旧強姦罪)の刑罰を確認しながら、強姦事件で逮捕された後の流れと釈放され得るタイミング、釈放に向けてご家族ができることを解説します。
令和5年7月13日に強制性交罪は「不同意性交等罪」へ改正されました。
1、強姦罪(強制性交等罪)の刑罰とは?
強制性交等罪(旧強姦罪)の刑罰と時効の年数、執行猶予の有無について解説します。
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(1)強姦(強制性交等罪)の刑罰
強制性交等罪の刑罰は「5年以上の有期懲役」です(刑法第177条)。有期懲役とは1か月以上20年以下の懲役をいうので、強制性交等罪で有罪になると最長で20年の懲役に処せられるおそれがあります。未遂の場合も同じ法定刑の範囲で処罰されます。
また、強制性交等罪または同未遂罪を犯し、被害者を死傷させた場合は、強制性交等致死傷罪が成立し、法定刑は「無期懲役または6年以上の有期懲役」です(同第181条第2項)。本人はけがをさせたつもりはなくても、被害者の膣壁に傷をつけた、被害者が事件後にPTSDを発症したなどのケースでは強制性交等致傷罪で起訴される場合があります。 -
(2)刑法改正にともなう厳罰化
平成29年の刑法改正により、強姦罪は強制性交等罪へと罪名が変更され、法定刑の下限が3年から5年に引き上げられました。
また旧強姦罪では女子に対する膣性交のみを処罰対象としていたところ、同改正では性交、肛門性交、口腔性交にまで処罰対象の範囲が広がり、被害者の性別も問われなくなりました。
さらに、強姦罪は検察官が起訴するには被害者の告訴が必要な親告罪でしたが、改正後は被害者の告訴がなくても検察官の判断で起訴できる非親告罪となっています。 -
(3)強制性交等罪の時効
刑事事件における時効を公訴時効といい、犯罪から一定の期間が経過することにより公訴時効が成立すると検察官が犯人を起訴できなくなります。
強制性交等罪の公訴時効は10年です。犯罪行為が終わってから10年が経過すると起訴されず、刑事責任を追及されません。
ただし、公訴時効は犯罪の法定刑および人を死亡させた罪かどうかによっても異なるため、強制性交等致傷罪の公訴時効は15年、強制性交等致死罪は30年とさらに長くなります。 -
(4)強制性交等罪で執行猶予はつくのか?
執行猶予とは有罪判決にもとづく刑の執行を一定の期間猶予し、猶予期間内に罪を犯さなければ刑の言い渡しの効力が失われる制度です(刑法第25条)。執行猶予がつくと懲役刑を言い渡されても直ちに刑務所に収監されず、自宅で日常生活を送りながら罪を償うことができます。
しかし、強制性交等罪は原則として執行猶予がつきません。執行猶予がつくには前提として3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金の言い渡しを受ける必要があるため、法定刑の下限が5年の強制性交等罪は執行猶予の対象とならないのです。法定刑の下限が6年の強制性交等致死傷罪も同様に、原則として執行猶予がつきません。
2、強姦事件で逮捕された後の流れは?
強姦事件の容疑で逮捕されるケースや、逮捕された後の刑事手続きの流れについて解説します。
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(1)逮捕
強姦事件による逮捕は主に現行犯逮捕と通常逮捕です。
現行犯逮捕とは現に罪を行い、または現に罪を行い終わったときに、逮捕状によらず逮捕されることです。強姦事件では、犯行の最中に目撃者などに取り押さえられるケース、目撃者の通報を受けて駆けつけた警察官に逮捕されるケースが考えられます。
通常逮捕とは逮捕状にもとづく原則的な逮捕手続きをいいます。捜査のきっかけとなるのは被害届の提出や告訴、目撃者による通報などです。強姦事件ではDNA鑑定や防犯カメラの映像、被害者や目撃者の証言などから犯人として特定され、通常逮捕に至るでしょう。 -
(2)検察官送致
逮捕後は48時間を上限に警察から取り調べを受けた後に、被疑者の身柄と証拠物・捜査資料が検察官へ引き継がれます(検察官送致)。
送致後、今度は検察官から取り調べを受けます。検察官は送致から24時間以内に被疑者を釈放するか、裁判官に勾留を請求するかを決定します。 -
(3)勾留
裁判官が勾留を認めると、留置場または拘置所に身柄を置かれ、原則10日間、延長でさらに10日間、合計で最長20日間の拘束を受けます。
裁判官が勾留を認めるのは、①罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、②住居不定、逃亡のおそれ、証拠隠滅のおそれのいずれかに該当する場合です(刑事訴訟法第60条1項)。
逮捕された以上、①は容易に認められると考えられます。②については、強制性交等罪は厳罰が予想される重大犯罪であるため、被疑者が逃亡・証拠隠滅を図るおそれが大きいと判断されやすいでしょう。
したがって、強姦事件では逮捕されると多くのケースで勾留を受けることになります。令和3年版の犯罪白書によると、令和2年中に強姦事件で逮捕・送致されて勾留された被疑者の割合は99.8%でした。 -
(4)起訴・不起訴の決定
勾留が満期を迎えるまでに検察官は被疑者を起訴して刑事裁判での審理を求めるか、不起訴にして釈放するのかを決定します。不起訴になれば即日で身柄を釈放され、原則として同じ事件で刑事責任を追及されることはありません。
一方、起訴されると「被告人」と呼ばれる立場になり、刑事裁判が始まるまで身柄拘束が続きます(起訴後勾留)。 -
(5)刑事裁判
通常、起訴から1か月半~2か月ほどすると初公判が開かれます。
ただし、強姦によって被害者が負傷・死亡した強制性交等致死傷罪の場合は裁判員裁判で審理されるため、裁判までの準備(公判前整理手続)に時間がかかり、初公判までに数か月~1年近くを要する場合があります。保釈されない限り、その間も身柄拘束は続きます。
事実に争いのない単純な事件であれば審理は1回で終了しますが、強姦事件は合意や暴行・脅迫の有無が争点になるケースも多く、事件が複雑化すれば審理は2回、3回と続くでしょう。
審理の結果、裁判官は被告人を有罪または無罪にするか、有罪にする場合の量刑を言い渡します。
日本の刑事事件は起訴後の有罪率が99%以上と極めて高いため、起訴されたら有罪判決はほぼ免れないでしょう。有罪になると前科もついてしまいます。
3、強姦事件の釈放
自分の身近な人が強姦事件で逮捕されてしまったら、釈放される可能性はあるのか、あるとしたらいつなのかが気になるでしょう。釈放の意味を確認しながら、釈放のタイミングや効果、釈放に必要な活動について見ていきましょう。
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(1)釈放されるタイミング
釈放とは身柄の拘束を解かれることをいいます。強姦事件で釈放され得るタイミングは以下のとおりです。
- 検察官が勾留を請求しなかったか、請求しても裁判官が勾留を決定しなかったとき
- 検察官が不起訴処分を下したとき
- 検察官が起訴したが、保釈が認められたとき
- 刑事裁判で無罪判決が言い渡されたとき
- 刑事裁判で有罪判決が言い渡されたが、刑が減軽されたうえで判決に執行猶予がついたとき
- 刑務所で服役し、仮釈放されるか刑が満期となったとき
なお、釈放と「保釈」を混同される方もいるようです。保釈は、確かに身柄の拘束を一時的に解かれる釈放の一種ですが、保釈されるタイミングは起訴された後に限られます。また、被告人の刑事裁判への出頭を担保するために、裁判所へ保釈保証金を納めなければなりません。
保釈はあくまでも一時的な釈放なので、刑事裁判で実刑判決がくだれば再び身柄を拘束され、刑務所へ収容されます。 -
(2)早期に釈放されることの効果
逮捕・勾留により身柄を拘束されると、起訴前は最長23日間、起訴後は裁判が結審するまで社会から隔離された生活を送らなければなりません。心身の負担が大きいのはもちろんのこと、刑事裁判で有罪判決を受けた段階ではないのにもかかわらず、会社を解雇される、学校を退学になるなどの不利益を受けるおそれがあります。
しかし早期に身柄を釈放されれば、心身の負担や日常生活への影響を最小限に抑えることができます。逃亡や証拠隠滅のおそれがなければ勾留する必要はないとして、在宅のまま捜査が進められる場合もあります。在宅捜査になれば会社や学校に通うことも可能なので、社会復帰も円滑に進みやすいでしょう。
身柄の拘束が解かれることで弁護士と綿密な打ち合わせをすることも可能となり、刑事裁判への準備や被害者への謝罪・示談交渉の相談もしやすくなります。結果として刑事裁判の処分が有利な方向へ作用する可能性も生じるでしょう。
したがって、強姦事件で逮捕された場合は身柄釈放に向けた活動を早期に始めることが大切です。 -
(3)早期釈放のために重要なのは示談
早期釈放のために重要な鍵を握るのが被害者との示談です。強姦事件では検察官が起訴・不起訴を決定する際や裁判官が量刑を判断する際に、被害者の処罰感情を重視する傾向があるためです。強姦事件で被害者と示談が成立し、被害者が宥恕意思(加害者を許すという意思)を示すと、検察官や裁判官もこれを尊重した結論を出す可能性が高まります。
起訴・不起訴の決定前に示談が成立すれば不起訴処分となる可能性があります。不起訴になれば即日で身柄を釈放されるため社会復帰がしやすく、前科もつかないため一定の職業・資格の制限や海外渡航の制限などの不利益を回避できます。
起訴された場合でも、被害者との示談によって情状酌量が認められ、刑が3年以下に減軽される可能性があります。3年以下に減軽されると判決に執行猶予がつく可能性も出てくるでしょう。
弁護士との電話相談が無料でできる
刑事事件緊急相談ダイヤル
- お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- 警察が未介入の事件のご相談は来所が必要です。
- 被害者からのご相談は有料となる場合があります。
4、早期解決には早めの弁護士相談を
自分の家族が強姦事件の容疑で逮捕されてしまったら、ご家族は速やかに弁護士へ相談しましょう。
強姦事件の解決には被害者との示談が重要ですが、事件の性質と被害者の心情を考えれば、示談交渉が難航するのは想像に難くありません。加害者本人・ご家族からの示談交渉は拒絶されるケースが多いため、第三者の立場で守秘義務もある弁護士が被害者感情に配慮しながら交渉を行うべきです。
また、見ず知らずの人を強姦した場合には被害者と示談しようにも連絡先が分かりません。捜査機関は被害者保護の観点から加害者側に被害者の連絡先を教えてくれることはありませんが、弁護士であれば捜査機関を介して被害者に連絡できる場合が少なくないため、やはり弁護士のサポートが不可欠です。
弁護士は示談交渉のほかにも、検察官・裁判官との面談や意見書の提出を通じて勾留の必要性がない旨を主張する、準抗告や勾留取消請求を行う、保釈請求を行うなどのさまざまな活動を展開し、早期釈放を目指すことができます。
起訴され刑事裁判になった場合でも、被告人に有利な事情を集めて的確に主張し、重すぎる刑を回避するために力を尽くします。
5、まとめ
強姦事件で逮捕されると多くのケースで勾留を受けるため、長期にわたる身柄拘束を受けます。最低でも5年の懲役刑が予定されている犯罪なので、起訴され有罪判決がくだれば厳罰は免れないでしょう。
早期釈放や刑の減軽を望むなら弁護士にサポートを依頼するのが最善の方法です。被害者との示談や被疑者・被告人に有利な証拠の収集などさまざまな活動が期待できるため、重すぎる処分を回避できる可能性が生じるでしょう。
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ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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