
未成年との性行為は、相手が18歳以上で、かつ合意があれば基本的に犯罪になりません。一方、相手が18歳未満の場合、合意があっても「淫行」として、条例や法律によって処罰される場合があります。相手が13歳未満であれば、さらに重く法律によって罰せられるおそれがあります。
もし、性的関係をもった相手が18歳未満、あるいは13歳未満だった場合、どのような犯罪にあたるのでしょうか? また逮捕、起訴される危険性はどの程度あるのでしょうか?
本コラムでは18歳未満の未成年との性行為を取り上げ、成立する犯罪や刑罰の内容、慰謝料の相場などについて解説します。
1、未成年との性行為に対する規制の種類
18歳未満の未成年との性行為は、基本的に「青少年保護育成条例違反」か「児童福祉法違反」にあたります。ただし、行為様態によってはほかの犯罪が成立する場合もあります。犯罪名や刑罰の内容について、淫行の意味とあわせて確認しましょう。
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(1)淫行とは?
「淫行」とは18歳未満の児童とのみだらな行為をさします。
淫行とは何かについて法律上明確な定義づけはされていませんが、判例は以下のように定義しています【最高裁判所大法廷 昭和57(あ)621 昭和60年10月23日】。- 青少年を誘惑、威迫(いはく:脅すなどして従わせようとする行為)、欺罔(ぎもう:詐欺的行為)、困惑させるなど、その心身の未成熟に乗じた不当な手段によって行う性交または性交類似行為
- 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交または性交類似行為
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(2)青少年保護育成条例違反
青少年保護育成条例とは、青少年(18歳未満の者)の健全な育成を図ることを目的とし、各自治体が定めている条例の通称です。青少年の健全な育成を阻害するおそれのあるさまざまな行為を規制する条例ですが、特に青少年との淫行を規制する条文を指して「淫行条例」と呼ぶ場合があります。
東京都の場合は、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の第18条の6で、青少年とのみだらな性交または性交類似行為が禁止されています。罰則は「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」です(第24条の3)。 -
(3)児童福祉法違反
児童福祉法は、児童が心身ともに健やかに成長するために、児童の権利や支援内容、児童に対する禁止行為などを定めた法律です。
淫行については、何人も児童に淫行をさせる行為をしてはならないと定められています(第34条1項6号)。「させる行為」とは、指導的・上位的な立場を利用して性行為を事実上強要する行為などを指し、第三者と淫行させる行為に限らず、行為者が児童と淫行する場合も含まれます。
罰則は「10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、もしくは併科」です(第60条1項)。 -
(4)青少年保護育成条例違反と児童福祉法違反の違い
青少年保護育成条例は各自治体が定めるため、「どこで淫行をしたのか」によって適用される条例が異なります。一方、児童福祉法は「条例ではなく法律」なので全国どの地域でも適用されます。
また、青少年保護育成条例違反と児童福祉法違反にあたる場合、ふたつの罪はいわゆる法条競合の特別関係にあるため、児童福祉法違反が成立します。法条競合とは、「ひとつの行為が複数の構成要件に該当するものの、成立する犯罪はひとつにとどまる」場合をいいます。
法条競合にある場合は法益侵害および責任が優先する法条が適用されるため、より重い児童福祉法違反のみが成立することになります。 -
(5)出会い系サイト規制法違反
出会い系サイト規制法では、サイトを通じて児童を性交の相手方となるよう求めたり、対償(対価)を供与することを示して児童を異性交際の相手方となるよう要求したりする行為などが禁止されています(第6条)。
これらの行為をした場合、「100万円以下の罰金」に処せられます(同第33条)。 -
(6)児童買春・児童ポルノ禁止法違反
児童買春・児童ポルノ禁止法では、児童に対する性的搾取や性的虐待から児童を保護することを目的として、以下のような禁止行為を定めています。
- 児童買春(児童に金品を供与して性行為をさせるなど)
5年以下の懲役または300万円以下の罰金(第4条) - 児童ポルノ製造(児童の裸体を撮影するなど)
3年以下の懲役または300万円以下の罰金(第7条4項) - 児童ポルノ所持(児童と淫行した様子を撮影した写真や動画を所持するなど)
1年以下の懲役または100万円以下の罰金(第7条1項)
- 児童買春(児童に金品を供与して性行為をさせるなど)
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(7)強制わいせつ罪・強制性交等罪
13歳以上の児童に対し暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をすれば強制わいせつ罪が、性交・肛門性交・口腔性交をすれば強制性交等罪が成立します(刑法第176条、177条)。
また13歳未満の児童については、暴行や脅迫が要件とされないため、仮に同意があってもいずれかの罪が成立することになります。
罰則は強制わいせつ罪が「6カ月以上10年以下の懲役」、強制性交等罪が「5年以上の有期懲役」です。
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2、淫行で逮捕される確率は? 実名報道のおそれも
未成年と性行為をした場合、逮捕や実名報道される可能性はどのくらいあるのでしょうか?
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(1)淫行による検挙件数の推移
警察庁によれば、児童買春、児童福祉法違反、青少年保護育成条例違反の被害児童数および検挙件数・人員数の推移は次のとおりです。
【被害児童数推移】- 平成28年:1814人
- 平成29年:1823人
- 平成30年:1715人
- 令和元年:1754人
- 令和2年:1531人
【検挙件数推移】- 平成28年:2371件
- 平成29年:2580件
- 平成30年:2555件
- 令和元年:2629件
- 令和2年:2409件
【検挙人員推移】- 平成28年:1936人
- 平成29年:2057人
- 平成30年:2010人
- 令和元年:2037人
- 令和2年:1818人
令和2年においては、被害数、検挙件数・人員数のいずれも前年を下回っています。しかし検挙人員は毎年2000人前後で推移しており、検挙されるのが決して珍しくないことが分かります。
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(2)青少年保護育成条例で逮捕される確率
令和2年の検察統計調査によれば、青少年保護育成条例違反事件の総数2096人のうち、逮捕されたのは561人です。約26.7%が逮捕されており、約4人に1人が逮捕されている計算になります。
(参考:「罪名別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員」(政府統計の総合窓口)) -
(3)実名報道のリスクも
実名報道の基準が法律で定められているわけではありませんが、実名報道されやすい事件はあります。たとえば、加害者が公務員や医師など高い倫理感が求められる職業であるケース、特殊詐欺や殺人といった悪質・重大事件であるケース、逮捕されたケースなどです。
淫行は社会全体で守るべき児童を対象とした性犯罪なので、社会的な関心が大きく、実名報道のリスクはある程度高いと考えるべきでしょう。
一方で、当事者の年齢が近いケースや、加害者の実名が報道されることで被害者が特定されるおそれがあるといったケースでは、実名報道される可能性は低くなります。

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3、淫行で逮捕された後の流れ
淫行で逮捕された後の刑事手続きの流れや、起訴される確率について解説します。
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(1)逮捕後の流れ
淫行で逮捕されると、原則として48時間以内に警察の取り調べを受け、検察官に送致されます。
送致後は24時間以内に検察官から取り調べを受け、起訴または釈放の判断に至らず、検察官が引き続き捜査の必要があると判断すると裁判官に勾留を請求します。
裁判官が勾留を認めると最長で20日間の身柄拘束が続き、勾留満期までに起訴または不起訴が決定します。起訴された場合、起訴から約1カ月~1カ月半後辺りに刑事裁判が開かれ、結審するまで審理されます。単純な自白事件であっても起訴から判決まで少なくとも2カ月はかかることが多く、保釈されない限り身柄拘束が続くこともあります。- 逮捕後48時間以内:警察による取り調べ→検察官へ送致
- 送致後24時間以内:検察官による取り調べ→勾留請求
- 勾留決定:原則10日間、延長10日間、最長で20日間の身柄拘束
- 勾留満期まで:起訴または不起訴
- 刑事裁判:結審まで審理
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(2)淫行で起訴される確率は?
令和2年検察統計調査によると、青少年保護育成条例違反事件の被疑者総数2096人のうち、起訴されたのは1019人です。起訴率は48.6%と、およそ半数が起訴されています。
なお、日本の司法における起訴後の有罪率は99%以上です。起訴されれば有罪はほぼ免れず、前科がついてしまいます。

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4、未成年との性行為でも淫行とされないケースはある?
未成年との性行為は、合意のうえでの性行為だった場合や相手が18歳未満だと知らなかった場合にも淫行として罪に問われるのでしょうか?
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(1)未成年者と合意があった場合は?
青少年保護育成条例は18歳未満の児童とのみだらな性行為を禁止しているため、たとえ合意があっても相手が18歳未満であれば犯罪が成立しえます。
ただし、淫行にあたるのは児童の心身の未成熟に乗じるなどの不当な性行為であって、真摯(しんし)な恋愛感情にもとづく性行為などまでもが禁止されているわけではありません。
たとえば以下のようなケースでは淫行にあたらず、逮捕や処罰されない可能性があります。- 婚姻の約束をしている
- お互いの親が交際を認めている
- 性行為をするまでの期間が長く、性行為のないデートも重ねている
- お互いの年齢が近い
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(2)18歳未満と知らなかった場合は?
性行為の相手が18歳未満だと知らなかった場合は故意がないため犯罪が成立しない可能性があります。しかし「もしかすると18歳未満かもしれない」という程度の認識があれば未必の故意が認められて罪に問われる可能性があります。
また、18歳未満だと知らなかったことにつき過失があれば処罰される場合があります。たとえば大阪府青少年健全育成条例では「当該青少年の年齢を知らないことを理由として、(中略)処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない」という規定があります(第59条)。
18歳未満である可能性があったのに年齢を確認しなかったケースなどは過失があると判断されやすいでしょう。

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5、淫行における慰謝料の相場
淫行をした場合の示談交渉の意義や慰謝料の役割、相場などについて解説します。
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(1)淫行における示談交渉の意義
示談とは事件の当事者が話し合いによってトラブルの解決を図る裁判外の手続きをいいます。刑事事件では加害者が被害者に謝罪して慰謝料その他を含む示談金を支払い、被害者の宥恕意思(ゆうじょいし:許すという意思)や清算事項を含めて示談にしてもらうのが一般的です。
示談自体は民事上の手続きですが、淫行で起訴される前に示談が成立すれば検察官が評価して不起訴処分をくだす可能性が高まります。不起訴になれば刑事裁判が開かれず、前科もつきません。 -
(2)示談成立に必要な慰謝料とは?
加害者が支払う示談金には、慰謝料やケガをさせてしまった場合の治療費・通院費などの実費、迷惑料などが含まれます。慰謝料は被害者の精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。
示談金の本質は被害者の被害回復を図ることにありますが、その代わりに「厳罰を求めない」「告訴を取り下げる」といった条件に応じてもらう効果が期待できます。 -
(3)淫行における慰謝料の相場
精神的苦痛の大きさを具体的に表すことは困難なので、慰謝料の額に相場はなく、事件ごとに異なります。淫行の場合、被害者は18歳未満の未成年なので、基本的には示談の相手方は児童の保護者です。そのため慰謝料の額は児童の保護者が納得できるかどうかによって左右されます。
たとえば保護者が自分の子どもにも非があると考えた場合には、慰謝料は低くなる可能性があります。一方で、保護者が加害者に対して強い処罰感情を抱いていれば慰謝料は高額になるでしょう。

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6、未成年と性的関係を持ってしまった場合は弁護士に相談を
もし18歳未満の未成年と性行為をしてしまった場合、たとえ合意があっても罪に問われるおそれがあります。
ご自身の行為が淫行にあたるかどうか、淫行にあたる場合はその後どのような展開が考えられるのかを知るためには、弁護士への相談が有効です。法的な観点からのアドバイスを受けることで、示談交渉をはじめとする適切な対応を早期に開始し、刑事事件化や逮捕・勾留を回避できる可能性が生じます。
相手が18歳未満だと知らなかった場合の捜査機関への主張、逮捕・勾留された場合の職場への対応・解雇の回避など、個別の事情に応じた対応も可能です。相談するタイミングがはやいほど弁護士ができる活動の選択肢が増えるため、できるだけ早期に相談することをおすすめします。

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7、まとめ
未成年との性行為は、相手が18歳未満であれば青少年保護育成条例やその他の法律によって厳しく処罰されます。合意があっても犯罪が成立しうるため、もし18歳未満の児童と性行為をしてしまったのであれば早急に弁護士に相談して対応を依頼しましょう。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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