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弁護士コラム

2023年10月31日
  • 性・風俗事件
  • 公然わいせつ
  • 不起訴

公然わいせつ罪で逮捕された場合、不起訴になる可能性はある?

公然わいせつ罪で逮捕された場合、不起訴になる可能性はある?
公然わいせつ罪で逮捕された場合、不起訴になる可能性はある?

令和5年8月、不特定多数の人前で下半身を露出した男が警察官に現行犯逮捕された事件が起きました。逮捕されたのは検察庁の事務官で、酒を飲んだ状態だったそうです。

この事例のように、たとえ酒の勢いでも人前で下半身を露出するなどの行為があると「公然わいせつ罪」の被疑で逮捕される可能性が高まります。しかし、公然わいせつ罪の被疑で逮捕されても、検察官が「不起訴」を選択すれば刑事裁判は開かれないし刑罰も受けません。

では、公然わいせつ罪で「不起訴」になる可能性はどのくらいあるのでしょうか? 本コラムでは、公然わいせつ事件における不起訴の可能性や逮捕された後の流れ、解決法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

目次

  1. 1、公然わいせつ罪とは? 罪となる行為の例や科せられる刑罰
    1. (1)公然わいせつ罪とは?
    2. (2)公然わいせつ罪に問われる行為の例
    3. (3)公然わいせつ罪で科せられる刑罰
  2. 2、公然わいせつ罪で不起訴になる割合はどのくらい?
    1. (1)「不起訴」とは? 刑事手続きの流れ
    2. (2)公然わいせつ事件における起訴・不起訴の割合
    3. (3)不起訴になる理由とは?
  3. 3、公然わいせつ事件で不起訴の可能性を高めるポイント
    1. (1)深い反省を示す
    2. (2)再犯防止に向けた対策を示す
    3. (3)目撃者に対する謝意を示し賠償を尽くす
  4. 4、不起訴を目指すために弁護士ができること
    1. (1)警察・検察官による取り調べに際したアドバイスが得られる
    2. (2)効果的な再犯防止対策のサポートが得られる
    3. (3)目撃者との示談交渉を進められる
  5. 5、まとめ

1、公然わいせつ罪とは? 罪となる行為の例や科せられる刑罰

まずは「公然わいせつ罪」がどのような犯罪なのかを確認していきます。

  1. (1)公然わいせつ罪とは?

    公然わいせつ罪は 刑法第174条に定められている犯罪で「公然とわいせつな行為をした者」が処罰の対象です。

    本罪における「公然と」とは、不特定・多数の人が認識できる状況を指します。ただし、実際に不特定・多数の人に認識されたかどうかは問いません。あくまでも、不特定・多数の人に認識される可能性があるかどうかが問題となります。

    「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を興奮・刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為と定義されています。
    一般的な感覚として「性的にいやらしい行為」を指すと考えておけばおおむね間違いはありませんが、どこからが「わいせつ」にあたるのかの明確な線引きはありません。
    公然わいせつ罪では、この点が特に争いになりやすいポイントだといえるでしょう。

  2. (2)公然わいせつ罪に問われる行為の例

    公然わいせつ罪が適用されるもっとも典型的な例が、いわゆる「露出狂」と呼ばれる行為です。公園で裸になる、車の中で下半身を露出して通行人に見せつけるなどの行為は、公然わいせつ罪によって処罰されます。

    ただし、公然わいせつ罪は、相手に無理やり見せつける行為だけを罰する犯罪ではありません。過去には、客に乳房や陰部などを見せるストリップショーに適用された事例も存在しています。相手が望んでいて、わいせつな行為を見せた場合でも処罰の対象です。

    近年では、インターネットでわいせつな行為をリアルタイムで配信する、いわゆる「ライブ配信」で摘発された事例もありました。撮影・編集済みのわいせつ動画などを配信した場合は刑法第175条1項の「わいせつ物頒布等罪」に問われますが、ライブ配信の場合は本罪が適用されます

  3. (3)公然わいせつ罪で科せられる刑罰

    公然わいせつ罪の法定刑は、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料となります

    数ある刑法犯と比較すると、懲役・罰金の上限が低く、拘留・科料という軽微な刑罰も定められていることから、厳罰とまではいえないかもしれません。ただし、たとえ刑罰が軽くても有罪判決を受ければ前科がついてしまうので、軽視は禁物です。

2、公然わいせつ罪で不起訴になる割合はどのくらい?

公然わいせつ罪を犯しても、必ず刑罰を受けるわけではありません。
検察官が「不起訴」を選択した場合は、刑罰を受けずに済みます。

では、実際の公然わいせつ事件では、どのくらいの割合で不起訴になっているのでしょうか?
実際の統計から分析してみます。

  1. (1)「不起訴」とは? 刑事手続きの流れ

    罪を犯した場合、まず管轄の警察が捜査を進めたうえで、事件を検察官に引き継ぐことになります。検察官は、自らも捜査を進めたうえで、被疑者について刑事裁判を提起して罪を問うべきかどうかを判断します。

    ここで、あえて刑事裁判を起こして罪を問う必要はないという判断が下された、あるいは法的な要件などに照らして刑事裁判を提起できない場合に下される処分が「不起訴」です。

    不起訴になると、刑事裁判は開かれません。
    日本の法律では、公平な裁判を経ていなければ誰であっても刑罰は科せられないという定めがあるので、刑事裁判が開かれない以上は刑罰も受けないという構図です。

  2. (2)公然わいせつ事件における起訴・不起訴の割合

    検察統計によると、令和3年中に検察庁が処理した事件の数は、公然わいせつ罪とわいせつ物頒布等罪をあわせて2226件でした。
    内訳は起訴1291件・不起訴935件で、起訴率は58.0%です。
    刑法犯全体の起訴率は22.4%なので、公然わいせつ罪の起訴率は比較的に高いといえるでしょう。

    もっとも、残りの42.0%は不起訴となっているため、公然わいせつ事件を起こしてしまったとしても、40%以上の人が起訴されず罪を問われる事態を回避しているという現実があります。

  3. (3)不起訴になる理由とは?

    検察官が不起訴の処分を下す際は、なぜ不起訴なのかという「理由」が付されます。
    不起訴の理由を詳しく分類すると20ほどの種類がありますが、次の3つのうちいずれかが選択されるのが一般的です。


    • 嫌疑なし
    • 犯行時に別の場所にいたことがわかった、真犯人の存在が判明したなど、犯罪の疑いが完全に晴れた場合に選択されます。

    • 嫌疑不十分
    • 犯罪の疑いが完全に晴れたわけではないものの、犯行や犯人であることを証明するためには証拠が不足している場合に選択されます。いわゆる「証拠不十分」と呼ばれる状況では、嫌疑不十分となります。

    • 起訴猶予
    • 罪を犯したことや犯人であることの証拠はそろっており、起訴すれば有罪判決を得られる可能性は高いものの、さまざまな事情を考慮したうえで、あえて起訴を見送る場合に選択されます。罪を犯したのが事実でも、悪質性が低かったり、刑罰を科さなくても十分に反省していて更生が期待できたりするケースでは、起訴猶予となる可能性が高いでしょう。

3、公然わいせつ事件で不起訴の可能性を高めるポイント

公然わいせつ罪を犯しても、令和3年中の検察統計によると42.0%は不起訴となり、罪を問われていないという現実があります。

ただし誤解してはいけないのが、この数字はあくまでも割合であり、どんな状況でも40%ほどの確率で不起訴になるというわけではないという点です。不起訴の可能性を高めるには、ここで挙げるポイントに留意して対策を講じていく必要があります。

  1. (1)深い反省を示す

    検察官が不起訴を下す際には、必ず被疑者自身の反省の度合いが評価されます。
    なぜなら、素直に罪を認め、十分に反省していれば、罰を科さなくても同じことを繰り返さないことが期待できる、と判断される可能性が高くなるからです。

  2. (2)再犯防止に向けた対策を示す

    性犯罪には再犯性が高いという特徴があります。
    特に公然わいせつ罪を犯してしまう場合、一般的な性的道義とはかけ離れた性癖をもっているケースがあるため、再び罪を犯さないためには根本的な解決を目指さなくてはなりません。

    性的な依存症の専門医による治療やカウンセリングなどの改善プログラムを受ける予定を立てる、家族など身近な人による監視体制を強化するなどの再犯防止対策は有効です。

  3. (3)目撃者に対する謝意を示し賠償を尽くす

    基本的に、公然わいせつ罪は被害者が存在しない犯罪です。

    本罪は「公然とわいせつな行為をした者」を罰することで善良な性風俗環境を保護する犯罪であり、他者の「嫌だ」「恥ずかしい」という感情を保護する犯罪ではありません。
    暴行や傷害、詐欺・窃盗などの事件では被害者からの被害届や刑事告訴を柱に捜査が進みますが、公然わいせつ事件ではこれらがなくても警察官による「認知」の報告書があれば事件化が可能です。

    ただし、公然わいせつ事件を立件するためには、わいせつな行為を目撃した人の証言が重視されるのは間違いありません。目撃者は「嫌なものを見せつけられた」という立場であるため、法的には被害者にあたらなくても被害者に極めて近い存在となり、捜査機関も目撃者の証言を中心に事件を組み立てていきます。

    目撃者に対して真摯(しんし)に謝罪し、精神的苦痛を与えたことに対する慰謝料などを含めた示談金を支払った結果も踏まえ、あえて目撃者を裁判に呼んでまで処罰するかについて、検察官がそこまでは必要ないと判断することもあります。

  4. (4)争えるところは争う

    公然わいせつのうち、公然性の要件は常に満たされることが明白なわけではありません。郊外や駐車場などで服を脱いでいた行為がたまたま目撃された時に、当然に公然性が認められるとは限らないこともあります。もちろん、一般的にすべきでない行為をしたとして、同じような問題を起こさないようにする姿勢はこのようなケースでも必要ですが、犯罪の成立まで全てを受け入れる必要はないこともあります。そして、このような犯罪か微妙であるという要素も、不起訴にいたる一つの理由になるため、軽視すべきではありません。

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4、不起訴を目指すために弁護士ができること

公然わいせつ事件で不起訴を得るには、刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士のサポートが欠かせません。

  1. (1)警察・検察官による取り調べに際したアドバイスが得られる

    警察・検察官による取り調べでは、供述内容が「供述調書」という書面にまとめられます。

    供述調書は、警察・検察官が作成するものですが、各種の報告書などとは異なる重要な書面です。作成後に読み聞かせと閲覧が行われ、内容に誤りがないことを確認したうえで供述人が署名・押印すると、訂正できない公文書になります。

    ひとたび不利な内容の供述調書が作成されてしまえば、後になって訂正するのは困難です。
    不起訴を得るためには、一方的に不利な内容だったり、供述内容がねじ曲げられていたり、供述していない内容になっていたりする事態を避ける必要があります。

    警察に逮捕されると、警察の段階で48時間以内、検察官の段階で24時間以内の身柄拘束を受けることになり、その期間はたとえ家族が相手でも面会は許されません。この期間中に逮捕された本人と面会が可能なのは弁護士だけなので、逮捕されてしまったときは直ちに弁護士を呼び、取り調べでどのように対応すべきかのアドバイスを受けましょう。

  2. (2)効果的な再犯防止対策のサポートが得られる

    性犯罪は再犯性が高い犯罪であり、不起訴を得るためには「二度と罪を犯さない」という誓約だけでなく、具体的な再犯防止対策を示す必要があります。
    とはいえ、どのようなアクションを起こせば有効な再犯防止対策として評価されるのかを個人が判断するのは難しいでしょう。

    公然わいせつ事件を含めた性犯罪事件の弁護実績を豊富にもつ弁護士に相談すれば、個人の性格や環境、事案の内容などに応じた有効な再犯防止対策を講じることが可能になります。検察官に「再犯に走ることはないだろう」と期待させるためには、弁護士のサポートによる対策は必須です。

  3. (3)目撃者との示談交渉を進められる

    公然わいせつ事件には基本的に被害者が存在しないため「被害者と示談を進めて被害届・刑事告訴の取り下げを求める」という解決法が通用しません。
    しかし、目撃者が目にした状況の供述が捜査の柱となるため、目撃者との示談交渉を進めることで不起訴の可能性を高められます。

    そう考えると、すぐにでも目撃者との示談交渉を進めたいと感じるはずですが、事件を起こしてしまった人の側では目撃者がどこに住んでいる誰なのかを知る術もなく、示談交渉を進めようにも連絡さえ取れないのが現実です。

    弁護士に相談すれば、目撃者の情報を把握している捜査機関へのはたらきかけによって、目撃者へのコンタクトが期待できます。公然わいせつ事件の目撃者は犯人に対して嫌悪の感情を抱いているケースが多く、犯人やその家族などの関係者との接触を避けたがる傾向が強いので、個人による交渉は避けたほうが安全です。目撃者との示談交渉は、第三者である弁護士に任せましょう。

5、まとめ

検察統計によると令和3年中に処理された公然わいせつ罪の起訴率は58.0%なので、不起訴の割合は42.0%となります。公然わいせつ事件を起こしても4割程度の人は不起訴になっており、刑事裁判が開かれず罪も問われていません。

ただし、何の対策も講じずに不起訴を期待するのは間違いです。
公然わいせつ事件で不起訴の可能性を高めたいなら、深い反省や具体的な再犯防止対策を示す、目撃者との示談交渉を進めるなどのアクションを起こさなくてはなりません。

公然わいせつ事件を起こしてしまい、不起訴の可能性を高めたいと望むなら、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が、不起訴処分の獲得を目指して全力でサポートします。

本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。

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