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過失運転致死傷罪を犯してしまったら? 初犯で逮捕されたケースを解説
交通事故によって人が死傷した場合、従来の道路交通法による規定では重大な結果が生じても、それに見合った重たい刑罰が科せられないという大きな問題がありました。
そこで、重大な結果が生じた場合や危険な運転によって引き起こされた事故に対して、厳罰を下せるように法整備されましたが、適用について争われるケースも少なくありません。
本コラムでは、過失運転致死傷罪について、どのような刑罰を受けるおそれがあるのか、初犯の場合はどの程度の量刑が科せられるのかについて、弁護士が解説します。
1、過失運転致死傷の刑罰について
自動車の運転中に、運転上必要な注意を怠って人を死傷させてしまった場合は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称:自動車運転処罰法)第5条により、処罰されます。
刑罰は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
刑罰の軽重は、事故によって引き起こされた結果や事故が発生した原因によって左右されます。相手が死亡に至れば当然に重い刑罰が科せられますが、負傷の程度が軽ければ刑罰もその分考慮されます。この点は、自動車運転処罰法第5条において「傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる」と規定されています。
ただし、この規定は「することができる」とされているだけで、軽症であれば必ず刑が免除されるというものではありません。
令和元年度の犯罪白書によると、平成30年中の過失運転致死傷の認知件数は41万3356件となっております。この数字だけをご覧になった場合多く感じられるかと思いますが、統計上は平成15年ごろをピークに減少傾向にあります。
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2、初犯の場合、量刑は考慮される?
これまでに刑罰を受けたことがない、つまり「初犯」の場合、量刑は考慮されるのでしょうか。刑事裁判で有罪となり、実際に科せられる刑罰のことを量刑といいますが、初犯の場合は量刑の判断において有利にはたらく可能性が高いでしょう。なぜなら、初犯の場合、規範意識(ルールを守ろうとする意識)が鈍っているとまでは認められにくいからです。有罪であっても、事件の内容によっては、執行猶予付きの懲役や罰金刑で済まされるケースもあります。
ただし、過失運転致死傷罪に問われた場合、事件の状況によっては初犯でも執行猶予が付かないおそれがあります。相手が死亡した、重度の傷を負ったなど、結果が重大であれば初犯でも実刑判決を受けてしまうこともあります。
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3、交通事故が逮捕につながる例
交通事故を起こしてしまい、相手が死亡・負傷してしまった場合、逮捕されるケースと逮捕されないケースがあります。
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(1)逮捕につながる例
過失によって交通事故を起こし、相手の負傷程度がごく軽かったとしても、事故が発生した事実を申告せずその場から逃走してしまった場合は「ひき逃げ」にあたります。ひき逃げは悪質な行為として厳しい対応が待っており、逮捕されるケースは少なくありません。
また、飲酒したうえで自動車を運転して交通事故を起こしてしまえば「過失」ではなく「危険運転」として扱われてしまい、人を負傷させれば12年以下、死亡させれば15年以下の懲役が科せられることになります。厳しい処罰から逃れようとする悪質な被疑者も多いため、逮捕されるおそれは非常に高いといえます。 -
(2)死亡事故で逮捕されないケース
事故の結果が重大であれば逮捕・厳しい刑罰を受ける可能性が高くなる一方で、死亡事故を起こしてしまっても逮捕されないケースもあります。
過失運転致死傷罪は「過失」があることが前提です。事故の状況を詳しく分析して、事故の発生を防ぐのが困難であったと証明する客観的な証拠があれば無罪となる可能性があります。この状況が早期に判明していれば、逮捕を避けられるでしょう。
ただし、逮捕は刑罰ではなく、あくまでも捜査において必要な場合にとられる身柄拘束措置です。一般論としては逃亡や証拠隠滅のおそれがあった場合には逮捕されると言えますが、具体的にどのような条件を満たせば死亡事故を起こしても逮捕されないという明確な基準はないと心得ておくべきでしょう。
逮捕されなかった場合は、指定の期日に警察署に出頭して任意の取り調べを受けることになります。これを「在宅捜査」や「任意捜査」と呼びます。
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4、逮捕の流れ
交通事故を起こして過失運転致死傷罪に問われた場合の流れをみていきましょう。
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(1)在宅事件として扱われる場合
交通事故を起こしても逮捕されず在宅事件として扱われた場合、日常生活を送りながら警察の捜査・取り調べを受けることになります。指定された期日に警察署に出頭して取り調べを受けて、取り調べが終われば帰宅することが可能です。呼び出しの期日や時間も仕事や学校などの都合が配慮されるので、日常生活への支障は最小限に抑えられるでしょう。
ただし、在宅事件だからといって刑罰が軽くなるわけではありません。あくまでも身柄拘束措置を検討する際に「拘束の必要がない」と判断されただけで、在宅事件であっても捜査の結果によっては刑罰が重くなることもあると心得ておきましょう。 -
(2)身柄を拘束される場合
逮捕されて身柄拘束を受ける場合は、事故現場で現行犯逮捕されるか、任意の取り調べを受けたうえで逮捕状を請求されて通常逮捕されます。
逮捕されると、逮捕から勾留・起訴まで、最長で23日間の身柄拘束を受けることになりますが、逮捕されたからといって必ず懲役刑が下されるとも限りません。裁判の結果、過失も危険運転も立証されなければ無罪になる可能性があり、情状が認められれば執行猶予付きの判決や罰金刑で済まされる可能性もあります。
逮捕された事件では、初期段階から弁護士のサポートを受けることをおすすめいたします。弁護士に依頼すれば、早期釈放や不起訴処分・執行猶予・無罪などの有利な展開も期待できるでしょう。
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5、過失運転致死傷で逮捕された場合の弁護活動
過失運転致死傷で逮捕されてしまった場合、弁護士に依頼した場合には期待できる弁護活動について解説いたします。
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(1)早期の釈放、保釈に向けた活動
逮捕されると、最長で23日間の身柄拘束を受けるおそれがあります。長期の身柄拘束を受ければ、仕事や学校への影響も大きくなるため、早期の釈放や起訴後の保釈に向けた活動が必要となるでしょう。
検察官にはたらきかけて不起訴処分を目指すほか、勾留への準抗告、起訴後は逃走のおそれがないことを主張して、保釈に向けて弁護活動を行います。 -
(2)不起訴、もしくは無罪判決に向けた弁護
過失運転致死傷は過失によって事故が発生した場合です。本人に過失や危険運転を認められる状況がなく、事故の発生は避けられなかったことが客観的に証明できれば、検察官の不起訴処分や刑事裁判における無罪判決を得られる可能性があります。
不起訴処分や無罪判決を望むのであれば、弁護士のサポートは必須です。客観的な証拠の収集が期待できるのはもとより、そもそも逮捕されている身では外部で証拠収集につとめることもできません。 -
(3)示談交渉
過失運転致死傷で逮捕され、早期釈放や不起訴処分・無罪判決を望むのであれば、被害者との示談交渉がもっとも有効な手段です。弁護士に依頼すれば、被害者とのスムーズな示談交渉を行える可能性が高まりますので、その分有利な処分が期待できるでしょう。早い段階で弁護士を選任してサポートを依頼することが重要となります。
もっとも、特に被害者が亡くなってしまったり重傷を負われた場合、示談交渉には非常に時間がかかるのが一般的です。そうなると、刑事裁判の手続が終わるまでの期間中に示談がまとまらないケースもあります。その場合でも、任意保険会社に加入していることに加え、ご自身でも誠実に示談交渉に応じる姿勢を示せていれば、有利な処分が期待できる場合もあります。
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6、まとめ
交通事故は、ちょっとした不注意や思いがけないトラブルで事故の当事者となってしまう可能性があり、事故の状況と結果の重大性によって刑罰の対象となってしまいます。
過失運転致死傷をはじめとした交通事件では、早い段階で弁護士によるサポートを受けることをおすすめいたします。過失運転致死傷罪で逮捕されてしまい、早期釈放や無罪・不起訴処分・執行猶予などの処分を目指す場合は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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