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未成年の自動車事故は過失致死になる? 逮捕後の流れは?
自動車を運転中、過失によって死亡事故を引き起こすと、過失運転致死に問われる可能性があります。
過失運転致死は、過失とはいえ人を死亡させてしまう重大な犯罪なので、刑罰の重さはどのくらいなのかといった疑問、不安が生じるはずです。
また過失運転致死は、未成年が加害者であるケースも多く、その場合は無免許の可能性もあるわけですが、未成年が死亡事故を引き起こした場合にはどんな処分を受けるのでしょうか。
本コラムでは過失致死の定義を説明したうえで、過失運転致死の成立要件や未成年者が死亡事故を起こした後の流れ、保護者が取るべき対応などについて解説します。
1、過失致死とはどのような罪なのか
まずは過失致死が、どのような場合に成立するのかについて解説します。刑罰の内容もあわせて確認しましょう。
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(1)過失致死の定義
「過失」とは、結果の予見とその回避が可能で、結果を回避するための注意義務があったのにもかかわらず、その注意を怠ることを指します。「致死」とは、人の死亡という結果を生じさせることです。
すなわち過失致死は、人の死亡結果を予見することができ、またそれを回避することができたのに死亡を回避するための行動をとらず、結果として人を死亡させてしまうことをいいます。 -
(2)過失致死と殺人の違い
過失致死と同じく人を死亡させてしまう犯罪としてもっともイメージしやすいのが殺人罪でしょう(刑法第199条)。
過失致死と殺人の違いは明確で、人を死亡させる意思(殺意)があったか否かです。過失致死には殺意がないのに対し、殺人罪の成立には殺意が必要となります。 -
(3)過失致死の種類
刑法第38条1項前段には「罪を犯す意思がない行為は、罰しない」と書いてあります。つまり過失による行為は原則として処罰されません。
しかし同条1項後段は「ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない」と、過失を例外的に処罰できる場合があると示しています。その中で過失による致死を罰するのは以下の犯罪です。
- 過失致死(刑法第210条) 過失によって人を死亡させる犯罪です。刑罰は「50万円以下の罰金」です。
- 業務上過失致死(刑法第211条前段) 業務上必要な注意を怠り、人を死亡させることです。代表的なものには鉄道事故や医療過誤事故などがあります。刑罰は「5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」です。
- 重過失致死(刑法第211条後段) 著しい注意義務違反によって人を死亡させる犯罪です。「ながらスマホ」で自転車を走行させ、死亡事故を起こした場合などに問われる可能性があります。刑罰は「5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」です。
- 過失運転致死(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」と言います)第5条) 自動車を運転する際に注意を怠り、死亡事故を起こした場合に成立する犯罪です。刑罰は「7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」です。
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2、自動車事故で問われる過失運転致死
自動車を運転中に死亡事故を引き起こすと、過失運転致死に問われる可能性が高くなります。この章では過失運転致死について、さらに詳しく見ていきましょう。
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(1)過失運転致死の成立要件
自動車運転処罰法第5条によれば、運転している上で必要な注意をせず人を死亡させた場合に、過失運転致死が成立します。「自動車の運転上必要な注意」とは、前方を注視したり一時停止をしたりといった、道路交通法が定める一般的な注意を指します。
また、過失運転致死が成立するには、加害者の運転行為と被害者の死亡結果との間に因果関係があることが要件となっています。事故により被害者が即死したような場合は、因果関係があることは明らかですので、特段問題にはなりにくいと考えられますが、即死でなかった場合には因果関係が問題になる可能性があります。
たとえば、被害者が事故による長期の入院中に亡くなったようなケースです。死亡の原因が事故によるものかどうかは、医師の専門的知見にもとづき判断されます。 -
(2)無免許運転は刑が加重される
過失運転致死の刑罰は「7年以下の懲役」「7年以下の禁錮」「100万円以下の罰金」のいずれかです。非常に重い罰ですが、罰金刑もあるため、有罪になっても必ず刑務所へ収監されるわけではありません。
一方、死亡事故の加害者が無免許だった場合は、自動車運転処罰法第6条4項の規定により、刑が「10年以下の懲役」に加重されます。罰金刑がないため、有罪になると執行猶予がつかない限り刑務所へ収監されます。
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3、未成年者が無免許運転をして、事故を起こしてしまった場合
それでは、未成年者が無免許運転で死亡事故を起こしてしまった場合、本人はどのような処分を受けるのでしょうか。また保護者である親が責任を負う可能性はあるのでしょうか。
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(1)原則として処罰されないが死亡事故は例外
未成年者は少年法の適用を受けるため、成人のような刑罰を受けるわけではありません。家庭裁判所へ送致され、審判を経て保護観察や少年院送致など、更生を目指した処分が言い渡されます。
しかし14歳以上で法定刑が死刑、懲役、禁錮にあたる事件を起こした場合は、事件が検察へ送致され、成人と同じように刑罰を受ける可能性があります。無免許運転による死亡事故の法定刑は、10年以下の懲役なのでこれに該当します。 -
(2)親が損害賠償や示談をおこなう
交通事故の加害者には、刑罰を受けるのとは別に、被害者・遺族への損害賠償責任が生じます。ここで問題になるのは、加害者が未成年者の場合には、誰が損害賠償責任を負うのかという点です。
未成年者の中でも、おおむね12~13歳以下の子どもは「責任能力」がないとされるため、民法第712条の規定により損害賠償責任を負いません。「責任能力」とは、自分のした行為の是非善悪を判断し、その判断にしたがって行動できる能力をいいます。
しかし交通事故の場合、このような低年齢の子どもが自動車を運転するケースはまれで、大半が責任能力のある年齢でしょう。責任能力のある未成年者が起こした交通事故では、原則として未成年者本人が賠償責任を負います。未成年者であることを理由に、賠償額が減額されるわけでもありません。
とはいえ、実際には資力のない未成年者が賠償金を支払うのは困難であり、親を含めた保護者が肩代わりするケースが多いでしょう。被害者遺族と示談交渉をする場合でも、未成年者の法律行為には法定代理人(多くは親)の同意がいる(民法第5条)ため、親が本人に代わって交渉することになるでしょう。
もっとも、交通事故の賠償金は任意保険に加入していれば保険から支払われ、また示談交渉も保険会社や弁護士を介するケースが多いため、保険の加入有無などによって状況は異なります。 -
(3)親が不法行為責任を問われる場合もある
親が自らの不法行為による損害賠償責任を負う場合もあります(民法第709条)。
たとえば親と未成年者である子どもが同居しており、子どもは日頃から無免許で親の自動車を乗り回していて、親がそれを放任していたようなケースです。
親が子どもを監督する義務を怠った場合には、死亡事故の原因が親にあると判断される可能性があります。
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4、未成年者の子どもが事故を起こした場合の保護者の対応
未成年者の子どもが死亡事故を起こした場合、保護者はどのような対応をするべきなのでしょうか。
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(1)弁護士へ弁護・早期釈放に向けた活動を依頼する
保護者はすみやかに弁護士へ依頼し、子どもの早期釈放に向けて活動してもらう必要があります。未成年であっても逮捕・勾留、あるいは観護措置の決定により、少年鑑別所で身柄を拘束されてしまう可能性があるからです。
長期の身柄拘束により子どもは学校や会社へ行けなかった場合、退学や退職に追い込まれる可能性がありますので、これを避けるためにも弁護士の活動が重要です。
また保護者は子どもが通う学校・勤務先への対応、捜査機関とのやり取り、家庭裁判所の調査への協力など、やるべきことが多数あります。
特に過失致死事件では被害者が亡くなっているわけですから、遺族への謝罪や、慰謝料を含む損害賠償金はどうなるのかなど精神的に負荷のかかる考えごとも尽きません。
これらを保護者だけで対応するのは精神的・時間的に困難であるため、保護者の活動をサポートする弁護士の存在が不可欠です。 -
(2)子どもの心のケアも重要
さらに人を死亡させてしまった本人の精神的ショックは計り知れませんので、子ども本人の心のケアも重要です。
逮捕後の面会可能となったタイミングですぐに会いに行き、今後のサポートを約束する励ましの言葉をかけることや、差し入れなどをしましょう。子どもの非行が進んでおり、親子関係がうまくいっていない場合でも、早期に弁護士に依頼をすることで、更生に向けた環境を整えるためのアドバイスを受けることなどが可能です。
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5、まとめ
未成年の子どもが死亡事故を起こしてしまった場合、過失運転致死に問われる可能性があります。
未成年が起こした事件では、成人の事件以上に弁護士によるサポートが重要ですので、早急に弁護士へ相談しましょう。少年事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所が、全力でサポートします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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