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無免許運転は即逮捕? 免許更新を忘れて運転したら無免許運転になる?
令和2年交通安全白書によれば、令和元年中における無免許運転の取り締まり件数は1万8607件でした。無免許運転が犯罪にあたることは大半の方が認識しているはずですが、それでも年間に2万件近くの無免許運転事案が発生しているのが実情です。
無免許運転と聞くと、免許の取得経験のない人が犯す罪とのイメージがあるかもしれませんが、免許の取得経験のある人が犯すケースも多々あります。典型的には免許の更新を忘れて運転してしまうケースです。この場合、意図的な無免許運転と同様に犯罪にあたり、逮捕され、刑に処せられてしまうのでしょうか?
本コラムでは無免許運転の定義に触れながら、無免許運転にあたる具体的なケースや刑罰の内容、逮捕の可能性について解説します。
1、無免許運転の定義
最初に、無免許運転の定義や成立要件、法定刑について解説します。
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(1)無免許運転とは
無免許運転とは、都道府県公安委員会の運転免許を受けないで自動車やバイクなどを運転する行為をいいます。
無免許運転には以下の4つの種類があります。
- 純無免……………一度も運転免許を交付された経験のない人が運転すること
- 取り消し無免……運転免許の取消処分を受けた人が再交付の前に運転すること
- 停止中無免………運転免許の停止処分中に運転すること
- 免許外無免………運転許可のない車両を運転すること
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(2)無免許運転の成立要件
無免許運転は、① 運転免許を受けずに、② 自動車または原動機付き自転車を③ 運転した場合に成立します。
①の「運転免許を受けず」には、免許の未取得はもちろん、免停や免許の失効も含まれます。
②の「自動車」とは、普通自動車や中型自動車、排気量51cc以上のバイクなどをいいます(道路交通法第2条第9号)。原動機付き自転車とは、排気量50cc以下の二輪、いわゆる原付バイクだと考えればよいでしょう(同第10号)。
③の「運転」とは、道路において車両を本来の使い方に従って用いることをいいます(同第17号)。 -
(3)無免許運転は法律で禁じられている
無免許運転は道路交通法第64条1項で何人も、公安委員会の運転免許を受けないで自動車または原動機付自転車を運転してはならないと明確に禁じられています。違反すると「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられます(同第117条の2の2第1号)。
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2、無免許運転の具体的な行為
無免許運転は、運転免許を取得した経験がない人が犯すケースと、過去に運転免許を取得した経験がある人が犯すケースに分けられます。
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(1)運転免許を取得した経験がないケース
運転免許を取得したことがないのに運転すれば、当然ながら無免許運転となります。次のケースはすべて無免許運転です。
- 自動車学校に通ったことがないのに運転した
- 自動車学校には通ったが運転免許の試験に合格していないのに運転した
- 運転免許の試験に合格したが、免許証を取得する前に運転した
- 他人名義の免許証を携帯して運転した
- 外国の免許証を保有しているが、日本の免許証への切り替えをせずに運転した
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(2)運転免許を取得した経験があるケース
実際に問題になりやすいのは、過去に運転免許を取得したことがあるケースです。
たとえば次のようなケースです。
- 免許証の有効期限が切れた後に運転した
- 交通違反により免許が停止中だったのに運転した
- 免許を返納したのに運転した
- 普通免許しか持っていないのに大型車を運転した
これらのケースでは「運転技能はあるのだから」との思考に陥りやすく、安易に運転してしまいがちです。仕事や子どもの保育園の送迎に必要など、本人には理由があっても、紛れもなく無免許運転にあたります。
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3、無免許で運転した場合に問われる罪と刑罰
無免許運転の量刑は法定刑である「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」の範囲で決定されます。どのような要素が量刑に影響するのか、同乗者や未成年の処分はどうなるのかを見ていきましょう。
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(1)無免許運転の態様によって量刑が変わる
前科・前歴がなく、反省の態度を示しているなどのケースでは更生に期待できるため、単純な無免許運転であれば略式裁判の罰金刑となる可能性が十分にあります。
一方、日常的に無免許運転を繰り返していた、これまでに飲酒運転などで免許取り消し・停止処分を受けたことがある、反省の様子が見られないなどのケースは、正式裁判になり、社会の中での更生が難しいと判断されて実刑判決となる可能性があります。
無免許運転の再犯であれば反省していないと評価されるので、より重い刑を受けるおそれが高いでしょう。 -
(2)同乗者も処罰の対象になる
運転者が無免許であることを知りながら運転を要求または依頼して同乗した場合は、同乗者も処罰の対象になります(道路交通法第64条3項)。刑罰は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」です(同第117条の3の2第1号)。
また、無免許運転をするおそれがある人に対して車両を提供した場合は、無免許運転をした本人と同じ「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられます(同第64条2項、第117条の2の2第2号)。同乗者以上に重い罪に問われるわけです。 -
(3)未成年の無免許運転はどうなる?
未成年は少年法が適用されるため原則として刑罰は受けませんが、家庭裁判所による審判が開かれ、保護観察や少年院送致などの処分を受ける可能性はあります。
無免許運転は交通違反の中でも重い違反にあたるので、以前にも非行をはたらいた場合や余罪がある場合などには少年院送致となる可能性が否定できません。
無免許運転に加えて死傷事故を起こしたケースでは、成人と同じように刑事裁判が開かれ、刑罰を受ける場合もあります。
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4、無免許運転で交通事故を起こした場合に問われる罪と刑罰
無免許運転をしただけでなく交通事故を起こした場合には、さらに厳しく罰せられます。
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(1)無免許過失運転致死傷の罪
不注意により人身事故を起こし、かつ無免許運転だった場合は、過失運転致死傷罪に無免許運転の罪が加重されます(自動車運転処罰法第6条4項)。
過失運転致死傷罪の刑罰は「7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金」ですが、無免許運転の罪が加重された場合の刑罰は「10年以下の懲役」です。
刑期の上限が長くなるだけでなく、罰金刑の規定がなくなるため、起訴された場合は必ず懲役刑が言い渡されます。 -
(2)ほかの罪に問われた場合も無免許運転の加重がある
過失運転致死傷罪以外にも、交通事故で人を死傷させた場合に適用される犯罪があります。これにも無免許運転の加重があるので、もともとの刑罰と加重後の刑罰を以下に挙げます(自動車運転処罰法第6条)。
- 危険運転致傷罪 15年以下の懲役→6か月以上20年以下の懲役に加重
- 準危険運転致死傷罪 負傷させた場合は12年以下の懲役→15年以下の懲役に加重、死亡させた場合は15年以下の懲役→6か月以上20年以下の懲役に加重
- 過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪 12年以下の懲役→15年以下の懲役に加重
なお、危険運転致死はすでに最高刑が規定されているので無免許運転の加重からは除かれます。 -
(3)ひき逃げ・当て逃げをした場合
無免許が発覚するのをおそれてひき逃げや当て逃げをすれば、有効な運転免許を携帯して運転するという基本的なルールを守らないだけでなく、救護義務などにも違反しているため、規範意識が低いと評価されて厳しく罰せられます。
また、犯行の現場から逃亡していることで逮捕の必要性を満たしてしまうので、逮捕される可能性も高いでしょう。
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5、無免許運転にはならない行為
無免許運転と混同されやすい行為があります。どのような行為が無免許運転とならないのかについて、以下に解説します。
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(1)運転免許証の不携帯
運転免許自体は有効でも、運転時に免許を携帯していない場合は無免許運転ではなく免許不携帯罪にあたります(道路交通法第95条1項)。
刑罰として「2万円以下の罰金または科料」(同第121条1項10号)が設けられていますが、交通反則通告制度の対象(いわゆる青切符違反)となるので、反則金をすぐに納付すれば刑罰を科されることはありません。 -
(2)免許条件違反
運転免許証の条件欄に記載された条件に違反して運転した場合は、無免許運転ではなく免許条件違反にあたります。
たとえば、次のようなケースです。
- オートマ車限定免許でマニュアル車を運転した
- 免許の条件が「眼鏡等」なのに眼鏡やコンタクトレンズをつけずに運転した
- 5トン限定準中型免許で車両総重量5トン以上の準中型自動車を運転した
免許条件違反は比較的軽微な交通違反なので、重大な交通違反である無免許運転とは全く異なります。免許条件違反の点数は2点で反則金の対象となるため、原則として刑罰を科せられることはありません。
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6、無免許運転で逮捕される可能性があるケース
無免許運転をすると、直ちに逮捕されてしまうのでしょうか?無免許運転の逮捕について解説します。
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(1)現行犯逮捕が多い
無免許運転の大半は現行犯逮捕です。一時不停止などの交通違反をきっかけに警察から取り調べを受け、無免許運転が発覚して逮捕に至るのが典型例でしょう。
もっとも、警察から事情を聴かれても、逮捕されないで在宅捜査となるケースは多くあります。そもそも逮捕は、被疑者が逃亡または証拠隠滅を図るおそれ(逮捕の必要性)がなければ認められません。したがって、検問を突破しようとする、警察官がいるのを見て逃げるなどの行動をとらずに素直に捜査に協力すれば、逮捕されない可能性は十分にあるでしょう。 -
(2)初犯の場合は逮捕されない?
無免許運転の初犯であることが逮捕の有無に直接の影響を与えるわけではありません。ただし初犯の場合、無免許運転単独であれば略式裁判による罰金刑で済む可能性が高いので、身柄を拘束されるリスクを冒してまで逃亡・証拠隠滅を図るおそれは低いと考えられます。結果として逮捕を回避できる可能性も高いでしょう。
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(3)無免許運転を繰り返していると逮捕される可能性がある
無免許運転を何度も繰り返している、無免許運転をしている期間が長いなどの場合は悪質なので正式裁判となる可能性が高まります。また無免許運転で人身事故を起こした場合は、懲役の実刑となる可能性も高いでしょう。
これらの点から、無免許運転の発覚をおそれて逃亡・証拠隠滅を図る可能性が高いため、警察が逮捕に踏み切るケースも多いと考えられます。
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7、無免許運転による行政処分や補償
無免許運転では逮捕される、刑罰を受けるといった問題のほかに、行政処分や被害者への補償の問題も発生します。無免許運転による行政処分や事故を起こした場合の補償について見ていきましょう。
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(1)無免許運転は1回で免許取り消しになる
免許を保有していた場合には運転免許の行政処分を受けます。無免許運転の違反点数は25点です。免許取り消しの基準は前歴がない場合で15点なので、これを大きく超えています。
25点が付加されると、欠格期間である2年間は免許の再取得もできません。欠格期間が終われば再取得は可能ですが、そのためには取消処分者講習を受講したうえで1年以内に試験に合格する必要があります。
また免許取り消しによって前歴がつきます。前歴とは過去3年間に免許停止・取り消しになった歴のことをいい、前歴の回数が多いほど行政処分が重くなります。
もともと免許を持っていなかった人が無免許運転をした場合は、違反から一定期間は免許を受けることができません。 -
(2)相手方への補償には保険が適用される
自らの過失で人身事故を起こした場合は相手方への損害賠償が必要です。無免許運転であっても自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)を含む対人賠償保険は適用されるため、相手方への補償は基本的に保険金でまかなうことができます。
しかし無免許運転をした運転者に対しては保険が適用されないため、自身のけがの治療費や車両の修理費用などに対して保険金は支払われません。もっとも、人身事故の原因が相手方にあった場合は、相手方が加入する保険によってこれらの賠償はなされるでしょう。
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8、家族が無免許運転で逮捕された場合
自分の家族が無免許運転で逮捕されてしまった場合の対応について解説します。
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(1)弁護士に相談する
無免許運転で逮捕・勾留されてしまうと、最長で23日間の身柄拘束を受けるおそれがあるため、日常生活への影響が懸念されます。また、起訴されると厳しい刑を受ける可能性もあります。
こうした事態を回避するには弁護士のサポートが不可欠です。弁護士は検察官・裁判官に対して逃亡・証拠隠滅のおそれがないことを主張して身柄の早期釈放を求める、本人の反省や再犯防止策を示して刑の減軽を求めるなどの活動を通じてサポートします。 -
(2)被害者がいる場合は示談交渉する
無免許運転で事故を起こした場合は被害者との示談が有効です。被害弁償と謝罪をして示談が成立すると、当事者間である程度の解決が図られ、被害者の処罰感情も緩和したと評価されます。よって執行猶予付き判決や刑の減軽が期待できるでしょう。
ただし事故の被害者は、被害を受けたうえに無免許であることに対して怒りの感情をもっているケースが多々あります。ご家族だけで示談交渉に臨んでも望む結果にならない可能性が高いので、示談交渉は弁護士へ一任しましょう。
なお、無免許運転単独のケースのように被害者がいない場合、示談はできませんが、反省文を作成する、贖罪寄付をするなどして反省の気持ちを表すことができます。 -
(3)無免許運転の再犯防止策を提示する
裁判官から再犯のおそれが低いと判断されると、社会の中で更生に期待できるとして執行猶予がつく可能性が高まります。そのためには二度と無免許運転をしない旨を約束するだけでなく、具体的な再犯防止策を提示することが大切です。
たとえば家族が車の鍵を厳重に管理する、車を売却して物理的に運転できないようにするなどの方策が挙げられるでしょう。
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9、まとめ
運転免許を取得した経験があっても、免許更新をしないで運転すれば無免許運転に該当します。無免許運転は死傷事故を引き起こす危険性が高い行為です。それだけでも逮捕・起訴され重い刑を受ける可能性があります。万が一人身事故を起こしてしまえばその可能性は非常に高いでしょう。
逮捕や重すぎる刑を回避するには弁護士のサポートが必要です。交通事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所が力を尽くしますので、ご家族だけで悩まずにまずはご相談ください。
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