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暴行罪と傷害罪の違いとは? 混同しやすい2つの犯罪を徹底解説
誰かに対して殴る蹴るなどの暴力をふるったときなどに問われる罪の名前は、「傷害罪」と思い込んでいる方もいるかもしれません。しかし、暴力行為の結果、相手が負傷していなければ「暴行罪」が該当します。
警察庁が公表している「平成29年の刑法犯に関する統計資料」によると、暴行容疑がある事件の認知件数は平成20年から平成29年の間、3万件前後で推移しています。つまり、毎年同程度の件数が発生している犯罪と考えると、ひとごとではないといえるでしょう。
暴行罪に該当する行為は殴る蹴るなどの暴力だけに限りません。さらに、暴行罪と混同されがちな「傷害罪」はまったく別の犯罪であることをご存じでしょうか。似た言葉なので混乱している方もいるかと思います。しかし、これらは行為者の主観や行為の結果によって区別されており、適用される罰則規定も異なります。今回は、暴行罪や傷害罪の定義を解説し、暴行罪とは何なのか、どこまでの行為が該当するのか、弁護士が詳しく説明します。
1、暴行罪の定義と構成要件を解説
犯罪とは法律で禁じられ刑罰が科される行為をいいます。逆に言えば、法律に規定のない行為は犯罪にあたらず、刑罰を科せられることはありません。暴行をした者について罰するためにも法律による規定を要するところ、刑法第208条に下記のとおり暴行罪に該当する要件とその刑罰が定められています。
「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」
したがって、「暴行をして相手に傷害を負わせなかったケース」のみ、暴行罪に問われることになります。もし、暴行行為の結果、相手に傷害を負わせてしまったときは、後述の傷害罪などが関係することになるでしょう。
もう一点、知っておくべき点は「暴行」という言葉で表現されている、具体的な行為です。刑法第208条による「暴行」とは、いわゆる暴力とは完全に同義ではありません。「他人の身体に対する不法な有形力の行使」と定義されます。刑罰法規に定められている個々の犯罪が成立するための要件を構成要件と呼びますが、暴行罪においての構成要件は、他人の身体に対して不法な有形力を行使することになります。有形力というのは物理的なもの、拳や凶器を使った場合などが代表的なものです。
「暴行」に該当する可能性がある行為の例は、次のとおりです。
- 殴る蹴るなどの暴力
- 相手の胸ぐらをつかむ
- 相手を突き飛ばす
- 相手にあたらないように石を投げる
- 相手に水をかける
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2、暴行罪と傷害罪の違いとは
「傷害罪」とは暴行による事件で問題になりやすい犯罪です。まずは傷害罪について定めている刑法第204条の内容を見てみましょう。
「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
暴行罪と比べると、罰則が重く設定されていることがわかります。たとえば暴行罪では2年以下の懲役とされていますが傷害罪では15年以下、金銭を徴収する処罰についても30万円以下から50万円以下へと加重されています。
したがって、万が一、誰かに暴行を働いてしまい逮捕されたとき、どちらの罪が問われるかによって、科される刑罰が大きく変わると考えておきましょう。
そこで、一般的には、どこまでが暴行罪に該当し、どこからが傷害罪になるのかという区分が重視されます。条文には「傷害するに至らなかった」と「傷害をした」という違いがあることから、傷害の結果の有無が暴行罪と傷害罪の分かれ目であると判断されることになるでしょう。
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3、暴行罪が成立するには「故意」の有無が重要になる
刑法の原則として、「故意犯処罰の原則」というものがあります。
これは、「暴行を含む多くの行為において故意があるものに限って処罰すべきである」という原則で、刑法第38条に以下のとおり規定されています。
「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」
もちろん条文にあるように、この原則には例外があります。それは「過失をも罰する」と特別にルールを設けることで過失によって犯した行為も処罰ができるというものです。
そして、暴行罪においては過失によって成立する規定はありません。したがって、故意がなければ暴行罪は成立しないということになります。逆に、相手が負傷する可能性があるという認識があるうえで、暴行にみなされる行為をすれば「故意」と判断され暴行罪が成立します。たとえば、「相手に当たればケガをするという認識を持ったうえで、相手に当たらないように石を投げた結果、相手は石に当たることなく負傷もしなかった」というケースでも、暴行罪に問われる可能性があるということです。
他方、傷害罪には過失傷害罪の規定が設けられています。そのため、故意のない暴行行為では罪に問われないものの、「口論中、とっさに突き飛ばしてしまった結果、相手がよろけて骨を折ってしまった」などのケースでは、たとえ故意がなくても過失傷害罪の罪に問われてしまう可能性があります。つまり、相手にケガをさせたいという故意がなくても、暴行とみなされる行為の結果、相手が負傷すると傷害罪に該当することがあるということです。
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4、暴行罪の示談成立について
示談とは、当事者間の合意によって事件の解決を目指すことを指します。暴行事件や傷害事件など、被害者がいる刑事事件においては、警察や検察は「被害者と加害者の間で示談が成立したかどうか」を非常に重視します。
刑事事件における示談では、加害者が被害者に対する民事的な損害賠償を行うとともに、被害者に罪を許してもらうことを目指します。示談が成立し、被害者が加害者を許すと明言すれば、警察や検察は「被害者が処罰を望まない」という意思を汲んで、起訴しない可能性があります。万が一起訴されたとしても、科せられる刑罰が軽くなる可能性があるのです。
加害者にとっては不起訴を得ることで前科がつかなくなる可能性があることや、示談金の支払いによって民事的な賠償義務を果たすことができるなどのメリットがあります。また、被害者にも、民事裁判を行わずに賠償金を請求できることで面倒な手続きを経ずに早く賠償を受けることができるというメリットがあります。
もっとも、示談によって賠償責任を果たせたとしても、被害者が許してくれるとは限りません。しかしそのような場合も、民事的な責任は果たしたと判断されれば、情状酌量の材料となると考えられます。
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5、暴行罪、傷害罪の示談金の相場
刑法による罰則規定は、「30万円以下」といったように上限が定められているだけにとどまり、「この罪を犯したときの罰金は必ずいくら」と決まっているわけではありません。有罪となったとき処される刑罰は、具体的な犯行内容と悪質性、被害者が受けた損害等によって異なるためです。さらに、犯罪を繰り返しているかどうかも問われることでしょう。
これは示談でも同様で、暴行をしたときにおける示談金の額は決まっていません。やはり個別の事情や交渉内容に応じて示談金が決まることになります。
金額を決定づける要因としては、暴行の態様、被害者の感情や暴行による結果の度合いなどが考えられます。行為が非常に悪質であればその分高額になることが予想され、被害者に後遺症がある場合なども比較的高い示談金になると考えておいたほうがよいでしょう。
また、当人同士での示談を拒む被害者は少なくありません。その場合は、弁護士が間に入ることで、示談が進むケースがあります。不当に高い示談金を請求されないためにも、弁護士に示談交渉を依頼したほうがよいでしょう。弁護士に依頼していれば、万が一正当と思われる賠償金の額を提示して示談を進めようとしても、高額すぎる示談金を要求され、示談が成立しなかったとしても、警察や検察へその事実を冷静な第三者の報告として主張することが可能となります。示談交渉そのものが無駄にはなりません。
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6、まとめ
暴行罪は故意に暴力などを振るった場合に成立します。暴行行為の結果、相手にケガを負わせてしまうと傷害罪が成立し、その分重い処罰を科せられてしまうことになるでしょう。
万が一、あなたの家族が加害者として逮捕されてしまったら、逮捕後最大72時間は家族でも面会が制限されます。まずは早期に弁護士に相談し、状況の確認を行うとともに、示談での解決を目指すことをおすすめします。示談が成立した場合は早期の釈放が期待できます。
ベリーベスト法律事務所では、暴行事件や示談交渉などに対応した経験豊富な弁護士が、早期釈放を目指し、前科がつくことを回避できるよう、状況に適した弁護活動を行います。お気軽にご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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