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弁護士コラム

2019年04月18日
  • 暴力事件
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身内が家庭内暴力で逮捕! 一連の流れと対策方法について解説

身内が家庭内暴力で逮捕! 一連の流れと対策方法について解説
身内が家庭内暴力で逮捕! 一連の流れと対策方法について解説

ここ数年、子どもの親に対する暴力だけでなく、DVや児童虐待、要介護の家族に対する暴力行為など、家庭内暴力が刑事事件として検挙される件数が増加しています。

痛ましい事件も多く、家庭内暴力に対する人々の意識や警察の対応も大きく変化しています。ある日突然、思いがけず身内が家庭内暴力で逮捕されてしまうことがあるかもしれません。

今回は、家庭内暴力はどんな罪になるのか、家庭内暴力の判断基準、逮捕された場合の流れ、未成年が逮捕された場合はどうなるのか、弁護士に依頼するメリットなどをご紹介します。

1、身内が警察に逮捕! 家庭内暴力の判断基準とは

  1. (1)家庭内暴力は何罪にあたるの?

    家庭内暴力は、家庭内で発生する家族に対する暴力行為のことです。家庭内暴力と言えば、未成年の家族に対する暴力行為を思い浮かべる方もいると思いますが、広義の家庭内暴力には、児童虐待やDV(ドメスティックバイオレンス)なども含まれます。
    家庭内暴力による逮捕の際に適用される罪名には、次のようなものがあります。


    • 身体的暴行を加える
    • 暴行罪・傷害罪・傷害致死罪など

    • 心理的に攻撃する
    • 脅迫罪・強要罪など

    • 食事を与えないなど、扶助をおこなわない
    • 保護責任者遺棄罪など

    • 性的な強要をする
    • 強制性交等罪・準強制性交等罪・強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪など

  2. (2)暴行罪と傷害罪の違い

    家庭内暴力は暴行罪と傷害罪で逮捕される事例が多いのですが、どのような違いがあるのでしょうか。
    暴行罪とは、人に対して「不法な有形力」を行使した場合に適用されます。殴る・蹴るだけでなく、次のような場合にも「暴行」と判断される可能性があります。


    • 平手でたたく
    • 胸ぐらをつかむ
    • 髪や衣服をひっぱる
    • 押し倒す
    • 物を投げる
    • 大声でどなる
    • 水や塩をかける
    • 刃物などを体に突きつける

    傷害罪は、暴行により、相手の「生理的機能」を害した場合に適用されます。骨折や裂傷などのケガを負わせることだけでなく、PTSD(心的外傷後ストレス)などの精神疾患に至らせたり、感染症などにり患させたりした場合も傷害罪に問われる可能性があります。
    そして、傷害により死亡した場合は傷害致死罪に、殺意が認められた場合は殺人罪が適用されます。

  3. (3)家庭内暴力の判断基準とは?

    従来、家庭内暴力は家庭内の問題であるという考えから、家庭内暴力を受けても被害届を出さないことや、警察も積極的に介入していなかったようです。
    しかし、ここ数年、家庭内暴力により、被害者が死亡したり、重い障害を負ったりする痛ましい事件が増加していることから、家庭内暴力に対する人々の意識や警察の対応も変化しています。
    そのため、従来であれば夫婦ケンカやしつけの範囲と考えられていた暴力行為であっても、被害者が身の危険を感じて被害届を出すことや、被害者本人や家族、近所の人、病院、学校などからの通報により、加害者が逮捕される事件が多くなっています。

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2、家庭内暴力における警察の対応について

警察官は、警察学校で憲法、行政法、刑法、刑事訴訟法など、さまざまな法律を学びます。それら法学の中に警察法という法律がありますが、その警察法第2条では警察の職責を明示しており、
「警察は、個人の生命、身体および財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧および捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもってその責務とする」
と規定されています。
これが警察活動の基本であって根幹となっています。

つまり、個人の生命や身体に危害が及ぶ場合には、たとえ家庭内でのトラブルであっても警察が介入し、その保護に務めることが警察の義務なのです。

  1. (1)通報受理時の対応

    警察は、110番や警察署・交番への直接の通報を受理すると、すぐに現場へと駆けつけます。
    身体や生命に危険が及ぶおそれのある緊急性が高い事態であれば、パトカーでサイレンを吹鳴して現場へと急行します。
    「昨夜、暴行があった」「日ごろから暴行を受けている」などのように、今まさに被害が発生しているわけではない緊急性がない状態でも、通報を受ければ、警察官が対応することになります。
    個人の生命・身体の保護に必要があると認められた場合には、保護対策や加害者の逮捕・検挙などがおこなわれます。

  2. (2)犯罪にあたる場合の対応

    通報を受理して警察官が事情を聴取し、家庭内暴力が犯罪行為に該当すると判断された場合、まずは被害者の意向が尊重されます。
    ただし「家族であれば暴行・傷害であっても許される」というわけではありません。
    もし、家族が「被害届を提出する」と言えば被害届が受理されることもありますし、「家族間なので処罰までは望まないが注意してほしい」と望めば、事件化せずに厳重注意を加えることもあります。
    被害者が著しい負傷をしている、粗暴性が高く放置すれば継続して大きな被害が発生すると認められる場合は、被害者の意向にかかわらず警察が介入し、逮捕するケースもあります。

    古くから、警察は「民事不介入」として家庭内のトラブルに踏み込まないという傾向がありましたが、その考えこそが家庭内での暴力を助長してしまったと指摘する声も高まっています。最近では閉鎖環境である家庭内でこそ凄惨な事件が目立っているため、犯罪にあたると判断された場合は積極的に警察が介入する傾向があります。

  3. (3)DVと認められる場合の対応

    家庭内暴力の中でも、特に重大な被害に発展しがちなのがDV事案です。
    夫婦間は非常に閉鎖的な関係であり、「普段は優しいから」「怒らせたのは自分が悪いから」と被害届の提出をためらうケースは珍しくありません。

    DV事案と認められた場合、警察は被害者から状況を聴取して「配偶者からの暴力相談等対応票」を作成します。対応票は全国統一の書類で、その後の保護でも根拠として使用される重要な書類です。
    対応票の作成と並行して、事件化すべき内容であれば被害者から被害届を受理しますが、被害者が「事件化を望まない」と申し立てても、警察が事件化すべきと判断した場合は、警察の認知をもって強制的に事件化することがあります。
    緊急性が高い事案の場合、警察はすみやかに逮捕状を請求して加害者を逮捕し、身柄拘束によって加害者と被害者を隔離します。

    被害者が保護を求める場合は、都道府県などの自治体と連携して被害者の保護にあたります。
    具体的には、自治体が運営するシェルターなど避難先の確保や、実家などへの避難であれば、警戒活動をおこなうなどの対策が講じられます。

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3、釈放か、起訴か? 家庭内暴力で警察に逮捕された後の流れについて

家庭内暴力で警察に通報されて、警察官が駆けつけても、事情聴取されて注意・警告で済む場合があります。一方で、被害者が大きなケガを負っている場合などには警察官の判断で緊急逮捕されることもあります。また、通報がなくても、診断書などをもとに被害者が被害届を提出した場合は、警察から任意同行を求められ、通常逮捕される可能性もあります。
もし、身内が家庭内暴力で逮捕されたら、その後はどのような流れになるのでしょうか。

  1. (1)逮捕

    身柄を拘束されて取り調べを受けます。警察は逮捕後、48時間以内に検察へ送致(送検)するか、釈放するかどうかを判断します。誤認逮捕だった場合や被害届が取り下げられた場合などは、釈放される可能性があります。

  2. (2)検察による勾留請求

    検察に送致された場合は、検察は24時間以内に裁判所に勾留請求するかどうかを判断します。勾留請求をして裁判所が勾留を決定した場合は、原則として10日間、さらに捜査が必要な場合は10日間延長され、引き続き取り調べを受けることになります。つまり、勾留された場合は、逮捕から最大23日間も身柄拘束されることになります。一方で、逃亡や証拠隠滅などのおそれがない場合は、釈放されて在宅事件となる可能性があります。

  3. (3)起訴・不起訴

    検察は、勾留による捜査および在宅捜査にもとづき、起訴するかどうかを判断します。不起訴・処分保留となった場合は、釈放されます。

  4. (4)保釈

    起訴されても、裁判所に保釈請求して保釈が認められ、必要な保釈金を納付すれば保釈される可能性があります。

  5. (5)未成年が逮捕された場合

    未成年が家庭内暴力で逮捕された場合は、勾留請求までは成人とほぼ同じ流れになります。しかしケースによっては、検察は勾留に代わる観護措置を請求して、少年鑑別所に収容される場合があります。
    未成年の場合は、捜査終了後、すべての事件が家庭裁判所に送られます。事件を受理した家庭裁判所は、少年鑑別所での観護措置を取るべきか、在宅観護とするかの判断をします。
    その後、家庭裁判所は、家庭裁判所調査官の調査をもとに、少年事件の裁判にあたる少年審判を開始するかどうかの決定をします。
    少年審判では、不処分や在宅での保護観察処分、少年院などの更生施設送致といった処分が下されます。重大な事件で刑事責任が妥当と判断された場合は、検察に再送致(逆送)されることもあります。

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4、身内が逮捕されたら、まずは弁護士に相談を

家庭内暴力で身内が逮捕されたら、慌てずにはいられないことでしょう。もし身内が逮捕された場合や、身内の家庭内暴力でお悩みの場合は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
配偶者からDVを受けている場合は、都道府県に設置された配偶者暴力相談支援センターや婦人相談所などに相談される方も多いと思います。一時保護や助言、カウンセリング、情報提供などをしてくれる有益な場所ですが、具体的な活動を依頼するためには弁護士に相談されることをおすすめします。
夫婦ケンカが行き過ぎて軽いケガを負わされてしまった場合や、誤解による通報で配偶者が逮捕された場合は、弁護士が警察・検察とスムーズに交渉して、早期に釈放されたり、不起訴処分となったりする可能性が高くなります。

すでに制御できないDVがおこなわれている場合は、弁護士が裁判所に保護命令の申し立てをおこない、接近禁止命令や退去命令を出してもらうという方法もあります。さらに被害防止措置などの手続きを進めます。これによって、ご自身だけでなく子どもをDV被害から守ることもできます。

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5、まとめ

家庭内暴力はどんな罪にあたるのか、その判断基準、逮捕された場合の流れ、弁護士に依頼するメリットなどをご紹介しました。逮捕・勾留されれば、長期に身柄拘束されて、仕事や学校生活など社会生活に大きな支障をきたすことになります。しかし、弁護士に依頼すれば、逮捕直後に接見したり、警察・検察などへ働きかけたり、被害者である家族と交渉することで、早期の釈放をめざすことが可能です。
ご家族の家庭内暴力でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。経験豊富な担当弁護士がご依頼者さまとご家族を全力でサポートいたします。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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