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傷害の刑法上の定義とは? 暴行罪との違いや量刑についてくわしく解説
検察庁の平成29年統計によれば、刑法犯のうち約1割が傷害罪で検挙されているそうです。
傷害罪と聞けば、他人を殴ってケガを負わせたような場合を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、傷害罪は、そういった暴力行為だけでなく、無言電話などの嫌がらせ行為により、相手に精神疾患を患わせるなどした場合でも成立する可能性があります。
今回は、傷害罪について、傷害の定義、傷害罪と他の罪との違いなどを詳しく紹介します。
1、「傷害」の定義
傷害罪は、「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と規定されています(刑法第204条)。
「人の身体を傷害」とは、どのような行為なのでしょうか。
学説では、次の3つの説があります。
- 身体完全性侵害説 この説は、傷害を「人の身体に変化を与えること」と定義します。
- 生理機能傷害説 この説は、傷害を「人の生理機能や健康状態を悪化させること」と定義します。判例・通説は、この説に立っていると考えられています。
- 折衷説 この説では、傷害を、「人の外貌に重要な変化を与えたり、生理機能や健康状態を悪化させること」と定義します。
ケガをさせることはもちろん、病気にさせることも傷害に含みます(たとえば、自分が性病であること秘して性行為をし、相手を性病に感染させる行為)。また、無断で髪の毛を切るという行為も、身体に変化を起こしていますから、傷害であると考えます。
ケガはもちろん、病気にさせることも傷害に含まれます。しかし、髪の毛を切るという行為は、生理機能や健康状態を悪化させるわけではないので傷害に当たりません。
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2、他の犯罪との違い
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(1)暴行罪 (刑法第208条)
暴行罪は「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかった」ときに成立する犯罪です。つまり、暴行を加えて人に傷害を負わせた場合には傷害罪が成立し、傷害を負わさなかった場合には暴行罪が成立します。
もっとも、極めて軽微なケガの場合は、暴行罪が適用される可能性もあるでしょう。
暴行罪でいう「暴行」は、「人に対して不法な有形力を行使すること」と定義づけられています。殴る・蹴るなどはもちろんですが、菌や薬の作用を利用する、光や音の物理力を行使することも含まれます。
たとえば、次のような行為が挙げられます。- 相手の胸倉をつかむ
- 髪や衣服をひっぱる
- 水や薬剤をかける
- 狭い部屋で日本刀を振り回す
- 拡声器で大きな声や音を発する
- 相手に石を投げる
また、最近では、急な割り込みや車間距離を詰めるなどのあおり運転行為に対して、暴行罪が適用されることもあります。 -
(2)傷害罪と未遂罪
刑法では、「未遂を罰する場合は、各本条で定める」(刑法第44条)と規定しています。犯罪が未遂に終わった場合に処罰するかどうかは、犯罪ごとに決めるということです。
傷害罪には未遂の処罰規定がありませんから、傷害未遂罪に問われることはありません。ただし、暴力を振ったが相手がケガをしなかったという場合には、上記(1)のとおり、暴行罪が成立する可能性があります。 -
(3)傷害致死罪(刑法第205条)
傷害を負わせた相手が、その傷害を原因として死亡してしまった場合には、傷害致死罪が成立します。
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(4)現場助勢罪(刑法第206条)
傷害罪または傷害致死罪の現場において、「もっとやれ!」と行為者をはやし立てるなど扇動的な行為に及んだ場合には、現場助勢罪が成立する可能性があります。
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(5)過失傷害罪(刑法第209条)
故意(意図的)ではなく、過失(不注意)によって相手に傷害を負わせた場合には、過失傷害罪が成立します。
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(6)殺人罪(刑法第199条)、殺人未遂罪(刑法第203条)
殺害する意図、つまり殺意に基づいて行われた行為であった場合には、傷害罪ではなく殺人未遂罪が、傷害致死罪ではなく殺人罪が成立します。
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3、傷害罪の刑罰
傷害罪の罰則は、「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
量刑は、相手が負った傷害の程度、暴行行為の悪質性、示談の有無、前科の有無などを考慮して決定されます。負傷の程度が重大である、凶器を使用した悪質な暴行行為である、再犯であるなどの事情がある場合は、刑も重くなる可能性が高くなるでしょう。
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4、まとめ
ここでは、傷害罪について紹介しました。
傷害罪を犯した場合の刑罰は、暴行罪よりも重くなっています。事件の内容によっては、逮捕・勾留による身体拘束をうけたり、起訴されて懲役刑に処せられる可能性もあります。
逮捕された場合には、最大23日間の身柄拘束を受けるため、社会生活に多大な支障を及ぼします。もし、傷害事件を起こしてしまった場合には、一刻も早く弁護士に相談してください。
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