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弁護士コラム

2019年11月28日
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脅迫で逮捕される可能性は? 脅迫罪で前科がつくケースについて解説

脅迫で逮捕される可能性は? 脅迫罪で前科がつくケースについて解説
脅迫で逮捕される可能性は? 脅迫罪で前科がつくケースについて解説

悪ふざけのつもりでネットに書き込んだ言葉や、感情をコントロールできずに発した言葉によって「脅迫罪」に問われることがあります。「家に火をつけてやる」「家族を殺してやる」「不倫を会社にばらしてやる」など、これらはすべて脅迫罪になり得る言葉です。

実際に火をつけたり人をあやめたりしなくても、相手に相当な恐怖心を与えていると、逮捕される可能性が十分にあります。もし、家族や身近な方が、脅迫行為をしてしまい逮捕されたら、どうしたらいいのでしょうか。

この記事では、脅迫罪の立証のために使われる証拠、脅迫罪で逮捕されるまでの流れ、脅迫罪で有罪になり得るケース等について解説します。

1、脅迫罪の立証のための証拠

一般的に脅迫罪は、窃盗や暴行等の犯罪とは異なり、立証が難しいケースがあります。そのため、捜査機関が脅迫罪で立件し、裁判所が脅迫罪で有罪の判断をするためには、脅迫をした証拠が重要になります。
では、どのようなものが証拠になり得るのでしょうか。

  1. (1)脅迫罪とは

    まず、どういった行為が脅迫罪になるのか知っておきましょう。

    脅迫罪とは、第三者の「生命」「身体」「自由」「名誉」「財産」のいずれかに対して、害を加える旨を告げて脅迫する犯罪です(刑法第222条第1項)。また、第三者の親族の「生命」「身体」「自由」「名誉」「財産」のいずれかに対して、害を加える旨を告げて脅迫をする場合にも同様に脅迫罪が成立します(刑法第222条第2項)。

    実際に「生命」「身体」「自由」「名誉」「財産」のいずれかに対して害を加える行動を開始したかどうかとは関係なく、脅迫行為を行った時点で成立します。
    脅迫現場に居合わせない限りは、具体的な被害状況が見えにくい犯罪です。そのため、脅迫した証拠の有無が、重要になります。

  2. (2)口頭で行われた脅迫の証拠

    対面や電話など口頭で脅迫した場合は、被害者や目撃者の供述、録音された会話などが証拠になります。

    ただし、証拠が被害者の証言だけしかない場合は、「言った」「言わない」の水掛け論になりやすく、証拠として認められないケースも少なくありません。
    また加害者側も、証言が二転三転したり、あいまいな供述が多かったりすると、信ぴょう性を疑われる恐れがあるので、注意が必要です。

  3. (3)口頭以外で行われた脅迫の証拠

    口頭以外で行われた脅迫については、メールやLINE、ネットの掲示板やSNSへの書き込み、手紙や文書といった書面が証拠になります。

    例えば、ネットの掲示板やSNSを使って匿名での投稿をした場合、身元がわからないのでは、と思うかもしれません。しかし、発信者情報の開示請求という法的手続きによって、投稿を行った犯人の住所や氏名が特定される可能性があります。また、ネットカフェなどの施設にあるパソコンで脅迫に当たる書き込みをした場合は、店の防犯カメラに残っていた画像が犯人を特定する証拠となり得ます。

    メールやLINEを使って脅迫をした場合、自分のパソコンやスマートフォンから履歴を消去したとしても、被害者側にもやり取りの履歴は残っていますので、証拠となりやすいでしょう。
    手紙や文書であれば、封筒や切手の裏面に付着した指紋、唾液などから採取したDNAが犯人を特定するための証拠になります。

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2、脅迫罪で逮捕されるまでの流れ

本人は冗談のつもりでも、相手の受け取り方は違うかもしれません。悪質な犯行と認められると、刑事事件として立件され、場合によっては逮捕される可能性もあります。

  1. (1)被害届の提出

    脅迫事件では、被害者やその家族から被害届が出され、事件化するケースが大半です。
    特に、脅迫が複数回におよぶ場合や、脅迫の程度が強い場合には、被害者は著しい恐怖心を抱いていて当然なので、被害届が提出される可能性は高いと言えます。

  2. (2)逮捕される場合

    凶器をちらつかせたり、反社会勢力であることをにおわせたりして脅迫した場合など、犯行様態が悪質なケースでは、逃亡や証拠隠滅の恐れが高いと判断され、逮捕される可能性が高くなるでしょう。

    なお、逮捕には、逮捕状にもとづく「通常逮捕(後日逮捕)」と、犯行時や直後に逮捕状なしで逮捕される「現行犯逮捕」があります。

    たとえば、脅迫の手紙をマンションのポストに投函(とうかん)したところを、被害者本人や巡回中の警察官に見つかったといった場合や、道端や人の出入りがある場所で脅迫し、通報された場合などにおいては、逮捕状なしで現行犯逮捕される可能性があります。
    上記のようなケースを除けば、証拠がそろった時点で、捜査機関が逮捕状を請求し逮捕に踏み切る、通常逮捕になるケースが一般的です。

    逮捕に続いて、さらに、身柄を拘束した状態で捜査を進める必要があると捜査機関が判断した場合には、逮捕による身柄拘束後さらに最大で20日間身柄を拘束される可能性があります。

  3. (3)逮捕されない場合

    脅迫の悪質性にもよりますが、逃亡や証拠隠滅の恐れがなく、真摯(しんし)に自ら起こしてしまった罪を認めている場合には、逮捕されずに在宅のまま捜査が進められるケースもあります。
    逮捕や勾留によって身柄を拘束されることがないため、普段通りの日常生活を送ることができます。会社や学校にも行くことができるので、社会的地位を失う心配も少ないでしょう。ただし、警察等の捜査機関から呼び出しがあれば、その都度しっかりと応じることが必要です。

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3、逮捕されたら必ず有罪になる?

脅迫罪で逮捕されても、必ずしも有罪になるとは限りません。つまり、脅迫罪で逮捕されても前科がつく場合とつかない場合があるのです。

  1. (1)前科がつく場合

    脅迫罪で起訴されて、刑を言い渡されると、「前科」がつきます。たとえ執行猶予がついても、前科がつくことに変わりはありません。

    脅迫罪で起訴された場合の法定刑は、「2年以下の懲役」又は「30万円以下の罰金」です。
    裁判が開かれたうえで刑を言い渡される場合と、被疑者の同意の下に、裁判を開かず書類の審査のみで進める略式手続きで、罰金刑となる場合とがあります。
    どちらのケースにせよ、前科はついてしまいます。

  2. (2)前科がつかない場合

    不起訴処分になれば、前科がつくことはありません。
    不起訴処分になるのは、検察官が犯罪の疑いがないと判断した「嫌疑なし」の場合や、証拠が不十分であるため起訴できないと判断した「嫌疑不十分」の場合など、いくつかのケースがあります。

    これだけを聞くと、脅迫をした事実や証拠がある場合は、不起訴処分になるのは難しいと感じるかもしれません。しかし、そのような場合でも、不起訴処分のひとつである「起訴猶予」となる可能性があります。これは、脅迫した事実や証拠があっても、検察官が犯行の内容や被害者との示談状況、被疑者の更生の可能性などを総合的に判断して、起訴が不要であると判断した場合に行われる処分です。
    つまり、脅迫した事実があったとしても、適切な対処をすれば、不起訴処分を獲得できる可能性は十分あるのです。

  3. (3)前科をつけないために重要な点

    不起訴処分となり早期に釈放されれば、日常生活への影響を最小限に抑えられます。
    場合によっては、職場や学校に逮捕の事実が知られずに済む可能性もあるでしょう。

    不起訴処分を獲得するためには、有効な方法があります。

    まずは、被害者との示談交渉です。
    被害者に真摯(しんし)に謝罪するのはもちろんのこと、今後二度と同様の過ちを犯さないと誓うことが大切です。状況によっては、謝罪だけではなく被害者の精神的苦痛に対する慰謝料として、示談金を支払うケースもあることを覚えておきましょう。
    示談が成立したということは、被害者側が加害者の謝罪を受け入れ、被害届や刑事告訴を取り下げることを意味します。検察官は起訴、不起訴を判断するにあたって、示談の成立を重要視します。そのため、できるだけ早く示談交渉を進めることが大切です。

    また、罪を起こしてしまった事実を認め、捜査へ全面的に協力する姿勢も重要です。更生の可能性が高いと判断されることで、不起訴処分を獲得しやすくなります。

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4、脅迫罪で不起訴・減刑を勝ち取るには早期の弁護活動が重要

身内の方が脅迫罪で逮捕された場合には、ご家族から速やかに弁護士へ相談してください。それこそが、不起訴処分や減刑のための重要な一歩となります。

逮捕されると、最長で72時間(3日間)にわたって、取り調べを受けます。その間は家族であったとしても、会うことも連絡をすることもできません。しかし、弁護士には、「接見交通権」と呼ばれる面会の権利が認められています。ご家族からの連絡を伝言したり、取り調べの対応方法を、法的な観点からアドバイスしたりすることができます。

逮捕されて精神的に追いつめられている状況では、取り調べで不用意な発言をしてしまうことも少なくありません。また、取り調べから逃れたいあまり、してもいない罪を認めてしまうこともあり得ます。そうなってしまうと、早期釈放どころか不起訴を獲得することも難しくなります。
ご家族にとっても、弁護士の面会によって本人の様子を知ることができますし、弁護士を通して励ましの言葉を伝えることもできますので、不安な状況の中で大きな支えとなるでしょう。

本人のサポートと並行して、弁護士は被害者との示談交渉も適切に進めます。
脅迫された被害者は非常に怖い思いをしているので、加害者側からの交渉に簡単には応じてくれないでしょう。また、直接話をすることを拒まれることも少なくありません。
交渉に応じてくれたとしても、法外に高い示談金を求められるリスクもあります。そのため、被害者の心情に寄り添いつつ、類似事件における示談金の相場観をもっている弁護士が代理人となり、働きかけるのが最善の方法です。
このように、逮捕の初期段階で行う弁護士の活動は、極めて重要になります。

前述したように、示談が成立すれば、不起訴処分を得られる可能性が高まります。
また、仮に起訴された場合でも、弁護士は保釈の請求や本人に有利となる証拠や事情の収集といった様々な形で本人をサポートします。裁判では弁護人となり、減刑や執行猶予つき判決の獲得を目指して力を尽くします。

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5、まとめ

脅迫罪は、人間関係のストレスや社会への不満、男女関係のもつれといった身近な原因から生じる犯罪です。一瞬の怒りに任せて行き過ぎた言動をしてしまうと、罪に問われ、懲役刑や罰金刑を科される恐れがあることを知っておかなくてはなりません。

家族が脅迫行為をしてしまったことを知り、不安に感じている方は弁護士へ早急に相談してください。被害者への謝罪や示談を進めることによって、起訴猶予で済むケースもありますので素早い行動が肝心です。すでに逮捕されている場合は、いっそう時間的な猶予がありません。弁護士へ対応を委ねるのが得策です。
ベリーベスト法律事務所では、脅迫事件はもちろん色々な類型の刑事事件について経験豊富な弁護士が在籍しています。まずは、お話を聞かせてください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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