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手紙やメールでも脅迫罪は成立する? 脅迫罪の逮捕率や起訴率はどのくらいか
脅迫行為と聞くと、直接相手に面と向かって脅し文句を吐くイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。しかし、脅迫行為は要件を充たす限り広く認められ、手紙やメールの文面でも脅迫罪が成立する可能性はあります。
ただ、脅迫に当たるかどうかの判断はなかなか難しく、特にお互いの表情や声音がわからない文面上では、冗談のつもりで書いたことが脅迫と受け取られてしまうおそれもあります。
そこで今回は、手紙やメールでどのようなことを書けば脅迫になるのか、また脅迫での逮捕率や起訴率(刑事裁判となる確率)について解説します。もしかしたら自分の送った手紙やメールが脅迫に該当してしまうかもしれないとの不安をお持ちの方は、ぜひチェックしてみてください。
1、脅迫罪とは
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(1)何をすれば脅迫となるか
人を脅せば、日本語としての意味では脅迫となります。ただ、刑法における脅迫罪の場合、もっと具体的な範囲で脅迫について定義されています。
刑法では単なる脅しというだけではなく、「特定対象への加害を伝えることでの脅迫」と定めています。その対象は以下の5つです。
- 生命
- 身体
- 自由
- 名誉
- 財産
これらは現代社会において守られるべき重要なものであり、また脅しの対象とされやすいものでもあるからです。 -
(2)脅迫罪の成立要件
犯罪の成否を検討する上では、行為だけではなく、結果や内心面(故意・過失)も問題となります。犯罪が成立するための条件を構成要件といいます。
脅迫罪の場合、上でも示した「特定対象への加害を伝えることで脅すこと」が構成要件の一つとなります。脅したことによって身体が傷ついたとか金品を差し出したといったことは脅迫罪の構成要件ではありません。脅したことによって実際に相手がおびえたかどうかも、脅迫罪の構成要件ではありません。
また、故意かどうかという点については、加害の告知について加害者(脅迫した側)が認識していれば足ります。
さらに、脅迫罪では告知する加害の対象者も限定されています。直接の相手か、その親族です。つまり「お前に危害を加えるぞ」と告げるか、または「お前の親族に危害を加えるぞ」と告げた場合がこれに当たります。
したがって、相手の友人や恋人などに危害を加えると告げたとしても、脅迫罪にはなりません。もっとも、友人や恋人に対して危害を加えるとの告知が、相手本人や親族に対する加害の告知を暗示しているような場合には、脅迫罪が成立する可能性があります。
なお、脅迫罪の特徴として、未遂の処罰規定がないことが挙げられます。未遂とは、行為を手掛けたけれども意図した結果が発生しなかった場合をいいます。たとえば、殺そうとして刃物で刺したけれども相手が死ななかった場合、殺人未遂罪が成立します。
脅迫の場合、加害者側の脅すという行為だけで完結してしまい、被害者がそれによっておびえたというような結果の発生はもともと要件ではありませんから、未遂という観念が存在しないのです。
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2、手紙で脅迫罪に問われるケース
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(1)手紙やメールの文面が問題に
しばしば映画やドラマなどでは、封筒や小包にカミソリの刃や小動物の死骸を封入して送りつけるという脅迫シーンが描かれます。
しかし、現実には刃や死骸の送付が直ちに脅迫罪の要件を充たすとは限りません。多くの場合には、手紙の文面と相まって相手への加害を告知するものかどうかが問題となるのです。つまり、脅迫罪の成立に関しては、相手やその親族に危害を加えるような文面か否かがポイントです。
ただし、危険物の送付は、たとえば相手を傷つけることを目的としていた場合、傷害罪となる可能性はあります。 -
(2)脅迫に該当する文面
まず、相手や親族(配偶者や親、子ども)の命を奪う旨の文章が書かれていれば、脅迫に当たります。たとえば、「お前を殺す」「口外したら貴様の子どもの命はないものと思え」などの場合です。
次に、相手や親族の身体を傷つける旨の文章も同様です。「ぶん殴ってやる」「ボコボコにしてやる」「二目と見られない顔にしてやる」「五体満足で帰れると思うな」などが例として挙げられるでしょう。
さらに、相手や親族の行動や身体的な自由を奪う旨の文章も同様です。「お前を閉じ込めてやる」「監禁してやる」「子どもを誘拐するぞ」などです。
加えて、相手や親族の名誉を害すると告げる文章も脅迫です。「あんたの不倫を週刊誌に売るぞ」などです。なお、ここで対象となる名誉とは相手や親族の社会的評判であり、事実かどうかは問われません。「根も葉もないうそを触れ回るぞ」という脅しでも脅迫には当たるのです。
最後に、相手や親族の財産への加害を示す文章も脅迫です。「お前の愛車を壊してやる」「家に火をつけてやる」などのほか、「お前のペットを殺処分する」といったペットへの加害の告知も脅迫となります。 -
(3)脅迫に該当しない場合
以上に対して、抽象的な文面ならば話は異なります。たとえば、「一生恨んでやる」「末代まで祟ってやる」「絶対に許さない」などは、相手にとって気味が悪いのは確かですが、脅迫罪には当たらない可能性も高いのです。
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(4)メールやSNSへの書き込みの場合
物理的な手紙だけではなく、インターネット上の匿名の書き込みであったとしても脅迫罪は成立します。SNSやネット掲示板への書き込みも脅迫となるおそれは常にあります。なお、匿名の書き込みであっても、発信者の情報は所定の手続きを踏めばたどれます。
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3、脅迫の逮捕率と起訴率はどのくらいか?
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(1)逮捕率と起訴率
犯罪に関する逮捕率と起訴率は、検察統計に示されたデータから見て取れます。以下は平成30年の検察統計における、脅迫罪に関するものです。
- 逮捕されたもの:1420件
- 逮捕されなかったもの:801件
- 逮捕率:約63.9%
- 起訴人員数:755名
- 不起訴人員数:1337名
- 起訴率:約36.1%
脅迫事件のうち6割以上が逮捕され、4割近くが起訴されているという結果が示されています。 -
(2)起訴された場合
起訴率は決して高くありませんが、これは検察が取り調べを経て確実に有罪と見込んだ場合にのみ起訴しているからだと考えられます。つまり逆に言えば、日本では起訴された以上、かなりの高確率で有罪となってしまうのです。
したがって脅迫で逮捕されるか、逮捕されそうな場合には、不起訴を目指した活動をするのが重要といえるでしょう。 -
(3)不起訴を目指して
そもそも事件化させないか、事件となったとしても不起訴を目指すには、被害者との示談が重要です。刑罰には、被害者に代わって加害者を処罰するという側面もあるからです。
脅迫は明確な被害者がいます。手紙やメールによる脅迫の場合は、送付された相手が被害者に当たります。そこで、相手と示談をして、文書に「ゆるす」という意思を示した一文(宥恕文言)を記してもらうことで、不起訴処分となりやすくなるのです。
ただ、逮捕されて取り調べを受けている最中には、加害者本人が示談に赴くことはできません。また、逮捕前や保釈中に被害者と会おうとしても、被害者は会いたいとは思っていないかもしれず、無理に面会を申し込むことで事態がさらに深刻化するおそれもあります。
きちんと示談をまとめるには、交渉経験の豊富な弁護士に依頼し、加害者としての誠意は謝罪文に記して弁護士に託すなどの方法を採るのが無難です。
手紙やメールでの脅迫は証拠がはっきりと残るため、立件されやすいものといえます。もしあなたが脅迫行為をして取り調べを受けている場合、弁護士に相談し、取り調べでの受け答え方法や示談の方針、情状の伝え方などといったアドバイスを受けることで、不起訴処分や早期釈放を目指せるでしょう。
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4、まとめ
今回は、手紙やメールによる脅迫罪の成否と脅迫での逮捕率・起訴率、起訴されそうなときの対処法についてご説明しました。
手紙やメールでの脅迫においては、身体や財産、自由などへ危害を加える内容の文面が脅迫行為に当たり得ます。また、起訴をされた場合は有罪になる確率が非常に高いため、まずは不起訴を目指すことが重要といえます。弁護士を通して示談交渉や訴訟の取り下げを打診するのが望ましいでしょう。
脅迫罪に問われた場合、あるいは送った手紙やメールの内容が脅迫罪に問われるのではないかと不安な場合は、なるべく早急にベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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