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恐喝罪で告訴されたら必ず逮捕される? 告訴の概要や対処法を解説
ニュースなどで「刑事告訴した」といった報道を目にする機会は多いかもしれません。令和元年10月には、世界的なスポーツ選手が酒に酔って飲食店で暴れ、傷害・器物損壊の罪で被害者が刑事告訴したというニュースが報道されました。
「刑事告訴する」と相手にいわれると、誰もが「訴えられる」「逮捕される」という不安にかられてしまうでしょう。しかし、告訴という制度を正しく理解していれば、過度に恐れる必要はありません。
ここでは、恐喝事件を起こして相手から告訴された、または「告訴する」といわれてしまった場合の対応について、弁護士が解説します。
1、刑事告訴とは?
「刑事告訴しました」というフレーズを、ニュースなどで耳にしたことがある人も多いと思います。では、「告訴」とはどういった制度なのでしょうか。
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(1)刑事告訴とは
刑事告訴という用語はマスコミが使っている用語であって、正しくは「告訴」といいます。
告訴とは、刑事訴訟法によって規定された手続きです。告訴権を有する犯罪の被害者などが、捜査機関に対して犯人の処罰を求めることを告訴といいます。
告訴できるのは、告訴権者に限られます。
告訴権者とは、犯罪の被害者や法定代理人のほか、被害者が死亡している場合は配偶者や直系親族などが該当します。告訴権がない人からの申告であれば「告発」という手続きになります。
告訴の方法については、刑事訴訟法の定めによれば、口頭による告訴も可能とされています。ただし、捜査機関が口頭による告訴を受けた場合は、被害を裏付ける証拠を整理した告訴調書を作成しなければいけないと規定されています。調書を作成するために、事情聴取や現場検証などをおこなう必要が生じること、また捜査が必要だと判断できるだけの情報があるほうが、告訴が受理される可能性も高まりますので、可能な限り告訴状を提出したほうが良いでしょう。 -
(2)告訴と被害届の違い
告訴と被害届は「捜査機関に申告する」という点で共通していますが、性質が異なります。
「犯人の処罰を求める」ための申告であるのが告訴で、被害届は「犯罪被害が発生した」という事実を申告するのみです。つまり、告訴には「相手を特定して処罰を求める」という強い処罰意思が込められています。 -
(3)告訴は受理されにくい?
一般的に「告訴は受理されにくい」といわれています。
告訴を受理した場合、捜査機関は「速やかに捜査を遂げて検察庁に送付する」という義務を負うため、受理に慎重になります。また、被害者の申告のみをうのみにしてしまうと、冤罪を引き起こすおそれがあるといった懸念もあり、受理のハードルが高くなるという現実があります。
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2、恐喝罪における刑事告訴から逮捕までの流れ
恐喝事件の刑事告訴から逮捕までの流れを見ていきましょう。
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(1)告訴受理の可否が検討される
被害者が警察に告訴の意思を示すと、警察は告訴を受理するか否かを検討します。慎重に判断するため、その場で即時受理されることは少ないでしょう。
明らかに犯罪を構成しない場合や、時効が成立している場合を除いて、告訴受理の検討段階で告訴事実を証明するための捜査がおこなわれます。 -
(2)告訴の受理と逮捕の関係
告訴が受理された場合、容疑をかけられた人は逮捕されるおそれが生じます。
ただし「逮捕の必要がある」と判断されるのは、逃走または証拠隠滅のおそれがある場合に限られています。それ以外の場合は在宅捜査となり、必要に応じて捜査機関の呼び出しに応じ、取り調べを受けることになります。これは、告訴に基づく捜査であっても、被害届を端緒にした捜査でもかわりません。つまり「告訴されたほうが逮捕される確率が高くなる」というものではないのです。
ただし、告訴が受理されたということは、受理前の捜査によって告訴事実がある程度は証明されたか、あるいは被疑者を取り調べてみないと判明しない点があると判断されたと考えられます。こういった点を考慮すれば、被害届を端緒とした事件よりも、逮捕に至るおそれは高まるといえるでしょう。 -
(3)恐喝事件における逮捕
警察がおこなう逮捕には現行犯逮捕・通常逮捕・緊急逮捕の3種類があります。
恐喝事件の場合、犯行現場が押さえられるケースは少ないので、現行犯逮捕される可能性は低いでしょう。また、逮捕状を請求する時間がないほど緊迫したケースも少ないと考えられるので、緊急逮捕もなじみません。
恐喝事件では、ほとんどのケースにおいて逮捕状に基づく「通常逮捕」によって身柄を確保されると考えられます。これは、告訴されたケースにおいても同様でしょう。
ただし、恐喝事件について告訴がなされたにもかかわらず、その後も継続して恐喝や脅迫が続いている場合は、犯行現場を押さえて現行犯逮捕し、その後、告訴事実である恐喝事件について再逮捕するといった手法が取られることもあります。
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3、恐喝罪で刑事告訴された場合は弁護士に相談する
恐喝事件を起こして刑事告訴された場合、あるいは相手から「告訴する」といわれてしまった場合は、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
実際に恐喝してしまった事実がある場合は、被害者に謝罪の念を伝えるのに加え、被害を弁済するための示談交渉を早急に進めるべきです。示談が成立して告訴が取り下げられれば、逮捕を回避できる可能性が高まります。
ただし、ひとたび告訴が受理されれば、後から取り下げがなされても検察庁への送致は避けられません。できる限り告訴が受理される前に、示談を成立させるのが最善策です。
恐喝の事実がないのに告訴されてしまった場合も、無実を主張するためには弁護士のサポートを受けるのが賢明です。恐喝の事実がないことを証明するために有効となる証拠の収集や、取り調べに対するアドバイスを受けられるでしょう。
なお、まったくの事実無根にもかかわらず恐喝事件として告訴された場合は、虚偽告訴罪の適用も視野にいれて対応する必要があります。虚偽告訴罪は、相手に処罰を与える目的で虚偽の事実を捜査機関に申告する犯罪で、3か月以上10年以下の懲役刑が科せられます。弁護士に相談すれば、こういったケースにおいてもサポートを受けられるので心強いでしょう。
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4、恐喝罪の告訴時効
告訴には「告訴期間」という制限がありますが、これは告訴が訴訟の要件とされている親告罪に限った話です。親告罪とは、被害者が告訴しなければ事件化できない犯罪を指します。つまり、親告罪ではない犯罪の場合は、告訴する期間に期限は定められていません。
恐喝罪は親告罪ではないので、前述したように告訴期間は定められていません。
ただし、検察官が公訴(裁判所に訴える)する権限が消滅する「公訴時効」までに告訴がなされる必要があります。恐喝罪の公訴時効は7年です。犯罪が発生して7年が経過してしまうと警察は告訴を受理しません。
また、たとえ公訴時効の成立前であっても、公訴時効を目前にひかえたタイミングでは必要な捜査を尽くせないため、不受理になるケースがあります。
なお、恐喝罪は7年で公訴時効が成立しますが「7年を待てば無罪放免になる」と考えるのは得策ではありません。時効の成立まで逃げ回る生活は決して楽なものではなく、告訴が受理されていれば、全国に指名手配されてしまうおそれもあります。早急に弁護士に相談して、解決を目指すべきでしょう。
また覚えておきたいのは、恐喝事件の場合、民事上の責任を追及される可能性があることです。不法行為による損害賠償請求は、被害者が損害および加害者を知ったときから3年間を経過するまでに権利を行使しないと、請求権を喪失すると定められています(民法第724条)。
これは、あくまで民事上の損害賠償に関する時効であり、刑事事件とは関係がありません。「恐喝事件の時効は3年」と誤解してしまうと、思わぬタイミングで告訴されて逮捕に至るおそれがあるので注意しましょう。
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5、まとめ
告訴とは、被害者が捜査機関に対して「犯人を処罰してほしい」と意思表示する手続きです。被害届の提出と大差はないように感じられますが、被害者がより強い処罰意志をもっているという点に着目すれば、厳しい処分も予想されます。早急に示談交渉を進めて、被害者と和解するのが賢明でしょう。
また、事実無根の告訴に対しては、虚偽告訴罪で対抗するという方法もあります。いずれの場合でも、弁護士のサポートを受けながら手続きを進めていくべきでしょう。
ベリーベスト法律事務所では、刑事告訴を受けた事件の対応実績が豊富な弁護士が、告訴されてしまった加害者の方を強力にバックアップします。恐喝事件で告訴された、相手から「告訴する」などといわれた場合は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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