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傷害罪で逮捕されるとどうなる? 拘留と勾留の違いや対応策を解説
傷害罪は刑法第204条に規定されている犯罪です。
たとえ友人同士で会っても、感情的になりすぎればケンカに発展することがあるかもしれませんが、相手に暴力をふるいケガをさせれば、傷害罪が成立するおそれがあります。もし相手が警察に被害届を出せば、逮捕されて刑罰が科せられることもあるでしょう。
しかし、逮捕は処罰ではありません。もしも傷害罪で逮捕されたら、具体的にどうなるのでしょうか? 処罰が決定するのはどのタイミングなのか、ご存じでしょうか。
本コラムでは、傷害事件の逮捕後の流れとともに、拘留と勾留の違い、社会生活への影響、対策として何ができるかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
1、傷害罪で逮捕されたらどうなる?
傷害罪で逮捕されてしまった場合、どのような身柄措置を受けることになるのでしょうか?
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(1)警察に逮捕された場合の流れ
警察に逮捕されると、まずは警察署の留置場で身柄を拘束されます。ただし、前述のとおり、逮捕は処罰ではありません。必要な取り調べをするために行われる、特別な措置のひとつにすぎません。そのため、逮捕による身柄の拘束は48時間が限度であることが、刑事訴訟法で定められています。取り調べの結果、身柄の釈放か、検察官への送致かが決定されます。
検察官は身柄の送致を受けると、24時間以内に再び取り調べを行い、引き続き身柄の拘束を行ったまま取り調べを行う「勾留(こうりゅう)」が必要かどうかを判断します。検察官による取り調べの結果、裁判所に勾留請求を行い受理されると、被疑者の勾留が決定します。
なお、逮捕から勾留の有無が決定するまでの最長72時間は、友人はもちろん、家族に至るまで、外部との接触について制限を受けることになります。自由に接見し、直接話をすることができるのは弁護士だけです。 -
(2)勾留とは?
勾留は、逮捕身柄に対する取り調べの実効を高めるための措置であり、刑罰ではありません。傷害罪の証拠を隠滅する可能性がある、逃亡や報復の危険性があるなど、不当な影響を及ぼすと判断されると、勾留が決定する可能性があります。
勾留が決定すると、原則10日間、延長で10日間、合計で最長20日間の身柄拘束が認められます。つまり、逮捕後の48時間と検察官が起訴を判断する24時間に加えて、20日間の勾留が決定してしまうと、逮捕から起訴まで最長23日間も身柄を拘束されてしまうことになります。その間、当然会社や学校などの日常生活に戻ることはできません。 -
(3)勾留と拘留の違い
「勾留」と混同されやすい言葉に「拘留(こうりゅう)」があります。読み方は同一ですが、まったく意味が異なります。
「拘留」とは、1日以上30日未満の間、刑事施設に収容される刑罰です。自由を拘束する刑罰の中ではもっとも軽いものですが、刑事裁判を経ないと下されることのないれっきとした刑罰のひとつです。軽度とはいえ、起訴されて刑事裁判が行われた結果、拘留が科せられれば、拘留の前科があることになります。
他方、繰り返しになりますが、「勾留」は起訴・不起訴の判断がなされるまでの期間における身柄拘束を指します。刑罰ではなく取り調べに必要であると判断されたうえで行われる措置であり、勾留を受けただけでは前科がつくことはありません。
傷害罪の法定刑は15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。したがって、傷害事件を起こした場合、身柄措置として勾留されるおそれはありますが、刑罰として拘留を科せられることはありません。
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2、勾留が長引くことによるデメリットとは?
勾留期間中は、留置場内や取調室において認められているごくわずかな自由を除いて、多くのことが制限されています。逮捕後の勾留が長引いてしまうことは、逮捕された被疑者にとってさまざまなデメリットを生じさせます。
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(1)長期の欠勤・欠席になる
勾留中は身柄の拘束を受けるため、会社や学校へ行くことを許されません。勾留期間が長引けば、長期の欠勤・欠席によって解雇や退学といった処分を受けるおそれがあります。たとえ処分を受けなくても、逮捕されたことが周囲に知られてしまう可能性があるでしょう。その場合、会社や学校などの判断や、周囲の反応によっては社会復帰への影響がでるかもしれません。
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(2)家族と連絡がとりにくく精神的負担が増す
個人の携帯電話を含め、電話の使用は、逮捕時点から勾留中に至るまで認められていません。家族や友人などの面会時間は、1日1回、平日9時~17時まで、1回15分〜20分程度など制限を受けるうえ、留置担当官が立ち会い、会話を記録に残します。場合によっては、面会すら制限を受けてしまう可能性もあります。親しい人への相談や真情を吐露する機会は少ないため、精神的な負担が増すでしょう。
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(3)差し入れにも細かな規制がある
差し入れすることは可能ですが、細かな規則があり、ゲームなどの娯楽品やタバコなどの嗜好(しこう)品、食品などの差し入れは禁止されています。勾留期間中は快適な生活をおくれるとはいえず、期間が長引けば精神的にも体力的にも消耗しかねません
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(4)取り調べで誤った判断をする可能性がある
勾留が長引くと、さまざまな自由を制限されるため、精神的な負担が大きくなることは想像に難くありません。不安の中、いち早く身柄の拘束を解かれたい一心から、やってもいないことを認めてしまうような被疑者もいるでしょう。
しかし、取り調べで犯行を認める供述をしてしまうと、その内容を供述調書に記録され、刑事裁判で証拠として提出されてしまいます。この内容をくつがえすのは容易ではありません。やってもいない罪が科されてしまえば、人生そのものに大きな影響をおよぼしてしまいます。やっていないことは「やっていない」と堂々と否認することが大切です。
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3、勾留の対処法
多くの方にとって、傷害容疑で逮捕されてしまうことはもちろん、勾留に至るまで、そう何度も経験することではないでしょう。だからこそ、その後の流れと対応方法を知り、適切に行動することをおすすめします。
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(1)まずは弁護士に相談
勾留を回避したい、長引かせたくないと考えるのであれば、まずはできるだけ早いタイミングで弁護士を依頼することをおすすめします。逮捕前であれば逮捕を回避するための対策をとることができますし、逮捕後であればそもそも勾留されないように弁護活動を行うことも可能です。
弁護士への相談というと、まっさきに心配になるのが「お金」の問題ですが、逮捕直後の段階では無料で当番弁護士を呼んで相談できます。この段階で今後の展開などの疑問については、ある程度は解消できるでしょう。ただし、当番弁護士に弁護活動を依頼する場合は、別途弁護士費用がかかります。
実際に弁護活動を依頼するのであれば、最初から信頼できる弁護士を探して私選弁護人として弁護活動を依頼することができます。無料で依頼できる国選弁護人制度もありますが、自分で弁護士を選ぶことはできませんし、勾留が決定しなければ依頼することができません。国選弁護人に勾留を回避するための弁護活動をしてもらうことは難しいでしょう。それでも、弁護士費用を捻出できない方にとっては大きな助けになるはずです。 -
(2)弁護士にできる勾留への対応策3つ
依頼を受けた弁護士は、勾留を回避するために次のような対応を行います。
- 準抗告の申し立て 準抗告とは、裁判官や検察官による処分に対して不服を申し立て、その取り消しや変更を求める手続きです。勾留の決定は裁判官によるものなので、準抗告が認められれば勾留の効果が消えて釈放されます。
- 勾留取消請求の申し立て 勾留取消請求とは、勾留が決定したのちに勾留の理由がなくなった場合にとる手続きです。簡単にいえば、勾留の効果を否定するのではなく「勾留が必要とされていた理由がなくなったから解除する」という手続きにあたります。
- 被害者との示談交渉 早い段階で被害者との示談が成立していれば、検察官は勾留の請求を避ける傾向があります。また、勾留を受けたとしても、示談が成立していれば取消請求によって勾留の解除が期待できます。
準抗告の手続きが認められるには、犯罪の嫌疑を否定できる材料があるか、または勾留の必要性を否定できるケースに限られます。弁護士のサポートは必須といえるでしょう。
たとえば、勾留が決定されたあとに被害者との示談が成立した、などのケースでは認められやすくなります。スピーディーな請求手続きを一般の方が行うのは難しいため、やはり弁護士の力が必要です。
勾留が解除されても捜査が終わるわけではありません。多くのケースで在宅事件扱いとして取り調べを受けることになりますが、日常生活に戻ることは可能です。精神的な負担は大幅に軽減できるでしょう。
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4、まとめ
そもそも逮捕・勾留は取り調べのためにやむを得ず行う措置です。しかし、傷害事件を起こして逮捕されてしまうと、最長で20日間の勾留を受ける可能性が出てきます。逮捕・送致の日数をあわせると合計23日間にもおよぶ長い身柄拘束が続くおそれがあり、しかも勾留が長引けば自由が制限されるだけでなく社会生活やその後の復帰にも悪影響を与えるでしょう。
逮捕される可能性がある、または逮捕されてしまった場合は、まずは勾留を避けるための対応をとることをおすすめします。弁護士を依頼することで、勾留を避けるためのさまざまな対策が可能になります。傷害事件を起こした事実があるのなら早急に弁護士に相談するのが賢明です。
傷害事件を起こしてしまい、逮捕や勾留に不安を抱えている方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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