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弁護士コラム

2020年03月12日
  • 暴力事件
  • 傷害
  • 不起訴

傷害罪の刑は重い? 傷害罪の量刑や不起訴になる可能性について

傷害罪の刑は重い? 傷害罪の量刑や不起訴になる可能性について
傷害罪の刑は重い? 傷害罪の量刑や不起訴になる可能性について

故意に他人を傷つけた場合には、傷害罪という罪に問われる可能性があります。傷害事件は、街の中で、あなたの知らない者との間で起きることもあれば、友人間や夫婦間など、身近でも起こり得るものです。

もしも傷害罪で逮捕されたとしたら、どのような刑罰に問われるのでしょうか。また、傷害罪での起訴を避けるためにできることはあるのでしょうか。

今回は、傷害罪の量刑をはじめ、不起訴となる可能性や、起訴を回避するためにできることなどについて、弁護士が解説します。

1、傷害罪にあたる行為とは

刑法第204条では、傷害の罪として、「人の身体を傷害した者」に対し、罰則を科しています。「傷害」の定義は、生理機能に障害を与えたり健康状態を不良にしたりする行為を指します。

  1. (1)何をすると罪になるのか

    具体的には、次のような行為は傷害罪に該当する可能性があります。

    • 殴って顔に傷を負わせる
    • 体を押して転倒させ、膝を腫れさせる
    • 衝撃を加えて長時間失神させる
    • 無言電話などによる嫌がらせをして睡眠障害にさせる


    一般に傷害と聞くと暴力を振るってケガをさせるケースを想像する方が多いと思われますが、失神させたり、病気にさせたり、精神的に衰弱させたりといった目に見えるケガをさせないケースでも該当する可能性があります。さらには、無言電話のようにそもそも暴力を振るわないケースでも該当する可能性があるのです。

  2. (2)量刑

    傷害罪の刑罰は「15年以下の懲役」か「50万円以下の罰金」です。比較的身近で起こり得るような犯罪ですが、上限が15年の懲役と非常に重いことが分かるでしょう。ただし、どのような暴力を振るったのか、計画性があったのか、初犯か再犯か、反省しているのか等、事件の内容は一律ではありません。そのため、実際に受ける罰(量刑)は、裁判官がさまざまな事情をもとに総合的に判断しています。

  3. (3)ほかの罪が適用される場合

    傷害罪で逮捕されたとしても、捜査の結果、他の罪で起訴される可能性もあります。例えば、暴行罪は、人を暴行したがケガをさせるに至らなかったときに適用される犯罪で、刑罰は「2年以下の懲役」「30万円以下の罰金」「拘留(1日~29日の身体拘束)」「科料(1000円~9999円の金銭徴収)」のいずれかです。懲役刑は傷害罪よりも上限が低く、量刑もこの範囲で決定されます。

    また、ケガでは済まずに相手を死なせてしまった場合には、傷害致死罪が適用されます。傷害致死罪の刑罰は、3年以上20年以下の懲役となっており、罰金刑はありません。

    どの罪になるのかは結果から判断されます。相手を「傷つけるつもりはなかった」場合でも、暴行する故意があったのなら、結果によって暴行罪ではなく傷害罪や傷害致死罪に問われる可能性が高いのです。

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2、傷害罪で不起訴はあり得るのか

平成30年版犯罪白書における検察庁の終局処理人員を見ると、平成29年、傷害罪で起訴された人は7221人で、不起訴になった人は1万3344人となっています。一見不起訴が多いですが、起訴、不起訴の判断は最終的には検察官が決めることであり、個別の事案によって大きく異なります。ご自身や家族のケースでどうなるのかは、弁護士に相談の上、事件の見通しを聞くことが重要で、安易な自己判断は禁物です。

なお、不起訴といっても、厳密に言えば無罪放免とは異なります。裁判で無罪が確定した場合に再度刑事上の責任を問われない「一事不再理」(憲法第39条後段)の原則は、不起訴の場合には適用されないため、その後の状況次第では、再度の逮捕や起訴の可能性がゼロとは言い切れません。
しかし、実際にそのようなケースは少なく、さらに、不起訴になれば前科がつかないので、日常生活への影響を最小限に抑えられます。

不起訴の理由として主に考えられるのは「嫌疑不十分」と「起訴猶予」です。嫌疑不十分とは、一定の疑いは残るが、裁判で有罪にできるだけの証拠がないケースです。
起訴猶予とは、罪を犯したのは確実で証拠もあるが、複数の事情からあえて起訴しない処分です。そこで考えられている事情とは、例えば、ケガの程度が軽い、事件の悪質性が低い、初犯である、示談が成立しているといった事情です。

特に、示談については事件の後にとり得る対処の一つです。また、被害者に対して謝罪の意思を示して、被害者の金銭的被害と精神的被害を緩和できるので、状況を少しでもよくしたい場合に不可欠といっていいでしょう。示談が成立していれば、仮に起訴され刑事裁判に展開した際にも、量刑が軽くなる有利な事情となり得ます。

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3、傷害罪で逮捕された際の具体的な対応とは

傷害罪で逮捕された場合、どのような方法で不起訴や軽い量刑を目指すべきなのでしょうか。

  1. (1)取り調べへの協力

    取り調べに対しては、うそをつかずにしっかり協力することが大切です。罪から逃れようとうそをついたり隠しごとをしたりすると、捜査機関から「反省の色が見られない」と思われ、その後の取り調べや処分に影響します。事件が事実なら罪と向き合い真摯(しんし)に反省すべきです。

    ただし、自身がしてもいない行為まで供述することは避けなければなりません。そもそも、自身がしていない行為や身に覚えのない行為を、やったといえば、自身の言ったことはうそになります。さらに、自身の供述が重要な証拠として扱われ、罪が重くなるおそれがあります。やったこと、やっていないことは明確に分けて、受け答えをしなくてはなりません。

    えん罪(冤罪)の場合も同様です。「早く長時間の取り調べから解放されて楽になりたい」と、やってもいないことを認めてしまうと、後で覆すのはとても難しいのです。そのため、取り調べにあたってはどのような点に注意すべきか、弁護士へ相談してアドバイスを得ることが重要です。

  2. (2)弁護士を通じた示談交渉

    示談が重要だとはいえ、自身が身体を拘束されていれば、自身が交渉の場に出向くことはできません。身体拘束が解かれて在宅捜査となっていた場合、仮に連絡先を知っていれば、交渉は物理的には可能ですが、感情の衝突が生じ、被害者が怖がったり嫌がったりして会ってくれないことが大半です。そのような場合、加害者の家族が対応しようとしても、同様に拒否されてしまうでしょう。拒否されているのに、無理に接触を図れば、トラブルに発展し、被害者感情を逆なでしかねません。

    これに対し、法曹としての資格を有し、第三者の立場で交渉を行える弁護士なら、感情の衝突が緩和され、被害者が示談交渉に応じてくれる可能性が上がります。示談交渉は処分の結果を左右する重要な場面ですから、身体拘束の有無を問わず、示談交渉は弁護士へ一任すべきです。

  3. (3)贖罪(しょくざい)寄付

    贖罪(しょくざい)寄付とは罪を償うためにお金を寄付することをいい、弁護士会や日弁連が設けている制度です。被害者がいなくて示談できない、被害者がいるものの示談を拒否されたといったケースなどで、反省を示すために利用されます。贖罪寄付をすると証明書を発行してもらえるので、証明書を検察官に提出して反省の意を示すこともひとつの手だてといえます。

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4、傷害罪で不起訴となった場合の確認方法

傷害罪による逮捕の後に身体の拘束を解かれる場合でも、「不起訴だから釈放する」と告げられるとは限りません。また、在宅捜査を受けている場合にも、依然として捜査が進められているのか、捜査が終わって不起訴になったのかを捜査機関の側からすすんで教えてもらえるわけではありません。

  1. (1)捜査が続くのはどんなとき?

    身体を解放されたが不起訴なのか分からない場合、もしかすると「処分保留」で捜査が続いているかもしれません。処分保留とは、起訴・不起訴の判断がまだついていないが、逃亡や証拠隠滅などのおそれがないため、いったん身体を解放する措置のことです。嫌疑不十分による不起訴とよく似ていますが、違うのは処分が決定していない点です。身体を自宅に戻されたまま捜査が進められるので、捜査の結果次第では起訴される可能性があるのです。

  2. (2)不起訴処分告知書の請求

    自身がどのような状況にあるのか、不起訴処分になったのかどうかは誰もが知りたいはずです。そのような場合には、「不起訴処分告知書」で状況を確認することができます。不起訴処分告知書は、刑事訴訟法第259条を根拠とした書面ですが、被疑者の「請求」が要件なので、待っていても勝手には届きません。

    弁護人がついているときは、弁護人に取得してもらいましょう。弁護人がついていない場合は、担当の検察官に自身で依頼し、郵送か、検察庁に直接出向くなどして取得する必要があります。取得にかかる費用は無料ですが、取得方法は検察官によって対応が分かれるので注意してください。

    告知書が発行されるのは不起訴が正式に決まった後です。したがって、請求のタイミングは早くとも身体を解放された後や、在宅捜査で書類送検された後になります。なお、書面には不起訴の理由を記載する義務はないため、理由が記載されていないケースもあります。

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5、まとめ

傷害罪で逮捕されても、示談が成立している場合や証拠不十分の場合などには不起訴となる可能性があります。またケガの内容によっては暴行罪が適用され、罪の重さが軽くなる可能性も残されています。
いずれにしても刑事事件ではスピーディな対応が処分の行方を左右するので、速やかに弁護士に相談することが重要です。ベリーベスト法律事務所には傷害事件を始め、刑事弁護の実績豊富な弁護士が在籍しています。不当に重い処分を回避するためにぜひご相談ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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