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火気乱用の罪で逮捕? 違反となる具体的な基準や前科の有無について紹介
仲間内で火を使った遊びをすると、罪の問われることはあるのでしょうか? 軽犯罪法では、「火気乱用の罪」が規定されています。軽犯罪法とありますが、ここで禁止されているのは決して軽微な行為ではありません。重大犯罪につながりかねない危険性をはらんでいる行為です。もちろんれっきとした犯罪であり、刑罰を受け、前科がつく可能性もあります。
今回は軽犯罪法における火気乱用の罪に着目し、罰則の内容や逮捕の条件、逮捕後の流れなどを解説します。火気乱用の罪で検挙されたケースや、罪を犯してしまった後の対応についてもあわせて確認しましょう。
1、火気乱用の行為
火気乱用の罪は、軽犯罪法第1条第9号に「相当の注意をしないで、建物、森林その他燃えるような物の附近で火をたき、又はガソリンその他引火しやすい物の附近で火器を用いた者」については「拘留又は科料」に処すると規定されています。
以下のような行為をすると軽犯罪法第1条第9号違反となります。
- 建物や森林、そのほか燃えるような物や場所の近くで火をたく行為
- ガソリンや火薬、アルコール類など引火しやすい物の近くで火気を用いる行為
たとえば住居の塀の近くや草木が生い茂っている場所でたき火をする、石油タンクの近くでたばこを吸うなどの行為が該当するでしょう。火は日常を便利にしてくれる一方で、少しの不注意が大きな被害をもたらしかねない危険なものです。そのため、火事になりうる行為や消火活動を妨げる行為については軽犯罪法に限らず複数の法律で規制されています。
また、刑法では放火および失火の罪が規定されています(刑法第108条〜118条)。廃棄物処理法第16条の2では適法な焼却施設以外でごみを焼く行為が禁止され、都道府県の火災予防条例などで指定場所における火気の使用が制限されています。
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2、軽犯罪法違反における罰則
軽犯罪法の火気乱用の罪に違反すると「拘留又は科料」に処せられます。拘留や科料はあまり聞きなじみがない罰だという方が多いでしょう。ここで詳しく解説します。
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(1)身柄を拘束される「拘留」
拘留は、刑事施設に拘置され身柄を拘束される「自由刑」という刑罰の一種です。自由刑にはそのほかに懲役や禁錮がありますが、拘留とはいくつかの違いがあります。
まずは期間です。拘留は1日以上30日未満の期間であるのに対し、懲役と禁錮は無期・有期があり、有期の場合は1か月以上20年以下です。
次に、労役の有無です。拘留や禁錮は単に刑事施設に拘置される罰であり労役の義務はありませんが、懲役は刑務所内で労役の義務を課されます。
また、自由刑のうち拘留がもっとも軽微な刑ではあるのですが、拘留は執行猶予がつきません。しかし、懲役や禁錮には執行猶予がつく余地があります。
なお、刑事事件で逮捕された者が起訴・不起訴の判断がなされる前、あるいは起訴され裁判で判決を受けるまで刑事施設で拘束されることを「勾留」といいます。拘留と同じく「こうりゅう」と読みますが、刑罰ではありません。 -
(2)金銭を徴収される「科料」
科料は金銭を徴収される財産刑と呼ばれる刑罰の一種です。類似の罰に罰金刑がありますが、両者は金額に違いがあります。科料は1000円以上1万円未満、罰金は原則として1万円以上をそれぞれ支払うよう定められています。したがって、財産刑のうちもっとも軽い刑罰が科料であるともいえるでしょう。
なお、「過料」も同じく「かりょう」と読みますが、過料は行政上の義務や民事上の義務の違反した場合に納付する金銭です。金額は規定によってさまざまですが、刑罰ではないため前科がつきません。 -
(3)罰が重くなるケース
軽犯罪法違反と同時にほかの罪も成立しているケースでは罪が重くなる可能性があります。
火気乱用の罪が問題になるケースとして、人が看守する建物へ侵入し、火を用いた例が考えられます。この場合、刑法第130条の建造物侵入罪にあたり、罰則は「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」と、軽犯罪法違反よりも重くなります。ひとつの法違反(火気乱用の罪)を犯すにあたり別の罪(建造物侵入罪)も利用した場合には、重い刑のほうが適用されます。
また火遊びのつもりが建物を延焼させてしまったようなケースでは放火や失火の罪に問われる可能性があり、罰が重くなります。
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3、逮捕された場合とその後の流れ
軽犯罪法に抵触する行為をして逮捕されるケースについて、逮捕後の流れとあわせて確認しましょう。
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(1)通常逮捕
通常逮捕とは逮捕状にもとづき、犯行後日逮捕される措置を指します。罪を犯したと疑うだけの相当な理由(逮捕の理由)があり、逃走や証拠隠滅のおそれ(逮捕の必要性)がある場合に通常逮捕されます。
ただし、30万円以下の罰金、拘留または科料にあたる罪については、被疑者に定まった住所がないか、正当な理由なく出頭の求めに応じない場合にしか通常逮捕されません(刑事訴訟法第199条第1項但書)。
したがって、軽犯罪法の罰則は拘留または科料なので、一般的に、通常逮捕されることはありません。ただし、前述のとおり、被疑者となった方が住所不定だったり正当な理由なく出頭を拒んでいたりするケースや、同時に建造物侵入罪にも問われているなどのケースでは、通常逮捕されてしまう可能性があるでしょう。 -
(2)現行犯逮捕
現行犯逮捕とは、犯行中や犯行直後の者を逮捕状なしで逮捕することです。刑事訴訟法第213条では「何人も、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と述べており、私人による逮捕も可能です。
30万円以下の罰金、拘留、科料にあたる罪については、被疑者の住所や氏名が明らかでない場合か、逃走するおそれがある場合に限り現行犯逮捕されます(同法第217条)。したがって前述のとおり、逃亡などをせず素直に取り調べに応じれば、軽犯罪法における火器乱用の行為をした容疑を理由に、逮捕によって身柄の拘束を受けることはないでしょう。 -
(3)軽犯罪法違反で逮捕された後の流れ
住所不定だったり出頭拒否をしたり、逃亡を図るなどをしたケースや、軽犯罪法違反だけでなく刑法に定められた罪を犯した容疑があれば、たとえ火器乱用をしただけのつもりであっても逮捕される可能性があります。
刑事事件を起こして逮捕されると、捜査機関による取り調べ(72時間以内)を受けた後、さらなる捜査の必要があれば勾留されます。勾留期間は最長で20日におよび、期間満了までに起訴・不起訴の処分がなさます。
ただし30万円以下の罰金、拘留、科料にあたる罪に関しては住所不定の場合に限り勾留が認められています(刑事訴訟法第207条第1項、第60条第3項)。したがって軽犯罪法違反の場合は勾留される可能性は低いでしょう。
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4、軽犯罪法違反における弁護士の対応
軽犯罪法違反の罰則は拘留や科料と、ほかの刑罰と比較すれば軽い罰です。しかし、裁判で有罪になれば、前科がつくことになります。また刑法やそのほかの法律に抵触した場合には懲役刑や罰金に処せられる可能性があり、その場合も当然前科がつきます。
日本の刑事裁判では起訴後の有罪率が極めて高いため、前科がつくのを防ぐには不起訴処分を得ることが重要です。不起訴処分を目指したいのであれば、起訴・不起訴の処分がくだる前に弁護士へ相談することを強くおすすめします。
依頼を受けた弁護士は、被疑者の代理人として示談交渉を行います。たとえば住居の塀の近くで火をたいたのなら、迷惑をかけた住人を被害者として示談し、許してもらえれば不起訴となる可能性が高まります。一般的に、罪を犯した当事者やそのご家族が示談交渉を試みても、被害者の嫌悪感情から接触を拒否される場合や、交渉に応じてもらえても法外な示談金を求められる場合があり、多くのケースで難航します。弁護士が間に入ることで被害者が安心して示談に応じやすく、適切な示談金での決着に期待できるでしょう。
そのほか、依頼を受けた弁護士は、長期にわたる身柄拘束を回避したり、不当に重い処罰が下されたりしないよう、弁護活動を行います。特に逮捕されている場合は、逮捕から勾留が決定するまでの最長3日間は、弁護士でなければ自由な接見ができません。たとえご家族でも面会することができないのです。場合によっては、早く帰りたい一心でやってもいない罪を「やった」とウソの発言をしてしまうことがあるでしょう。たとえその場逃れのウソであっても、調書にとられた内容を覆すことは非常に難しくなります。警察から呼び出しを受けた段階から弁護士に依頼していれば、そのような事態を回避できるよう力を尽くすことが可能です。
早期に事件を解決したいとお考えであれば、警察から連絡が来た時点で弁護士に相談すべきでしょう。
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5、まとめ
軽犯罪法違反の事件では、逮捕の要件や逮捕後の流れなどについて一般的な刑事事件と違いがあります。しかし逮捕される場合や有罪となり前科がつく場合があり、火気乱用の罪も例外ではありません。火に関連する犯罪が複数あり、建造物侵入などほかの罪を同時に犯す可能性があることから、拘留や科料より重い罰を受けても不思議ではないといえます。
軽犯罪法違反にあたる行為をしてしまった場合、逮捕や起訴を防ぐためにも弁護士へ相談されるのがよいでしょう。ベリーベスト法律事務所でご相談をお受けしますので、まずはご連絡ください。軽犯罪法違反を含め、弁護士がサポートします。
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