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脅迫の罪で逮捕! どのような罪に問われる? 家族にできることは?
脅迫罪は、恐喝罪や暴行罪に比べて成立要件のハードルが低い犯罪といえます。
「お前を痛い目に遭わせてやる」「お前の家族がどうなっても知らないぞ」……本心ではなかったとしても、このような言葉を発したりLINEやSNSの文面に書いたりした時点で、脅迫罪が成立して逮捕されてしまう可能性があるのです。
本コラムでは、脅迫罪の定義や脅迫罪にあたる具体的な行為、強要罪や恐喝罪と脅迫罪との違いについて、べリーベスト法律事務所に所属する弁護士が解説いたします。また、脅迫罪でご家族が逮捕された方が行うべき対応についても解説いたします。
1、脅迫罪の定義とは?
脅迫罪とは、「人を脅して恐怖感を与えようとする犯罪」のことを指します。
脅迫罪が成立するためには要件があり、人を脅したからといって、必ず脅迫罪になるわけではありません。
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(1)脅迫罪が成立する要件
脅迫罪の対象となる行為は、“他人の生命・身体・自由・名誉・財産のいずれかに対して、害を加える旨を告知する”ことを指します。逆にいうと、上記以外の項目について害を加える旨の告知をしても、脅迫罪は成立しないのです。
また、脅迫の対象は、脅迫する相手本人かその親族に限られます。たとえば学校の教師をしている人に対して「お前の生徒を誘拐するぞ」と脅しても、生徒が教師の親族ではない限り、脅迫罪にはあたらないのです(ただし、脅迫罪ではない他の犯罪が成立する可能性はあります)。
また、脅迫罪は、害悪の告知(害を加える旨を告知すること)を行った時点で、仮に相手が恐怖を感じなくても成立します。相手に対して物理的な害を与えようとする犯罪である傷害罪や殺人罪と違いって、脅迫罪が「未遂」となることはないのです。
「害悪の告知」とは具体的にはどのような行為を指すかについては、後述いたします。 -
(2)脅迫罪の法定刑
脅迫罪に対する刑罰は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」と定められています。
裁判官から実際に言い渡される刑である「量刑」は、この範囲内で決定されます。量刑は、事件の内容や被害の状況、初犯であるかないかなどの様々な事情を考慮したうえで判断されます。
罰金刑となった場合には、罰金を支払うことで、ひとまず刑が終了します。しかし、懲役刑となった場合には、刑務所などの刑事施設に収監されて、労役に服すことになるのです。また、罰金刑にせよ懲役刑にせよ、前科が付くことは共通しています。 -
(3)脅迫罪の時効
犯罪行為から一定の期間が経過すると検察官が起訴できなくなる制度を、「公訴時効」といえいます。刑事事件について一般の人がイメージする「時効」とは、この公訴時効のことを指すのです。
脅迫罪の公訴時効は、「3年」と定められています。
つまり、脅迫行為を行ってから3年が経過したら、加害者は刑事責任を問われなくなるのです。
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2、どのような行為が「害悪の告知」になるのか
先述した「害悪の告知」について、具体的な定義や事例を解説いたします。
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(1)害悪の告知の定義
生命・身体・自由・名誉・財産への害悪、の具体例は、以下の通りになります。
- 生命:人の生命を奪おうとすることを示唆する行為 (例)「殺してやる」「お前の家族の命はないと思え」
- 身体:人の身体を傷付けることを示唆する行為 (例)「痛い目にあわせてやる」「腕が1本なくなるかもな」
- 自由:人の身体の自由を奪うことを示唆する行為 (例)「ここから帰れると思うなよ」「お前の娘を誘拐するつもりだ」
- 名誉:人の名誉を毀損する内容を示唆する行為 (例)「不倫していたことを奥さんにバラすわよ」「お前の秘密をネットで拡散してやる」
- 財産:人の財産を侵害することを示唆する行為 (例)「お前の家に火をつけてやる」「お前のペットを殺す」
また、害悪の告知は、言葉によるものとは限りません。
たとえば、手を振り上げて殴ろうとする素振りを見せることは、身体に対する害悪の告知にあたりえます。ドアの前に立ちはだかって相手が外に出られないようにすることも、自由に対する害悪の告知にあたる可能性があるのです。 -
(2)対面以外でも脅迫罪は成立する
“どのような方法で害悪の告知を行ったら、脅迫罪になるか”ということについては、法律上で特に定められておりません。対面の会話による告知や電話での告知はもちろんのこと、手紙やLINEなどを用いた文章による告知や、画像や映像を用いた告知でも、脅迫罪が成立する可能性があるのです。
具体例としては、以下のようなかたちで害悪の告知を行った場合でも、脅迫罪が成立する可能性があります。
- LINEで「お前をボコボコにしてやる」と送信した
- 相手の家族の写真に大きく「バツ」を書き、相手の自宅の郵便受けに入れた
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3、強要罪や恐喝罪、暴行罪と脅迫罪との違いとは?
脅迫罪に類似した犯罪として、強要罪や恐喝罪、暴行罪などが存在します。それぞれの犯罪には共通する部分もあるため、混同している方も多いでしょう。
脅迫罪とそのほかの犯罪との違いについて、解説いたします。
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(1)強要罪
強要罪とは、以下のいずれかの方法によって、相手にその人の義務ではないことをさせる、または相手の権利の行使を妨害する犯罪のことを指します(刑法第223条)。
- 本人または親族の生命、身体、自由、名誉、財産のいずれかに害悪の告知をして脅迫する
- 暴行を用いる
脅迫罪と強要罪との大きな違いは、強要罪では「義務のないことをさせた」「権利を行使させなかった」という結果が生じていることが成立要件とされていることです。
先述したように、脅迫罪では「相手が恐怖を感じた」「恐怖に屈した相手が脅迫者の要望にしたがった」などの結果は、成立要件とされていません。「害悪の告知を行った」時点で、その結果を問わず、脅迫罪は成立するのです。
一方で、強要罪の場合は、相手が脅迫や暴行に屈して意に沿わぬ行為をしたという結果が要件になります。
たとえば、「退職しなければお前の秘密をバラしてやるぞ」と相手に伝えて、相手が実際に退職してしまったら、強要罪が成立しえます。しかし、強要目的で相手の職場に脅迫状を送り、それが職場に届いたものの、相手が読むに至らなかった場合は強要未遂罪が成立する可能性があります。つまり、強要罪では「未遂」がありえますが、脅迫罪では、未遂はありません。 -
(2)恐喝罪
恐喝罪とは、暴行や脅迫を用いて金品を差し出させる、または財産上の不法の利益を得るないし他人に得させる犯罪のことを指します(刑法第249条)。
恐喝罪における「財産上の不法の利益を得る行為」の具体例としては、タクシーの運転手を脅して料金を支払わないこと(無賃乗車)や、飲食店の店員を脅して食事の代金を支払わないこと(無銭飲食)などがあります。
脅迫罪と恐喝罪との違いとしては、後者では相手の財産を侵害することを目的とすることが要件となる一方で、前者では対象は財産の侵害に限られません。
また、脅迫罪とは異なり、脅迫罪では害悪の対象が「本人とその親族」に定められていません。
そして、強要罪と同じく、恐喝罪でも「未遂」がありえます。 -
(3)暴行罪
暴行罪は、相手に対して暴行を加えたが、相手を傷害するには至らなかった場合に成立する犯罪です(刑法第208条)。
暴行の結果、もし相手がケガなどの傷害を負った場合には、傷害罪が成立します(刑法204条)。
暴行の法律上の定義は、「身体に対する不法な有形力の行使」です。具体的には、殴る、蹴る、髪を切る、凶器を振り回す、水をかけるなどの幅広い行為が、「有形力の行使」にあたります。
脅迫罪と暴行罪の違いは、実際に有形力を行使したかどうかです。たとえば、腕を振り上げて殴る素振りをしただけであれば、脅迫罪が成立する可能性はあっても暴行罪は成立しないでしょう。一方で、実際に殴ったなら、暴行罪が成立する可能性が生じます。
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4、脅迫罪で家族が逮捕されたら、弁護士に相談
もしも家族が脅迫罪に逮捕されてしまった場合に、行うべき対応について解説いたします。
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(1)弁護士に相談、依頼をする
ご家族が逮捕されてしまった場合、まずは弁護士にすみやかに相談を行うことが重要になります。
弁護士であれば、以下のような対応をすることができます。
- 逮捕された本人と面会して、取調べ対応のアドバイスをする
- 検察官にご家族の身元引受書を提出するなどの方法で、勾留請求の阻止と早期の身柄釈放を目指す
- 検察官や裁判官に対して、本人が深く反省していることを示したり、ご家族が監督する旨の誓約書を提出したりして、不起訴処分や判決の執行猶予、量刑の軽減を目指す
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(2)弁護士を介して示談成立を目指す
加害者と被害者とで示談交渉を行い、示談金を支払って示談成立になると、検察官や裁判官から“当事者間での民事的な解決が図られた”と判断されることになります。この事実は刑事事件の手続きでも考慮される要因となり、不起訴処分や判決の執行猶予、量刑の軽減が実現できる可能性があるのです。
そのため、刑事手続きが進行する前から、示談交渉をすみやかに開始することが得策だといえるでしょう。
ただし、脅迫のような事件では、当事者はどちらも冷静さを欠いているものです。特に、脅迫された被害者は、加害者に対して恐怖や怒りの感情を抱いていることが一般的です。
示談交渉は、弁護士に代行させることが可能です。加害者本人が示談を申し入れて被害者が応じない場合であっても、弁護士が示談を申し入れることで被害者が応じてくれる可能性があります。
また、法律の専門家である弁護士なら、示談金の項目や内訳を決める際にも、公平で中立的な観点から検討を行うことができるのです。 -
(3)本人と面会する
逮捕からの72時間は、ご家族であっても本人と面会することはできません。この間、面会できるのは弁護士のみになります。
通常、面会が可能になるのは、逮捕の後の「勾留」という段階に入ってからです。
家族の顔を見ながら会話をすることは、逮捕された本人にとって、重要な精神的支えになります。ぜひ面会に行って、励ましの言葉を伝えましょう。 -
(4)社会復帰に向けたサポート
逮捕や勾留をされている間は、会社や学校に通うこともできません。仮に「脅迫罪で逮捕された」という事実が露見しなかった場合でも、無断欠勤や無断欠席と見なされて、解雇や退学などの処分がくだされてしまう可能性があるのです。
そのため、ご家族が逮捕されたら、職場や学校にすみやかに連絡を行うことが、後の社会復帰を左右するのです。
また、再犯の防止に向けて本人を監督したり支えたりすることも、ご家族の役割です。たとえば、本人がネットで脅迫の書き込みをしたのであればご家族がパソコンやスマートフォンを管理する、酒に酔って脅迫したのであれば節酒や禁酒をさせるなど、個々の事情に応じたサポートが必要となります。場合によっては、カウンセラーを利用することも検討しましょう。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
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5、まとめ
脅迫罪は、「害悪の告知を行った」という事実のみで、成立する可能性があります。感情の高ぶりからつい発してしまった言葉やSNSの文面が原因である場合や、脅迫された相手が恐怖を感じなかった場合でも、脅迫罪が成立して逮捕されるおそれがあるのです。
べリーベスト法律事務所には、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が多数在籍しています。ご家族が脅迫行為をして逮捕されてしまった場合には、ぜひ、ご相談ください。
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ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
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