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少年院の種類と送致までの流れとは? 少年鑑別所や少年刑務所との違い
未成年の子どもが事件を起こして逮捕されてしまったとき、ご家族は「子どもが少年院に送られてしまうのだろうか?」と、漠然とした不安を抱えることがあるかもしれません。
しかし、少年院という言葉は聞いたことがあっても、実際にどのような施設なのかまでは詳しく知らない方が多いでしょう。
本コラムでは少年院の概要や種類を説明したうえで、逮捕から少年院に送致されるまでの流れや、混同されやすい少年鑑別所、少年刑務所との違いについて解説します。
1、少年院とは
最初に、少年院の定義や目的、少年院での生活などについて解説します。
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(1)定義
少年院とは、家庭裁判所による保護処分が決定した少年に対して、更生のために必要な処遇を実施する、法務省所管の施設です。
少年が罪を犯すと家庭裁判所の審判に付されますが、再び罪を犯したり非行が進んだりするおそれが強く、矯正教育を受けさせるべきだと判断された場合には少年院送致が決定します。 -
(2)目的
少年院の目的は、性格の矯正や環境の調整などの保護・教育により、少年が社会に復帰した後に社会に適応できるようにすることです。刑務所のように刑務作業を課せられることはなく、教育や職業訓練などを受けながら規律ある生活を送ります。
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(3)収容される期間
収容期間は、特に処遇についての勧告がない場合には1年程度ですが、家庭裁判所から処遇勧告が示された場合には以下の期間が目安となります。
- 一般短期処遇 原則として6か月以内です。短期間の教育・指導により更生が見込まれる場合に勧告されます。
- 特修短期処遇 原則として4か月以内です。一般短期処遇を勧告された少年よりも非行の傾向が進んでいない場合に勧告されます。
- 長期処遇 原則として2年以内です。比較的短期の場合は8か月程度、比較的長期であれば2年以内ですが、更生に時間がかかると見込まれる場合には相当長期が勧告され、2年を超える場合があります。
もっとも、院内の遵守事項に反する行為があった場合などには目安期間よりも長くなる可能性があります。
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(4)少年院での生活
少年院では以下の5つの分野にわたって指導が行われます。
- 生活指導 善良な社会人として自立した生活を送るための知識や生活態度を習得させるための指導です。全体講義や面接指導、作文指導やグループワークなどが実施されます。
- 教科教育 学力に応じた教科指導が実施されます。普通の学校のように集団での授業や学力テストを受ける、通信教育で学ぶといったものです。
- 職業補導 勤労意欲を高め、職業に役立つ知識・技能を習得させるための指導です。電気工事や自動車整備、介護福祉、情報通信などの分野で職業能力開発指導が実施されており、出院後のための就労支援なども行われます。
- 保健・体育 日常生活に必要な体力・技能を高め、健全な心身を養うために、スポーツ種目の実施などの体育指導が行われます。
- 特別活動 自主性や協調性などを養うために、社会貢献活動や野外活動、クラブ活動などの特別活動指導が実施されます。機関誌の作成や福祉施設でのボランティア活動、公園の美化活動などがあります。
また、事件の内容や少年が抱える問題・事情に応じ、被害者の視点を取り入れた指導や家族関係・交友関係指導なども行われます。
基礎学力の不足によって円滑な社会復帰に支障があると認められる少年に対しては、義務教育に準拠した教科指導や高校卒業程度認定試験受験の指導などが行われます。
復学や進学などのために高度な学力を身に付ける必要がある少年は、目的に見合った指導を受けることも可能です。
入所すると個室寮での生活からはじまり、院内生活を理解させるための指導や境遇、経歴などの身上調査が実施されます。調査が終わると集団寮へ移り、矯正教育や集団生活を通じて人との接し方や社会のルールなどを学びます。
出院が近くなると進路相談や院外活動といった出院に向けた活動が増え、最終的に出院するという流れです。
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2、少年院はいくつかの種類に分けられている
少年院は以前、初等少年院、中等少年院、特別少年院、医療少年院に分類されていましたが、平成27年6月に新少年院法が施行されたのにともない、以下の4種類に整理されました(少年院法第4条)。
どの施設に収容されるのかは、少年の年齢や犯罪傾向の程度、心身の状況などに応じて、家庭裁判所が決定します(第四種を除く)。
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(1)第一種少年院
保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない、おおむね12歳以上23歳未満の少年が収容される施設です。旧法の初等少年院と中等少年院に相当します。
男女が別の施設に収容され、女性が収容される施設は女子少年院と呼ばれる場合があります。 -
(2)第二種少年院
保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害のない、おおむね16歳以上23歳未満の、犯罪傾向が進んだ少年が収容される施設です。旧法の特別少年院に相当します。
第一種少年院と同じく、男女が別の施設に収容されます。 -
(3)第三種少年院
保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がある、おおむね12歳以上26歳未満の少年が収容される施設です。
旧法の医療少年院にあたる施設で医療措置や治療的処遇を特徴としますが、職業訓練の内容や種類などはほかの少年院と比べて平易な科目に限られています。また、ほかの少年院のように男女の区別がありません。 -
(4)第四種少年院
少年院において形の執行を受ける者を対象とした施設です。
少年は刑罰法令に触れる行為をしても原則として刑罰に処せられませんが、少年審判で検察官送致が決定し、刑事裁判が開かれる場合があります。そこで禁錮刑以上が確定すると、第四種少年院に収容されることになります。
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3、逮捕から少年院送致までの流れ
逮捕された少年は次の流れで手続きを受けます。
- 逮捕・勾留
- 家庭裁判所送致
- 観護措置
- 少年審判・処分決定
それぞれの手続きについて、以下で詳しく見ていきましょう。
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(1)逮捕・勾留
逮捕されると、警察から48時間を上限に取り調べを受け、検察官へ送致されます。検察官からは24時間を上限に取り調べを受けますが、検察官および裁判官によってさらなる捜査の必要があると判断された場合には、引き続き身柄を拘束されます。これを勾留といい、原則10日間、最長で20日間の身柄拘束が続きます。
ここまでは成人の事件と同じですが、少年事件では勾留ではなく、「勾留に代わる観護措置」がとられる場合があります。
勾留との違いは、身柄拘束を受ける施設が留置場ではなく少年鑑別所である点、拘束期間が最長でも10日間である点です。この場合、検察官は身柄拘束の延長を請求することができません。
なお、少年が罰金刑以下の刑にあたる犯罪の容疑で逮捕された場合は検察官へ送致されず、警察から直接、家庭裁判所へ送致されます。 -
(2)家庭裁判所送致
勾留または勾留に代わる観護措置の期間が終わると、身柄と事件の資料が家庭裁判所へ送致されます。なお、少年事件ではすべての事件が家庭裁判所へ送致される、全件送致主義がとられています。
14歳未満の少年は逮捕されず、児童相談所に通告・送致されて児童福祉法上の措置がとられますが、例外的に児童相談所から家庭裁判所へ送致される場合もあります。その後は一般的な少年事件とほぼ同じ流れで手続きが進められます。 -
(3)観護措置
家庭裁判所は、少年審判に先立ち、観護措置をとるかどうかを決定します。観護措置とは、審判の円滑な進行や少年の調査に必要な場合に、少年の身体を保護してその安全を図る措置をいいます。
在宅のまま調査官の観護に付される在宅観護と、少年鑑別所に送致される収容観護の2種類がありますが、現状として在宅観護はほとんど活用されていません。
観護措置が決定すると少年鑑別所に収容され、家庭環境や生育歴、事件の経緯などに関する詳細な調査が実施されます。観護措置の期間は原則2週間、最長8週間ですが、更新が認められているため、通常は4週間程度の身柄拘束が続くでしょう。 -
(4)少年審判・処分決定
家庭裁判所が少年を審判に付すべきと判断した場合には、少年審判が開始されます。少年審判とは、少年が本当に非行を犯したのかどうかを確認し、少年の状況に応じた適切な処分を選択するための手続きのことです。成人でいう刑事裁判にあたります。
審判では最終的に少年の処分が決定し、この段階で少年院に送致されるかどうかが分かります。ただし処分の内容は少年院送致以外にもさまざまな種類があります。
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4、処分の種類
少年審判で下される処分には以下の種類があります。
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(1)保護処分
保護処分とは、少年を更生させるために下される少年法上の処分のことです。以下の3種類があります。
- 保護観察処分……保護観察官や保護司の指導・監督を受けさせ、社会内での更生を促す処分です。
- 少年院送致……少年院に送致し、矯正教育を受けさせる処分です。
- 児童自立支援施設等送致……比較的低年齢の児童について、開放的な施設での指導を受けさせる処分です。
どの保護処分が選択されるのかを左右する大きな要素は、再非行のおそれの有無です。単純に「軽微な事件の場合に保護観察処分」「重大事件の場合に少年院送致」となるわけではありません。
比較的軽微な事件でも、家庭環境や少年が抱える問題などから再非行のおそれが強い場合には少年院送致が決定する可能性があります。 -
(2)検察官送致
14歳以上の少年について、保護処分ではなく、刑罰を科すのが相当であると判断された場合には、検察官に送致されます(逆送)。
殺人や傷害致死などの重罪を犯した少年が対象ですが、そうでなくても、家庭裁判所の調査・審判の段階で少年が20歳に達した場合には逆送されます。
逆送事件では検察官が原則として起訴するため、成人と同じように刑事裁判が開かれ、刑罰が言い渡されます。 -
(3)不処分
非行の事実が認定できない場合や、非行の事実はあるが被害の程度が軽く、少年が深く反省しているため更生に十分期待できる場合などには、不処分が下されます。
少年が観護措置の決定を受けて少年鑑別所に収容されていた場合には、ただちに身柄を釈放されます。 -
(4)都道府県知事または児童相談所長送致
18歳未満の少年について、児童福祉機関の措置にゆだねるのが相当であると判断された場合に決定する処分です。児童福祉司などによる指導や児童自立支援施設への入所措置などがとられます。
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(5)審判不開始
家庭裁判所の調査の結果、非行の事実が確認できない場合や、非行の事実はあるが十分に反省している場合などには、審判不開始となります。審判が開かれることはなく、事件はここで終了します。
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5、少年院と混同されがちな「少年鑑別所」と「少年刑務所」
少年院と混同されやすい施設に「少年鑑別所」や「少年刑務所」があります。それぞれ少年院とは異なる目的を持った施設であり、収容されるケースにも違いがあるので、ここで詳しく解説しましょう。
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(1)少年鑑別所とは
少年鑑別所とは、家庭裁判所の求めに応じて鑑別をおこなうこと、観護措置がとられている少年に対して観護処遇をおこなうことなどを目的とした収容施設です。
少年院が処分決定「後」に矯正教育を目的として送致される施設であるのに対し、少年鑑別所は処分決定「前」の段階で、その判断のために、少年が一定期間を過ごす場所になります。
少年鑑別所に収容されるのは、大きく分けると次のいずれかのケースです。
- 逮捕された少年に対して「勾留に代わる観護措置」がとられた場合(家庭裁判所への送致前)
- 少年審判に先立ち、少年の身柄を確保して調査するための「観護措置」が決定した場合(家庭裁判所への送致後)
少年鑑別所の収容期間は、勾留に代わる観護措置の場合は10日間です。
観護措置の場合は原則として2週間ですが、1回に限り更新できるため、最長で4週間の収容となります。ほとんどのケースで更新されるため、基本的に4週間程度は収容されると考えておくべきでしょう。
ただし特別更新といって、さらに2回の更新が認められるため、例外的に8週間の収容となる場合があります。これは死刑、懲役・禁錮にあたる罪の事件で、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがある場合の措置です。 -
(2)少年刑務所とは
少年刑務所とは、16歳以上20歳未満の受刑者を収容する刑務所のことです。受刑後20歳に達した場合には26歳まで継続できるため、少年だけでなく26歳までの青年も収容されています。
家庭裁判所による審判の結果、刑罰を科すのが適切であると判断された少年は、検察官に逆送され、刑事裁判を受けます。ここで実刑判決を受けた場合には少年刑務所へ収容されるわけです。
更生のための教育を目的とした少年院と違い、少年刑務所は刑の執行を目的としています。少年であることに配慮はされるものの、通常の刑務所と同様に刑罰として刑務作業に従事することになります。
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6、家族が逮捕されてしまった場合にできること
未成年の子どもが逮捕されてしまった場合、ご家族は次のような行動を通じて少年をサポートできます。
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(1)面会・差し入れ
逮捕された少年は大きな不安を抱えているはずなので、ご家族の面会は精神的な支えとなります。可能な限り顔を見せて今後のサポートを約束する旨を伝え、安心させてあげましょう。
差し入れも可能です。衣類や勉強するための教科書、メガネなどのほか、留置場や少年鑑別所内でお菓子や日用品を購入するための現金も差し入れできます。 -
(2)学校や勤務先への対応
少年が逮捕されると、高校生までの場合は学校警察連携制度によって、基本的に学校へ情報提供がなされます。
それ以外の場合も逮捕・勾留されると何日もの身柄拘束が続くため、学校や勤務先に事情を知らせる必要がでてくるでしょう。学校や勤務先の判断によっては、退学や解雇などの不利益を受けるおそれがあるため、ご家族が学校や会社に対して不利益を避けるよう交渉、説得する必要があります。 -
(3)示談交渉
被害者がいる場合は、被害者との示談交渉を進めるのも重要です。
示談交渉を通じて被害者へ謝罪・賠償することは少年の内省を深め、結果的には、少年院送致を回避する可能性を高めます。
また示談が成立していれば、逃走や証拠隠滅を図るおそれがないとして勾留が回避されるなど、早期釈放の可能性もでてくるでしょう。 -
(4)弁護士への相談
少年事件では成人の事件以上に弁護士のサポートが必要です。少年が逮捕された場合、ご家族が面会できるのは逮捕から2~3日が経過した後ですが、弁護士だけは逮捕直後から少年と面会し、取り調べの対応や今後の流れなど重要なアドバイスを与えられます。
精神的な不安を抱える少年を励まし、ご家族との橋渡しにもなります。
学校や勤務先に対しても、学校や勤務先が少年の更生に重要な場所であるという観点から、退学や解雇などの不利益を回避するよう交渉します。ほかにも、示談交渉の代理や家庭環境の整備、少年審判におけるサポートなど、少年の更生や社会復帰に向けたさまざまな活動を実施できるのは弁護士だけです。
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7、まとめ
少年院は刑務所のように刑罰を目的とした施設ではなく、少年の更生や社会復帰を支援するための施設です。少年の年齢や犯罪傾向の程度に応じて、第一種から第四種までのいずれかの少年院に収容されます。
ただし、少年審判の処分には少年院送致以外にもさまざまな処分があるため、「逮捕=少年院送致」ではありません。逮捕後の対応によっては少年院送致を回避できる可能性が生じるため、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談するのがよいでしょう。
少年事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所が全力でサポートしますので、ご家族だけで悩まず、まずはご相談ください。
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