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刑事弁護の用語集

勾留とは

読み方 こうりゅう

勾留(こうりゅう)とは、刑事事件の被疑者または被告人を、刑事施設において身柄拘束する強制処分をいいます。
勾留と読み方が同じものとして「拘留」がありますが、両者は全く別の処分になります。

「拘留」は刑事罰の一つで、1日以上30日未満の期間、受刑者を刑事施設に拘置する処分です。
拘留は刑事罰であるという性質上、刑事裁判で拘留刑の判決が確定してはじめて行われます。
拘留刑の実際の科刑状況としては、2010年以降は年間一桁台にとどまっています。

これに対して「勾留」は、刑事処分の内容が決まっていない人について、罪証の隠滅や逃亡を防止することを目的として行われる身柄拘束です。
そのため、勾留されている被疑者または被告人のことを「未決拘禁者」とも呼びます。

勾留には、いわゆる「起訴前勾留」と「起訴後勾留」の2種類があります。
検察官による公訴提起より前に行われる勾留を「起訴前勾留」、公訴提起以後に行われる勾留を「起訴後勾留」と呼んでいます。

捜査機関が、刑事事件の被疑者について身柄拘束が必要であると判断した場合、最初に行われるのが「逮捕」です。
逮捕は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることを条件として、現行犯逮捕を除き、裁判官が発行する逮捕令状の発行が必要となる身柄拘束をいいます。
捜査機関は、逮捕した被疑者に対して取り調べを行いつつ、被疑者の身柄を拘束している間に、犯罪についての捜査を進めます。

しかし、逮捕の効力は最大72時間以内という厳しい時間制限が設けられています(刑事訴訟法第205条第2項など)。
多くの場合、捜査機関が3日間のうちに犯罪の捜査を完了し、起訴・不起訴の判断を行える状態に至ることはきわめて困難です。

そこで、被疑者による罪証の隠滅や逃亡を防ぎつつ、起訴・不起訴の判断を行うための捜査の時間を確保することが必要であると認められる場合には、より長期間の身柄拘束が認められます。
この逮捕後に認められている長期間の身柄拘束が「起訴前勾留」です。

検察官は、被疑者について逮捕よりも長期間の身柄拘束が必要と判断する場合には、裁判官に対して「勾留請求」を行います。
勾留請求は、検察官が警察を経由して被疑者の送致を受けた場合には、被疑者を受け取った時から24時間以内、警察を経由せずに直接被疑者を受け取った場合には、受け取った時から48時間以内に行わなければなりません(刑事訴訟法第205条第1項、第204条第1項)。

勾留請求を受けた裁判官は、以下の3つのいずれかに該当する場合には、勾留請求を認めて勾留状を発行します(同法第207条第1項、第60条第1項)。

  1. 被疑者が定まった住居を有しないとき
  2. 被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
  3. 被疑者が逃亡しまたは逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき

勾留請求が認められると、被疑者は逮捕の期間が経過しても、引き続き身柄を拘束されます。

検察官は、勾留の請求をした日から10日以内に被疑者を起訴しないときには、直ちに被疑者を釈放しなければならないとされています(同法第208条第1項)。

そのため、勾留の効力は、勾留請求の日から数えて10日間ということになりますが、たとえば、被疑者が罪を全面的に認めていて、かつ証拠関係もシンプルかつ明白である場合など起訴・不起訴の判断に10日間もの期間を要しない場合には、勾留の満期を待たずして、起訴され、又は釈放されることもあります。

なお、勾留に関する裁判について不服があるときは、決定をした裁判官が所属する裁判所に対して「準抗告」を行うことができます(刑事訴訟法第429条第1項第2号)。

準抗告とは、裁判官が行った一定の裁判についての不服申し立てをいいます。
勾留に関する決定に対して準抗告が申し立てられた場合、準抗告を受けた裁判所は決定内容を精査し、決定を正当なものとして認めるか、それとも決定を覆すかを判断します。

起訴前勾留の期間は原則として10日間ですが、捜査がどうしても期間内に完了できないなどのやむを得ない事由がある場合には、検察官は裁判官に対して勾留延長の請求を行います。
起訴前勾留の延長が認められるのは、最大で10日間です(同法第208条第2項)。
したがって、起訴前勾留の最長期間は20日間ということになります(ただし、内乱罪や外患誘致罪などの一部の特殊な犯罪については、さらに5日間の勾留延長が認められます(同法第208条の2)。)。

この起訴前勾留の期間中に、検察官は警察官と協力して犯罪の捜査を尽くし、被疑者について正式に公訴を提起(起訴)するか、略式起訴を行うか、それとも不起訴処分にするかの判断を行います。

このうち、略式起訴の場合と不起訴処分の場合には、処分の時点で起訴前勾留は失効し、被疑者は身柄を解放されます。
一方、被疑者が正式に起訴された場合には、起訴前勾留は「起訴後勾留」に切り替えられ、以降は被告人としての身柄拘束が続くことになります。

起訴前勾留と起訴後勾留は、いずれも未決拘禁者の身柄拘束を内容とする強制処分であるという点で共通していますが、両者にはいくつかの違いがあります。

一つ目は、勾留請求を行う先が異なります。

起訴前勾留の場合、検察官による勾留請求は「裁判官」に対して行います。
これに対して起訴後勾留の場合、検察官による勾留請求の可否を判断するのは「裁判所」となります。

二つ目は、未決拘禁者の立場が異なります。
起訴前勾留の場合は「被疑者」という立場であるのに対して、起訴後勾留の場合は「被告人」という立場になります。

実務上、被疑者段階で勾留されている者については取り調べの客体として捉えられているものの、被告人段階では、検察官と被告人は刑事裁判における対等な当事者であるという考え方が取られています(学説上は諸説あります)。
このような被疑者と被告人の立場の違いにより、両者には取調受忍義務(被疑者・被告人が捜査機関による取り調べを受ける義務)についての差が存在します。
すなわち判例実務上は、起訴前勾留されている被疑者については取調受忍義務があるものの、起訴後勾留されている被告人については、ごく例外的な場合を除いて取調受忍義務はないものと解されています。

三つめは、勾留の期間が異なります。

起訴前勾留の場合は前述のとおり原則10日、延長が認められた場合も原則トータルで20日以内であり、勾留延長は原則として1度しか認められません。
一方起訴後勾留の場合は、そもそも当初の勾留期間が公訴の提起の日から2か月と長く設定されています(刑事訴訟法第60条第2項第1文)。
また、起訴後勾留を継続する必要がある場合には、1か月ごとに更新することができ、原則として更新は何度でも可能です(同項第2文)。

四つ目は、保釈の可否が異なります。
保釈とは、一定の要件を満たす場合に保釈保証金を預け入れることと引き換えに、被告人を起訴後勾留による身柄拘束から解放することをいいます。

保釈が認められるのは、被告人が起訴後勾留をされている場合のみで、起訴前勾留では認められていません。
勾留の目的は、被疑者・被告人による罪証の隠滅や逃亡を防止することにあります。
起訴後の段階では、捜査機関による捜査は基本的に完了しているため、被告人による罪証隠滅のおそれは相当程度低くなっています。
そのため、問題となっている犯罪が重大な場合や、特に罪証隠滅のおそれが認められる場合などの例外を除いて、原則として保釈請求が認められることになっています(刑事訴訟法第89条第1項)。

保釈が行われる際には、被告人の逃亡を防止するために保釈保証金を預け入れさせ、万が一逃亡などが起こった場合には、保釈保証金は没収されます。

勾留が行われるのは、警察署内に設置された「留置所」か、または独立した施設もしくは刑務所などの併設施設として設置された「拘置所」のいずれかとなります。

勾留される未決拘禁者は、刑務所に服役する受刑者とは異なり、まだ刑事処分の内容が確定していません。
したがって、未決拘禁者には無罪の推定が働いています。
上記の理由から、勾留されている被疑者・被告人の処遇は、刑務所の受刑者に比べると緩やかなものになっています。

たとえば、勾留されている被疑者・被告人は、刑務所に収容されている懲役受刑者とは異なり、刑務作業などの労働に従事することは義務付けられていません。
また、起床・食事・就寝など時間を除くと、大半の時間を居室内で自由に過ごすことができます。
さらに、刑事施設内では菓子類・弁当・乳製品などを自費で購入できるほか、髪形や服装などに関する規制も比較的緩やかです。

起訴前勾留・起訴後勾留のいずれの場合も、被疑者・被告人は、立会人なくして弁護人と接見することができます(刑事訴訟法第39条第3項)。
被疑者・被告人は、不起訴に向けた弁護活動(被疑者の場合のみ)や、公判の準備などを、弁護人と相談しながら進める必要があります。
被疑者・被告人の防御活動を実効的に行うためには、刑事裁判で対立当事者となる検察官や捜査機関の者に聞かれることなく、弁護士である弁護人と秘密が確保された状態で打ち合わせを行うことが必要です。
そのため、被疑者・被告人の弁護人または弁護人になろうとする者には「接見交通権」が認められ、立会いなしでの面会等が認められているのです。

一方、起訴前勾留・起訴後勾留中の、弁護人または弁護人になろうとする者以外の人との接見などについても、原則として認められます(刑事訴訟法第80条第1項)。
しかし、被疑者・被告人に逃亡または罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由がある場合は、検察官の請求または職権により、弁護人または弁護人になろうとする者以外の人との接見や、書類その他の物の授受などを裁判官が禁止することができます(同法第81条)。
特に起訴・不起訴の判断に向けた捜査が継続中の起訴前勾留のケースや、共犯者が存在しているケースなどでは、接見禁止が行われる場合も多数見られます。
監修者
萩原 達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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