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大麻所持で逮捕された! 不起訴・執行猶予となる可能性は?
大麻は幻覚や妄想などを引き起こす違法薬物で、マリファナとも呼ばれています。日本では大麻取締法という法律で、所持や輸出入などが禁止されていますが、友人からの誘いや興味本位から手をだしてしまう方もいます。海外では合法化されている国もあることから、罪の意識が希薄な方も少なくありません。
厚生労働省の資料によれば、平成24年~平成28年の大麻事犯による検挙人員のうち20代・未成年者の比率はすべての年で40%以上と、若年層の割合が非常に高い点もみてとれます。
大麻事犯で逮捕された場合、不起訴あるいは執行猶予つき判決が下る可能性はあるのでしょうか。刑罰や弁護活動の内容とともに解説します。
1、大麻取締法違反の刑罰内容
大麻取締法は、主に下記の行為を禁じています。
- 栽培、輸入・輸出 7年以下の懲役(大麻取締法第24条第1項)
- 営利目的の栽培、輸入・輸出 10年以下の懲役または情状により10年以下の懲役および300万円以下の罰金を併科(同条第2項)
- 所持、譲受・譲渡 5年以下の懲役(第24条の2第1項)
- 営利目的の所持、譲受・譲渡 7年以下の懲役または情状により7年以下の懲役および200万円以下の罰金を併科(同条第2項)
- 大麻取扱者以外の使用及び大麻取扱者の目的外使用 5年以下の懲役(第24条の3第1項第1号)
2、執行猶予・不起訴になる可能性
大麻取締法違反で逮捕・起訴されると、懲役または懲役・罰金の併科等、重い刑罰が待ち受けています。しかし、必ずしも実刑判決となるわけではなく、裁判で執行猶予付き判決が言い渡される可能性は残されています。執行猶予がつけば、ただちに刑務所に収監されるのではなく、社会生活を送りながら更生に取り組むことができます。
たとえば、初犯で、かつ営利目的でもない場合には、まだ依存性が高くなく更生にも期待できるため、執行猶予がつく可能性があるといえます。反対に、再犯の場合や営利目的だった場合は社会生活の中での更生が困難であり、悪質性も高いといえるため、執行猶予がつかずに実刑判決が言い渡される可能性が高いでしょう。
犯罪白書によれば、平成29年における大麻取締法違反の検察庁終局処理人員の総数は4541人です。そのうち起訴された人員が2191人、不起訴となった人員が2057人です。
つまり不起訴となる可能性もあります。たとえば、違反内容が単純所持で、所持した大麻が微量だったようなケースです。
3、大麻所持で逮捕された後の流れ
大麻取締法違反の事件では、職務質問の際に自分の持ち物から大麻らしきものが見つかり簡易検査によって発覚するケースや、取引相手の逮捕などをきっかけに捜査が開始され、所持や栽培の現場を押さえられるケースなどがあります。
いずれにしても逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして、逮捕される可能性は高いといえるでしょう。
大麻所持で逮捕されると警察官から取調べを受け、逮捕されてから、法律上は48時間以内に検察に送致され、送致後24時間以内に検察官から取調べを受け、検察官が裁判官へ勾留請求をおこないます。
法律上は合計72時間ありますが、実際はもう少し短い時間で処理されることもあります。
裁判官が勾留を認めると通常は10日間は勾留され、事案によっては勾留がさらに10日間延長されます。
大麻取締法違反では面会者を通じて証拠隠滅を図るおそれがあることから、接見禁止がつくケースも少なくはありません。そのため、最長23日もの間、家族等に会えないまま身柄の拘束が続く場合があります。
勾留期間が満了するまでに、検察官は起訴・不起訴を決定します。日本の刑事裁判において起訴後の有罪率は約99%以上ですので、起訴された場合はほとんどが有罪判決となります。
4、大麻所持で逮捕されたら弁護士に相談
大麻所持の疑いで逮捕されたら、なるべく早期に弁護士へ相談されることをおすすめします。
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(1)弁護士への相談がなぜ必要なのか
大麻は、トイレに流したり薬物仲間や取引相手と口裏をあわせたりして、証拠隠滅が比較的容易です。こうした証拠隠滅を防ぐために、逮捕・勾留される可能性が高いという特徴があります。
勾留によって身柄拘束期間が長引くと、仕事や学校など社会生活を送ることが困難となり、不自然な欠勤や欠席が続くという不利益が想定されます。そのため逮捕された場合は、なるべく早く弁護士に相談し、身柄の解放に向けたサポートを得ることが重要となります。 -
(2)罪を認める場合の弁護活動
罪を認める場合は、大麻への依存性や常習性がないこと、更生の可能性が高いことなどを軸に弁護活動をおこないます。
社会での更生が期待できる場合は、執行猶予が付く可能性が高まります。そのため、深く反省し、更生への意欲を示すことが大切です。弁護士は、具体的に次のような活動をおこないます。
- 本人に対して違法薬物だと強く認識させ、本人が作成した反省文を裁判所に提出する
- 取調べや裁判で、入手ルートについて詳細に供述するようアドバイスする
- 家族に協力してもらい、監督体制を整えたり生活の立て直しを図ったりする
- 薬物への依存を断ち切るために専門機関での治療や自助グループへの参加を促す
- 薬物治療の証拠として医師の診断書を提出する
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(3)罪を否定する場合の弁護活動
罪を否定する場合は、故意がないことや違法薬物との認識がないことなどを軸に弁護活動をおこないます。
重要なのは、捜査機関からの取調べにおける対応です。身に覚えがない容疑であっても、捜査機関は被疑事実が事実であるという前提で取調べをするため、精神的な負担から事実と異なる供述をしてしまうことも少なくありません。
後の裁判で「持っていた大麻は、本当は自分のものではない」などと供述をしても、その供述を裁判所に信じてもらうのは困難です。供述が二転三転する被告人の供述の信用性は低いと判断されることが多いです。
そこで弁護士が逮捕後すぐに面会し、取調べで何を話し、どのような態度をとるべきかなど、取調べに関するアドバイスを行います。否認をすると身柄を拘束される期間が長引くことが多く、精神的な負担が増えますが、弁護士が頻繁に面会をすることで、精神的な支えとなります。
起訴され裁判になった場合にも、弁護士は、大麻だと認識していなかった証拠を収集するなどして無罪を主張します。また、大麻を押収する際の捜査方法に関し、違法捜査を根拠として証拠能力が認められない点を主張する場合もあります。
たとえば、職務質問の際に警察官が無理やりに被疑者のポケットの中に手を入れて大麻が発見されたといったケースでは、違法な捜査方法による証拠収集となるためその捜査から得た証拠が裁判で証拠調べの対象としないようにすることができます。
5、まとめ
大麻をはじめとする薬物事犯は、依存症の克服が決して容易ではなく、再犯率も高い犯罪です。また、大麻は有害性が低いなどの間違った情報が広まり、若年層の安易な使用も問題視されています。
もし、軽い気持ちで大麻の所持や栽培などをして逮捕されてしまった場合には、同じ過ちを繰り返さないためにも、早期に弁護士に相談されることをおすすめします。弁護士の支援を受けて不起訴処分や執行猶予つき判決を得られれば、社会生活の中で更生を目指すことができます。
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