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非親告罪とは? 親告罪との違いや被害者との示談について
刑事事件を起こして逮捕されてしまったとき、厳しい刑罰を避けるためには被害者との示談を成立させることが重要です。ただし、被害者との示談が成立したことで確実に刑罰を回避できるのは「親告罪」に分類されている犯罪に限られます。親告罪に分類されない「非親告罪」については、たとえ示談が成立していても刑罰を回避できないおそれがあるのです。
では、非親告罪にあたる犯罪の事件を起こしてしまった場合は、被害者と示談交渉を進めても意味がないのでしょうか?このコラムでは「非親告罪」について詳しく解説しながら、非親告罪における示談交渉の効果について弁護士が解説します。
1、親告罪とは?親告罪と非親告罪の違い
まずは「親告罪」と「非親告罪」について確認していきましょう。
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(1)親告罪とは
親告罪とは、検察官が裁判所に対して起訴する場合に告訴権者の告訴を要件としている犯罪のことです。親告罪にあたる事件では、告訴権者による告訴がないと検察官は刑事裁判を提起できません。
親告罪が設けられている理由は主に3つです。- 事件が公になることで被害者のプライバシーが侵害されたり、被害を想起することで精神的苦痛を与えてしまったりするおそれがある
- 親族間における犯罪であれば、親族の間において話し合いで解決するほうが望ましい
- 軽微な犯罪であり、謝罪や弁済など当事者同士の話し合いによる解決が期待できる
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(2)絶対的親告罪と相対的親告罪
親告罪は、さらに「絶対的親告罪」と「相対的親告罪」の2つにわけられます。
絶対的親告罪とは、被害者と加害者の関係を問わず、起訴にあたり告訴権者の告訴を要件とする犯罪を指します。名誉毀損罪(刑法第230条)・侮辱罪(刑法第231条)・器物損壊罪(刑法第261条)・過失傷害罪(刑法第209条1項)などが絶対的親告罪に分類されます(刑法第232条、264条、209条2項)。
相対的親告罪とは、被害者と加害者に一定の親族関係がある場合に限り、告訴権者からの告訴がないと起訴できない犯罪です。窃盗罪(刑法第235条)・詐欺罪(刑法第246条)・横領罪(刑法第252条)などが該当します(刑法第244条2項、251条、255条)。 -
(3)非親告罪とは
非親告罪とは、親告罪としての規定を受けていない犯罪です。告訴権者の告訴がない場合でも、検察官の判断によって起訴が認められます。親告罪に分類されている犯罪は限られているので、現行法における多くの犯罪は非親告罪にあたると考えればよいでしょう。
なお、すでに公訴時効を迎えた事件では、たとえ非親告罪であっても検察官は起訴できません。
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2、痴漢などの性犯罪は非親告罪化が進んでいる
従来、性犯罪に分類される犯罪は被害者の保護を目的として親告罪とされてきました。ところが、近年の法改正によって、性犯罪の多くが非親告罪化されています。
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(1)性犯罪の非親告罪化が進んでいる
従来の考えでは、性犯罪の被害者が事情聴取などの機会につらい被害を想起してしまう、報道や公判出廷において被害者として社会にさらされてしまうといった事情が重視され、性犯罪の多くが親告罪として規定されていました。
ところが、この配慮は被害者において「告訴するべきなのか」という別の精神的な負担を強いるという結果を招いただけでなく、告訴という手続きの煩雑さも相まって、泣き寝入りをしてしまう被害者の増加につながっていたのです。
社会が性犯罪の厳罰化を望み改正が進められたなかで、性犯罪の多くは親告罪から非親告罪へと変更されています。つまり、性犯罪に分類される事件を起こしてしまった場合は、たとえ被害者が告訴に踏み切らなかった場合でも、検察官の判断のみで起訴されるおそれがあるのです。 -
(2)痴漢行為でも刑罰を受けるおそれがある
満員電車などでの痴漢行為は、都道府県が定める迷惑防止条例違反か、刑法第176条の強制わいせつ罪によって処罰を受けます。
強制わいせつ罪の法定刑は6か月以上10年以下の懲役であり、罰金刑の規定はありません。しかも、平成29年の刑法改正によって、強制わいせつ罪は従来の親告罪から非親告罪へと変更されました。
また迷惑防止条例違反はもともと非親告罪であるため、たとえ被害者との示談が成立していたとしても痴漢行為で起訴されるおそれがあります。
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3、非親告罪の事件で示談交渉は有効?
非親告罪に分類される事件では、被害者との示談が成立している場合でも検察官の判断のみで起訴が可能です。
このように説明すれば「非親告罪の事件では示談交渉に意味はない」とも受け止められますが、本当に示談交渉に意味はないのでしょうか?
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(1)示談が成立しても起訴されるおそれがある
非親告罪では、告訴権者の告訴が訴訟要件になっていません。検察官が「刑事裁判で罪を問うべきだ」と判断すれば、示談が成立して告訴が取り下げられている場合でも、起訴されるおそれは十分にあるでしょう。
とくに、被害の程度が重大である、犯行態様が悪質である、同種の前科前歴があるといったケースでは、起訴されるおそれが高まります。 -
(2)起訴・不起訴の判断や量刑判断において有利になる可能性はある
非親告罪の事件でも、検察官が起訴・不起訴の判断を下すときや裁判官がどの程度の刑罰が適当であるのかを判断するときには、示談成立の有無が判断材料になります。
窃盗や詐欺といった他人の財産権を侵す事件では、弁済することで許しを得たのか、暴行や傷害といった粗暴犯の事件では、治療にかかった費用を負担して許しを得たのかなどが評価されるでしょう。
わいせつ犯の事件では、主に被害者の精神的苦痛に見合った慰謝料が支払われたのかが注目されます。
いずれにしても、被害者との示談交渉において損害に対する十分な賠償がなされたのか、被害者がこれに応じて「処罰を求めない」との意思を表示したのかは、刑事責任の軽重に大きな影響を与えます。
つまり、非親告罪の事件でも被害者との示談交渉は大きな意味をもつと考えておくべきでしょう。
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4、非親告罪として罪に問われた場合の対応
非親告罪に分類される事件で罪に問われた場合、どのような対応を取るべきなのでしょうか?
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(1)被害者との示談交渉を進める
被害者が存在する事件であれば、まず最優先で進めるべきなのは被害者との示談交渉です。非親告罪の事件でも、被害者との示談が成立していれば検察官が不起訴処分を下す可能性があるので、早期釈放や刑罰が科せられる事態の回避が期待できるでしょう。
検察官に起訴されてしまった場合でも、示談が成立していれば量刑判断において有利にはたらき、刑罰が軽くなる可能性があります。 -
(2)弁護士に相談する
刑事事件を起こしてしまったとき、加害者のサポートに尽くしてくれるのが弁護士です。取り調べに際してのアドバイスや早期釈放・刑罰の軽減に向けた刑事弁護は、親告罪・非親告罪の区別を問わず必要不可欠でしょう。
また、弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉がスムーズに運ぶ可能性があります。
とくに、痴漢などのわいせつ事件では、被害者が強い怒りや嫌悪感を抱いているケースが多く、加害者本人やその家族が示談交渉をもちかけても相手にしてもらえないでしょう。
加害者側では被害者の連絡先さえ入手できないことも少なくないので、自力による示談交渉が成功する確率は高くありません。
公平中立な第三者である弁護士が代理人になることで、捜査機関の了承を得て被害者の情報が入手できる可能性があるだけでなく、被害者の警戒心をやわらげて穏便な解決に向けた交渉が進められるでしょう。
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5、まとめ
非親告罪に分類されている犯罪では、告訴権者からの告訴がない場合でも検察官の判断で起訴できます。従来は親告罪に分類されていた性犯罪も法改正によって非親告罪化が進んでいるので、事件を起こしてしまえば刑罰に処されてしまう可能性は高まっているといえるでしょう。とはいえ、非親告罪の事件でも、被害者との示談が成立していれば逮捕・起訴・刑罰といった事態の回避が期待できることは間違いありません。
刑事事件を起こしてしまい逮捕や刑罰に不安を感じている方は、親告罪・非親告罪の区別なく刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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