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YouTubeの動画をダウンロードしたら違法? 罪になる行為とは
誰でも気軽に動画を視聴できるYouTubeは、多くの方が利用しているでしょう。中には、YouTubeの動画を個人で楽しもうとダウンロードした経験のある方も少なくないかもしれません。
では、近年相次いで著作権法が改正され厳罰化していることはご存じでしょうか。このニュースを報道などで知って「自分のやったことは違法なのか? 自分は逮捕されるのではないか?」と不安になっている方もいらっしゃるかもしれません。動画をダウンロードすることで逮捕される可能性はあるのでしょうか。また、もしご自身の行った動画ダウンロードが違法行為にあたる場合にはどのように対処すべきなのかも気になるところです。
本記事では令和2年の著作権法改正を踏まえて、動画ダウンロードの違法性や、さらには違法となる具体的な行為について解説をしていきます。
1、YouTubeの違法動画をダウンロードするのは罪
手軽にできるYouTubeのダウンロードですが、実はYouTubeの利用規約違反になるだけではなく、法律違反であり刑罰を科される可能性があります。どのような行為が罪に問われるのか、具体的に解説します。
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(1)YouTubeのダウンロード禁止規約
YouTubeの利用は規約により制限が定められています。
YouTube利用規約(2023年6月1日付け)
本サービスの利用には制限があり、以下の行為が禁止されています。
1.本サービスまたはコンテンツのいずれかの部分に対しても、アクセス、複製、ダウンロード、配信、送信、放送、展示、販売、ライセンス供与、改変、修正、またはその他の方法での使用を行うこと。
※事前の承認や許可がある場合を除く
このようにYouTubeはダウンロード自体を認めておらず、許可なくダウンロードした場合はYouTubeの規約違反となります。 -
(2)違法動画のダウンロードも違法
違法ダウンロードとは、違法にアップロードされた動画などを、その事実を知りながらダウンロードすることをいいます。YouTube上では著作権者によって公式にアップロードされた動画のみならず、それ以外の動画も多く存在します。この動画を、違法アップロード動画であると知りながら自分のパソコンやスマートフォンに録音・録画などして保存する行為は違法ダウンロードとみなされます。
以前は違法アップロード行為のみが刑罰の対象でしたが、平成24年の著作権法改正により違法ダウンロードも刑罰の対象となりました。
違法なダウンロードについては、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、もしくはその両方が科せされます(著作権法第119条3項)。また、違法なアップロードについては、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられます(同法同条1項)。
2、著作権法と罪になる具体的ケース
次に、著作権とはどのような権利か、違法するとどのような罪に問われるか、具体的なケースをまじえて解説します。
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(1)著作権法が厳罰化された背景
著作者は、自己の著作物について独占的な利用権を持ちます。たとえば通常のビジネスにおいて、他人が作成した動画コンテンツを保有したい場合、著作者へ利用の許諾をとり、さらに著作物への代価を支払う必要があります。著作者がこの収入によりさらに新しい作品を創作したり、後進の育成に役立てたりすることで、豊かな文化へと発展していくのです。このように著作権は財産的価値があるのみならず、文化の礎でもあります。
平成22年に民間機関が行った調査によれば、違法配信サイトからの年間ダウンロード数は、正規有料サイトの音楽配信数の約10倍にものぼります。つまり、アップロード行為のみを刑罰の対象にして規制したとしても、ダウンロードを求める人がいる限り、著作権の保護としては不十分ということが明らかになったのです。そこで、平成24年10月から違法ダウンロードについても刑罰の対象になりました(著作権法119条3項)。 -
(2)罪を問われる具体的ケース
著作権法違反に問われる具体的な行為は以下の通りです。
①違法アップロード
以下のように、映像や音楽を著作権者の許可なく用いてインターネット上に投稿する行為です。- 録画したテレビドラマやアニメを投稿
- 漫画を自分でスキャニングして投稿
- 購入したCDから選曲した音楽を動画のBGMとして使用
このような動画を違法にアップロードされたと知ってダウンロードすることも違法となります。
②ダウンロードしたものをSNSやYouTubeのアカウントを通じて伝達する行為
著作権の内容のひとつである公衆送信権を侵害するため、違法です。
③ダウンロードしたものを販売・貸与する行為
著作権の内容である譲渡権・貸与権を侵害するため、違法です。
④ダウンロードしたものを編集し改変を加える行為
著作者人格権の内容である同一性保持権を侵害するため、違法です。
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3、違法動画を視聴することは罪になるか
違法動画と知りながらYouTubeなどの動画サイトを視聴すると罪になるのでしょうか。これは視聴方法によって異なります。
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(1)ストリーミングとダウンロードの違い
映像や音声を再生する際には、大容量のファイルを必要とするため、いったんパソコンやスマートフォンなどのデバイスに転送します。この方法がダウンロードです。ダウンロード再生はデバイスのストレージにすべてのファイルを保存したうえで再生が行われます。このファイルは一時的なものではなく、ユーザーが削除しない限り保存された状態です。再視聴するときもインターネットに接続する必要はありません。
一方、ダウンロードと再生をほぼ同時に行えるのがストリーミング再生です。YouTubeの視聴はこのストリーミング再生で行われるのが一般です。一時的な保存形式のため、再生が終了すれば自動的に削除されます。 -
(2)ストリーミング再生による視聴は罪になる?
前述の通り、違法コンテンツのダウンロードは著作権法違反です。しかし、ストリーミング再生はダウンロードを要素とするものの、一時的な保存形式であるため著作権を侵害するとはいえません。そのため、政府広報オンラインでは、単なる視聴は罪にはならないとしています。しかし、これは文化庁の見解であり、裁判所の解釈によっては違法の可能性がないとは言い切れません。そのため、明らかに違法コンテンツとわかっている動画を視聴するのは控えたほうがよいでしょう。
4、違法ダウンロード行為をしたら逮捕されるか
実際に違法なダウンロード行為をした場合、それを理由に逮捕されるのでしょうか?
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(1)違法ダウンロードは親告罪
違法ダウンロードは被害者の告訴を起訴の要件とする「親告罪」です(著作権法123条1項)。
そもそも著作権は、著作人格権、出版権などの個人の権利を守ることを目的としています。したがって、権利が侵害された場合に刑事責任を追及するかどうかは被害者などの告訴権者の判断にゆだねられています。特に著作者が自己の創作物の周知や利用を望む場合には、たとえ違法ダウンロードであっても不問に付したいと考えることもあるでしょう。
したがって、被害者である著作者などの告訴権者が告訴しない限り、逮捕はされません。逮捕とは、裁判にむけた捜査や証拠集めを目的としているため、告訴がなければそもそも裁判にはならず、結果的に逮捕も不要となるのです。 -
(2)難しい違法ダウンロードの立証
被害者である著作者が刑事責任を追及したいと考え告訴した場合、すぐに逮捕につながるのかというと、実際には、証拠集めの壁があります。違法ダウンロードとして罪を立証するには「違法アップロードされたものと知っていた」という故意、つまり本人の主観に関する証拠を集める必要があります。実際にはダウンロードした画像や音楽などが、相当数保存されていることをあらゆる電子媒体から確認しなければなりません。違法ダウンロードを行っている人はそれこそ数え切れないのが現状です。ひとりずつ特定して、しかも故意に関する事実を漏れなく確認することは現実的に困難です。
とはいえ、違法ダウンロードで逮捕されることはない、と考えるのは早計です。平成24年の著作権法改正からはじまって、平成30年の一部非親告罪化、令和2年の違法ダウンロードの刑事罰化、さらには令和3年1月からは規制範囲が拡大されました。このような厳罰化の流れの中、警察も警戒を強めています。「今後も逮捕されることはない」とはいえない状況になってきているのです。
5、違法ダウンロードで逮捕されないために
一般には、ストリーミングとダウンロードの区別も気にせず、目の前にある動画を楽しむ人がほとんどでしょう。しかし、違法行為である以上、逮捕される可能性があるのは否定できません。違法ダウンロードで逮捕されないためにできることを見ていきましょう。
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(1)ダウンロードした動画を削除する
違法ダウンロードによって電子媒体にデータを保存したうえで動画を再生することは、著作者の持つ複製権を侵害します。このため、この保存したデータを削除しなければなりません。ダウンロードした動画は直ちに削除しましょう。
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(2)正規サイトやサービスを利用する
違法アップロードされたコンテンツに近寄らないことが重要です。利用前に、たとえば一般社団法人日本レコード協会が発行する「エルマーク」があるかどうかを確認するなどして、正規の配信サービスの利用を心掛けましょう。
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(3)違法ダウンロードしたデータを共有しない
ファイル共有ソフトにはダウンロードと同時にアップロードするタイプのものがあります。ダウンロードしたら、気づかずに違法アップロードの罪まで犯している可能性があります。違法ダウンロードしたデータは直ちに削除し、共有しないように注意しましょう。
6、まとめ
違法ダウンロードは有料のコンテンツを無料または不当に安い料金で利用するもので、犯罪行為です。また、YouTubeの利用規約でも禁止されています。違法ダウンロードは、昨今の著作権法の規制強化の流れからすると、逮捕される可能性もありうるといえます。逮捕されれば、社会生活においても大きな不利益を被る可能性があります。また逮捕されて有罪判決となれば、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、もしくはその両方が科せされることになり、前科もつきます。このような事態を回避するには、逮捕される可能性がある場合は、弁護士に相談のうえ適切な対応をとることが大切です。
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