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刑事事件で訴状が届くのはどんな場合? 訴状の意味と対応について解説
刑事事件を起こしてしまうと、自宅などに「訴状」が送られてくることがあります。訴状が届くのは、刑事事件の被害者が加害者であるあなたに対する民事訴訟を提起した場合です。簡単にいえば「民事で訴えられた」という状況だと考えればよいでしょう。
しかし、警察からの取り調べを受けているなどの段階であれば、「すでに警察にも訴えられているのに、さらに民事で訴えられるものなのか?」と疑問を感じるかもしれません。
このコラムでは、刑事事件を起こしたあとで「訴状」が届いた場合の対応について、刑事事件と民事訴訟の関係などを交えながら弁護士が解説します。
1、訴状とは
まずは「訴状」とはどのようなものなのかについて確認しておきましょう。
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(1)訴状の役割
訴状とは、裁判を提起したい人が作成して裁判所に提出する書類です。
誰に対して、どのような判決を求めるのか、なぜそのような判決を求めるのか、どのような証拠があるのかが、端的に記載されています。
裁判所に対して訴訟を起こす人を「原告」といいますが、訴状には原告が裁判手続きの開始を申し立てる申請書のような意味があります。
なお、訴状が届くのは、人と人、人と会社など、一般的には私人の間で起きているトラブルについて裁判が提起された場合です。刑事事件で裁判を提起できるのは、「検察官だけ」なので、訴状は金銭の請求や被害の回復を求めるといった民事事件が提起された場合に限られます。 -
(2)訴状の送達方法
原告が裁判所に訴状を提出する際には、正本に加え、訴えられる側の被告に送達するための副本も用意します。
裁判所は、訴状の原本・副本を受理したのち、被告に対して「特別送達」という方法で訴状の副本や答弁書などの書類を同封のうえで送達します。
特別送達とは、民事訴訟法の定めに従っておこなわれるもので、日本郵便の配達員が自宅や会社などに配達する書留郵便のひとつです。手渡しの上、受領者の押印または署名を求めるため「届いていない」「受け取っていない」といった言い訳は通用しません。
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2、刑事事件で訴状も届くケースとは?
訴状が届くのは、原告が民事訴訟を提起した場合です。つまり、刑事事件について訴状が届くことはありません。
ただし、犯罪の被害者が金銭の賠償や被害回復を求めてきた場合は、刑事事件についても別途の民事事件として訴えられ、訴状が届く可能性があります。
たとえば、交通事故を起こして、道路交通法違反で罰金刑が下されたとします。
判決に応じて罰金を納付しても、事故の被害者に対して、治療費や自動車の修理代、精神的苦痛に対する慰謝料の支払いが免除されたわけではありません。
自動車保険に加入しておらず、被害者への補償がされなかった場合に、別途、民事訴訟を提起されて訴状が届く可能性もあるのです。
交通事故のほかにも、名誉毀損、強制わいせつや強制性交等の性犯罪、窃盗・詐欺・横領などの財産犯罪などを起こした場合に、民事上の責任も問われて訴状が届くケースが多いでしょう。
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3、訴状を無視したり受け取り拒否したりするとどうなる?
刑事事件についてすでに刑罰を受けており、自分自身にも言い分のあるトラブルであれば、民事訴訟の提起に納得できないかもしれません。
しかし、不在票の無視や配達員へ受取りを拒否する対応をとるのは得策ではありません。
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(1)無視しても送達されたことになる
特別送達は、必ず手交のうえで押印・署名を求められる書留郵便のひとつなので、不在の際は不在票が投函(とうかん)されます。
不在が続いた場合は一定期間に限って郵便局にとどめ置かれ、裁判所に返送されます。確実にその場所に居住しているのに受け取らなかった場合は「書留郵便に付する送達」として扱われます。
「書留郵便に付する送達」として扱われると、新たに普通郵便で訴状が送られ、配達員が郵便受けに投函したことで送達済みとなります。つまり、どれだけ無視をしても「送達できないので裁判が進まない」ということはありません。
もし裁判期日も無視してしまうと、被告不在のまま裁判が開かれてしまい、欠席裁判として原告の主張が全面的に認められてしまう可能性があります。 -
(2)受取は拒否できない
特別送達は一般的な郵便物や宅配便のような受取拒否ができません。
正当な理由なく受取を拒否した場合は、民事訴訟法第106条3項の定めに従い、その場に書類を差し置くことが可能です。受取拒否をしてもその場に置かれるだけで「送達した」とみなされるため、意味がありません。
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4、訴状が届いた場合にすべきこと
実際に訴状が届いたら、どのように対応するべきなのでしょうか?
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(1)答弁書を作成・返送する
訴状には、必ず「答弁書」が同封されています。
答弁書は、訴状に記載されている内容について、被告側の言い分を説明する書類です。請求の内容を認めるのか、請求の原因に間違いや知らないことが含まれていないか、話し合いによって和解する意向はあるのかなどを記載し、指定された期日内に裁判所へ返送しましょう。
訴状に記載されている内容の意味や答弁書の記載方法がわからない場合は、弁護士会の「民事当番弁護士制度」の利用を検討しましょう。
すでに裁判所が受理した事件について、初回の法律相談を無料で受け付けてくれるので、答弁書の書き方などについてアドバイスが得られます。 -
(2)指定された期日に裁判所へ出頭する
答弁書を返送したら、指定された期日に裁判所へと出頭しましょう。
もし、答弁書に自分自身の主張や意向がしっかりと記載できているなら、初回の口頭弁論に限っては欠席しても不利にはなりません。答弁書によって「陳述された」とみなされるためで、これを「陳述擬制」といいます。
ただし、2回目以降の欠席は原則として認められません。
どうしても出席できない場合は弁護士に依頼するとよいでしょう。本人が欠席しても、弁護士が出席すれば欠席裁判によって原告の主張が全面的に認められる事態は回避できます。
特別送達の受理、答弁書の返送、裁判への出席は、いずれも放置すれば不利な結果を招くだけです。対処法がわからない場合は、無料相談の機会を活用して弁護士のアドバイスを受けるのが賢明でしょう。
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5、被害者との交渉は弁護士に任せたほうがよい理由
刑事事件について取り調べを受けている最中でも、被害者から民事訴訟を起こされてしまい訴状が届く可能性があります。その場合には、直ちに弁護士に相談して被害者との交渉を一任しましょう。
被害者の処罰感情は、刑事裁判において重視される材料のひとつです。もし被害者との交渉によって「加害者を許す」という意思を得られれば、刑事裁判における処分も軽減できる可能性があります。
弁護士が代理人となって交渉を進め、民事訴訟でも和解できれば、刑事・民事の両面での解決が期待できるでしょう。逮捕に至っていない段階であればその回避が、勾留段階であり起訴されていなければ不起訴処分の獲得が期待できます。
しかし、刑事事件の被害者は、加害者に対して強い怒りや嫌悪の感情をもっていることも少なくありません。特に、強制わいせつ・強制性交などの性犯罪では、加害者からの謝罪を断固受け入れないケースもめずらしくありません。
代理人として公正中立な弁護士が間に立つことで、被害者の抵抗が和らぎ、交渉が円滑に進む可能性も高くなり得ます。
また、訴状の読み解き方についてアドバイスが得られるほか、答弁書の作成も任せることができます。民事訴訟で訴えられたら、まずは弁護士への相談を検討しましょう。
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6、まとめ
刑事事件に関して民事でも訴訟を起こされ訴状が届いた場合は、無視せず適切に対応しましょう。
民事上の責任も果たしていない場合、裁判官の心証も悪くなり、刑罰が重く傾いてしまうおそれがあります。反対に、民事訴訟が円満に終了していれば、刑事裁判においても有利な材料としてはたらく可能性もあり得ます。
刑事事件の被害者が、さらに民事訴訟を訴えて訴状が届いたら、直ちにベリーベスト法律事務所へご相談ください。訴状の内容を読み解き、答弁書の作成から刑事事件の解決までをトータルでサポートします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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