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検挙とは? 摘発や逮捕との違いや検挙後の流れについて解説
報道番組や新聞などを見ると、「男をあおり運転の容疑で検挙した」「児童ポルノの出品者を検挙した」のように、「検挙」という言葉が使われている場合があります。一方で、類似の事件でも「逮捕された」「摘発された」という言葉が使われる場合があり、それぞれの意味の違いに疑問を感じた方もいるのではないでしょうか?
また検挙されると具体的にどうなるのか、その後の流れが分からない方も少なくないでしょう。
本コラムでは検挙と逮捕・摘発との違いに触れながら、検挙された後にどのような流れで手続きが進められるのかについて解説します。検挙された場合に受ける影響や適切な対応も知っておきましょう。
1、検挙とは? 摘発や逮捕との違い
検挙の意味や摘発・逮捕との違いについて解説します。
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(1)検挙とは?
検挙とは、一般に、捜査機関が認知した事件について、罪を犯した人物を被疑者として特定することといわれています。
もっとも、法律用語ではないため明確な定義はありません。逮捕や検察官への送致(警察が被疑者の身柄や記録を検察官に引き継ぐこと)等を含んだ意味で用いられることもあります。
たとえば「乗用車を運転中の男性が速度超過で検挙された」「警察が大麻所持の疑いで男女5人を検挙した」「刑法犯の検挙件数が増加した」といった使い方をされることが多いでしょう。 -
(2)検挙と逮捕の違い
逮捕とは、被疑者の逃亡や証拠隠滅を防止するために身柄を拘束する手続きをいいます。検挙とは異なり、刑事訴訟法に規定された言葉です。逮捕段階での拘束期間は最長で72時間と時間制限もあります。
「逮捕された」との情報からは、被疑者が確実に身柄を拘束されている状況が分かりますが、「検挙された」との情報では身柄拘束の有無は不明です。 -
(3)検挙と摘発の違い
摘発とは、一般に、犯罪事実を世間に公表することをいいます。摘発も法律用語ではないため明確な定義はありませんが、一般に検挙が被疑者として特定された人物を対象として使われるのに対し、摘発は犯罪事実や店など、人物以外を対象として使われています。
たとえば「都内の風俗店を摘発した」「児童ポルノの販売サイトを摘発した」「全国のDV摘発件数が過去最多となった」といった使い方をされています。
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2、検挙されるとどうなる? 検挙された後の流れ
検挙された後は、次のいずれかの展開が予想されます。
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(1)身柄を拘束される逮捕
被疑者が逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあると判断された場合は、逮捕されます。逮捕には通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の3種類があります。
通常逮捕とは、裁判官が発付した逮捕状にもとづく原則的な逮捕手続きです。裁判官は、罪を犯した疑いがあり(逮捕の理由)、逃亡または証拠隠滅のおそれがある場合(逮捕の必要性)に限り逮捕状を発付します。
警察官が早朝に自宅にやって来て連行されるケースや、任意の取り調べの際に警察官が既に逮捕状を持っており、そのまま逮捕されるケースなどがあります。
現行犯逮捕とは、逮捕状によらず、犯行の最中や直後になされる逮捕です。被疑者を取り違えるおそれが低いことから私人による逮捕も可能ですが、その後は警察官に身柄を引き渡され、警察署に連行されます。
緊急逮捕とは、急速を要するため裁判官に逮捕状を求めることができない場合に、緊急逮捕する旨を告げて行う逮捕のことです。逮捕した警察官は、逮捕後直ちに逮捕状を請求し、被疑者に示す必要があります。
いずれのケースでも、逮捕後、被疑者は、警察署の留置場で身柄を拘束されたまま、必要に応じて取調室に向かい、取り調べを受けることになります。身柄拘束中は、外部と自由に連絡を取ることができないため、家族に心配をかけたり、会社を無断欠勤するといった事態が想定されます。 -
(2)身柄を拘束されない在宅捜査
逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断された場合は、在宅捜査(身柄拘束せずに捜査すること)になる場合もあります。この場合、捜査に対応する以外には制限等を受けることはありませんので、社会生活を送ることができ、会社や学校へ通うこともできます。
ただし身柄拘束については、人権保障の観点から厳格な期間制限が設けられているのに対し、在宅捜査では手続きの期間は特に定められていません。このため、捜査が長期化するおそれがあり、被疑者はいつ送致されるのか、あるいは起訴・不起訴が決まるのかが分からず、不安定な状態で日々を過ごすことになります。
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3、検挙後に逮捕された場合の刑事手続きの流れ
ここからは、検挙後に逮捕された場合の刑事手続きについて詳しく見ていきましょう。
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(1)検察官への送致
逮捕後は警察官から取り調べを受け、48時間以内に、検察官へ身柄と記録が送致されます。マスコミなどでは送検と呼ばれています。
刑事訴訟法第246条では、法律に特別の定めがある場合を除いて検察官に送致しなければならないと定められているため、被疑者は原則として検察官に送致されます。
ただし、例外的に検察官へ送致されないケースがあります。 -
(2)送致されないケース
全件送致を原則とするところ、例外的に送致されないケースとしては、次のパターンが考えられます。
● 微罪処分
犯罪事実が極めて軽微であり、検察官から送致の手続きをとる必要がないとあらかじめ指定された事件については、送致せずに警察限りで処理することができます(犯罪捜査規範第198条)。これを微罪処分といいます。微罪処分になると前科がつくことはないですが、捜査対象となった前歴は残るため、再犯の際には不利に扱われる可能性があります。
極めて軽微な犯罪事実かどうかは、犯情(犯罪行為自体や犯罪の経緯に関する事情,被害の程度)が軽い、被害回復が行われた、被害者が処罰を望んでいない、素行不良者ではない者の偶発的な犯行であるなどのさまざまな要素をもとに判断されます。
また、微罪処分の対象となる犯罪は、各地方検察庁の検事正がその管轄区域内の警察に指定することによって定まるため、全国一律とは限りませんし、非公開であるため、特定することはできません。
このため微罪処分になるかどうかの確定的な見通しは立てることはできません。
● 誤認逮捕
真犯人が発覚した、犯人ではない証拠が発見されたなどの場合も、送致されずに身柄を釈放されます。あってはならないことですが、令和元年には20代の女性が誤認逮捕されたうえに実名報道され、令和2年には犯人である同僚の男と見間違えられた男性が誤認逮捕されたなど、近年でも誤認逮捕は起きています。 -
(3)起訴・不起訴の判断
送致を受けた検察官も被疑者の取り調べを行い、送致を受けてから24時間以内に被疑者の身体拘束を続けるかどうか判断します。捜査の必要性から身体拘束を続ける場合は、検察官は裁判官に対して勾留請求をします。裁判官がこれを認めると、原則10日間、延長も含めると20日間、さらなる身柄拘束が続きます。そして、勾留期間の満期までに、検察官は起訴・不起訴を判断します。
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4、起訴後は刑事裁判へ
次に、起訴されてから裁判で判決が言い渡されるまでの流れを解説します。
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(1)起訴の種類
起訴は公開の法廷における裁判を請求する通常の起訴(公判請求)と、書類のみで簡略的に手続きを進める略式起訴の2種類に大別されます。
通常の起訴の場合は、裁判官、検察官、弁護士の法曹三者が参加し、冒頭手続きから始まって証拠調べ、論告・弁論、判決へと裁判手続きが進められます。一般的にイメージされる裁判だと考えればよいでしょう。
略式起訴の場合は正式な裁判は開かれず、非公開の書面審査のみで手続きが進められます。略式起訴は事件の迅速な解決を目的とした制度なので、通常の起訴と比べて手続きにかかる時間が大幅に短縮され、早期に事件が終了となります。
ただし、通常の起訴のように被疑事実を争うことはできず、本人が罪を認めている前提で手続きが進められてしまいます。このため、被疑事実に争いがある場合は略式起訴で進めるべきではありません。
略式起訴で進める場合、検察官は必ず事前に、被疑者に対して、略式手続きについて説明し、通常の裁判を受けることもできる旨説明したうえで、被疑者に異議がないか確認します(刑事訴訟法461条の2)。
そして、被疑者は異議がない場合には、その旨を明らかにした書面(いわゆる略式請書)を作成することになります(刑事訴訟法462条)。
このため、知らないうちに略式起訴されるということはありません。
また対象となるのは、簡易裁判所が管轄し、100万円以下の罰金または科料にあたる罪である事件です。強盗や殺人といった重大犯罪で略式起訴されることはありません。 -
(2)起訴から刑事裁判へ
起訴から約2か月後に刑事裁判が開始され、判決が言い渡されるまで審理が続きます。裁判には期間の制限はないため、複雑な事件や否認事件などでは審理が長期化する可能性があります。
逮捕・勾留されたまま起訴される場合には、裁判が始まるまでの間や裁判が続く間も引き続き身柄拘束されます。これを被告人勾留といいます。被告人勾留によって長期にわたり身柄拘束されることは、本人および家族にとって大変な不利益です。
そこで起訴後には、被告人や家族、弁護士等から保釈請求をすることができます。保釈許可決定が出て、保釈保証金を裁判所に納付すると、一時的に身体拘束が解かれることになるので、裁判所によって定められた住所地(制限住居といいます)で日常生活を送りながら裁判に臨むことができます。
保釈されると、身柄拘束に伴う心身の負担が軽減されるほか、仕事への影響を最小限に抑えることができ、なおかつ、弁護士と裁判の打ち合わせを念入りにすることができます。
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5、検挙された場合に受ける影響とは?
検挙された場合、被疑者や家族はどのような影響を受ける可能性があるのでしょうか?
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(1)被疑者として扱われることの影響
被疑者として扱われるため、在宅捜査の場合、捜査機関から取り調べのための出頭要請がなされます。任意とはいえ捜査に協力する必要があるため、仕事をしている場合は日程を調整して応じなければなりません。
また逮捕された場合には実名報道されるリスクもあり、被疑者として扱われている事実が会社や友人・知人にも知られるおそれがあります。いったん実名報道されると、後に不起訴処分や無罪判決を言い渡されたとしても、被疑者という印象が人々の中に残り、社会復帰に支障をきたすおそれがあるでしょう。 -
(2)長期間の身柄拘束を受けることの影響
逮捕・勾留された場合は、逮捕段階で最長72時間、勾留段階で最長20日間もの身柄拘束を受けます。さらに起訴されると、保釈が認められない限り、裁判開始までの約2か月間と裁判で判決がでるまでの数カ月~数年といった期間の身柄拘束が続きます。
これだけ長期間にわたり身柄を拘束されてしまうと、会社を解雇されるおそれがあります。また、長期的に社会から隔離された状態が続くため、社会復帰にも支障をきたすおそれがあります。さらに、家族に心配をかけ続けるのはもちろん、家族を経済的に支えていた場合には家族の生活状況の悪化も懸念されるでしょう。 -
(3)前科がつくことの影響
起訴され有罪判決が確定すると、刑罰の重さや執行猶予の有無にかかわらず前科がつきます。
前科がつくと、医師や弁護士、警備員、公務員など一定の職業に就けなくなるという不利益があります。また、就職・転職の際に提出する履歴書の賞罰欄に前科を記載しなければならなくなり、事実上就職・転職が困難となります。海外渡航についても、一部の国では前科によって入国が制限される場合があります。
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6、検挙された場合の対応方法
自分や家族が検挙されてしまったときに取るべき対応や注意点を解説します。
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(1)取り調べの目的や内容を確認する
まずは自分や家族がどのような状況に置かれているのかを知るために、何の罪に問われているのか、検挙の理由となった事実は何かを確認しましょう。
それにより今後の対応も変わってきます。全く身に覚えのない容疑なら最初から否認を貫くことが大切ですし、身に覚えがあることなら早期に認めて反省の意思を示した方が、早期に釈放され、最終的な処分も軽くなる場合があります。 -
(2)供述調書に安易に署名押印しない
取り調べで供述した内容は取調官が聴き取り、パソコンで聴き取り内容をまとめた書類を作成します。この書類は供述調書と呼ばれています。
取り調べの最後に、取調官から、供述調書の内容が間違っていないかどうか確認したうえで署名押印をするように求められます。この時、作成された供述調書の内容をよく確認すべきです。
一度作成されてしまった供述調書を覆すことは非常に困難ですから、供述調書の内容が間違っている場合には、訂正を申し立てたり(訂正申立権)、署名押印を拒否する(署名押印拒否権)ことが大切です。
供述調書には、発言した内容を一言一句すべて記載されるわけではありません。このため、必ずしも供述者の意図に沿った内容で作成されるものであるとは限りません。
やってもいない行為を認めないのはもちろん、犯罪に身に覚えがあっても自分の認識とは異なる事実を少しでも認めてしまわないことが大切です。自分では小さな違いのように感じる部分でも、捜査員が思い描くストーリーの1コマになる重要な発言とみなされ、自身に不利な供述調書を作成されるおそれがあります。 -
(3)逃走しない
検挙されたことで頭が真っ白になり、その場から逃げ出したい気持ちになるのは理解できますが、逃走を図るのはやめましょう。何の解決にもならないどころか、捜査機関からいっそう疑われてしまいます。そして逮捕される危険性が高まってしまいます。
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7、検挙されたらまずは弁護士に相談
検挙されたときは、逮捕された場合はもちろん、在宅捜査であってもいつ起訴されるか分からない不安が続くため、速やかに弁護士に相談すべきです。弁護士は以下の活動を通じて検挙された本人と家族をサポートします。
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(1)取り調べや供述調書に関するアドバイス
取り調べの供述内容が後の処分に影響を与える可能性があるため、取り調べでの対応は極めて重要です。とはいえ精神的に不安な状態の中で取調官の厳しい追及を受けながら、冷静に考えて対応するのは困難でしょう。
しかし弁護士に相談すれば、取り調べにおける黙秘権の行使や発言・態度の注意点、自分の意図とは異なる内容の供述調書が作成された場合の対応などについて、重要なアドバイスをもらえます。
また弁護士は今後の手続きの流れや見通しについてもアドバイスしてくれるため、漠然とした不安が解消されるでしょう。 -
(2)被害者との示談交渉
被害者がいる事件で、かつ罪を認める場合であれば、被害者との示談交渉を弁護士に依頼することが大切です。事件の内容にもよりますが、示談が成立すれば起訴猶予を理由とする不起訴処分の獲得も期待できます。
弁護士に依頼せず、本人のみで被害者と示談交渉を進めることは非常に困難です。なぜなら、証拠隠滅や再犯の誘発に繋がるため、警察は加害者本人に被害者の連絡先を教えないことが多いからです。また、元々被害者の連絡先を知っている場合でも、本人が被害者に接触しようとすると、罪証隠滅のおそれがあるとして、逮捕・勾留される危険性が高まります。
示談交渉を弁護士に依頼した場合、警察も弁護士限りで被害者の連絡先を教えてくれることもあるので、弁護士を通して被害者と連絡を取ることができ、示談の話し合いを進めることができます。
なお、そもそも被害者が連絡先を教えたくないという場合があり、この場合はいくら弁護士が入っても示談の話し合いを進めることはできないことには注意が必要です。
しかし、示談の話し合いを進めることができないからといって、諦めるにはまだ早いです。弁護士に依頼した場合、示談経過報告書の作成や、弁済供託等の示談が決裂した場合の代替手段をとってくれます。 -
(3)証拠の収集
身に覚えのない行為で検挙された場合は、弁護士が無実を証明するための証拠を収集し、捜査機関や裁判官に示します。これにより逮捕の回避、逮捕された場合の早期釈放、起訴された場合の無罪判決の獲得につながります。
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8、まとめ
検挙は捜査機関が罪を犯した人物を特定する行為であり、その後には、逮捕・勾留、取り調べ、起訴及び裁判などの刑事手続きが予定されているものです。刑事手続きが進んでいけば、社会生活への影響も出てきます。
そのため、自分や家族が検挙されてしまった場合は、速やかに弁護士に相談し、適切な対応を依頼しましょう。刑事事件の領域で多数の解決実績をもつベリーベスト法律事務所が全面的にサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
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ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
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