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禁止されている誘導尋問とは? 裁判や取り調べで弁護士ができる対策
「誘導尋問」と聞くと、捜査官から厳しく追及されるシーンを思い浮かべ、あまり良くないイメージを持つ人も少なくないでしょう。自身が刑事事件で逮捕された場合には、誘導尋問によって不利な供述をしてしまい、重すぎる刑が科されないか不安になるかもしれません。
一般的に知られてはいませんが、刑事訴訟規則には、証人尋問の方法について細かい規定があります。誘導尋問に関するルールもその中で定められており、刑事裁判では禁止されている誘導尋問と禁止されていない誘導尋問があるのです。
本記事では、どのような誘導尋問が禁止されているのか、また、裁判や取り調べにおける誘導尋問に対して、弁護士はどのような対策を講じることができるのか、詳しく解説します。
1、誘導尋問と誤導尋問
「誘導尋問」について考えるときには、さらに「誤導尋問」についても詳しく知っておく必要があります。まずは、誘導尋問と誤導尋問とは何かについて、確認していきましょう。
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(1)誘導尋問とは
誘導尋問とは、尋問者の求める答えが暗示されている尋問のことをいいます。端的にいうと、「はい」か「いいえ」で答えることができる形式での質問です。たとえば「あなたは◯月◯日◯時頃、××に居ましたね?」という質問がこれに当たります。「クローズドクエスチョン」とも呼ばれ、この反対は、「オープンクエスチョン」です。先ほどの例でいうと、「あなたは◯月◯日◯時頃、どこに居ましたか?」という質問は、オープンクエスチョンです。
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(2)誤導尋問とは
誤導尋問とは、証人が供述していない事実、または争いがある事実について、これが事実であることを前提としてする尋問をいいます。
たとえば、法定において証人が「AさんがBさんを殴った」としか証言していないのに、「先ほどあなたはAさんがBさんの腹を殴ったと言いましたが、殴ったのは右手ですか左手ですか?」などと質問すると誤導尋問となります。
誤導尋問は証人を錯誤に陥れる危険性が高いため、一切許されません。
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2、禁止されている誘導尋問とは?
誘導尋問には、「禁止されている誘導尋問」と「禁止されていない誘導尋問」があります。
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(1)禁止されている誘導尋問
裁判における誘導尋問は、主尋問と再主尋問ともに原則として禁止されています(刑事訴訟法規則199条の3第3項)。
主尋問とは、尋問を申請した側が行い、主尋問→反対尋問→再主尋問の順で進みます。
たとえば、検察側が選んだ証人に対して、法廷で検察が質問する場合は主尋問、その証人に対して被告人側が質問するのが反対尋問です。
主尋問・再主尋問における誘導尋問が禁止されているのは、尋問者と証人が友好的な関係にあった場合に、暗示に誘導される危険があるためです。しかし、時間的制約のある裁判において、主尋問での誘導尋問を一切禁止するのは現実的ではありません。一定の必要性があり、誘導の危険がない場合には、例外的に誘導尋問が認められています。
これに対し、反対尋問は尋問者と証人が友好的な関係にないため、誘導尋問をすることができます(刑事訴訟法規則199条の4第3項)。 -
(2)禁止されていない誘導尋問
次の場合には、主尋問においても誘導尋問は禁止されていません(刑事訴訟規則199条の3第3項)。
- 証人の身分、経歴、交友関係など実質的な尋問前の準備的事項
- 訴訟関係人に争いのない事実
- 記憶喚起のため
- 証人が敵意や反感を示すとき
- 証人が証言を避けようとするとき
- 証人が前の供述と相反する供述をしたとき
- 誘導尋問を必要とする特別な事情があるとき など
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(3)取り調べにおける誘導も禁止されていない
裁判だけではなく、警察の取り調べにおける誘導尋問も禁止されていません。
事件の真相に迫るために、さまざまな手法を用いて取り調べをすることは当然のことでしょう。ただし、犯罪捜査規範第168条2項において、誘導や代償として利益を供与することを約束するなど、供述の信用性を失わせるおそれのある方法を用いた取り調べをしてはならない旨が明示されています。
事実に反した誤導尋問があれば、供述の信用性や任意性は否定される可能性があるでしょう。
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3、誘導尋問に対して弁護士ができる対策
ここでは、取り調べや裁判における誘導尋問に対し、弁護士からどのようなサポートを得られるかについて解説します。
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(1)取り調べの対策
取り調べで誘導尋問が行われることは珍しくありませんが、特に事実関係に争いがあるときには、黙秘した方が良い場合があります。弁護士は取り調べで、何を話し、何を話さないかといった助言を与え、被疑者が不利な供述をしないように支援することができます。
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(2)主尋問の対策
弁護士側が申請する主尋問では、事前に打ち合わせとリハーサルをして十分準備することができます。リハーサルの段階で答えにくい質問があれば、答えやすいように弁護士が修正しできるので、安心して尋問に臨むことができるでしょう。
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(3)反対尋問の対策
反対尋問については、検察官は質問内容を事前に教えてはくれないため、不安に感じるかもしれません。しかし、検察官の狙いはある程度予想することができます。想定される質問を弁護士があらかじめ主尋問で聞いておけば、検察官は反対尋問で聞くことがなくなるので、被告人や証人への追及回避が期待できます。また、予想される尋問に対して、どのように回答するべきなのかについても、アドバイスが得られるでしょう。
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4、まとめ
誘導尋問は、主尋問では原則として禁止されていますが、反対尋問や、誘導の危険の少ない一定の場合には主尋問でも認められています。弁護士のサポートを受け、誘導尋問に対して事前に十分な準備をしておけば、尋問や取り調べを必要以上に恐れることはありません。
警察の取り調べや尋問のことで不安がある方は、刑事事件の解決実績が豊富なべリーベスト法律事務所にご相談ください。
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