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公訴時効とは何か? 時効直前で逮捕されたときの対応について解説
犯罪には、公訴時効(時効)があります。公訴時効とは一定期間の経過によって検察官が被疑者を起訴できなくなる刑事手続きの制度をいいます。
刑事ドラマなどでは犯人が時効完成まで逃げ切ろうとする様子や、時効直前で逮捕されてしまうシーンが描写されることがあるので、時効という存在を知っている方も多いでしょう。
このコラムでは、公訴時効の仕組みや時効成立の直前でも逮捕される可能性があるのかについて弁護士が解説します。
1、公訴時効とは
まずは、公訴時効がどのような制度なのかを確認しましょう。
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(1)公訴時効とは何か?
公訴時効とは、犯罪が発生した時点から一定期間にわたって公訴が提起されなかった場合に、検察官の公訴権が消滅することを意味します。
公訴とは、検察官が罪を犯したと疑われる人物に対する有罪判決を裁判所に求めることです。
犯罪が発生して長い時間が経過すると、被害者や社会がもつ「厳しく罰するべき」という処罰感情が弱まり、処罰の必要性が失われます。また、時間経過によって重要な証拠が散逸することで、刑事裁判における適正な審理も期待できなくなるでしょう。このような事情から、公訴時効の制度が設けられています。
近年では、迅速な裁判の保障や、一定期間にわたって起訴されていないという事実状態を尊重するといった考え方も、公訴時効が設けられている理由だといわれています。 -
(2)公訴時効の起算点
公訴時効の計算が始まる起算点は、犯罪による結果が発生したときです。刑事訴訟法第55条1項には「時効期間の初日は、時間を論じないで1日としてこれを計算する」と明記されています。
たとえば、4月1日午前0時ちょうどに起きた事件でも、同日の午後11時59分に起きた事件でも、時効計算のうえでは同じ「4月1日」として扱われ、この日が起算点となります。
なお、共犯者が存在する犯罪で、犯行が2日以上にわたって実行された場合は、最終の行為が終わったときが起算点です。 -
(3)公訴時効が廃止された犯罪がある
平成22年の刑事訴訟法改正によって「人を死亡させた罪であって死刑にあたる罪」の公訴時効が廃止されました。この改正によって、改正法が施行されるまでに時効が完成していない殺人など凶悪犯罪の一部については公訴時効が適用されなくなりました。
なお、この改正では、人を死亡させた罪のうち死刑にあたらず懲役・禁錮にあたるものについて公訴時効が延長されています。
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2、公訴時効が完成するまでの期間
犯罪の種類から公訴時効が完成するまでの期間を確認してみましょう。
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(1)人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑にあたる場合
人を死亡させた犯罪で、法定刑が禁錮以上のものは、法定刑に応じて公訴時効が異なります。この場合の公訴時効は、刑事訴訟法第250条1項に明記されています。
- 死刑にあたる罪……時効なし
- 無期懲役・無期禁錮にあたる罪……30年
- 法定刑の上限が20年の懲役・禁錮にあたる罪……20年
- 法定刑の上限が懲役・禁錮で上記以外の犯罪……10年
これらの犯罪は、平成22年の刑事訴訟法改正によって公訴時効が延長されて現在のかたちになっています。
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(2)それ以外の場合
刑事訴訟法第250条2項では、そのほかの犯罪についても法定刑の重さに応じて公訴時効が明示されています。
- 死刑にあたる罪……25年
- 無期懲役・無期禁錮にあたる罪……15年
- 法定刑の上限が15年以上の懲役・禁錮にあたる罪……10年
- 法定刑の上限が15年未満の懲役・禁錮にあたる罪……7年
- 法定刑の上限が10年未満の懲役・禁錮にあたる罪……5年
- 法定刑の上限が5年未満の懲役・禁錮にあたる罪……3年
- 拘留または科料にあたる罪……1年
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(3)身近な犯罪の公訴時効
身近に起きやすい犯罪の公訴時効を確認してみましょう。
万引きなどの窃盗罪(刑法第235条)は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金なので「法定刑の上限が15年未満の懲役・禁錮」にあたるため、公訴時効は7年です。
ケンカの相手に怪我をさせてしまうと傷害罪(同第204条)となり、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に問われるので「法定刑の上限が15年以上の懲役・禁錮」となり、公訴時効は10年になります。
そのほか、脅迫罪(同第222条)は3年、横領罪(同第252条)は5年、詐欺罪(同第246条)は7年、業務上過失致死罪(同第211条)は10年です。
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3、公訴時効の停止
罪を犯して結果が発生した時点で公訴時効の計算が始まりますが、計算上は公訴時効の期間が経過していても時効が成立しないことがあります。時効の停止が起きると、公訴時効の進行が停止するのです。
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(1)公訴時効の停止とは
時効の停止とは、時効が停止する事情がある期間、時効の進行が止まることを意味します。公訴時効が停止すると停止期間分の日数は算入しないため、起算点から計算すると時効が成立している場合でも検察官は公訴を提起できます。
公訴時効が停止する要件は、刑事訴訟法第254条と第255条1項に明記されています。- 検察官が当該事件について公訴を提起した場合
- 共犯のひとりに対して検察官が公訴を提起した場合
- 犯人が国外にいる、または逃げ隠れているため、有効に起訴状の謄本の送達もしくは略式命令の告知ができなかった場合
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(2)時効の再開
公訴時効の停止を受けたのち、時効が停止する事情がなくなった場合は、停止前までに進行した期間から引き続いて進行が再開します。
民法上の時効では、それまでに進行してきた期間がリセットされて再び起算点が設けられる更新(旧法では「中断」)が存在しますが、公訴時効にはこのような制度が存在しません。
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4、公訴時効直前の逮捕で留意すべきこと
冒頭で紹介した事例のように、公訴時効が成立する直前で逮捕されてしまうケースもごくまれに存在します。公訴時効の成立直前での逮捕について知っておくべきことを挙げていきましょう。
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(1)警察が時効計算を誤って逮捕した場合
警察が時効計算を誤って逮捕に踏み切ってしまうケースも実際に存在します。
たとえば、令和3年3月には、児童買春・ポルノ禁止法違反の容疑で会社役員の男が逮捕されましたが、すでに時効が成立した事実での逮捕でした。
この事例では、逮捕後に逮捕状を請求する緊急逮捕によって身柄を拘束し、裁判所への令状請求の段階で、裁判官の指摘によって時効成立が判明しました。警察が時効成立に気づかず誤認逮捕してしまった場合でも、検察官や裁判官が誤りに気づけば釈放されます。 -
(2)時効直前では逮捕・起訴される可能性は低い
法律の規定に従えば、時効成立の前日でも逮捕・起訴は可能です。ただし、逮捕後は逮捕事実に関する取り調べや送致手続きに時間がかかり、送致を受けた検察官も起訴・不起訴を判断するためには取り調べや証拠の精査を要します。どんなに急いでも数日で捜査を遂げるのは不可能なので、時効成立の直前で逮捕・起訴される可能性は低いでしょう。
一方で、時効成立までに数週間~1か月程度の時間があれば、逮捕・勾留して取り調べを尽くす時間は十分です。この程度の時間的な余裕があるケースでは、警察が逮捕に踏み切るおそれが高いと考えられます。 -
(3)時効直前でも逮捕が不安なら弁護士に相談
公訴時効が成立する直前に至っても逮捕されていないのであれば「このまま逃げ切れるのではないか」と期待してしまうでしょう。しかし、時効成立を期待して時間の経過を待つのは得策ではありません。
もし、逮捕されてしまえば長らく捜査の手を免れていたという点が悪質と評価されてしまうおそれがあるだけでなく、新聞やニュースなどでも大々的に報道されてしまうでしょう。
時効成立の直前でも弁護士に相談して自首や被害者との示談交渉を進めて逮捕・起訴を回避するなど解決策を相談したほうがよいでしょう。
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5、まとめ
公訴時効が成立すると、検察官が起訴できなくなるため警察によって逮捕されることもありません。ただし、一部の犯罪では公訴時効の制度が撤廃されているほか、思いがけず時効の進行が停止しており計算どおりに時効が成立していないといった危険があることも知っておくべきです。
公訴時効の成立を待って罪を免れるのではなく、被害者との示談交渉による不起訴処分の獲得や自首による減軽に期待したほうが賢明だといえます。公訴時効の成立が目前で逮捕に不安を感じているなら、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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