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自首することで刑を減軽できるのか? 弁護士ができることとは
刑事ドラマなどでは「刑が軽くなるから」などと自首を促され、出頭するシーンが描かれていることがあります。その影響もあり、多くの方が、自首がどんな行為なのかは容易にイメージできるでしょう。しかしそのイメージは実際の自首と照らすと正確ではないかもしれません。
自首には法律上の要件があり、自分では自首だと思っていても自首には該当しない場合があるのです。また必ず刑が軽くなるのか、何が根拠なのかなど、詳しくは分からない部分も多いでしょう。
本コラムでは自首をテーマに、自首が成立する要件や出頭との違い、自首の効果などについて解説します。自首する前に弁護士に相談するべきかどうかも確認しましょう。
1、自首とは
法律上の自首とはどのような行為を指すのでしょうか?
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(1)自首とは
自首とは、犯罪事実が捜査機関に発覚する前に警察署などに出向き、犯人である旨を告げ、処罰を求めることをいいます。自首は法律により、刑の減軽を受けられる可能性がある行為です。
一方で、単に警察署に出向けば済むものではなく、要件を満たさなければ成立しません。 -
(2)自首が成立する要件
自首が成立するには以下の要件をすべて満たす必要があります。
● 自発的に犯罪事実を申告する
犯人自らが進んで犯罪事実を申告する必要があります。犯罪を疑われて取り調べを受けている最中に申告しても自首は成立しません。
● 捜査機関に申告すること
自首する相手は捜査機関になります。捜査機関とは、検察官または司法警察員を指します(刑事訴訟法第243条、241条1項)。司法警察員は、警察官の中でも巡査部長以上の階級にある人をいいます。したがって司法巡査に申告しても、その時点では法定の自首には該当しません。
もっとも、司法巡査が自首を受けた場合は巡査部長以上に取り次ぐ義務があるため(犯罪捜査規範63条2項)、取り次がれた時点で自首が成立します。そのため近くの警察署や交番に申告するという方法でも基本的に問題はありません。
● 捜査機関に発覚する前の申告であること
「発覚する前」とは、犯罪事実が発覚していない場合や、犯罪事実は発覚しているが犯人が誰であるかは発覚していない場合を指します。犯罪の被害者や目撃者などが犯人だと把握していても、警察官や検察官などの捜査機関が把握していなければ自首が成立します。
一方で、犯罪事実と犯人が誰であるかは発覚しているが、単に犯人がどこにいるのか分からないだけでは発覚する前とはいえません。また、申告した相手がたまたま犯罪事実を把握していなくても、捜査機関の誰かが把握していればすでに発覚した後として扱われます。
● 自身の処罰を求めていること
犯罪の申告には、罪を犯した自分自身への処分を求めることが必要とされます。責任を否定すれば自首にはあたりません。
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2、自首の効果とは。 刑を減軽できるのか?
自首を検討する際に気になるのは自首の効果でしょう。刑が軽くなるなどといわれる場合がありますが、果たして本当にそのような効果があるのでしょうか?
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(1)刑が減軽される可能性がある
刑法第42条1項は「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」としています。つまり自首をすると刑が減軽される可能性があります。ただし、“できる”とあるように、必ず減軽されるわけではなく、裁判官の裁量に委ねられています。
刑の減軽以外にも、自首をすることで以下のような別の効果が期待できます。 -
(2)逮捕を避けられる可能性がある
自首には逮捕が回避できる可能性を高める効果があります。
そもそも逮捕とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合になされる強制手続きです(刑事訴訟法第199条、刑事訴訟規則第143条の3)。
自らの罪を申告して処罰を求めている以上は逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと判断され、結果として逮捕を回避できる可能性が高まるのです。
逮捕されなかった場合は在宅事件として扱われ、日常生活を送りながら捜査を受けることになります。 -
(3)報道されにくい
報道するか否かの判断は報道機関に委ねられているため一概にはいえませんが、自首をすれば実名報道される可能性が低くなります。特に逮捕されなかった場合は、著名人の事件など社会的な影響力が大きい事件でない限り、報道される可能性は低いでしょう。
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(4)不起訴となる可能性がある
犯罪の事実が明らかな場合でも、検察官は「犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の情況により」、起訴しないことができます(刑事訴訟法第248条)。自首は犯罪後のよい事情として、有利に作用する可能性が高い行為です。そのため検察官が不起訴処分を下す可能性が高まります。
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(5)執行猶予の可能性がある
自首をすると裁判官は刑を減軽することができるため、起訴されてしまった場合でも判決に執行猶予を付される可能性があります。執行猶予が付けば、猶予期間中に罪を犯さないことを条件に社会の中での更生機会を与えられます。仕事をやめずに済む可能性もあり、社会復帰が円滑に進みやすいでしょう。
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3、自首が成立しない場合もある
自首は厳格な要件を満たすことで成立するため、自分では自首だと思っていた行為が自首にあたらない場合があります。
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(1)出頭は自首と異なる
自首の一般的なイメージは、警察署などに出向いて自分が犯人だと申告することでしょう。そのイメージはおおむね間違いではないものの、単なる「出頭」だった場合は自首が成立しません。
出頭とは、被疑者として特定されている者が捜査機関に出向くことです。自分で出向く場合と、出頭要請を受けて出向く場合があります。
被疑者とは捜査機関から犯罪の疑いをかけられて捜査の対象となっている者をいいます。すでに被疑者として扱われている以上、捜査機関に出頭しても自首にはあたりません。
そのため法定の減軽事由(刑法第42条)にも該当せず、自首が成立した場合と比べて刑が重くなる可能性があります。 -
(2)自首が成立しない場合とは
自首が成立せず、単なる出頭として扱われるのは次のようなケースです。
- 指名手配され、逃亡している途中に観念して出頭した場合
- 出頭したものの、犯罪事実を告げない、または罪を否定している場合
- 出頭要請を受け、任意の取り調べ中に罪を認めた場合
- ほかの犯罪を隠すために一部の犯罪のみを申告した場合
もっとも、自首が成立しなくても、出頭した事実が逃亡・証拠隠滅のおそれを否定する方向にはたらき、逮捕を回避できる可能性はあります。犯罪後のよい事情として考慮され、検察官が不起訴を下す可能性もあるでしょう。
起訴された場合でも酌量減軽(刑法第66条)を受けられる可能性があり、酌量減軽がなされなくても最終的な量刑判断で有利な事情として考慮される場合があります。
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4、自首の流れ
実際に自首をすることになったら、どんな流れで手続きが進められるのでしょうか?
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(1)自首に向けた準備
自首したその日のうちに逮捕にいたれば、家族や会社の人などと連絡が取れなくなってしまうので、自首する旨や今後のことを指示しておくとよいでしょう。留置場内で使う現金や着替えなども準備しておきます。
また、自首は事件が発覚する前にすることが大切なので、自首を決意したらすぐに管轄の警察署などに連絡し、自首の手続きを進めるのが賢明です。警察署と日程を調整したうえで自首する場合もあります。 -
(2)自首の方法
自首は書面または口頭で行います(刑事訴訟法第245条、241条)。
書面でする場合は自首の経緯や事件について書かれた自首報告書を作成して持参し、口頭でする場合は自らの口で犯人である旨と犯行時の状況などを説明します。口頭による自首では、警察官が自首調書を作成することで受理となります。 -
(3)捜査機関による取り調べ
自首をしても、緊急逮捕などを除き、その場ですぐに逮捕されるわけではありません。事件や犯人が発覚する前に自首しているのだから、自首をした段階では証拠が不足しており逮捕状を請求できないためです。まずは、任意の取り調べが行われます。
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(4)逮捕または在宅捜査
取り調べの結果から罪を犯したと疑われ、証拠隠滅または逃亡のおそれがある場合には、その日のうちに逮捕状が請求され、通常逮捕されるでしょう。自首した日は自宅に帰され、裏付け捜査を経て後日に通常逮捕される場合もあります。
一方で、逮捕の要件を満たさなかった場合は在宅のまま捜査が進められます。特に軽微犯罪(30万円以下の罰金、拘留または科料にあたる罪)の逮捕は定まった住居を有しない場合などに限られているため、在宅捜査となる可能性が高いでしょう(刑事訴訟法第199条1項ただし書き)。
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5、自首に対して弁護士ができること
自首を検討している場合は事前に弁護士へ相談しておくことをおすすめします。自首に対して弁護士は以下のようなサポートを行います。
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(1)自首に同行する
自首は自分ひとりですることも可能ですが、法律上の要件を満たしているのかを判断し、冷静に犯行当時の状況などを説明するのは簡単ではありません。
弁護士に同行してもらえば要件を満たした自首が可能となり、自首のタイミングも適切に判断してくれるでしょう。同行した弁護士が捜査機関に対して逮捕の必要性がないことも伝えるため、逮捕を回避できる可能性が高まります。
また弁護士に相談しておくと自首の要件を押さえた自首報告書を作成して捜査機関へ提出するため、自首が円滑に受理されやすくなります。 -
(2)取り調べに対する助言
何の準備もないまま取り調べに臨むと、必要以上のことまで供述してしまい、今後の処分が不利にはたらくおそれがあります。しかし弁護士に相談しておけば、取り調べで何を供述し、何を黙秘するのかなど、重要な点について事前に助言を与えてくれます。
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(3)示談交渉を進める
被害者がいる犯罪の場合は、自首のほかに被害者との示談が成立しているかどうかも、今後の処分が決定する際の重要なポイントとなります。検察官から評価されて不起訴となる、起訴されても刑が減軽されて重すぎる刑を回避できる可能性が高まるでしょう。
そのため弁護士が早急に示談交渉を進めます。被害者の連絡先が分からない場合でも弁護士であれば捜査機関を通じて連絡先を入手できる可能性があります。自首した場合は本人の反省が伝わりやすく、被害者が示談に応じてくれる可能性も高まるでしょう。
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6、まとめ
自首は犯罪の事実および犯人である旨を、捜査機関に発覚する前に申告することで成立します。すでに捜査の対象となってから出頭しても自首にはあたりません。
法的に自首が成立する状況かどうかは難しい判断を要する問題なので、自首を検討する場合はあらかじめ弁護士に相談することをおすすめします。そもそも犯罪が成立するのか、自首よりも示談を優先させるべきかなど、自首に関するアドバイスも得られるでしょう。
自首するべきかどうかでお困りの場合はベリーベスト法律事務所へご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が的確にアドバイスし、同行や示談などもサポートします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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