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弁護士コラム

2021年09月06日
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押収拒絶権とは何か? 権利を行使できる8つの業種や弁護士に相談すべき理由

押収拒絶権とは何か? 権利を行使できる8つの業種や弁護士に相談すべき理由
押収拒絶権とは何か? 権利を行使できる8つの業種や弁護士に相談すべき理由

令和2年1月29日、東京地検の係官らが、金融商品取引法違反の嫌疑を受けて逮捕された大手自動車会社の前会長の弁護人を務めていた弁護士の事務所に立ち入り、捜索差押え手続きを行いました。

元弁護人らは、「押収拒絶権」にもとづきパソコンなどの押収を拒絶しましたが、係官らは前会長が使っていた部屋のドアの鍵をこじあけるなどし、長時間にわたり滞留し続けたようです。

押収拒絶権とは、刑事訴訟法第105条に定められた権利のことです。弁護士のほかにも特定の業種に限って認められていますが、具体的にはどのような権利を指すのでしょうか?

本コラムでは押収拒絶権をテーマに、権利の内容と行使できる業種、行使できないケースについて解説します。

1、押収拒絶権とは?

押収拒絶権とは、強制処分として行われる押収を拒むことができる権利をいいます。そもそも押収とはどのような行為か、押収拒絶権の内容、権利を行使できる業種、権利が保障されている背景などを解説します。

  1. (1)押収拒絶権の概要

    押収とは、捜査機関や裁判所が、犯罪の証拠を取得する処分のことをいいます。刑事訴訟法上の押収には、差押え、領置、提出命令の3つがあります(第218条第1項、221条、99条第3項)。

    中でも差押えは人の占有を排除して物の占有を取得する処分であって、厳格な要件のもと、原則として裁判官の審査を経て行われる強制処分です。捜査員などが自宅や事務所などにやって来て令状にもとづき差押えをしようとしても、通常はこれを拒絶することができません。

    ただし刑事訴訟法第105条では、特定の業種に限って押収を拒むことができると定めています。押収を拒否できる権利を“押収拒絶権”といいます。

  2. (2)押収拒絶権を行使できる業種

    押収拒絶権があるのは、以下8つの業種の職に就いている人、または以前に就いていた人です。

    • 弁護士(外国法事務弁護士を含む)
    • 医師
    • 歯科医師
    • 助産師
    • 看護師
    • 弁理士
    • 公証人
    • 宗教職
  3. (3)押収拒絶権における秘密とは

    押収拒絶権の対象になるのは、業務上委託を受けて保管または所持する物であって、他人の秘密に関するもの、です秘密の定義は法律上も判例上も明示されていませんが、秘密にあたるかどうかを判断するのは業務者自身であると考えられています

    警察や検察といった捜査機関に判断を委ねてしまえば、秘密に関する物の押収が広く認められてしまい、業務に対する社会の信頼性が失われるからです。

  4. (4)押収拒絶権が保障されている背景

    8つの業種は、いずれも他人の秘密を扱う機会が多いという特殊性があります。一般市民は、業務者を信頼し、安心して秘密を提供できる状況になければ、業務者を利用することはできないでしょう。

    そのような不利益を回避するために、業務者に対して秘密を委託した人や、その業務に対する社会一般の信頼性を確保するために保障されているのが押収拒絶権なのです。

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2、押収拒絶権を行使できないケース

刑事訴訟法第105条のただし書きによれば、以下のケースでは押収拒絶権を行使できません。

  1. (1)本人が押収されることを承諾した場合

    押収拒絶権は、本人の秘密を守るために保障された権利ですしたがって、秘密を委託した本人が押収されることを承諾している場合には、業務者であっても押収拒絶権を行使できません

  2. (2)押収の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合

    「押収の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合」とは、秘密を委託する本人(第三者)には秘密にする利益がないのに、もっぱら被告人のためにのみ、秘密を託した本人と業務者が結託して、証拠物を秘密であるとして不当に押収を拒絶するケースを指します。

    ただし、被告人が秘密を委託する本人である場合は除きます。これは、被告人自身が自分の秘密を隠すために押収を拒絶することは仕方がない(期待可能性がない)と考えられているためです。

    もっとも、被告人が秘密を業務者に託せばいつでも押収を拒否できるのは不当であるため、「外形上秘密ではないことが明白なもの」は、「他人の秘密に関するもの」にはあたらず、押収拒絶権を行使できないとされています。

    冒頭の事例では、元弁護人らは任意で面会簿原本を提出したようですが、その理由は面会簿のコピーが裁判所にすでに提出されており、外形上の秘密性が失われているからだと考えられます。

    なお、このほかに行使できないケースとして「その他裁判所の規則で定める事由がある場合」があります。

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3、押収拒絶権の行使を検討する際は弁護士へ相談を

押収拒絶権は先に列挙した8つの業務者に認められていますが、すべての業務者が、実際に行使する場面で適切な判断や対応ができるのかといえば難しい場合があります。

押収拒絶権は業務に対する社会一般の信頼を確保するためのものである一方で、安易な行使によって権利が濫用されてはなりませんそのため、行使するべきかの判断や対応は法律家である弁護士に相談することをおすすめします

弁護士であれば、捜査機関に対して本人の承諾の有無や押収の目的を確認したうえで適切な判断ができます。行使した後の対応に関しても専門的知見からアドバイスが得られるはずです。行使に悩むような状況であれば早期に弁護士へ相談しましょう。

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4、まとめ

押収拒絶権は、押収を拒絶できる権利をいい、医師や看護師など他人の秘密を扱う機会の多い8つの業種で認められています。ただし権利を行使するべきかどうかの判断は法律の問題を含むものであり、弁護士でなければ難しい場合があります。

業務者として押収拒絶権を行使するかどうかについてお悩みであれば、まずは弁護士へ相談し、アドバイスを受けるのがよいでしょう。数々の法的トラブルを解決してきた実績のあるベリーベスト法律事務所が力になります。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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