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弁護士コラム

2021年09月30日
  • その他
  • 保護責任者遺棄罪

保護責任者遺棄致死罪とは? 成立する要件や逮捕前後の流れを解説

保護責任者遺棄致死罪とは? 成立する要件や逮捕前後の流れを解説
保護責任者遺棄致死罪とは? 成立する要件や逮捕前後の流れを解説

寝たきりで介護が必要な配偶者を自宅に放置して衰弱死させた、自分の子どもに十分な食事を与えず飢え死にさせたなどの痛ましい事件はあとを絶ちません。

老年者や幼年者といった『要保護者』を保護する責任がある人が、遺棄・不保護によって要保護者を死亡させてしまうと、「保護責任者遺棄致死罪」が成立します。最長で20年の懲役刑が規定された重い罪ですが、具体的にどのような要件を満たすと成立するのでしょうか。

本コラムでは保護責任者遺棄致死罪の概要と成立要件、刑罰の内容などについて弁護士が解説します。逮捕前後の流れや、自分の家族が逮捕されたときに残された家族にできることも確認しましょう。

1、保護責任者遺棄致死罪とは

保護責任者遺棄致死罪を理解するために、まずはその概要と、結果的加重犯について解説します。

  1. (1)保護責任者遺棄致死罪とは

    保護責任者遺棄致死罪とは、保護責任者遺棄罪または保護責任者不保護罪を犯し、被害者を死亡させた場合に成立する犯罪です(刑法第219条)。買い物やパチンコに行くため自分の子どもを車内に放置し、熱中症により死亡させてしまったというケースなどが該当します。

  2. (2)結果的加重犯

    結果的加重犯とは、基本となる罪を犯したうえで、意図していたよりも重い結果が発生した場合に、基本となる罪よりも重い刑罰を科す犯罪のことです。

    たとえば、相手を死亡させる意図はなかったものの、暴行を加えたところ打ち所が悪く相手が死亡したような場合です。この場合、傷害罪ではなく傷害致死罪が成立し、傷害罪よりも重く罰せられます。強制わいせつ罪と強制わいせつ致死罪、強盗罪と強盗致死罪などが結果的加重犯の関係にあたります。

    保護責任者遺棄致死罪も、保護責任者遺棄罪・不保護罪を犯した者が、相手を死亡させる意図はなかったものの結果的に死亡させてしてしまう犯罪なので、結果的加重犯にあたります。

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2、保護責任者遺棄致死罪の成立要件

保護責任者遺棄致死罪が成立する要件を確認しましょう。

  1. (1)保護責任者遺棄等罪を犯していること

    保護責任者遺棄致死罪が成立する前提として、保護責任者遺棄等罪を犯している必要があります。保護責任者遺棄等罪とは、保護責任者が要保護者を遺棄し、または生存に必要な保護をしなかった場合に成立する犯罪です(刑法第218条)。

    「保護責任者」とは、法令や慣習、契約、条理などにもとづき、要保護者を保護する責任のある者のことを指します。子どもを育てる親や高齢者の介護を委託された介護士、病気の人を自宅に引き取った人などがこれにあたります

    「要保護者」とは、老年者、幼年者、身体障害または疾病のために扶助を必要とする者を指します。
    また、泥酔者についても、該当するケースがあります。たとえば、泥酔した相手を介抱したものの道路で寝てしまったので、真冬にもかかわらず放置したといった場合には、要保護者に該当する可能性があります。

    「遺棄」とは、要保護者を従来の場所から生命・身体に危険なほかの場所に移転させる行為(移置)、または要保護者を危険な場所に放置して立ち去る行為(置き去り)をいいます。たとえば、人のサポートがないと日常生活が困難な配偶者を自宅に残したまま戻らなかった、しつけと称して子どもを山中に置き去りにしたケースなどが該当します。

    「生存に必要な保護をしなかった」場合とは、保護責任者と要保護者が場所的に離れることなく、要保護者が生存していくために必要な保護をしないことを指します(不保護)。具体的には乳幼児に食事を与えない、病気の人に必要な治療を受けさせないなどの行為がこれにあたります。

  2. (2)故意ではなく死亡させてしまうこと

    保護責任者遺棄致死罪は、保護責任者遺棄等罪を犯したうえで、相手を死亡させる故意がなかったものの、結果的に死亡させてしまった場合に成立します。殺意があった場合や、明確な殺意がなくても『死ぬかもしれない』『死んでも仕方がない』という程度の認識があれば、未必の故意があったとして殺人罪が成立します
    殺意があったかどうかは、その人がそう言っているかどうかだけで判断されるわけではなく、客観的事実をもとに判断されます。

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3、保護責任者遺棄致死罪の刑罰

保護責任者遺棄致死罪で有罪になると、どのような刑を科されるのでしょうか。

  1. (1)保護責任者遺棄罪と傷害致死罪

    保護責任者遺棄致死罪の刑罰について、刑法第219条は「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」としています。これは、保護責任者遺棄等罪の刑罰と、傷害致死罪(刑法第205条)の刑罰を比較し、刑罰の上限と下限について、重いほうの刑罰を適用するという意味です。

    • 保護責任者遺棄等罪の刑罰……3か月以上5年以下の懲役
    • 傷害致死罪の刑罰……3年以上20年以下の懲役


    両者を比べると上限、下限ともに傷害致死罪の刑罰が重いため、傷害致死罪の刑罰である「3年以上20年以下の懲役」が適用されます。

  2. (2)その他の犯罪が成立した場合の刑罰

    保護責任者遺棄致死罪の成立要件を満たさなかった場合でも、過失致死罪や殺人罪に問われる場合があります。
    過失致死罪は不注意な行為によって人を死亡させる罪、殺人罪は殺意をもって人を死亡させる罪です。過失致死罪の刑罰は「50万円以下の罰金」、殺人罪の刑罰は「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」です。

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4、保護責任者遺棄致死罪の事例

保護責任者遺棄致死罪の成立が争われた事例を紹介します。

難病にり患していた、当時3歳の長女を衰弱死させたとして、長女の母親(被告人)が保護責任者遺棄致死罪に問われた事件です。

被告人は、病気により発育が遅れていた長女の生存に必要な保護をする責任があったにもかかわらず、十分な栄養を与えることも適切な医療措置を受けさせることもせず、その生存に必要な保護をせずに衰弱死させたとして、不保護による保護責任者遺棄致死罪に問われていました。

争点になったのは、母親が長女の体格の変化は異常で生命・身体に危険が生じる可能性に気づけていたか、すなわち不保護について故意があったかどうかです。

第一審では、被告人が長女の体格の変化や痩せ方を認識していたこと、長女が低栄養にもとづく衰弱により死亡したことを認定したものの、病気の影響で筋肉が付きにくく、出生時から体重が平均よりも軽いなどの前提知識のもとでは、痩せ方の異常性に対する認識が異なってしまう可能性があると指摘しました。そのうえで、体格の変化だけで保護が必要な状態だと気づけたかには合理的な疑いがあるとして、被告人の故意を否定して無罪を言い渡しました。

これに対し、第二審では長女の手足が極端に細くなるなどの体格の変化は異常であり、被告人は保護が必要な状態だと気づけていたとし、事実誤認があるとして第一審に審理を差し戻しました。

しかし最高裁は、長女の保護が必要な状態だと気づけなかった可能性を認めた第一審の判決を不合理とした第二審の判決について、不合理な点があることを十分に示したものとは評価することはできず、判決を破棄しなければ著しく正義に反すると結論づけました。これにより、第一審の無罪判決が確定しています(最高裁 平成30年3月19日 判決)。

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5、保護責任者遺棄致死罪での逮捕前後の流れ

事件の発覚から逮捕、起訴までは、どのように進むのでしょうか。

  1. (1)要保護者の死亡発覚から逮捕されるまで

    保護責任者遺棄致死事件は、要保護者の遺体が発見された、病院や近隣住民・大家からの通報があったなどの経緯で事件が発覚するケースが典型的です。その後は、逮捕状を持った警察が自宅にやってきて逮捕される、警察から任意で事情を聴かれたうえで逮捕に至ることが多いでしょう。

  2. (2)逮捕された後の流れ

    逮捕された場合は48時間を限度に警察の取り調べが行われ、留置の必要がないと判断され釈放されなければ、検察官へと事件・身柄が引き継がれます。検察官は、送致から24時間以内に引き続き取り調べを行い、被疑者を釈放するか、裁判官に勾留を請求するかを判断します。

    この段階で勾留されず釈放された場合は、在宅のまま捜査が進められます。一方、勾留を請求され、裁判官がこれを許可した場合は、原則10日間(延長でさらに10日間)、身柄が拘束されます。
    保護責任者遺棄致死事件は、殺意の有無が争点になるなど複雑なケースが多く、法定刑も重いため、勾留される可能性は高いといえるでしょう。検察官は勾留期間が終わるまでに、被疑者を起訴するか、不起訴にするかを決定します。

  3. (3)起訴された後の流れ

    勾留されたまま起訴されると、起訴後の勾留が続きます。この場合、保釈請求が認められない限り、刑事裁判が終わるまで身柄の拘束が続きます。一方、勾留されず在宅のまま起訴された場合は、刑事裁判の日に出廷し、審理を受けることになります。

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6、保護責任者遺棄致死罪で逮捕されたときに家族ができること

家族が保護責任者遺棄致死罪で逮捕されたとき、残された家族にできることはあるのでしょうか。

  1. (1)弁護士に弁護活動を依頼する

    保護責任者遺棄致死罪は人の死亡という結果が生じているため、逮捕・勾留、起訴のおそれが高い犯罪です。また、場合によっては殺人罪に問われるおそれもあります。そのため家族が逮捕されたら、早急に弁護士へ相談しサポートを求めることが大切です。

    弁護士は依頼を受けると、できる限り早い段階で本人と面会し、取り調べの対応についてアドバイスします。弁護士がアドバイスをすることで、取り調べにおいて不利な供述調書をとられる危険を回避できるでしょう
    また、弁護士は長期の身柄拘束による不利益を回避するために、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを主張するなど、身柄拘束を解くための活動も行います。

    その他、弁護士に依頼することで、不起訴や刑の減軽に向けた活動も行ってもらうことができます。

    保護責任者遺棄致死罪に該当しない場合、たとえば、そもそも事件の犯人ではないとか、保護責任者に該当しない、保護責任がないなどと主張して争う場合、そのための適切な方法についてアドバイスを受けることができます。

    保護責任者遺棄致死罪の適用が避けられない場合でも、被疑者・被告人にとって有利となる事情があれば、不起訴や刑の減軽が得られる可能性も残されています。高度な法的判断を要する難しい問題ですが、弁護士の活動により重すぎる刑を回避できる可能性があるため、できるだけ早い段階で相談することが大切です。

  2. (2)更生に向けたサポート・環境調整

    一般に被害者が存在する事件では、被害者との示談を成立させることにより、不起訴の獲得や刑の減軽を期待することができます。しかし保護責任者遺棄致死罪は、被害者が死亡しているうえに、被害者の親族が被疑者・被告人自身であるケースも多く、示談をする相手がいないということも少なくありません。

    示談をする相手がいないケースで不起訴や刑の減軽を目指すためには、ご家族が本人を監督する、福祉の支援や医療機関での治療を受けさせるなど、更生のための環境を整えるといった対策を講じる必要があります。どのような準備をするべきかわからない場合は、弁護士に相談するのも良いでしょう。
    家族が更生に向けたサポート・環境調整に努め、本人を支えていくことが大切です。

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7、まとめ

保護責任者遺棄致死罪は、老年者や幼年者などの要保護者を保護する責任があるにもかかわらず、遺棄・不保護によって要保護者を死亡させてしまう犯罪です。刑罰は非常に重く、殺人罪の成立が争われる場合もあるので、不起訴処分や刑の減軽を得るのは容易ではありません。

刑事事件の経験豊富な弁護士のサポートは不可欠なため、事件を起こしてしまった場合は早急に弁護士に相談しましょう。刑事弁護の実績豊富なベリーベスト法律事務所が、全力でサポートします。まずはご連絡ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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