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弁護士コラム

2021年12月09日
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免訴判決とは? 無罪判決でも有罪判決でもない判決があるのはなぜか

免訴判決とは? 無罪判決でも有罪判決でもない判決があるのはなぜか
免訴判決とは? 無罪判決でも有罪判決でもない判決があるのはなぜか

刑事裁判では、有罪あるいは無罪の判決が言い渡されることが多いですが、まれに「免訴」の判決が言い渡されることもあります。

令和2年には、業務上横領罪で起訴をされた元会社役員の男性に対して、裁判所は、取締役退任後の犯行であることから単純横領罪に該当するとし、さらに単純横領罪の時効も成立しているため免訴とするという判決を言い渡しました。

また、平成15年には、兵庫県明石市の歩道橋事故において業務上過失致死傷罪に問われていた警察署副所長に対して、公訴時効による免訴判決が言い渡されました。

免訴判決とはどのような意味なのか、その他の判決との違いや、免訴判決が下される法的な条件を確認していきましょう。

1、刑事裁判で下される判決の種類

一般的に、刑事裁判で言い渡される判決は、有罪・無罪のいずれかであるというイメージがあるでしょう。

しかし、判決の種類はこれ以外にも存在します。まずは、刑事裁判における判決の種類を確認していきましょう。

  1. (1)有罪判決

    そもそも、刑事裁判は、検察官が、被告人の行った行為が刑罰法規に該当し有罪であると判断した場合に、被告人を起訴することによって行われることになります。

    そして、刑事裁判において、裁判官が、被告人が有罪か否かを判断するにあたっては、下記について検討する必要があります。

    • ① 検察官が起訴状に記載した被告人の行為について客観的要件(犯罪の実行行為など)と主観的要件(故意など)がそれぞれ充足しているかどうか
    • ② 当該被告人の行為が違法性のない行為でないかどうか
    • ③ 被告人に刑法上の責任を負わせられるほどの責任能力があるかどうか


    ①②③の要件を充足してはじめて、裁判官は、被告人を有罪とし、刑罰を科すことができるのです。

    検察官が被告人の行為について起訴をすると、裁判官は、検察官や弁護人の提出した証拠に照らして審理し、①②③の要件がすべてそろっているかどうかを判断します。その結果、裁判官が、当該要件をすべて満たしていると判断すると、被告人は有罪であるとの結論になります。

    そして、裁判官によって被告人が有罪であるとの判断がなされた場合は、当該犯罪の法定刑の範囲内で量刑が判断されます。

    たとえば、暴行罪の法定刑は、“2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料”です。したがって、暴行罪という罪1つで有罪の判断がなされれば、この法定刑の範囲で量刑が判断されます。
    裁判官から「被告人を懲役1年に処する」という有罪判決を言い渡されれば、被告人には、1年間の懲役という刑罰が科せられたということになります。

    また、有罪判決の中には、実際に刑務所に入所するいわゆる“実刑”が言い渡されるほかに、刑罰の言い渡しとともに一定期間刑の執行を猶予する“執行猶予”の言い渡しがされる場合もあります。

    裁判官から「被告人を懲役1年に処する。この裁判確定の日から3年間その刑の全部の執行を猶予する。」と言い渡されれば、被告人には、1年間の懲役という刑罰が科せられたことにはなりますが、3年間刑務所に入所することを猶予されたことになります。そして、その3年間のうちに再び何らかの罪を犯すなどして執行猶予が取り消されない限りは、3年が経過したときに、「懲役1年」という刑罰の言い渡しの効果がなくなり、被告人は刑務所に入ることを免れるのです。

    ちなみに、被告人は有罪ではあるものの、刑罰が科されないという場合もあります。被告人の行為につき上記①②③の要件を充足し、被告人は有罪であるとの判断をしたとしても、法律上の事由に基づいて刑罰を科することを免除するという判決がこれにあたります。たとえば、配偶者、直径血族又は同居の親族との間で窃盗罪を犯した場合(刑法244条)などです。

  2. (2)無罪判決

    検察官が起訴をした被告人の行為について、裁判官が審理した結果、①②③の要件が充足していないと判断した場合は、被告人は無罪であるとの結論になります。
    この場合、被告人に刑罰は科せられません。

    ここまでの判決は「実体裁判」に分類されるもので、被告人の行為の内容を審理したうえでの裁判所の判断です。

    次は、いわゆる「形式裁判」といって、行為の実体を審理することなく、裁判の手続上の側面に問題があると結論づけられる場合の判決について説明します。

  3. (3)管轄違いの判決

    検察官が起訴をする際は、被告人の行為を審理できる、いわゆる管轄権をもつ裁判所になさなければなりません。管轄権をもたない裁判所に起訴をしても「管轄違い」の判決が下されて、審理がされないまま裁判が終わります。

    管轄権を持つ裁判所とは、たとえば、犯罪地や被告人の住所地を管轄する裁判所があります。A県で起きた事件について、被告人の住所地でもない無関係なB県の裁判所に起訴した場合、「管轄違い」の判決が下されます。

    また、罰金以下の刑にあたる罪や窃盗・横領など比較的に罪が軽いとされる事件は簡易裁判所が管轄権を有しています。したがって、殺人罪など地方裁判所に起訴すべき事件を簡易裁判所に起訴した場合、「管轄違い」の判決が下されます。

    もっとも、起訴をするにあたっては、検察官が事前に慎重な検討を行うため、起訴後に裁判所によって管轄違いの判決が下されることはまれです。

  4. (4)公訴棄却

    検察官が起訴をしたものの、裁判所の判断によって当該裁判を打ち切る制度を「公訴棄却」といいます。詳しくは後記2のとおりですが、刑事訴訟法第338条各号に該当する場合には、裁判所が有罪か無罪かについて判断することなく裁判が終了します。

    なお、公訴棄却の判断には、公訴棄却の「判決」と公訴棄却の「決定」というものがあります。たとえば、被告人が死亡した場合、起訴状の謄本が2か月以内に被告人に送達されずに公訴提起(起訴)の効力が失われた場合、公訴(起訴)が取り消された場合などでは、判決ではなく「決定」によって公訴が棄却されます。
    「判決」によって公訴が棄却される場合については、後記2のとおりになります。

  5. (5)免訴

    公訴棄却と同じく、有罪か無罪かが判断されずに裁判が終了するのが「免訴」です。3章で詳しく説明しますが、刑事訴訟法第337条各号に免訴の条件が明記されています。

    以上より、形式裁判である(3)(4)(5)のうち、(4)公訴棄却判決と(5)免訴判決とは、どちらも有罪か無罪かの実体的判断がなされないまま裁判が終了する判決になります。

    次に、両者の違いを見ていきましょう。

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2、免訴と公訴棄却の違い

免訴と公訴棄却は、いずれも裁判所が有罪か無罪かを判断せずに裁判を打ち切る制度です。

ふたつの主な違いは、

  • 免訴……起訴された被告人の行為内容にかかわる手続上の問題がある場合
  • 公訴棄却……起訴された被告人の行為内容にかかわらない手続上の問題がある場合


に言い渡されるということです。

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3、免訴判決となるケース

免訴判決が言い渡される条件は、刑事訴訟法第337条に定められています。

  • 確定判決を経たとき
  • 犯罪後の法令により刑が廃止されたとき
  • 大赦(※)があったとき
  • 時効が完成したとき
(※恩赦の一種。国家の慶弔などに伴い内閣の決定及び天皇の認証で刑罰の全部または一部を消滅させること)


「確定判決を経たとき」とは具体的に、すでに刑罰の判断が確定している事件に対して再度の起訴がされた場合などをいいます。

先にも述べているとおり、検察官が事前に慎重な検討をしたうえで起訴をしているという点からは、このようなケースは期待できませんし、犯罪後の法令の廃止、大赦も被告人が積極的に期待できるものではありません。したがって、免訴判決を考えるうえで問題となる現実的な場合とは、時効の完成というところでしょう

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4、公訴棄却判決となるケース

公訴棄却の判決が下される条件は、刑事訴訟法第338条に明記されています。

  • 被告人に対して裁判権を有しないとき
  • 公訴が取り消されたことで公訴棄却の決定を受けたのち、新たに重要な証拠を発見していないのに改めて公訴を提起したとき
  • 公訴の提起があった事件について、さらに同一裁判所に公訴が提起されたとき
  • 公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき


被告人に対して裁判権を有しないとは、たとえば、被告人に日本の刑事裁判権が及ばない場合があります。また、公訴提起の手続がその規定に違反している場合とは、たとえば、親告罪である犯罪について被害者の告訴を欠いたまま起訴をされた場合があります。

これら4つの場合は、すべて公訴を提起するにあたって検察官が確認すべき点であるといえるので、これらも、被告人が積極的に期待できるものではないでしょう。

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5、まとめ

免訴が言い渡されると、有罪・無罪が判断されることなく刑事裁判が終了します。

もっとも、免訴は、起訴内容に問題がある場合に言い渡される判決であるところ、検察官は慎重に検討して問題がないと判断したうえで起訴をしているので、被告人が積極的に目指せる判決ではありません不当に重い刑罰を回避するためには、免訴の可能性も含めて適切な弁護活動を尽くす必要があります

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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