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未決勾留とは? 服役が実質的に短くなる仕組みと日数の計算方法
刑事事件の判決では「被告人を懲役◯年に処する。未決勾留日数中◯◯日をその刑に算入する」と言い渡されることがあります。
懲役や禁錮といった刑罰が科せられたとき、未決勾留の日数が算入されるとどのような影響があるのでしょうか?また、未決勾留日数はどのような考え方にもとづき計算されるのでしょうか?
本コラムでは、未決勾留の意味や日数の計算方法、未決勾留が考慮される刑罰の種類について解説します。
1、未決勾留とは
「未決勾留」とは、犯罪の容疑をかけられている被疑者・被告人が、逮捕されて刑事裁判の判決確定まで、刑事施設において勾留を受けている状態を指します。未決勾留を受けている期間を指すのが「未決勾留日数」です。
日本国憲法第31条は、国民の誰もが法律の定める手続きによらなければ刑罰を科せられないことを明記しています。わが国の刑事司法では「推定無罪の原則」が採用されていますが、被疑者・被告人の段階における身柄拘束はまさに「犯人として刑罰を受けているのと同じ」です。そこで、被疑者・被告人の権利を保障する観点から、未決勾留日数について刑期に入れることで、その分は「刑罰に服したもの」として考慮できる制度が用意されています。
つまり、未決勾留日数が算入されると、刑罰を受ける期間が短縮されます。刑事裁判が長期化して勾留が長引いた場合は、未決勾留日数が判決を超えて、実刑判決が言い渡されたにもかかわらず実質的に刑罰を免れることができるケースもまれに存在します。
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2、未決勾留日数の計算方法
未決勾留日数が判決に与える影響を知るために、未決勾留日数の計算方法を確認していきましょう。
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(1)未決勾留日数を計算する基本的な考えかた
まず確認しておくべきことは、未決勾留日数の基本的な考えかたです。
刑法第21条は、未決勾留日数について「その全部または一部を本刑に算入することができる」と明記しています。ここで注目すべきは「算入する」ではなく「算入することができる」と表記されている点です。つまり、未決勾留日数はかならず考慮されるわけではなく、原則として裁判官の自由な裁量に委ねられていることになります。
また、未決勾留は「勾留を受けた期間全体」を意味しますが、刑事裁判において考慮される未決勾留日数は、起訴後の勾留日数のうち、裁判準備のために通常必要とされる期間を超えた日数のみをカウントします。つまり、起訴前の被疑者としての勾留期間は考慮されません。
なお、未決勾留は「勾留」を受けている状態なので、逮捕直後から勾留が決定するまでの72時間や、起訴後に保釈されている期間は含みません。勾留を受けずに在宅捜査・在宅起訴となった場合も同様です。 -
(2)自由刑に未決勾留日数を算入する場合
自由刑とは「自由を剥奪する」という刑罰を指します。身柄を刑務所などに置かれて社会から隔離されてしまう重い刑罰で、未決勾留日数が考慮される可能性が高いでしょう。
「裁判準備のために通常必要とされる期間」は起訴から初公判までで約30日、2回目の公判以降は各公判あたり10日とされています。すると、判決で考慮されうる未決勾留日数は次の計算式で算出可能です。起訴後の勾留日数 -{30日 + 10日 ×(公判期日の回数 - 1)}
たとえば、起訴後の未決勾留日数が90日で第3回まで公判が開かれた場合は次のように計算します。
90日 -(30日 + 10日 × 2回)= 40日
なお、計算結果に端数が生じた場合は切り上げ・切り下げられて10日単位で言い渡されるのが一般的です。
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(3)財産刑に未決勾留日数を算入する場合
財産刑とは「金銭を徴収する」という刑罰です。この場合は、未決勾留日数を金銭に換算します。実際の判決では「未決勾留日数中◯日を、その1日を◯円に換算して罰金に算入する」といったかたちで言い渡されます。
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(4)かならず未決勾留日数が差し引かれるケース
未決勾留日数の算入は裁判官の裁量に委ねられていますが、法律上、かならず未決勾留日数分を差し引くことが定められているケースがあります。
刑事訴訟法第495条1項は、控訴・上告を提起している期間中の未決勾留の日数について、上訴申し立て後の未決勾留の日数を除き、全部を本刑に「通算する」と定めています。つまり、判決を受けて控訴・上告をする前日までの日数は未決勾留日数として刑罰から差し引かれるわけです。
また、控訴・上告を申し立てたのが検察官であるときや、被告人が控訴・上告したものの原判決が破棄されたときは、控訴・上告の申し立ての日から裁判の日の前日までを未決勾留日数としてかならず差し引きます。
なお、上訴を申し立てなかった場合で、自然に確定した場合については、通常は、判決が言い渡された日からの15日間分が差し引かれます。
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3、未決勾留日数が算入される刑罰
わが国の刑法には死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料の6種類の刑罰が用意されていますが、未決勾留日数が算入されるのは次の4つです。
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(1)懲役
刑務所に収容されて刑務作業が課せられる刑罰です。有期の場合は最短で1か月、最長では20年、刑が加重された場合は最長30年にわたって社会から隔離されます。無期懲役では期限の定めがないため、さらに長期の身柄拘束を受けることになります。
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(2)禁錮
懲役と同じく刑務所に収容されますが、刑務作業が課せられない刑罰です。その点に着目すれば懲役よりも軽い刑罰です。
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(3)罰金
1万円以上の金銭を徴収される刑罰です。徴収された罰金は国庫に帰属されます。
なお、罰金に控訴・上告に関する未決勾留日数に算入する場合は、刑事訴訟法第495条3項の規定によって1日あたりを4000円に換算します。 -
(4)科料
罰金と同じく金銭を徴収される刑罰ですが、金額は1000円以上1万円未満です。
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4、まとめ
未決勾留日数が算入されると、勾留を受けた日数の全部または一部が刑事裁判で言い渡される刑罰から差し引かれるため、実質的に刑罰が軽くなります。ただし、必ず未決勾留日数が算入されるわけではなく、どのくらいの日数が算入されるのかも裁判官の裁量に委ねられているため一定ではありません。
未決勾留日数が算入される可能性はあるのか、どのくらいの軽減が期待できるのかといった疑問は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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