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弁護士コラム

2022年09月07日
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SNSでの誹謗中傷は罪になる? 不安なら弁護士に相談すべき理由

SNSでの誹謗中傷は罪になる? 不安なら弁護士に相談すべき理由
SNSでの誹謗中傷は罪になる? 不安なら弁護士に相談すべき理由

令和2年5月にSNS上での誹謗中傷を原因として女性タレントがみずから生命を絶つ事件が発生したことから、「ネットでの誹謗中傷を厳しく規制すべきだ」という世論が強くなりました。この事件では、実際に女性タレントを誹謗中傷した加害者について刑罰が下されました。

SNSでは、ほかのユーザーに対して強く批判的なコメントを投稿するユーザーや、意見を違えているユーザーに対して攻撃的なコメントを投稿するユーザーが多々おられます。これらの行為は法律的には犯罪と見なされる可能性があり、厳しい刑罰が課されるリスクがあるのです。

本コラムでは、SNSにおける誹謗中傷や問われる可能性のある罪について具体的に解説します。また、逮捕や刑罰に不安を感じている方に弁護士が行えるサポートについても紹介します。

1、誹謗中傷とは?

SNSに誹謗中傷を投稿することは、犯罪となるリスクがあります。
まず、「誹謗中傷」の意味や、「批判」との違いについて解説します。

  1. (1)「誹謗中傷」の意味

    「誹謗中傷」という言葉は法律用語ではありませんが、一般的に「誹謗」と「中傷」に分解されます。

    • 誹謗……他人を悪く言うこと・悪口・そしり
    • 中傷……根拠のない嘘やでたらめを述べること


    これらをまとめると、誹謗中傷とは「嘘・でたらめなどを言いふらしたりして他人を傷つけること」といった意味になります。
    ただし、単に誹謗中傷をするだけでは、法律問題とはなりません。誹謗中傷が犯罪と見なされるのは「犯罪を構成する」あるいは「他人の権利を侵す」といった結果が伴った場合です。

  2. (2)「批判」との違い

    誹謗中傷との区別が難しいのが「批判」です。

    批判とは、相手の行動や意見について、誤りや悪い箇所を論理的に指摘して、改善を求めたり改善案を示したりするといった行為を指します。
    ただし、誹謗中傷と批判は、法律によって明確に区別されているわけではありません。批判のつもりでも激しい口調を使っていたり、相手にとって不名誉な事実を指摘していたりといった状況があれば、誹謗中傷にあたってしまうこともあるので注意が必要です。

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2、ネットでの誹謗中傷の現状

SNSをはじめとしたネット上の誹謗中傷トラブルの現状を解説します。

  1. (1)インターネット上での人権侵害事犯の件数の推移

    総務省のまとめによると、令和元年中に起きたインターネット上の人権侵害情報に関する人権侵害事件の数は1985件でした。10年前にあたる平成21年は786件だったので、その数は3倍近くにまで増えています。
    ただし、平成29年には過去最高にあたる2217件を記録したために、直近で見るとインターネット上の誹謗中傷は減少していると判断することもできます。

  2. (2)なぜインターネット上の誹謗中傷はなくならないのか?

    インターネット上での誹謗中傷を問題視する声は高まっており、さまざまな機会を通じて注意喚起が行われています。
    それでもなお誹謗中傷がなくならない原因として、下記のような問題が指摘されています。

    • 匿名性が高く、加害者が特定されにくい
    • ユーザーのなかに「間違いを正してやる」という誤った正義感をもつ人が多い
    • 相手の表情が見えないため、感情を傷つけてしまっていることに気づけない
    • 多数のなかに紛れることで罪を犯しても「自分だけではない」という意識が芽生えてしまう
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3、誹謗中傷で問われる罪とは?

SNS上での誹謗中傷は、内容や状況に応じてさまざまな罪に問われます。
誹謗中傷によって問われる可能性のある罪について、簡潔に紹介します。

  1. (1)名誉毀損罪

    誹謗中傷を罰する代表的な犯罪が「名誉毀損罪」です。刑法第230条に規定されている犯罪で、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立します。

    名誉毀損罪は、他人の社会的名誉を害する行為を罰する犯罪です。嘘・でたらめな情報はもちろん、言いふらした内容が真実であっても、相手の社会的名誉を傷つけるものであれば罪に問われるのです。

    法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です

  2. (2)侮辱罪

    「バカ」や「無能」といった抽象的な悪口などのように、事実を摘示しない内容であってもSNS上で悪口を投稿すれば刑法第231条の「侮辱罪」が成立することがあります。
    侮辱罪の法定刑は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料です

  3. (3)信用毀損罪

    虚偽の風説を流布、または偽計を用いて他人の経済的な信用能力を傷つける行為は、刑法第233条の「信用毀損罪」に問われます。個人の支払い能力に加えて、商品やサービスの品質などの信用も保護の対象です。

    3年以下の懲役または50万円以下の罰金が規定されています

  4. (4)業務妨害罪

    虚偽の風説を流布、または偽計を用いたうえで、他人の業務を妨害すると、刑法第233条の「偽計業務妨害罪」が成立します。また、相手に対して威力を用いて業務を妨害すると、刑法第234条の「威力業務妨害罪」に問われるのです。

    公然・誇示的、可視的であれば「威力」に、非公然・隠密的、不可視的であれば「偽計」にあたるとされていますが、両者の境界線は明確ではありません。

    法定刑は信用毀損罪と同じで、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です

  5. (5)脅迫罪

    誹謗中傷のなかに相手への危害を告げて脅す内容が含まれていれば、刑法第222条の「脅迫罪」に問われるおそれもあります。
    本人への危害を告げる投稿のほか、本人の親族に対する危害を告げる行為も、脅迫に含まれるのです。

    法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です

  6. (6)強要罪

    脅迫とあわせて「アカウントを閉鎖しろ」「謝罪コメントを投稿しろ」など義務のないことをおこなわせると、刑法第223条の「強要罪」に問われることもあります。未遂も罰する規定があるため、たとえ被害者が要求を飲まなくても、犯罪の成立は妨げられません。

    法定刑は3年以下の懲役です

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4、ネットを使った誹謗中傷の例

インターネット上で起きた誹謗中傷は、拡散力が高いうえに群集心理がはたらいて非難が集中する「炎上」と呼ばれる状態を引き起こすことで、大きな被害を生じさせるおそれがあります。
ネットを通じて行われた誹謗中傷について、実際にあった事例を詳細します。

  1. (1)著名人を自殺に追い込んだ事例

    冒頭でも触れた女性タレントが自殺した事例では、本業のプロレスラーという職業柄もあって人気番組のなかで批判を受けやすいキャラクターを演出していたため、本人のSNSに誹謗中傷にあたる投稿が集中しました。数多くの誹謗中傷がきっかけとなって女性タレントはみずからの生命を絶ちましたが、その後、本人のSNSに「死ね」「きもい」などとコメントを投稿した男など複数のユーザーが、侮辱罪で摘発されています。

  2. (2)高校における体罰問題

    平成24年に大阪市立の高校でバスケットボール部の顧問による体罰を苦に生徒が自殺した事件が発生しました。
    事件後はインターネット掲示板やSNSを中心に同校への批判が集中しますが、さらに無関係な生徒までもが誹謗中傷の的になったり、他校の生徒などから実生活で嫌がらせを受けたりといった被害を受けました。

  3. (3)事件の加害者であるというデマの書き込み

    平成29年に発生した東名高速道路上でのあおり運転による死亡事故をめぐり、逮捕された加害者の勤務先だと思わせる投稿をした複数名のユーザーが摘発されました。実際は無関係な会社であったにもかかわらず批判の電話が集中し、同社は一時的に休業する事態に至ります。名誉毀損罪の疑いで合計11名が摘発されましたが、起訴された被告人の男が自殺するなど、誹謗中傷の加害者も不幸に陥ってしまった事例として注目されました。

  4. (4)「学校裏サイト」での誹謗中傷

    平成17年、茨城県内の高校でいわゆる「学校裏サイト」と呼ばれる掲示板において「消えろ」「やめるのを楽しみに待っているよ」などといった誹謗中傷を受けた女子生徒が退学するトラブルが起きました。
    多くの生徒がアクセスするサイトだったことから、学校における実生活でも無視などのいじめを受けた女子生徒は、入学からわずか2か月で退学を余儀なくされてしまいます。この事例では、女子生徒側が元同級生やその両親を相手に慰謝料の支払いを求める訴訟を起こしました。

  5. (5)保険会社への誹謗中傷

    平成13年、ネット掲示板「2ちゃんねる」(現在は「5ちゃんねる」)に日本生命の社員や会社を誹謗中傷する投稿が集まったことで、日本生命側が書き込みの削除を依頼しました。2ちゃんねる側は社員個人を対象とした書き込みの削除に応じたものの、会社に対する書き込みの削除には応じなかったため、日本生命側が裁判を起こして、削除命令の決定が下されています。

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5、隠語を使った誹謗中傷は罪にならない?

上述してきたように、ネットで誹謗中傷する行為は、犯罪に問われる可能性があります。
「しかし、たとえば隠語などを用いたあだ名、伏字・イニシャルなどを使えば、個人を特定していないので罪にはならないのではないか」といった疑問をもっている方もおられるでしょう。

以下では、隠語などを使った誹謗中傷が罪にあたるかどうかについて、解説します。

  1. (1)隠語を使っても個人の特定が可能なら犯罪が成立する

    隠語を使った場合でも、その隠語から個人の特定が可能であれば名誉毀損などの犯罪が成立します。掲示板のテーマやスレッド、SNSの会話の文脈、前後のコメント内容などに照らすと、伏字やイニシャルでも「誰を指しているのか」を特定できるケースは少なくありません。

    ネット上のハンドルネーム・アカウントネームのほか、芸名・ペンネーム・源氏名などのようにその名前が広く認知されている場合も、本名こそ指摘していなくても人物を特定しているため犯罪の成立は免れないでしょう

  2. (2)個人を特定できなければ罪に問われない?

    隠語を使って他人を誹謗中傷したが、コメントの前後を見ても個人を特定できない、伏字やイニシャルばかりの会話で誰を指しているのか明確ではないといった場合は、名誉毀損罪・侮辱罪などの犯罪にはあたらないように思われることもあります。

    とはいえ、特定の人から見れば個人を特定できることもあり、そこから不特定の人に広がっていく可能性もあります。また、誰を指しているのかわからないため無関係な人から「自分のことを指しているのではないか?」などと邪推されてしまい、無用のトラブルを招いてしまうという危険があります。そのため、隠語を用いても誹謗中傷は行うべきでないといえるでしょう

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6、匿名で書き込んでも特定される

SNS・ネット掲示板・ブログの多くは、本名を明かさずにアカウントネーム・ハンドルネームなどで利用可能です。アカウント作成の際に本名を登録した場合でも、ほかのユーザーにその情報を知られることはありません。

では、本名を明かさずに匿名でコメントを投稿できるので「誰が加害者なのかわからない」のかというと、それは間違いです。一定の手続きを経れば、匿名で利用しているSNSでも、個人情報を特定されてしまう可能性があります。

  1. (1)被害者が「発信者情報開示請求」をするおそれがある

    匿名で利用しているSNSでも、被害者がプロバイダ責任制限法にもとづいた「発信者情報開示請求」の手続きを取れば、個人を特定できる情報が開示されてしまいます。
    個人を特定されてしまえば、慰謝料など賠償金の支払いを求められたり、個人を名指しして処罰を求める刑事告訴の対象になったりする可能性があるのです。

  2. (2)発信者情報開示請求によって明かされる情報

    発信者情報開示請求から発信者情報の開示までは、主に二段階の手続きによって行われます。

    最初の段階は、SNSやネット掲示板の管理者である「コンテンツプロバイダ」へのアクセス情報の開示請求です。この手続きで開示されるのは、投稿の際のIPアドレスやタイムスタンプなどの情報なので、個人の特定には至っていません。

    個人が特定されるのは、最初の段階で開示されたIPアドレスをもとに「インターネットプロバイダ」に対して契約者情報の開示を請求してからです。インターネットプロバイダは、契約者の氏名や住所といった情報を保有しているため、裁判所からの命令を受ければこれらの情報が請求者に開示されてしまうことになるのです

  3. (3)発信者情報開示請求が認められてしまう条件

    発信者情報開示請求は、裁判所に請求したらかならず認められる、というものではありません。
    おもに次の2点を満たしている場合に限って、請求が認められるのです。

    • 権利が侵害されたことの明白性
    • 開示を受ける理由の正当性


    もっとも重要なのは「権利侵害の明白性」です。単に「誰が投稿者なのかを知りたい」というだけでは足りず、プライバシーや表現の自由などが侵害されたという事実がないと、許可されません。

    次に、請求者が発信者の個人情報を取得することの合理的な必要性が要求されます。
    削除請求のために必要である、損害賠償請求の権利を行使したい、刑事告訴のために必要であるなど、正当だと認められるだけの理由がある場合に限って、開示が認められるのです

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7、誹謗中傷にあたるか不安なときは弁護士に相談を

SNSなどで他人を強く批判してしまったり、嘘やでたらめな情報を流して他人の名誉や信用を傷つけてしまったりといった場合は、誹謗中傷として厳しい罰を受ける可能性があります。
自分のコメント投稿が誹謗中傷にあたるのかどうか不安に感じたときには、ただちに弁護士に相談しましょう

  1. (1)「意見照会書」への対応を依頼できる

    誹謗中傷の加害者に対して発信者情報開示請求がおこなわれる際には、コンテンツプロバイダやインターネットプロバイダから「意見照会書」が送付されます。
    プロバイダが発信者に対して「情報を開示してもよいか?」と確認するための書類であるため、無視や放置はもちろん、むやみな不同意も避けるべきです。

    権利侵害にあたらない、あるいは請求に正当性がないことを法的な立場から主張しなければならないので、弁護士にアドバイスや作成の代理を依頼したほうが安全でしょう

  2. (2)示談の際に助けとなる

    SNS上の誹謗中傷は早期に被害者との示談を成立することで、刑事事件化を回避できる可能性があります。しかし被害者の処罰感情が強いために交渉を拒否されるなど、示談が困難な場合が少なくありません。
    公正中立な立場である弁護士に依頼すれば、被害者の警戒心がやわらぎ、示談に応じてもらえる可能性が高まります

  3. (3)逮捕・刑罰を回避できる可能性がある

    誹謗中傷が犯罪にあたる場合は、警察による逮捕やその後の刑事裁判を経て、厳しい刑罰を科せられるおそれがあります。弁護士に依頼することで、捜査機関に対して逃亡・証拠隠滅のおそれがない旨を主張する、被害者との示談成立によって被害届や告訴状を取り下げてもらうなどして、逮捕や刑罰を回避できる可能性を高めることができるのです

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8、まとめ

SNS上の誹謗中傷は、名誉毀損罪などの犯罪にあたる危険があります。逮捕や刑罰を回避して、事態を穏便に解決するには、被害者との示談交渉が欠かせません。

誹謗中傷にあたるコメントの投稿で逮捕や刑罰に不安を感じているなら、まずは、ネット上のトラブルや刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。

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