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弁護士コラム

2022年01月20日
  • その他
  • 共謀共同正犯

共謀共同正犯とは? 犯罪を実行せず計画しただけでも逮捕されるのか

共謀共同正犯とは? 犯罪を実行せず計画しただけでも逮捕されるのか
共謀共同正犯とは? 犯罪を実行せず計画しただけでも逮捕されるのか

共犯とは「一緒に犯罪を実行したとき」の罪、というイメージをもつ方が多いのではないでしょうか。しかし、刑法における共犯の考え方は単純ではありません。さまざまなかたちで犯罪に関与した者を共犯とし、処罰が下されることになるため、犯罪を一緒に実行していなくても共犯として容疑をかけられるケースもあります。

共犯の種類のひとつとして存在するのが、共謀共同正犯です。実際の犯罪の実行に関与していなくても犯人として処罰の対象となるため、思いがけず罪を問われる事態になってしまうことも少なくありません。

本コラムでは、共謀共同正犯の意味や成立要件、実際に適用された事例や容疑をかけられたとき、早急に弁護士に相談すべき理由を解説します。

1、共謀共同正犯とは

刑法第60条は、2人以上が共同して犯罪を実行した場合に「すべて正犯とする」と定めています。

正犯とは、「みずから犯罪行為をはたらいた者」という意味です。ひとりで犯罪を実行した場合は、単独正犯と呼ばれる一方で、犯罪を共同で実行した関係にあれば共同正犯となり、全員が正犯として罰せられることになります。

共謀共同正犯は共同正犯のひとつで、実際の犯罪行為に加わっていなくても正犯と同じように扱われます。

ひとつの犯罪を実行するための共同意思のもと、一体となって互いに他人の行為を利用していること、他人の行為を自分の犯罪実行の手段として利用していることから、共謀段階だけ参加している場合でも厳しく罰する規定が設けられているのです

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2、共謀共同正犯、実行共同正犯、幇助犯の違い

共同正犯には、共謀共同正犯のほかにも、実行共同正犯があります。

実行共同正犯とは、その名のとおり犯罪行為の実行を共同した者すべてを罰するという考え方です。一般的な共犯のイメージは、実行共同正犯を指すものだと考えてもよいでしょう。実際に犯罪行為の実行に関与しているため、共犯関係が存在するのかを争う余地はほとんどありません。

共犯の種類のうち、共謀共同正犯と同じく実行行為がなくても成立するのが幇助(ほうじょ)犯です。

刑法第62条1項は、正犯を幇助した者を幇助犯とすることが定められています。幇助とは、犯罪の実行行為ではない行為によって正犯の実行行為を容易にする行為をいい、たとえば犯行用具を用意・提供したり、車を用意して運転手となり逃走を助けたりする行為が典型的です。

幇助犯は、刑法第63条によって、正犯の刑を減軽すると定められています。実行行為がないという点においては共謀共同正犯と似ていますが、共謀共同正犯は正犯として厳しく罰せられる一方で、幇助犯は必ず減軽されるという点が大きく異なります

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3、共謀共同正犯の成立要件

共謀共同正犯が成立するには、次の3点が要件となります。

  • 犯罪を共同遂行する意思、あるいは正犯の意思があること
  • 共謀の事実があること
  • 共謀に基づいた実行行為があること


ある犯罪行為を共同で、あるいはみずからの犯罪として遂行する意思があったうえで、実際に共謀した事実があり、共謀に基づいて犯罪を実行した場合に共謀共同正犯が成立します。

共謀は言葉などによる明確なものに限らず、暗黙のうえでの了解でもよいとされているため、どのような行為や状況を共謀とするのかはあいまいです。ただし「共同遂行の意思」や「正犯の意思」を欠くと、たとえ複数人のうちのひとりが犯罪を実行しても幇助犯など別の共犯関係となります。

なお、たとえ共謀があったとしても、犯罪を実行しなければ共謀共同正犯は成立しません。

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4、共謀共同正犯の刑罰

共謀共同正犯は、刑法第60条の規定によって正犯として扱われます。

そのため、共謀関係にあった全員が実行行為をはたらいた者と同じ犯罪による刑罰を受けます。たとえ実行行為をはたらいていなくても、共謀関係にあれば厳しい処罰は免れられません。

ただし、正犯として扱われるといっても、全員が等しく罰せられるというわけではありません。犯罪の実行に向けてどのような影響を与えたのか、犯罪の結果によってどのような利益を得たのかなどによって、実際に下される量刑には差が生じる可能性が高いでしょう。

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5、共謀共同正犯の事例

実際の共謀共同正犯が適用された事例を紹介します。

● 詐欺事件について共謀共同正犯の成立を認めた事例
暴力団員の入会を認めていないゴルフ倶楽部で、すでに会員登録をしていた会員が暴力団員を同伴し、施設を利用させた行為について、詐欺罪の共謀共同正犯の成立を認めた事例です。厳しい入会審査を通過した会員は「同伴者は暴力団員ではないことを保証する」という意思を表示していることになります。

本来は入会・利用できないはずの暴力団員がゴルフ倶楽部の施設利用契約を成立させる行為は刑法第246条2項の詐欺罪の成立を免れず、暴力団員と意思を通じてその権利を得させしめた会員は詐欺罪の共謀共同正犯であると結論付けられました(平成26年3月28日最高裁判決)。

● 廃掃法違反事件について共謀共同正犯の成立を認めた事例
産業廃棄物を不法投棄した業者が廃棄物の処理及び清掃に関する法律(通称:廃掃法)違反に問われた事件で、廃棄物の処理を依頼した運送・倉庫業者に共謀共同正犯の成立を認めた事例です。

産業廃棄物を不法投棄する危険を確定的に認識していたわけではなくても、その危険を強く認識しながら「それでもやむを得ない」と考えて業務を委託した行為は、未必の故意による共謀共同正犯としての責任を負うと判示されています(平成19年11月14日最高裁判決)。

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6、共謀共同正犯について弁護士に早期に相談すべき理由

共謀共同正犯として容疑をかけられてしまった場合は、ただちに弁護士に相談しましょう

  1. (1)不当に重い量刑を回避できる可能性がある

    共謀共同正犯は、正犯と同じく厳しい刑罰を受けます。ただし、事前に実行犯となんらかの話し合いや接触があったとしても、必ず共謀共同正犯が成立するとは限りません。果たした役割の内容などの状況次第では、共謀共同正犯ではなく幇助犯の成立が適切であるケースも存在します。

    幇助犯は刑法第62条1項・第63条の規定によって必ず減軽されるため、共謀共同正犯となるか、幇助犯となるかは量刑に大きな影響を与えるでしょう。

    共謀共同正犯ではなく幇助犯が適用されるべきケースでは、弁護士が客観的な証拠を示して弁護活動を尽くすことで、幇助犯と認められる可能性が高まります。

  2. (2)被害者との示談交渉を一任できる

    被害者が存在する事件で共謀共同正犯としての容疑をかけられてしまった場合、もっとも穏便な解決方法となるのが「被害者との示談交渉」です。真摯(しんし)に謝罪したうえで被害を弁済・賠償し、被害届や刑事告訴の取り下げが実現すれば、検察官による不起訴処分をもって事件が終結する可能性が高まります。

    刑事事件の解決実績が豊富な弁護士に対応を一任することで、示談交渉の円滑化と円満な示談成立が期待できるでしょう。

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7、まとめ

たとえ犯罪の実行行為をはたらいていなくても、共謀関係にあると判断されれば「共謀共同正犯」として実行犯と同じく処罰されます。ただし、共謀共同正犯が成立するかどうかの判断は難しく、状況次第では減軽が適用される幇助犯が適用される可能性もあるので、弁護士のサポートは欠かせません。

共謀共同正犯としての容疑をかけられている場合は、ただちに刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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