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弁護士コラム

2022年02月22日
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承諾殺人の刑期とは? 同意のもとでも殺人は罰せられる?

承諾殺人の刑期とは? 同意のもとでも殺人は罰せられる?
承諾殺人の刑期とは? 同意のもとでも殺人は罰せられる?

相手の意思に反して相手を殺害した場合、殺人罪に問われることは容易に想像できるでしょう。では、相手が自身の殺害に同意していた場合も行為者は罪に問われるのでしょうか。

この場合は承諾殺人の罪(同意殺人罪)が成立し、殺人罪と同じく犯罪として厳しく処罰されることになります。ただし、殺人罪と承諾殺人の罪は刑罰の種類や刑期の長さに違いがあります。

本コラムでは承諾殺人を取り上げ、嘱託殺人や自殺関与罪との違い、刑罰の内容について解説します。自分の家族が承諾殺人の罪で逮捕された場合に弁護士へ相談するべき理由も確認しましょう。

1、承諾殺人は「同意殺人」の一種

刑法第202条は、自殺への関与および同意殺人について、次のように明記しています。

人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。


前段の「人を教唆しもしくは幇助して自殺させる」ことを「自殺関与罪」、後段の「人をその嘱託を受けもしくはその承諾を得て殺す」ことを「同意殺人罪」といいます。

まずは、同条後段の「同意殺人罪」について詳しく解説します

  1. (1)同意殺人罪は「嘱託殺人」と「承諾殺人」に分けられる

    同意殺人罪は「嘱託殺人」と「承諾殺人」の罪に分けられます。

    嘱託殺人とは「人をその嘱託を受けて殺す」こと、すなわち被害者から殺害を依頼されて殺す犯罪です。承諾殺人は「人をその承諾を得て殺す」こと、すなわち被害者に殺害を申し込み、その同意を得て殺す犯罪です。

    どちらの罪も、被害者本人が殺害される意志をもっている点は共通しています。一方、嘱託殺人が被害者からの働きかけで殺害に至るのに対し、承諾殺人は被害者ではなく加害者からのはたらきかけに対して同意させ殺害に至る犯罪です。
    この点で、嘱託殺人よりも承諾殺人のほうが重い犯罪だと考えられています

  2. (2)同意殺人罪の刑罰

    嘱託殺人および承諾殺人の刑罰は、ともに「6か月以上7年以下の懲役または禁錮」です。

    懲役とは刑務所に収監されて刑務作業に従事する刑を、禁錮とは刑務所に収監される刑を指します。
    懲役と禁錮の違いは刑務作業の有無です。刑法上、禁錮よりも懲役のほうが重い刑とされていますが、刑務作業がないことは逆に苦痛であるとして自ら望んで刑務作業に従事する受刑者も少なくありません。

    どちらの刑になるのか、また刑期が何年になるのかは法定刑の範囲内で裁判官が決定します

  3. (3)同意殺人罪は未遂でも罰せられる

    嘱託殺人および承諾殺人は、未遂でも処罰されます(刑法第203条)。たとえば相手の承諾を得て殺害行為におよんだものの結果として命に別状はなかったケース、殺害行為の途中で第三者に止められたため殺害を断念したケースなどが考えられます。

    未遂も同じ法定刑の範囲で罰せられますが、量刑判断で考慮される可能性があります。また自分の意思で殺人を中止した場合は、刑が減軽または免除されます(刑法第43条)。

  4. (4)同意殺人罪に問われた事例

    令和3年9月、東京都内で同居中の妹を殺害しようとしたとして、高齢の女性が殺人未遂の容疑で緊急逮捕される事件がありました。女性は自ら110番通報し、妹に頼まれて首を絞めたといった内容の供述をしていたようです。女性は5か月前、自身の三男に対する嘱託殺人の罪で起訴されており、妹への殺人未遂容疑で逮捕されたのは保釈中の出来事でした。以前の事件でも、女性は三男から殺してほしいと頼まれたと、今回の事件と同じような趣旨の供述をしていたと報道されています。

    また令和3年5月には、広島県内で妻の介護をしていた高齢の男性が、承諾を得て妻を殺害したとして、承諾殺人の罪で起訴されています。男性の手首には切り傷があり、男性が無理心中を図ったとみられています。

  5. (5)同意殺人罪が成立するには被害者の真意が重要

    同意殺人罪が成立するためには、嘱託・承諾する能力のある者が真意で同意していることが必要です。したがって、死ぬことの意味を理解できない幼児や意思能力を欠く精神障害者などが被害者の場合、同意殺人罪は成立しません。このような場合は、刑法第199条の殺人罪として処罰されます。

    ただし、被害者が亡くなれば、その真意を明らかにするのは容易ではありませんそのため、客観的事情が重視されることになります
    たとえば、被害者と加害者との間のメールやLINEなどメッセージの履歴、二人が知り合った経緯、被害者が抵抗した痕跡の有無、被害者が生前に周囲へ話していた内容など、さまざまな事情が判断の材料となるでしょう。

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2、同意殺人罪と殺人罪の刑期の違い

同意殺人は、殺人罪と同じく刑法第26章「殺人の罪」に定められている犯罪です。
どちらも故意の行為により人の命を奪う犯罪ですが、刑罰の内容は大きく異なります。殺人罪の定義や構成要件を確認しながら、ふたつの罪の刑罰がどのように違うのか、なぜ違うのかといった点を解説します。

  1. (1)殺人罪とは

    殺人罪は、その名の通り人を殺害する犯罪です(刑法第199条)。人の生命という、もっとも重大な法益を保護するために設けられています。

    殺人罪は、『①人を』『②殺意をもって』『③殺す』ことで成立します。それぞれの構成要件を詳しく解説します

    ① 「人」とは
    人とは、行為者を除く自然人のことです。人の始期については、堕胎罪(刑法第212条)と区別する観点から、胎児が母体から一部を露出したときからだと解されています。
    人の終期については、通説では心臓の停止・肺呼吸器の停止・瞳孔反応の消失の3つの兆候が確認されたときとされていますが、近年では脳死を人の死とする説も唱えられています。

    ② 殺意とは
    殺意とは人を殺す意思(故意)をいいます。殺意がなく人を死なせてしまった場合は、傷害致死(刑法第205条)や過失致死(刑法第210条)など、ほかの犯罪が問題となります。

    殺意には『相手を殺してやろう』という確定的故意はもちろん、『自分の行為で相手が死んでしまうかもしれないが構わない』という未必の故意も含まれます。殺意があったか否かは、凶器の有無や創傷の部位、程度、犯行時の被告人と被害者の行動など客観的な事情から判断されます。

    ③ 殺すとは
    人を殺すとは、人の生命が自然に終わるよりも先に断絶させることをいいます。殺害の方法は特に問われていません。刺殺・絞殺・射殺・毒殺などだけではなく、精神的苦痛を与えて死なせる方法などがあります。また、たとえば乳児を飢え死にさせる目的で、あえてミルクをあげないなど、不作為(何もしないこと)により命を奪った場合も殺人罪は成立します。

  2. (2)殺人罪の刑罰

    同意殺人罪の刑罰が「6か月以上7年以下の懲役または禁錮」であるのに対し、殺人罪の刑罰は「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」です。
    殺人罪には最高刑である死刑が規定されているほか、刑期も無期または5年以上(20年以下)と同意殺人より長く、さらに禁錮の規定はありません。

    同意殺人罪の刑罰が殺人罪よりも軽いのは、殺人罪が本人の意思に反して殺害する犯罪なのに対し、同意殺人罪は本人の意思に反しているわけではないためです。

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3、類似する罪「自殺教唆」と「自殺幇助」

同意殺人罪と同じ条文に定められている、自殺に関与する罪についても確認しましょう。

自殺の違法性については学説上議論がありますが、法律上は犯罪にあたらず処罰されません。しかし人の生命という重大な法益に他人が関与することは違法であるという考え方は共通しており、自殺関与罪として厳しく処罰されます。

  1. (1)「自殺教唆」と「自殺幇助」の違い

    自殺に関与する罪は、「自殺教唆」と「自殺幇助」に分けられますが、総称して自殺関与罪といわれることもあります。

    自殺教唆とは、自殺の意思のない人をそそのかして自殺を決意させる犯罪です。

    平成26年には、交際相手の女性に携帯電話から『死ねよ』などとメッセージを送り自殺させたとして、大学生の男性が自殺教唆の疑いで逮捕される事件がありました。

    一方、自殺幇助とは、すでに自殺の意思がある人の自殺を手助けする犯罪をいいます。たとえば毒物を入手して、自殺を決意している人に提供するような行為が該当します。

  2. (2)自殺関与罪の刑罰

    自殺教唆罪と自殺幇助罪の刑罰は、いずれも「6か月以上7年以下の懲役または禁錮」です。同意殺人罪と同じ法定刑が適用されますが、同意殺人罪では人を殺害する行為があるため自殺関与罪よりも実際に言い渡される量刑が重くなる場合があります。

    自殺関与罪も、同意殺人罪と同様に未遂でも罰せられます(刑法第203条)。

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4、家族が逮捕されてしまったら弁護士へ相談を

同意殺人罪や自殺関与罪で家族が逮捕されてしまったら、早急に弁護士へ相談してサポートを受けましょう。なぜ弁護士のサポートが必要なのか、その理由を解説します。

  1. (1)逮捕直後でも弁護士だけは本人と面会できる

    逮捕直後から実施される取り調べでは、逮捕された本人は極度の緊張や不安、取調官の誘導などにより自身に不利な供述をしてしまうおそれがあります。作成された供述調書は後の裁判で重要な証拠として扱われ、一度同意した内容を後で覆すのは困難です。そのため、逮捕直後に本人と面会して取り調べのアドバイスを与える必要があります。

    しかし逮捕後72時間は、たとえご家族であっても本人と面会できず、電話をすることも許されません。その点、弁護士であれば、このような制限を受けることなく、いつでも本人と面会できます。取り調べの注意点など重要なアドバイスを与えられるため、不利な供述調書を作成される事態を回避できるでしょう

  2. (2)執行猶予つき判決や刑の減軽を目指せる

    同意殺人罪や自殺関与罪は、人の死亡という重大な結果が生じていることから不起訴となる可能性は低く、公判請求されたうえで厳しい刑が下される事態が予想されます。

    ただし、刑期の下限が6か月なので、執行猶予の条件である「3年以下の懲役または禁錮」の言い渡しを受けた場合には、情状により判決に執行猶予がつく可能性があります(刑法第25条)。
    また、執行猶予がつかない場合でも、犯行に酌むべき事情があると認められると、刑が減軽される可能性があるでしょう(刑法第66条)。

    執行猶予の獲得や刑の減軽を目指すためには、弁護士による弁護活動が不可欠です
    弁護士が裁判官に対して事件の背景や犯行に至った経緯、被告人・被害者の状況などを丁寧に説明する、被告人の酌むべき事情を証言してくれる情状証人を選定するなど、あらゆる弁護活動を行うことで執行猶予や減軽の可能性が生まれます。

    また、いずれの罪も法定刑がより重い殺人罪の成立が問題になるケースがあるため、その場合には弁護士が被害者の嘱託・承諾があったことの主張・立証するなど、殺人罪の成立を回避するための活動も行います。

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5、まとめ

承諾殺人は被害者の同意を得たうえで殺人する犯罪をいい、同意殺人罪のひとつにあたります。刑罰は懲役または禁錮のいずれか、刑期は6か月以上7年以下と重く定められており、実刑判決が予想される重大な犯罪です。
もしも、ご家族が承諾殺人の罪で逮捕されてしまったら、弁護士のサポートは必要不可欠です。早急に弁護士に相談し、弁護活動を依頼しましょう。

刑事弁護の実績が豊富なベリーベスト法律事務所が力を尽くします。まずは、ご相談ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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