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不起訴の証明書になる不起訴処分告知書とは?
刑事事件では、刑事裁判で有罪が確定するまでは犯人として扱ってはいけないという「無罪推定の原則」がはたらきます。
社会生活においても、逮捕されたり警察から取り調べを受けたりといったことだけでは、犯罪行為に及んだ事実が確定しているわけではない以上、何らかの不利益を受けることがあってはなりません。
しかし実際には、逮捕された事実のみで会社を解雇されるなどの不利益を受けてしまう場合があります。このようなとき、不起訴になった事実を証明できれば、解雇などの不利益処分に対抗できる場合があります。その際に不起訴となった事実を証明することのできる書類が、「不起訴処分告知書」です。
本コラムでは不起訴処分告知書の意味や請求方法、請求時期などについて解説します。
1、不起訴を証明する「不起訴処分告知書」とは
「不起訴処分告知書」とはどのような書類なのでしょうか。不起訴の意味や告知書の発行時期、費用などとあわせて解説します。
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(1)そもそも不起訴とは
刑事事件の被疑者が有罪か無罪か、有罪の場合にどのような刑罰を言い渡すのかは、必ず刑事裁判によって判断されます。
そして、検察官が刑事裁判による判断をするよう裁判所に求める手続きを「起訴」といいます。起訴されると被疑者は被告人と呼ばれる立場となり、刑事裁判で審理されます。
刑事裁判で有罪と判断された場合、事件の内容に応じた刑が言い渡され、前科がつくことになります。
一方、検察官が刑事裁判による判断を求めないで事件の捜査を終了することを「不起訴」といいます。不起訴になると刑事裁判は開かれません。刑罰を受けることがないので、前科にはなりません。
不起訴処分となる理由には、犯罪をおこなったことは明らかであるが検察官の判断で起訴をしない場合(起訴猶予)、犯罪をおこなったことを証明するには証拠が不十分である場合(嫌疑不十分)など複数のものがあります。
日本で被疑者を起訴するか不起訴にするのかを判断できるのは検察官だけです(刑事訴訟法第247条)。犯罪の捜査をした警察官や、犯罪の被害者などが起訴・不起訴を判断することはできません。 -
(2)不起訴処分告知書は不起訴の公的な証明書
「不起訴処分告知書」とは、検察官が被疑者に対し不起訴になったことを告知する証明書のことです。
刑事訴訟法第259条には「検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない」とあります。
「請求があるときは」と記載のとおり、被疑者が請求しない限りは発行されません。不起訴になれば当然に発行されるわけではないので注意が必要です。しかし請求すれば必ず発行されますし、不起訴になった事実を客観的に証明できます。
不起訴処分告知書には、被疑者の氏名と事件を担当した検察官の氏名、被疑事実、不起訴になった旨と不起訴処分の日付が記載されています。 -
(3)いつからいつまで請求できる?
不起訴処分告知書の発行を請求できるのは、正式に不起訴処分が決定した後からです。いつまでに請求すればよいのかについては、特に定めはありません。
もっとも、不起訴処分告知書によって事件の終了を客観的に証明できて不安定な身分が解消されますし、勤務先などに提出を求められている場合もあるはずです。不起訴処分告知書が必要であれば、不起訴の決定後、できるだけはやく請求するのがよいでしょう。 -
(4)不起訴処分告知書の発行にかかる費用
不起訴処分告知書は無料で発行してもらえます。ただし、検察庁から郵送してもらう場合は郵便切手代が必要になる場合があります。
また、弁護士を通じて請求する場合は、弁護士に支払う実費等の費用が発生する場合があります。
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2、不起訴処分告知書の請求方法
不起訴処分告知書を実際に請求する方法や流れを確認しましょう。
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(1)基本的には検察官への電話で請求できる
不起訴処分告知書を発行するのはその事件を担当した検察官(検事)です。口頭での請求で足りるケースもあるので、まずは取り調べを受けた検察庁へ電話して担当検察官へつないでもらい、不起訴処分告知書が必要な旨を伝えましょう。
担当検察官が異動などで在籍していない場合は、電話口で事情を説明すれば別の検察官が対応してくれるはずです。 -
(2)申請書が必要な場合もある
検察官によっては口頭での請求では発行してもらえず、申請書を提出するよう求められる場合があります。
申請書の書式に法的なルールはありませんが、被疑者の氏名と検察官の氏名、不起訴処分告知書を申請する旨、申請日などを記載することになるでしょう。検察官や検察庁によって申請書の記載内容が異なる場合があるので、何をどのように書けばよいのかは事前に検察官へ確認するのが確実です。 -
(3)申請書の提出方法
申請書の提出方法は、検察庁へ出向いて提出する方法と、郵送で提出する方法のいずれかです。
検察庁へ直接出向く場合は、運転免許証などの身分証明書と印鑑を持って行きましょう。印鑑は認め印で問題ありませんが、インク浸透印(朱肉を使わずにスタンプ式で押印出来るもの)は不可です。また、いきなり訪問しても担当検察官が取り調べ中などで対応できない場合があるため、事前に電話して提出日時などを伝えておくほうがよいでしょう。
郵送する場合は、申請書と一緒に切手を貼った返信用封筒を送ります。検察官によって普通郵便で返信するか簡易書留で返信するか等取り扱いが異なるので、事前に検察官に電話確認のうえ、郵送方法に応じた切手を準備しましょう。
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3、不起訴処分告知書はいつ発行可能となるのか?
不起訴処分告知書の提出を勤務先から求められている場合などは、一刻もはやく受け取りたい考えることでしょう。不起訴処分告知書の発行時期や受け取り方法について解説します。
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(1)不起訴処分が正式に決定した後
不起訴処分告知書は不起訴になった事実を告知する書類なので、不起訴処分が正式に決定した後にしか発行してもらえません。
では、いつ不起訴が決定したことが分かるのかというと、身柄事件と在宅事件で異なります。
身柄事件では逮捕から最長で23日の勾留期間内に起訴・不起訴が決定します。在宅事件では起訴・不起訴の決定までの期限はありません。検察官には不起訴になったことを被疑者に通知する義務はないので、在宅事件ではいつの間にか不起訴になっていたというケースもあります。そのため、自分が不起訴になったかどうかを知るには、被疑者本人が検察官に確認する必要があります。事件に弁護士がついていれば、弁護士を通じて確認できるでしょう。 -
(2)不起訴処分告知書の受け取り方
受け取り方法も、検察庁で直接受け取るか、郵送で送ってもらうのかの2通りがあります。どちらの方法でもよいとする検察官もいれば、直接の受け取りしか認めない検察官もいますので、事前に確認しておきましょう。
また、申請は本人しかできませんが、受け取りについては家族などの代理が認められる場合があります。その場合は戸籍謄本などの提出を求められるかもしれないので、代理での受け取り可否も含めて、事前に検察官へ確認しておきましょう。
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4、不起訴処分告知書を発行してもらえない場合
不起訴処分告知書を発行してもらえないのは以下のケースです。
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(1)不起訴処分が正式に決定する前の場合
不起訴処分が正式に決定する前は、いくら不起訴処分告知書の発行を請求しても発行してもらえません。不起訴になったときにすぐ発行されるよう予約しておくことなどもできません。
検察官からの取り調べの際、「不起訴の方向で検討します」などと判断の見通しを示される場合があります。しかしこの時点ではまだ不起訴処分は正式に決定していません。担当検察官が不起訴にするべきと判断すると裁定書を作成し、検察庁が組織として検討・決断したうえで担当検察官の名義で処分を決定します。 -
(2)微罪処分となった場合
刑事事件の捜査は、一次的には警察が、二次的には検察が行います。このとき警察から検察へと事件が引き継がれる手続きを「送致」といいます。刑事訴訟法はすべての事件を送致する全件送致主義を原則としていますが、例外的に送致せず警察限りで事件を終わらせる場合があります。この例外を「微罪処分」といいます。
微罪処分になると事件はそこで終了しますが、そもそも検察官に送致されないので、検察官が不起訴にしたわけではありません。そのため不起訴処分告知書を求めても発行されないのです。 -
(3)起訴された場合
起訴された場合は当然ながら不起訴処分告知書は発行されません。起訴には公開の法廷での審理を求める正式起訴と、書面のみの審理を求める略式起訴がありますが、いずれの起訴であっても不起訴ではないので不起訴処分告知書を発行してもらうことはできません。
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5、不起訴処分告知書は保管しておくべきか
不起訴処分告知書を保管しておくべきかどうかは、個人の考え方次第です。公的な手続きで求められるケースはないので、自分がどう考えるのかで決めればよいでしょう。
保管しておくことの長所を挙げるとすれば、自分自身への戒めにできる点です。不起訴の理由が起訴猶予だった場合、罪を犯した事実は存在します。結果的に不起訴になったとはいえ、刑事事件を起こしたことで被害者やその家族、また自分の家族や周囲の人などへも大変な迷惑をかけたはずです。不起訴処分告知書をしまっておくことで、後で見返して「もう二度と事件は起こさない」と自分を律することができるかもしれません。
保管しておくことの短所は、刑事事件の被疑者になった事実を誰かに知られてしまう危険がある点です。たとえば家族や恋人などに事件の事実を隠していた場合、不起訴処分告知書を見られることで事件のことが知られてしまう可能性があります。持ち歩くなどして紛失すれば、身近な人以外に知られてしまう危険もあるでしょう。
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6、逮捕されたら弁護士に依頼をすべき理由とは?
刑事事件で不起訴になりたいと望むなら、まずは弁護士へ相談しましょう。特に逮捕されると、起訴・不起訴の決定までに最長でも23日間しか猶予がないため、短期間で適切な弁護活動を尽くして不起訴を目指す必要があります。
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(1)逮捕直後でも面会してアドバイスできる
取り調べで供述した内容は刑事手続き上の重要な証拠として扱われ、後の裁判だけでなく検察官の起訴・不起訴の判断にも影響します。そのため本人と面会して取り調べでの対応についてアドバイスをする必要がありますが、逮捕後の72時間はご家族であっても面会できません。
弁護士だけは唯一、逮捕直後であってもいつでも制限なく面会できます。取り調べの注意点や供述するべき内容について的確なアドバイスをして、不利な供述調書を作成されるのを防ぎます。 -
(2)勾留されるおそれが低くなる
勾留されると最長で20日間も社会から隔離された生活を送るため、会社や家庭など社会生活への影響が大きくなってしまいます。これを避けるため、弁護士は勾留の阻止に向けた活動を尽くします。
具体的には、検察官や裁判官への意見書の提出や面会を通じて勾留の必要性がない旨を主張し、勾留請求しないよう、または勾留を決定しないよう働きかけます。裁判官が勾留を決定した場合は、準抗告や勾留理由開示請求などの方法を用いて早期に勾留から解かれるよう活動します。 -
(3)不起訴の可能性が高まる
弁護士は不起訴処分を得るために、被害者との示談交渉や適切な身元引受人の用意、再犯防止策の提示といった活動を展開します。特に被害者との示談が成立すれば、検察官が事件を不起訴とする可能性を高められるでしょう。刑事事件の被害者は加害者からの接触に抵抗感を持つことが多いため、弁護士を通じて被害者感情に十分な配慮をしながら慎重に進めることが大切です。
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7、まとめ
不起訴処分告知書は刑事事件の被疑者が不起訴処分になった事実を客観的に証明できる書類です。担当検察官への請求によって発行してもらえますが、その発行時期は不起訴処分が正式に決定した後です。
もしもまだ不起訴処分が決定していないのなら、弁護士へ相談し、不起訴に向けた弁護活動を尽くしてもらいましょう。特に逮捕されると時間的な猶予がなくなるため、逮捕されそうな状況ならすぐにでも弁護士へ相談することが大切です。刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所がサポートしますので、まずはご連絡ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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