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保釈金が払えない人はどうなる? 払えないときの解決方法とは
刑事事件を起こして検察官に起訴されると被告人として刑事裁判を待つ身となりますが、この段階からは「保釈」の請求が可能です。
令和3年12月には巨額の脱税容疑で大学の前理事長が保釈されましたが、その際に支払った「保釈金」は6000万円でした。保釈を望んでいても、このような大金の納付を求められれば無理をしても支払えないという方が大半でしょう。
もし保釈金が支払えないと、その後はどうなってしまうのでしょうか? 保釈・保釈金の制度や支払い方法、どうしても支払えない場合の対処法を解説します。
1、保釈金が払えないとどうなる?
「保釈」という制度についてニュースなどで報じられるのは、ほとんどが著名人・芸能人・スポーツ選手などが事件を起こしたケースです。冒頭で紹介した事例のように、数千万円の「保釈金」を支払ったというケースが報じられると、保釈のためにはとんでもない大金が必要で、とてもではないが一個人での利用は難しいと感じてしまうでしょう。
まずは「保釈」について正しく理解したうえで、「保釈金」が支払えない場合はどうなるのか、どうやって金額が決まるのかなどを確認していきます。
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(1)「保釈」とは?制度の概要
「保釈」とは、検察官に起訴されて勾留による身柄拘束を受けている被告人について、勾留を一時的に解除する制度です。
警察によって逮捕され、検察官の請求によって勾留による身柄拘束を受けていた場合は、検察官に起訴されて被告人になったあとも勾留が続きます。刑事裁判が終わるまで「拘置所」などに身柄を置かれ、公判期日の出廷を除けば所外には出られず、家族や友人などに連絡を取ることも許されません。
このような処遇は、刑罰が確定しているわけではない被告人の段階であるのに、まるで犯人だと決めつけて身柄を拘束されているかのようです。そもそも、刑事裁判で有罪判決が下されるまでの間は、誰であっても犯人として扱われないという「推定無罪の原則」が存在するため、犯人のような処遇は許されるべきではありません。
そこで、一定の除外事由に該当しない場合は必ず、または除外事由に該当する場合でも裁判所の職権によって、公判への出頭が確保されていることを条件に、勾留を解除する制度が用意されています。これが「保釈」です。 -
(2)保釈金が支払えないとどうなる?
保釈が認められると、裁判官・裁判所との誓約事項を遵守しなければなりません。しかし、単なる約束だけでは公判への出廷を確保する材料としては不十分です。そこで、保釈が認められるためには保証として「保釈金」の支払いを求められます。
保釈金の支払いは、保釈が認められるための要件です。もし保釈金が支払えなかった場合は、当然、保釈が認められません。
保釈が認められなかった場合は、刑事裁判の判決が下されるまで被告人としての勾留が続きます。家庭・会社・学校と隔離された状態が解消されないため、解雇や退学、離婚や一家離散といった危険もつきまとうことになるでしょう。
刑事裁判で有罪となり、懲役・禁錮の実刑判決が言い渡されると、一度も社会復帰できないままで収監されてしまいます。社会的な不利益を軽減するためには、保釈制度を最大限に活用しなければなりません。とくに支払期限は定められていませんが、保釈金額が決定したらすぐに支払って保釈を受けるのが最善です。 -
(3)保釈金額はどうやって決まる?相場はある?
保釈金の額は「◯◯事件では◯◯万円」といった一律の基準が設けられているわけではありません。刑事訴訟法第93条2項によると、保釈金は次に挙げる項目を考慮して「被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額」で決定されます。
- 犯罪の性質および情状
- 証拠の証明力
- 被告人の性格および資産
保釈金は、誓約事項を遵守したうえで公判に出頭する限り、たとえ有罪判決が下されたとしても全額返還されます。一方で、裁判官・裁判所との約束を破って逃亡や証拠隠滅を図れば「没取(ぼっしゅ)」を受けて返還されません。
保釈金の額はさまざまな事情を考慮したうえで「没取される不利益と照らして、被告人が出頭を守る程度」で決まります。ゆえに、数百万円~数千万円とその範囲は広く、一律の基準や相場は存在しません。
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2、保釈金は分割払いや減額はできる?
保釈金は、被告人の公判出廷を確保する保証となる程度の金額が設定されます。つまり、誰にとっても「決して安いとはいえない金額」が提示されるため、容易には支払えないという状況もめずらしくありません。
そうなると、できれば「分割払いをさせてほしい」「もう少し減額してほしい」と考えることもあるでしょう。保釈金の分割払いや減額は可能なのでしょうか?
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(1)分割は不可能、一括納付のみ
保釈金の支払い方法は「一括納付」のみです。分割による支払いは認められていません。
支払い方法は現金による方法と、電子納付による方法とがあります。 -
(2)準抗告・抗告によって減額できる可能性はある
保釈金が「被告人の公判出廷を確保する保証金」という性格をもっていることを考えれば、単に「高額だ」と主張しても減額は認められないでしょう。ただし、裁判官や裁判所が決めた保釈金額が必ず適当であるとはいえないので、不服申立てによって金額が見直される可能性はあります。
保釈金額に関する不服申立ての方法は「準抗告」と「抗告」の2つです。- 準抗告……裁判官の処分に対する不服申立て
- 抗告……裁判所の処分に対する不服申立て
保釈については、第一回の公判期日よりも前は裁判官が、第一回の公判期日が過ぎると裁判所が判断するため、保釈請求のタイミング次第で選択する手続きが異なります。
ただし、準抗告・抗告が認められるためには、裁判官や裁判所が決めた保釈金額が適当ではないという客観的な証明が必要です。準抗告や抗告のために準備を進めている間は被告人としての勾留が続くうえに、必ず主張が認められるわけでもありません。
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3、保釈金が払えないときはどうすればいい?
収入や資力に照らすと不相応な金額の保釈金額を指定された、あるいは不相応とまではいえなくても余力がないので保釈金を用意できないといった場合は、ここで挙げる方法を検討してみましょう。
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(1)日本保釈支援協会の立て替え制度を利用する
「日本保釈支援協会」は、保釈金の工面が難しい人を支援するために設立された一般社団法人です。保釈金を支払う目的では銀行や信用金庫などの借金・ローンを利用できないのが実情であり、目的を問わない貸金業者などからの借り入れで工面し、高利で重い負担が生じてしまうという状況がありました。そこで、有志の弁護士を中心に設立された日本保釈支援協会では、保釈金の立て替えによる支援を実施しています。
500万円を限度として低額の手数料だけで保釈金の支払いを立て替えてくれる制度で、被告人本人を除く家族や友人などからの申し込みによって利用可能です。 -
(2)全国弁護士協同組合連合会の保釈保証制度を利用する
「全国弁護士協同組合連合会」でも、資力が低い被告人の保釈を支援する制度が用意されています。ただし、全弁協の制度は、日本保釈支援協会のように保釈金そのものを立て替えるわけではありません。全弁協が「保釈保証書」を発行して裁判所に提出することで、保釈金の支払いに代える制度です。
もし、保釈中に遵守事項の違反などが発覚して保釈金の即時支払いを求められた場合でも、全弁協が支払いをおこなうため、被告人は保釈請求の時点で高額な保釈金を用意する必要がありません。
本制度の限度額は原則300万円ですが、事件の内容によっては上限額が抑えられることがあります。また、万が一の際は全弁協が支払いを負担するものの、その後は全弁協が被告人側へと支払いを求めるため、一定の資力基準を満たさなければ利用できません。全弁協によると「必要な生活費を控除して、毎月数万円は支払いができるだけの収入がある」というのが基準となっています。 -
(3)現金の代わりになる財産を用意する
保釈金は「現金」で支払うのが原則ですが、刑事訴訟法第94条3項によると裁判所は「有価証券」による代納を許すことができるとされています。
なお、前項の「保釈保証書」も代納できる物のひとつです。 -
(4)親族・友人などに協力してもらう
保釈金は、必ず被告人本人が用意したものでないといけないといった決まりはありません。どこでどのように用意したものでも支払い可能なので、親族や友人などに協力してもらって用立てるという方法もよいでしょう。
とはいえ、決して安いとはいえない金額の負担を親族や友人に依頼するのですから、容易に承諾を得られるとはいえません。事件後の返済でトラブルをまねくリスクを考えれば、できる限り避けたほうがよい手段です。
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4、保釈に関するご相談は弁護士へ
保釈制度を生かすことで、早期の社会復帰を実現したり、実刑判決を受けて刑務所に収監される前の環境を整えたりする時間が得られます。ただし、除外事由にあたることを理由に裁判官が保釈を認めなかったり、想定外に高額な保釈金を指定されて支払いに困ってしまったりと、保釈を望んでいてもなかなか実現できないといったケースもめずらしくありません。
保釈の手続きに関する困りごとや保釈金の支払いに関する悩みごとがあるときは、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士に相談すれば、保釈の許可に向けた裁判官・裁判所へのはたらきかけや、保釈金の用意が難しいときの支援制度の利用、減額に向けた不服申立てのサポートが期待できます。
勾留による身柄拘束を受けている被告人本人や法的な知識をもたない家族では、わからないこと、対応が難しいことも多いでしょう。素早くアクションを起こさないと身柄拘束が長引いてしまい、保釈による利益を最大限に生かせなくなってしまうので、できるだけ早く相談するという心がけが大切です。
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5、まとめ
保釈が認められるためには「保釈金」の支払いが必要です。被告人の資力などを考慮して刑事裁判への出廷を保証できるだけの金額が設定されるため、その支払いは決して容易ではありません。保釈金を支払えないと保釈は認められないので、用意が難しい場合は各種の支援制度などを活用していきましょう。
保釈や保釈金に関する困りごとやお悩みは、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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