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弁護士コラム

2022年05月31日
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  • 物的証拠

物的証拠とは? 刑事事件における証拠の種類

物的証拠とは? 刑事事件における証拠の種類
物的証拠とは? 刑事事件における証拠の種類

ニュースや新聞などで刑事事件が報道される際、『現場に残された物的証拠が逮捕の決め手になった』などと表現される場合があります。そのため「物的証拠」は被疑者が犯人であることを裏付ける重要な根拠であるとイメージしている方が多いでしょう。

しかし、どのような物が物的証拠と呼ばれるのかなど、疑問に感じる点もあるかもしれません。本コラムでは物的証拠の意味を確認しながら、刑事事件における証拠の種類や具体例について解説します。

1、物的証拠の概要

物的証拠とは、その物の存在または状態が証拠資料となる物体のことで、多くの場合は「証拠物」のことを指します。たとえば刺殺事件なら犯行に使われた包丁、薬物事件なら薬物の粉末が物的証拠といえるでしょう。

物的証拠の特徴は、客観的に調査ができ原則として内容が変化しない点にあります。人の証言などにもとづく人的証拠は、記憶違いや見間違いなどにより内容が変化する可能性があるため、それだけで事実認定(事実の存否を決すること)をするには正確性に欠けるおそれがあるのです。

一方、物的証拠から認められる事実は誰が見ても動かせない事実となるため、信用性が非常に高く、事実認定をする際の重要な証拠として扱われます。

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2、裁判における証拠の重要性

刑事訴訟法第317条には「事実の認定は、証拠による」とあります。
刑事裁判における事実認定は証拠によってなされなければならないとする原則を指し、これを「証拠裁判主義」といいます。

刑事裁判で公訴事実を証明するのは検察官です。検察官は証拠によって、公訴事実が存在することを合理的な疑いを挟む余地がない程度にまで証明するための立証活動をしなければなりません。合理的な疑いとは、一般の人が常識にもとづき抱く疑問のことです。

もし検察官が主張する事実について合理的な疑いが残る場合は、「疑わしきは被告人の利益に」の原則にのっとり、裁判官は被告人に有利な方向で、すなわち無罪と結論づけなければなりません。

証拠によって事実の存否が決し、認定された事実によって有罪か無罪か、有罪であるとしてどのくらいの量刑になるのかが判断されます。判決の内容は被告人の一生を大きく変えてしまう結論となる場合があります。そう考えると、裁判における証拠がいかに重要な存在なのかが分かるでしょう。

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3、刑事裁判における証拠の種類

刑事裁判で用いられる証拠は、分類方法などによっていくつもの呼び方があります。代表的な証拠の種類を確認しましょう。

  1. (1)物証・書証・人証

    裁判では、公判期日に証拠を取り調べてその内容を把握し、心証を形成するための「証拠調べ」という手続きが行われます。
    証拠調べにおける証拠の分類としては、「物証」「書証」「人証」の3つに大きくは分けられます

    「物証」は、物的証拠(証拠物)のことです。
    証拠調べの方法は、映像や音声であればDVDやボイスレコーダーなどの機器を展示するとともに、再生装置で再生することにより示されます。

    「書証」とは文書になっておりその記載内容が証拠資料となる証拠のことです。
    被害者の供述内容を聴き取ってまとめた供述調書や捜査機関が作成した報告書、鑑定書などがこれにあたります。証拠調べの方法は書類の要旨を読み上げる、朗読により行われます。

    「人証」とは人の口から語られる証拠のことです。
    被害者本人のほか、被告人を現場で見たという目撃証人や、犯行時間帯に被告人と一緒にいたと証言するアリバイ証人などがこれにあたります。証拠調べの方法は証人に対する「尋問」により行われます。

  2. (2)直接証拠・間接証拠・実質証拠・補助証拠

    証明しようとする事実(要証事実)による分類として、「直接証拠」「間接証拠」「実質証拠」「補助証拠」があります

    ● 直接証拠
    「直接証拠」とは、要証事実(たとえば被告人が犯人であること)を、推認過程を経ずに直接的に証明するための証拠のことです。犯行の一部始終を目撃したとする目撃者の証言や被害者の供述、被告人の自白などが直接証拠になりえます。

    直接証拠は主に信用性が問題となり、客観的証拠との整合性や供述内容の変遷などの事情から総合的に判断されます。たとえば死体遺棄事件で、被告人が『死体を遺棄した』と供述した場所から、実際に死体が出てきたという事情があれば、被告人の供述には客観的証拠との整合性があり、直接証拠の信用性も高いと判断されます。
    直接証拠の信用性が認められる場合は、単独の証拠であっても事実を認定することができます。

    ● 間接証拠
    「間接証拠」とは要証事実を推認させる事実(間接事実)の証明に用いる証拠をいいます。状況証拠と同義です。

    間接証拠は推認過程を経るため、直接証拠のように単独で事実を認定することが難しい場合が多くありますが、間接証拠の積み重ねによって事実認定がなされるケースはあります。
    もっとも、間接証拠による有罪認定をするには、被告人が犯人でなければ合理的に説明がつかない事実関係が含まれていることが必要とされています。

    ● 実質証拠・補助証拠
    「実質証拠」とは、要証事実の存在を明らかにするために用いられる証拠のことです。直接証拠と間接証拠をあわせて実質証拠と呼びます。

    「補助証拠」とは、実質証拠の信用性に影響を与える事実(補助事実)を証明するのに用いられる証拠を指します。補助証拠はさらに「弾劾証拠」、「増強証拠」等に分けられます。

    「弾劾証拠」とは、ある証拠の信用性を弱めることになる、別の証拠のことです。たとえば犯人の顔を見たとする目撃者が、捜査段階では『犯人の顔はぼんやりとしか見えなかった』と供述していたのに、裁判で『犯人の顔をはっきりと見た』と証言した場合に、捜査段階での供述調書が弾劾証拠となり、弁護人は目撃者の証言の信用性が低いと主張することができます。

    一方、証拠の信用性を強めることになる証拠が「増強証拠」です。たとえば犯人の顔を見たとする目撃者の視力がよいことを証明する眼科医の診断書などがこれにあたります。

  3. (3)本証・反証

    証明すべき責任(挙証責任)における証拠の分類としては、「本証」と「反証」があります

    証明するべき事実について挙証責任を負う者が、その事実を証明するために提出する証拠を「本証」といいます。刑事裁判では、検察官が提出する証拠が「これにあたります。

    一方、挙証責任を負う者の相手方が、本証を否定したり疑いを生じさせたりするために提出する証拠を「反証」といいます。刑事裁判では、被告人側が提出する証拠がこれにあたります。

    本証は要証事実について裁判官に確信を抱かせる必要がありますが、反証は裁判官に疑いを生じさせれば足ります。要証事実の真偽が不明という状態にさえすれば、刑事裁判では反証を行う側に有利に認定されるからです。

  4. (4)供述証拠・非供述証拠

    人の言葉による証拠か、それ以外かで「供述証拠」「非供述証拠」に分けられます

    「供述証拠」は人の言葉によって表された内容が証拠となることです。被告人の供述や証人の証言、供述調書などがこれにあたります。供述証拠は、凶器や遺留品など動かしようのない証拠と異なり、言葉を発した人の勘違いや記憶違いなどの可能性があるため、刑事裁判ではしばしばその信用性が争われます。

    信用性の判断については、ほかの証拠や事実との整合性、被疑者や被害者との利害関係、供述内容の変遷などを含めて総合的に判断します。

    供述証拠以外のすべての証拠が「非供述証拠」です。犯行現場の状況を撮影した写真や、犯行現場に残された指紋、凶器などが挙げられます。

  5. (5)人的証拠・物的証拠

    証拠方法による分類として「人的証拠」と「物的証拠」があります。証拠方法とは、裁判官が五官の作用(目、耳、鼻、舌、皮膚の感覚器官を働かせて物の存在や状態を観察すること)によって取り調べることができる有形物のことです。

    生存している人による証拠方法が人的証拠、人以外による証拠方法が物的証拠です。

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4、証拠における具体例

どのような物が刑事事件の証拠として事実認定に使われるのかについて、具体例を挙げて見ていきましょう。

  1. (1)防犯カメラの映像

    防犯カメラの映像は、直接証拠にも間接証拠にもなりえます。

    たとえば窃盗事件において、被疑者が窃盗事件の発生した店内で盗品をかばんに詰めて逃走する様子の一部始終を捉えた防犯カメラの映像があり、映像の解析度も高いものであれば直接証拠となります。

    一方、被疑者が窃盗事件の発生した店に入店する様子を捉えた防犯カメラの映像は、それだけで犯人と認定することはできないため直接証拠にはなりませんが、犯人と推認することができるため間接証拠となります。

    防犯カメラは人の記憶のように曖昧なものと違い、そのとき起きた事象がそのまま記録される媒体なので信用性が高い証拠のひとつです。

    もっとも、防犯カメラの映像がいついかなる場合も証拠になるわけではありません。犯行の様子を捉えているわけではない場合や映像の解析度が低いといった場合には、検察官が証拠調べを請求しても採用されない可能性もあります。

  2. (2)犯行現場に残された指紋やDNA

    犯行現場に残った指紋やDNAなどは、被疑者が犯人であることを推認する間接証拠です。
    指紋やDNAは個人の特定が可能で偽造することが難しいため、高い証拠能力があります。

    ただし、それのみで犯人・犯行を決定づける証拠となるわけではありません。犯行時とは別の機会に付着した指紋やDNAである可能性や、採取過程に問題がある可能性などが否定できないからです。そのため間接証拠として、ほかの証拠とあわせて犯罪事実の立証に用いられます。

  3. (3)犯行の目撃証言

    第三者が犯行の一部始終を目撃したとする証言は直接証拠になりえます。
    たとえば暴行事件で『AがBを殴る様子を見た』というCの証言は、犯行そのものを目撃した証言なので直接証拠となりえます。一方、Cが『犯行時間にAとBが一緒にいたのを見た』と証言しても、殴った様子を見たわけではないため、暴行の直接証拠とはなりません。

    目撃証言は、目撃環境の悪さによる見間違いや目撃者による虚偽の発言といった可能性があるため信用性が問題となります。たとえば、上記のケースでCがAに日頃から恨みを抱いていたなど虚偽の供述をするおそれがある場合には、証言の信用性が低く、証拠として扱われない可能性があります。
    信用性については、目撃証言の変遷やそのほかの客観的事実を含めて総合的に判断されます。

  4. (4)被疑者・被告人の自白

    被疑者・被告人の自白は直接証拠となりえます。
    たとえば殺人事件で『私はAを殺すために包丁でAの腹部を突き刺しました』といった供述がこれにあたります。

    自白は極めて有力な直接証拠ですが、それゆえに捜査機関による自白の強要、不当な取り調べの危険があります。そのため任意ではない自白が疑われる場合には、証拠とすることができません(刑事訴訟法第319条1項、日本国憲法第38条2項)
    また自白が唯一の証拠の場合には有罪とすることもできません(刑事訴訟法第319条2項、日本国憲法第38条3項)。

  5. (5)被害物品の所持

    被害物品を所持していたという事実は犯人性との関係では間接証拠です。
    たとえば、窃盗事件において事件の直後に犯行現場の近くで被疑者が被害物品を所持していれば、犯人であることを推認させる事実となります。このように被害物品を時間的・場所的に接着して持っている人が犯人である可能性が高いという考えを「近接所持」といいます。

    ただし、被害物品を所持した経緯として『第三者から預かった』『以前に被害者と同じ物をおそろいで購入した』といった事実が存在する可能性は否定できないため、犯行を証明する直接証拠にはなりません

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5、まとめ

物的証拠とは、人の供述などの人的証拠と異なり内容が変化しないため、証拠の信用性が高いと考えられています。ただし、必ずしも物的証拠が直接的に犯人・犯行を示すわけではありません。

刑事事件において、どのような証拠が犯人であることを決定づけるのかは、証拠の種類や事件の内容によって異なります。そのため、ご自身や身近な方の事件の証拠について疑問点があれば弁護士へ相談するのが良いでしょう。

刑事事件に関するお悩みの解消は、刑事弁護の実績豊富なベリーベスト法律事務所にお任せください。

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監修者
萩原 達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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