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逮捕されたら弁護士を呼ぶべき理由とは? 弁護士の呼び方やポイント
ドラマや映画などフィクション作品の世界では、警察に逮捕された被疑者が「弁護士を呼んでくれ」と叫ぶシーンをたびたびかけます。
事実、逮捕によって身柄を拘束されて不利な状況に陥ることになる被疑者にとって、弁護士は唯一の味方といえる存在なので、頼りにするのは当然でしょう。ところが、多くはないものの「弁護士を呼ばない」「弁護士をつけない」という選択をとる被疑者も存在します。
なぜ弁護士を呼ぶことをためらってしまうのか、逮捕された時にすぐに弁護士を呼ぶべき理由とは何か、またどのようにして弁護士を呼ぶのかといった疑問を、刑事事件における弁護士の役割に照らしながらベリーベスト法律事務所の弁護士が解消していきます。
1、逮捕されたときすぐに弁護士を呼ぶべき理由
警察に逮捕されたときは、何よりもまず「弁護士を呼ぶ」ことを優先させるべきです。
ここでは、弁護士を呼ぶべき理由を挙げていきます。
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(1)逮捕後すぐに接見してアドバイスを受けられる
警察に逮捕されると、その瞬間から身柄拘束を受けて自由な行動が大きく制限されます。
自宅に帰ることも、会社や学校へ行くことも許されず、携帯電話やスマートフォンで連絡をとることも認められません。
家族などとの面会が許されるのは勾留が決定したあとなので、逮捕直後は、この先どうなってしまうのか、これからどうすればいいのか、誰にも相談できない状態に陥ります。
逮捕された被疑者と勾留決定前に面会できるのは、本人の弁護人になろうとしている弁護士だけです。
逮捕された被疑者には、法律によって弁護士と「接見」する権利が保障されています。
今後の流れ、処分の見込み、解決法などのアドバイスが受けられるだけでなく、逮捕されて不安な状態に陥っている被疑者を精神的にサポートする意味でも、直ちに弁護士を呼んだほうがよいでしょう。 -
(2)取り調べで不利な供述調書を作成される事態を防げる
警察・検察官による取り調べでは、その場で述べた内容をまとめ書きした「供述調書」が作成されます。
この書類は、内容に誤りがないことを確認して末尾に供述人が署名・押印または指印することで「たしかにその通り供述した」という重要な証拠となるため、ひとたび不利な供述調書が作成されてしまうと、あとで覆すのは困難です。
弁護士を呼ぶことで、取り調べにおける正しい対応や黙秘権を行使する方法などのアドバイスが得られるので、不利な供述調書が作成されてしまう事態を回避できます。 -
(3)不当な扱いを受けないよう捜査機関をけん制できる
捜査機関は、被疑者の身柄を拘束している間に、被疑者本人が犯行を認める「自白」につながる供述を引き出すことに躍起になっています。
睡眠や食事の時間を確保しない人権を無視した扱いや、乱暴な言動、虚偽、誘導といった手法を用いて自白を迫られるかもしれません。
弁護士の存在は、捜査機関に対して「不当な扱いをしてはいけない」という強いけん制となるので、逮捕されたらできるだけ早く弁護士を呼ぶべきといえます。 -
(4)身柄拘束の長期化を防ぎ早期釈放を目指せる
犯罪の疑いをかけられて逮捕されてしまうと、逮捕・勾留によって最大23日間の身柄拘束を受けます。さらに検察官が起訴すると、刑事裁判が終了するまで身柄拘束が続きます。
長期にわたって一般社会から隔離された状態が続けば、家庭・仕事・学校などに悪影響を及ぼしかねません。
早期に弁護士を呼んで被害者との示談交渉など解決に向けた対策を講じることができれば、勾留の回避や勾留延長の阻止、不起訴による早期釈放が実現できる可能性が高まります。
素早い社会復帰を望むなら、弁護士への相談・依頼を急ぐべきです。
2、逮捕されたときに弁護士を呼ぶ方法
逮捕された被疑者が弁護士を呼ぶ方法は「警察官に伝えて呼んでもらう」のが基本です。
そもそも、逮捕・勾留によって身柄拘束を受けている被疑者には、外部と連絡をとる方法がありません。弁解録取や取り調べの担当官、留置場の留置担当官に「〇〇法律事務所の△△弁護士を呼んでほしい」と伝えて呼んでもらうしかないというのが現実です。
このように説明すると「警察官に伝えても、ちゃんと弁護士を呼んでくれないのではないか?」と不安に感じる人も多いでしょう。
しかし、被疑者が弁護士と接見する「接見交通権」は、日本国憲法による保障を基本として刑事訴訟法に規定されているため、捜査機関も妨害はできません。もし妨害すれば、捜査機関が不利になります。
また、面会に訪れた家族などを通じて弁護士を呼んでもらうことも可能です。
ただし、この方法では、何らかの疑問や不安を感じて「弁護士を呼んで相談したい」と希望してもすぐに接見できるわけではありません。
素早い対応を求めるためには、捜査や留置で接する警察官に「弁護士を呼んでほしい」と遠慮なく伝えるべきだと覚えておいてください。
また、もし家族の前で逮捕や任意同行をされた場合には、家族がすぐにインターネットなどで弁護士を探して依頼するほうが、早期対応を期待できます。前述のとおり、逮捕後すぐに弁護士を呼ぶことで、早期釈放などの可能性が高まり、また逮捕された被疑者の精神的な支えにもなります。そのため、家族の目の前で逮捕されたといった状況の場合には、逮捕された被疑者の家族のサポートも重要になります。
3、逮捕されたときに呼べる弁護士の種類
警察に逮捕されたあとで、呼ぶことができる弁護士には3つの種類があります。それぞれの特徴などを紹介します。
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(1)当番弁護士
逮捕後、一度に限って無料で弁護士を呼んで接見できるのが当番弁護士制度です。
弁護士会に登録されている弁護士が派遣されるので、弁護士に心当たりがなくても安心して利用できます。
逮捕直後に呼べる弁護士として非常に有意義な存在ですが、利用できるのは一度限りで、接見した弁護士に継続して弁護活動を依頼したい場合は改めて選任する必要があるという点は覚えておきましょう。 -
(2)国選弁護人
経済的な困窮などを理由に弁護人を選任できない被疑者について、国が費用を負担して弁護人を選任するのが国選弁護人です。
資力の条件を満たしていれば弁護士費用の負担は発生しません。
ただし、国選弁護人が選任されるのは勾留決定後なので、早期釈放に向けた対策としては一歩出遅れる結果になります。また、国選弁護人は登録している名簿をもとに裁判所がランダムで選任するので、刑事事件の弁護実績が乏しい弁護士が選任されることがあるという点でデメリットも大きい制度です。 -
(3)私選弁護人
弁護士費用を自己負担できる場合は、私選弁護人を選任するとよいでしょう。
私選弁護人は、個人が弁護士や法律事務所と契約を結んで選任するので、国による費用負担の援助はありません。ただし、国選弁護人と違って選任できるタイミングに制限がないので、たとえば事件を起こしてしまったあと、警察の捜査が動き出す前に相談して解決のために対策を講じることも可能です。
自分自身で弁護士を選べるので、刑事事件の弁護実績を豊富にもつ弁護士を厳選できるという点も大きなメリットとなるでしょう。逮捕直後から早期釈放に向けた弁護活動を進められるので、アドバイスにとどまる当番弁護士を利用するよりも有利な展開が期待できます。また、私選弁護人は家族のような支援者を直接の依頼者とすることも多く、支援者との連携がとりやすいところも特徴といえます。
弁護士との電話相談が無料でできる
刑事事件緊急相談ダイヤル
- お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- 警察が未介入の事件のご相談は来所が必要です。
- 被害者からのご相談は有料となる場合があります。
4、なぜ? 弁護士を呼ばない理由
2023年(令和5年)版の弁護士白書によると、2022年(令和4年)中に全国の地方裁判所で開かれた刑事裁判のうち、弁護人が選任された事件の割合は99.5%でした。簡易裁判所でも98.1%だったので、ほとんどの刑事裁判では弁護人が選任されている状況がうかがえます。
それにもかかわらず、逮捕された直後は「弁護士を呼ばない」「弁護士を呼ぶつもりがない」という人がわずかながら存在しています。なぜ弁護士を呼ぶことをためらってしまうのでしょうか?
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(1)弁護士費用の負担が心配だから
弁護士を呼ぶことにためらいを感じる最大の理由は「弁護士費用の負担が心配だから」でしょう。
たしかに、弁護士への相談や依頼には決して安くはない費用がかかります。警察に逮捕されて警察署に連行されると、最初に行われるのが被疑者自身の弁解を聴く「弁解録取」という手続きです。
ここでは、弁解を録取するだけでなく、必ず、「弁護人を選任する権利がある」という説明を受けて現時点での方針もあわせて録取されますが、実際には「お金がないから弁護士に依頼できない」と説明する被疑者も少なくありません。
しかし、経済的な事情がある場合にも、当番弁護士や国選弁護人などの制度が用意されているため、まずは弁護士を呼ぶことを検討すべきといえます。 -
(2)罪を認めており争うつもりがないから
逮捕された被疑者の中には、自らの罪を素直に認めて争うつもりがないため弁護士を呼ばないという人もわずかながら存在します。この点は、ドラマや映画などで弁護士を呼ぶ理由が「無実の疑いを晴らすため」のように描写されていることが大きく影響しているのかもしれません。
もちろん、無実の疑いを晴らして無罪判決を得るためには弁護士の助けが欠かせませんが、被疑者・被告人の権利を守り、考慮されるべき事情をはっきりと示すためにも、弁護士のサポートは必須です。 -
(3)自分の主張が認められると過信しているから
犯罪の被疑をかけられていても、実際には罪を犯していなかったり、あるいは罪になるという認識がなかったりする人もいます。しかし、自分が知っていること、体験したことを正直に説明すれば、捜査機関や裁判所がそれを信じてくれるのだと過信するのは危険です。
捜査機関に対してありのままに供述しても信じてもらえず、事実をねじ曲げられた供述調書が作成されてしまう可能性もあるため、法的な立場から被疑者をサポートできる弁護士の存在は欠かせません。
5、刑事事件で弁護士を呼ぶ際に重視したいポイント3つ
犯罪の被疑で警察に逮捕されて弁護士を呼ぶ際は、これから挙げる3つのポイントを重視してください。
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(1)弁護士に心当たりがないなら当番弁護士を呼ぶ
特に大きなトラブルもなく平穏な生活を送ってきた人なら、弁護士と関わる機会はほとんどなかったはずです。懇意にしている弁護士に心当たりがある人のほうが少ないでしょう。
逮捕されたとき、弁護士に心当たりがないなら、まずは遠慮なく当番弁護士を呼んでください。
法的な防御方法を知らずに警察官・検察官の取り調べに臨むのは危険です。被疑者に認められている権利や取り調べにおける注意点などを整理して冷静に対応するために、当番弁護士を呼んでアドバイスを受けることができます。
スムーズに進めば逮捕された当日中には当番弁護士と接見できるので、できるだけ早く「当番弁護士を呼んでほしい」と伝えましょう。 -
(2)刑事事件の解決に力を入れている弁護士を呼ぶ
弁護士には、これまでに経験してきた案件の種類や量に個人差があります。
刑事事件を中心に取り扱ってきた弁護士もいれば、離婚問題や借金問題を中心に扱ってきた弁護士もいるので、その経験などによって誰に依頼しても同じ結果になるわけではありません。
特に刑事事件は知識や経験が問われるシーンが多く、弁護士の力量によって処分結果に大きな差が生じる可能性も高いので、これまでに刑事事件の解決に力を入れてきた経験・実績がともに豊富な弁護士を選ぶことが大切です。ただし、弁護士を選ぶことができるのは私選弁護人の場合に限られます。 -
(3)逮捕された本人とともに家族も積極的に動く
弁護士を選任できるのは、逮捕された本人だけではありません。
配偶者・直系の親族・兄弟姉妹・法定代理人などにも、本人とは別に独立して弁護士を選任できる権利が認められています。
逮捕前に弁護士と契約していればすぐに動いてもらえるでしょうが、逮捕後に依頼する場合、配偶者などの支援者が契約者として動くことが多いです。
身柄を拘束されている本人が法律事務所を訪ねたり、電話やインターネットを使って刑事弁護に力を入れている弁護士を探したりといった活動を尽くすのは、物理的に不可能でしょう。そのため、充実した刑事弁護を期待するなら、逮捕された本人の家族が弁護士に連絡や相談をするなど、積極的に動くことが必要だといえます。
6、まとめ
警察に逮捕されたとき、まず優先すべきは「弁護士を呼ぶ」ことです。
弁護士は、身柄を拘束されて不利な状況に陥っている被疑者にとって、法的な防御力を高め、有利な結果を得られるようにサポートできる唯一の味方といえる存在になります。
ただし、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
犯罪の疑いをかけられている被疑者や被告人にとって有利な結果を期待するならば、刑事事件の弁護実績を豊富にもつ弁護士を選ぶべきです。そのためには、一度限りで継続的に弁護できない当番弁護士や、自分では弁護士を選べない国選弁護人ではなく、私選弁護人を選任するのがよいでしょう。
自分自身が逮捕に不安を感じている、家族が逮捕されてしまったなどの状況にお悩みなら、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が、早期釈放や処分の軽減などの実現に向けて全力でサポートします。
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