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弁護士コラム

2024年05月14日
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  • 私人逮捕

私人逮捕とは? 要件や私人逮捕が違法となるケースを弁護士が解説

私人逮捕とは? 要件や私人逮捕が違法となるケースを弁護士が解説
私人逮捕とは? 要件や私人逮捕が違法となるケースを弁護士が解説

YouTuberなどの動画配信者の影響で、「私人逮捕」に興味を持つ方が増えています。

私人逮捕とは、現行犯人を警察官・検察官・検察事務官以外の者が逮捕すること、つまり一般の人による逮捕です。私人逮捕は法律上認められていますが、その要件は非常に厳格なので、安易に行うべきではありません。よほど緊急性がある場合を除き、警察へ通報して対応を任せたほうがよいでしょう。

本コラムでは、私人逮捕について、要件・事例・違法となるケースなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

この記事で分かること

  • 私人逮捕が認められる要件
  • 違法な私人逮捕にあたるケースと成立し得る犯罪
  • 私人逮捕をして、逆に逮捕された場合に弁護士に相談すべき理由

目次

  1. 1、私人逮捕とは
    1. (1)私人逮捕が認められるのは現行犯逮捕の場合のみ
    2. (2)現行犯人の要件
    3. (3)軽微犯罪については、私人逮捕できる場合がさらに限定される
  2. 2、私人逮捕が認められるケースの例
    1. (1)盗撮犯を見つけてその場で取り押さえた場合
    2. (2)他人を殴った人をその場で取り押さえた場合
    3. (3)万引き犯をその場で取り押さえた場合
  3. 3、私人逮捕が認められないケースと成立する犯罪
    1. (1)覚せい剤を持っている疑いがあるとして、呼び止めて拘束した場合
    2. (2)指名手配犯を見つけて取り押さえた場合
    3. (3)軽犯罪法違反を犯したものの、身分を明かしている人を拘束した場合
    4. (4)逮捕の必要性がない場合
  4. 4、私人逮捕をしたことで、逆に逮捕されてしまった場合は弁護士に相談を
  5. 5、もしも私人逮捕されてしまった場合にとるべき対応
  6. 6、まとめ

1、私人逮捕とは

私人逮捕とは、現行犯人を司法警察職員(警察官)・検察官・検察事務官・以外の者が逮捕することをいいます。

最近では、YouTuberなどが「私人逮捕」と称して、犯罪の疑いがあると独自に判断した人を拘束する事案が相次いで報道されています。
YouTuberなどによる私人逮捕は、適法に行われているとは限らず、違法なケースも含まれていると考えられるので注意が必要です

  1. (1)私人逮捕が認められるのは現行犯逮捕の場合のみ

    私人逮捕が認められるのは、現行犯逮捕に限られています。

    逮捕には現行犯逮捕のほか、通常逮捕と緊急逮捕があります。


    ① 通常逮捕(刑事訴訟法第199条)
    裁判官があらかじめ発する逮捕状に基づいて行われる逮捕。

    ② 現行犯逮捕(同法第213条)
    現に罪を行い、または現に罪を行い終わった者(=現行犯人)に対する逮捕。
    逮捕状は必要なく、誰でも現行犯逮捕ができます。

    ③ 緊急逮捕(同法第210条)
    急速を要していて、裁判官の逮捕状を求めることができないときに行われる逮捕。
    死刑・無期・長期3年以上の懲役または禁錮に当たる罪を犯したと疑うに足りる十分な理由がある場合に限り認められます。
    緊急逮捕をした後は、直ちに裁判官に逮捕状を請求する手続きをしなければなりません。


    通常逮捕と緊急逮捕は、司法警察職員・検察官・検察事務官のみが行うことができます。

    これに対して、現行犯逮捕は誰でも行うことができます。特に、検察官・検察事務官・司法警察職員以外の者が行う現行犯逮捕が「私人逮捕」と呼ばれています。

  2. (2)現行犯人の要件

    現行犯逮捕は、「現行犯人」に対してのみ行うことができます。

    上述のとおり、現行犯人に当たるのは、「現に罪を行い、または現に罪を行い終わった者」です(刑事訴訟法第212条第1項)。これは、犯罪があったことと、その人が犯人であることの2つが明白であることを意味すると理解されています。
    また、以下のいずれかに当たる者が、罪(犯行)を行い終わってから間もない状況だと明らかに認められるときは、現行犯人とみなされます(同条第2項)


    ① 犯人として追呼されているとき
    (例)「あの人泥棒です」などと呼ばれ、追いかけられている。

    ② 被害品または明らかに犯罪に使用したと思われる凶器その他の物を所持しているとき
    (例)窃盗や強盗などによって盗んだと思われる物を持っている。犯罪に使用したと思われるナイフを持っている。

    ③ 身体または被服に犯罪の顕著な証跡があるとき
    (例)被服に返り血など血痕がついている。

    ④ 呼びただされて逃走しようとするとき
    (例)警察官に声をかけられて逃げ出した。
  3. (3)軽微犯罪については、私人逮捕できる場合がさらに限定される

    法定刑が30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律および経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については2万円)以下の罰金、拘留または科料に当たる罪(=軽微犯罪)の現行犯人については、以下のいずれかに該当する場合に限って現行犯逮捕が認められます(刑事訴訟法第217条)。


    • 犯人の住居または氏名が明らかでない場合
    • 犯人が逃亡するおそれがある場合


    <軽微犯罪の例>
    • 過失傷害罪(刑法第209条)
    • 軽犯罪法違反
    など


    私人逮捕についても、軽微犯罪の現行犯に対して行うことができるのは、犯人の住居や氏名が明らかでない場合、または犯人が逃亡するおそれがある場合のみです。

2、私人逮捕が認められるケースの例

私人逮捕が認められるケースとしては、以下の例が挙げられます。



  1. (1)盗撮犯を見つけてその場で取り押さえた場合

    電車や駅のホーム、トイレなどにおける盗撮行為は、性的姿態等撮影罪(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第2条)に当たります。

    今まさに盗撮をしている人や、盗撮を終えてカメラなどをしまい終わったばかりの人は現行犯人に当たるため、その場で取り押さえれば私人逮捕として認められそうです。

    ただし、逮捕は逮捕の必要性として罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれが一定以上あることも求めています。
    盗撮事案だと、多くの捜査機関が逮捕まではしないことも多いのは、これが理由です。

  2. (2)他人を殴った人をその場で取り押さえた場合

    他人を殴る行為は、被害者にケガがなければ暴行罪(刑法第208条)、被害者がケガをした場合は傷害罪(刑法第204条)に当たります。

    他人を殴っている人や、他人を殴った後立ち去ろうとしている人は現行犯人に当たるため、その場で取り押さえれば私人逮捕として認められます。

  3. (3)万引き犯をその場で取り押さえた場合

    店舗における万引き行為は窃盗罪(刑法第235条)に当たります。万引き犯が物をバックやポケットに入れた時点で、窃盗罪が既遂になると解されています。

    店舗の商品をバックやポケットに入れた万引き犯や、万引きを終えて店舗から出たばかりの万引き犯は現行犯人に当たるため、その場で取り押さえれば私人逮捕として認められます。

    ただし、逮捕は、逮捕の必要性として罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれが一定以上あることも求めています。
    万引き事案だと、多くの捜査機関が逮捕まではしないことも多いのは、これが理由です。

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3、私人逮捕が認められないケースと成立する犯罪

これに対して、以下のようなケースでは私人逮捕が認められません。



これらのケースにおいて「私人逮捕」をすると、逮捕罪(刑法第220条)や暴行罪・傷害罪によって処罰され得るほか、相手に対して治療費や慰謝料などの損害賠償義務を負うことがあるので要注意です。

  1. (1)覚せい剤を持っている疑いがあるとして、呼び止めて拘束した場合

    覚せい剤の所持は原則として覚醒剤取締法違反に当たりますが(同法第14条第1項)、私人逮捕ができるのは現行犯人である場合に限られます。

    覚せい剤を所持しているのを実際に見たわけではないのに、その疑いがあるというだけで呼び止めて拘束した場合は違法となります。

  2. (2)指名手配犯を見つけて取り押さえた場合

    指名手配犯は、過去に罪を犯した可能性が高いと考えられますが、今まさに罪を犯している、または今犯行が終わった者ではありません。
    したがって、指名手配犯の現行犯逮捕は認められないため、私人逮捕も違法となります。

  3. (3)軽犯罪法違反を犯したものの、身分を明かしている人を拘束した場合

    軽犯罪法違反の法定刑は「拘留または科料」であるため、軽微犯罪に当たります。

    軽微犯罪については、上述のとおり、犯人の住居もしくは氏名が明らかでない場合、または犯人が逃亡するおそれがある場合でなければ私人逮捕が認められません。
    犯人が身分を明かしている場合は、住居も氏名も明らかですし、逃亡のおそれもないと思われるため、私人逮捕は違法となる可能性が高いです。

  4. (4)逮捕の必要性がない場合

    YouTuberが逮捕を強行した多くの事案は、逮捕の必要性にかけているものが多かったです。通常は、現行犯逮捕をするタイミングだと、そこまで詳細に検討して行為に及ぶより、拘束することが優先されるのですが、YouTuberのように、収益目的で逮捕を濫用する存在が出てくると、刑事祖兵法の原則論に戻る必要が出てきます。

4、私人逮捕をしたことで、逆に逮捕されてしまった場合は弁護士に相談を

「私人逮捕」を試みたものの、その私人逮捕によって逆にご自身が逮捕されてしまった場合には、速やかに弁護士へご相談ください。

弁護士は、被疑者の身柄を早期に解放するため、以下の対応などを通じてサポートいたします。


① 取り調べに関するアドバイス
警察官や検察官の取り調べへ臨むに当たり、話してよいことや話すべきでないことの整理・区別、心構えなどに関してアドバイスいたします。

② 被害者との示談交渉
被害者との示談が成立すれば、刑事処分が軽減される可能性が高まります。弁護士は被疑者の代理人として、被害者との示談交渉を代行いたします。

③ 検察官とのやり取り
弁護士が検察官に対して被疑者のよい情状を伝えて、起訴しないように求めます。

5、もしも私人逮捕されてしまった場合にとるべき対応

反対に、万が一ご自身が私人逮捕されてしまったという場合にも、速やかに弁護士へご相談ください。

実際に罪を犯してしまった場合には、早期の身柄解放を目指して、弁護士が刑事弁護活動を行います。冤罪である場合には、無実の訴えを弁護士が全面的にサポートいたします。
また、私人逮捕そのものの違法性を訴えたい場合も、弁護士のサポートが効果的です。逮捕当時の状況などを踏まえて、弁護士が法的な観点から、私人逮捕が不適切であったことを主張します。

6、まとめ

私人逮捕系YouTuberに触発されて、ご自身も私人逮捕をしようとするのは危険です。安易に逮捕行為をすると、私人逮捕の要件を満たさないと判断され、民事・刑事上の責任を負うおそれがあります。

ご自身やご家族が実際に私人逮捕をしたことについて、逆に警察に逮捕されてしまった場合は、速やかに弁護士へ相談しましょう。

ベリーベスト法律事務所は、刑事弁護に関するご相談を受け付けております。私人逮捕を試みたものの、逮捕されて犯罪を疑われてしまった方やそのご家族は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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