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弁護士コラム

2024年05月28日
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「撮り鉄」行為によって逮捕されるケースとは? 成立する犯罪

「撮り鉄」行為によって逮捕されるケースとは? 成立する犯罪
「撮り鉄」行為によって逮捕されるケースとは? 成立する犯罪

近年、鉄道写真や動画を撮影する「撮り鉄」と呼ばれる方たちが、線路内に立ち入ったり鉄道会社の業務を妨害したりして、迷惑行為で逮捕される事例は少なくありません。

「撮り鉄」の方が逮捕される可能性のある犯罪行為には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

本コラムでは、「撮り鉄」の迷惑行為によって逮捕されてしまう具体的なケースや、成立する可能性がある犯罪について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が分かりやすく解説します。

この記事で分かること

  • 撮り鉄による迷惑行為で逮捕される可能性があるケース
  • 迷惑行為によって問われる法的責任
  • 逮捕された場合に弁護士がサポートできること

目次

  1. 1、「撮り鉄」とは?
  2. 2、撮り鉄の迷惑行為で検挙される可能性のあるケース|犯罪別
    1. (1)鉄道営業法違反
    2. (2)新幹線特例法違反
    3. (3)業務妨害罪
    4. (4)往来危険罪・過失往来危険罪
    5. (5)建造物侵入罪
    6. (6)暴行罪・傷害罪
    7. (7)器物損壊罪
  3. 3、刑事・民事両方の責任が発生する可能性あり
  4. 4、撮り鉄の迷惑行為で逮捕されたら、弁護士に相談すべき理由
  5. 5、まとめ

1、「撮り鉄」とは?

「撮り鉄」とは、鉄道趣味を中心として鉄道車両の写真や動画の撮影を楽しむ鉄道ファンのことを指します。
このように「撮り鉄」とひと言で表現されますが、その撮影のあり方は以下のとおりさまざまです。

  • 芸術写真
  • 型式写真
  • 列車写真
など


「芸術写真」は、鉄道車両を収めた風景写真や芸術的な観点から撮影された写真のことをさします。四季折々の自然の中に鉄道を配した写真を撮影することを目的にしています。

「型式写真」とは、車両ごとの型式の違いなどがわかるように撮影された鉄道写真です。記録資料的な意味合いが強く、車両全体がはっきり写るように撮影されることが一般的です。

「列車写真」は走行写真ともいわれ、実際に鉄道車両が運用され走行している様子を撮影する写真のことです。

このような鉄道車両の撮影行為は、明治時代に当時の鉄道を克明に記録した資料が多数残っていることから古くから存在し、現在趣味として発展を遂げてきています。

しかし、近年は一部の撮影者・「撮り鉄」によって逮捕者を出すようなさまざまなトラブルも発生しています
趣味だとしても迷惑行為・妨害行為があれば刑事犯罪として逮捕される可能性があります

2、撮り鉄の迷惑行為で検挙される可能性のあるケース|犯罪別

では、撮り鉄の迷惑行為はどのような犯罪に該当するのでしょうか。
ここでは、逮捕される可能性がある犯罪名について、事例と併せて詳しく解説いたします。

  1. (1)鉄道営業法違反

    まず、鉄道車両を撮影する目的で停車場や線路内に無断で立ち入った場合には、鉄道営業法に違反する可能性があります。

    鉄道営業法は、鉄道という交通システムの安全、円滑、適正な営業を確保するという観点から刑事罰が定められています。線路内立入に対する処罰も、鉄道会社の財産への無断立ち入りという観点からではなく、鉄道の安全、円滑、適正な営業を確保するための手段であると考えられています。

    撮り鉄が停車場や鉄道地内にみだりに立ち入った場合には、「1万円未満の科料」が科される可能性があります(鉄道営業法第37条)。

    2023年11月には、JR東日本の寝台特急「カシオペア」を撮影する目的で線路の敷地内に立ち入った20代の男性2人が、鉄道営業法違反の疑いで検挙されています。

  2. (2)新幹線特例法違反

    撮り鉄が新幹線の線路内に立ち入った場合には、新幹線特例法に違反する可能性があります。

    新幹線の場合には、鉄道営業法の特例として「新幹線特例法」(正式には、「新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法」といいます)が定められており、在来線のときよりも重い罰則が定められています。

    新幹線特例法により定められている違反行為と罰則は以下のとおりです。


    ・運行保安設備の損壊
    「新幹線鉄道の用に供する自動列車制御設備、列車集中制御設備その他の国土交通省令で定める列車の運行の安全を確保するための設備を損壊し、その他これらの設備の機能を損なう行為をした」場合には、5年以下の懲役または「5万円以下の罰金」が科されます(同特例第2条)。

    ・線路上に物件を置いたり、線路内に立ち入ったりする行為
    「列車の運行の妨害となるような方法で、みだりに、物件を新幹線鉄道の線路上に置き、又はこれに類する行為をした」場合や、「新幹線鉄道の線路内にみだりに立ち入った」場合には、「1年以下の懲役」または「5万円以下の罰金」が科されます(同特例第3条)。

    ・列車に物件を投げる行為
    「新幹線鉄道の走行中の列車に向かって物を投げ、又は発射した」場合には、「5万円以下の罰金」が科されます(同特例第4条)。
  3. (3)業務妨害罪

    駅のホームや構内で迷惑行為をしたり、駅員に暴言を吐くなど業務に支障を生じさせる行為をした場合には、威力業務妨害罪に問われる可能性があります。

    「威力」とは、人の自由意思を制圧するに足りる勢力を指し、職員に対して有形力を行使したり大声で怒鳴ったりした場合にも該当します。実際に業務が妨害される結果が発生する必要はなく、妨害のおそれがあれば同罪は成立します。

    また、列車の運行を止めるために非常ボタンなどを押したり設備に細工をしたりした場合には、偽計業務妨害が成立するおそれもあります。

    これらの業務妨害罪が成立した場合には、「3年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」が科されます(刑法第233条、234条)。

    2023年1月には、電車の乗降ドアを勝手に施錠して運行を遅らせるなどJR東日本の業務を妨害したとして、「撮り鉄」だった当時17歳の男子高校生が威力業務妨害の疑いで逮捕されています。

  4. (4)往来危険罪・過失往来危険罪

    鉄道若しくはその標識を損壊し、またはその他の方法により電車の往来の危険を生じさせた場合には往来危険罪に問われることになります。往来危険罪が成立した場合には、「2年以上の有期懲役」に科されます(刑法第125条)。

    また、過失により電車の往来の危険を生じさせ、電車を転覆・破壊した場合に過失往来危険罪に問われることになります。過失往来危険罪が成立した場合には、「30万円以下の罰金」に科されます(刑法第126条)。

    2015年12月には、列車を撮影する目的で踏切内に三脚を置いた堺市の男性が、列車往来危険罪の疑いで逮捕されました。

  5. (5)建造物侵入罪

    鉄道車両を撮影する目的で、営業時間外の駅構内や他人の私有地に立ち入った場合には、住居侵入罪・建造物侵入罪に問われる可能性があります。

    建造物等侵入罪が成立した場合には、「3年以下の懲役」または「10万円以下の罰金」に科されます(刑法第130条)。

  6. (6)暴行罪・傷害罪

    撮り鉄行為の際に鉄道会社の職員や一般人などとトラブルになり付き飛ばすなどの行為をした場合には、暴行罪に問われる可能性があります。暴行の結果、相手が怪我をしてしまうと傷害罪に問われる可能性があります。

    暴行罪が成立した場合には、「2年以上の有期懲役」に科され、傷害罪が成立した場合には「15年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」に科されることになります(刑法第204条、208条)。

    2021年4月、列車の撮影をめぐりトラブルになった中学生を投げ飛ばし、大けがを負わせた当時19歳の少年が傷害罪の容疑で逮捕されています。

  7. (7)器物損壊罪

    鉄道営業法や新幹線特例法に抵触しない場合であっても、撮り鉄が他人の財物を隠匿・損壊した場合には器物損壊罪に問われる可能性があります。

    器物損壊罪が成立した場合には、「3年以下の懲役」または「30万円以下の罰金若しくは過料」に科されます(刑法第261条)。

    2023年10月には、鉄道写真の邪魔になるとしてJR東海道線の線路内に上下線を区切るために設置されていたロープを切断したりロープを取り付けていたポールやコンクリートを持ち去ったりした大学生2名と高校生1名が、器物損壊の疑いで逮捕されています。

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3、刑事・民事両方の責任が発生する可能性あり

撮り鉄の迷惑行為で逮捕されて、刑罰が科されるというのは刑事責任の話です。

線路内に立ち入ったり鉄道業務を妨害したりした結果、鉄道会社に損害が発生した場合には、民事責任として賠償金の支払い義務が発生するおそれがあります

迷惑行為により鉄道会社に損害を負わせた場合には、不法行為に基づく損害賠償責任が発生します。罰金や科料は刑罰として国に徴収されることになるため、鉄道会社に支払われるお金ではありません。

また、迷惑行為によって第三者に被害が発生すれば、刑事処罰のみならず、多額の賠償金を請求されてしまうリスクがあります。

4、撮り鉄の迷惑行為で逮捕されたら、弁護士に相談すべき理由

趣味で鉄道列車を撮影するつもりが、撮り鉄の迷惑行為として逮捕されてしまった方は、すぐに弁護士に相談して法的サポートを受けるようにしてください。

迷惑行為によって鉄道会社に大きな損害が生じてしまった場合には、損害賠償請求されてしまう可能性があります。鉄道会社との話し合いや交渉については弁護士に対応を依頼しておくことで、損害賠償請求の回避や賠償額の減額が期待できます。

また、逮捕直後に弁護士に依頼すれば、検察官に勾留の必要性がないことを伝え、詳しい事情を説明してもらえます。勾留の必要性が軽微と判断された場合には、早期に釈放されて普段通り生活しながら刑事手続きを進められる可能性があります。

さらに、逮捕後すぐに弁護活動を行ってもらうことで、不起訴処分を獲得し、刑罰を軽減できる可能性も高まります

5、まとめ

本コラムでは、撮り鉄の迷惑行為によって成立する可能性がある犯罪について具体的に解説いたしました。

列車が来ていないとしても鉄道列車を撮影する目的で線路内に立ち入る行為は犯罪です。
また迷惑行為によって列車に遅延や運休が発生してしまった場合には、高額な賠償金を請求されてしまうおそれもあります。

したがって、鉄道会社などへの迷惑行為が原因で逮捕されそうな場合には、すぐに弁護士に相談してください。弁護士に相談すれば、今後の対応について適切にアドバイス・サポートをしてもらえます。

ベリーベスト法律事務所には刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が在籍しておりますので、お気軽にご相談ください。

本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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