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実刑判決とは? 実刑を避けるためのポイントとは?
刑事事件を起こして逮捕された場合、どのような処分が待っているのでしょうか。もし、「実刑判決」を受けると、すぐに刑務所に入れられてしまうのでしょうか。
ここでは、実刑判決の意味や、執行猶予判決との違い、実刑判決を受けるケースや、それまでの刑事手続きの流れなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士がわかりやすく解説していきます。
1、実刑判決とは? 執行猶予付き判決との違い
そもそも、実刑判決とはどのようなものなのでしょうか。
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(1)実刑判決とは
実刑判決とは、刑事裁判で言い渡される有罪判決の一種です。実刑判決は、判決が確定すると直ちに刑罰が執行される判決のことを指します。
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(2)受ける実刑の種類とは?
実刑判決と聞くと、刑務所に収監されることを連想する方もいるでしょう。しかし、実刑判決によって被告人がどのような処分を受けるのかは、刑罰の種類によって異なります。
被告人が有罪判決によって言い渡される刑罰は、重い順に「生命刑」「自由刑」「財産刑」の3種類に分けられます。
- 生命刑:死刑のみ
- 自由刑:懲役、禁錮、拘留が該当する、刑務所や拘置所などの刑事施設に収容される刑罰
- 財産刑:罰金、科料、没収(付加刑)が該当する、財産をはく奪する刑罰
これらの刑罰について執行が猶予されなければ、すべて「実刑判決」となります。
【自由刑】
自由刑の軽重は、「拘留」「禁錮」「懲役」の順で重くなっています。
- 拘留:1日以上30日未満、刑事施設に拘置される刑罰
- 禁錮:刑務作業が科されない状態で刑事施設に収容される刑罰。無期と有期があり、有期禁錮の場合は1月以上20年以下収容される。
- 懲役:刑事施設に収容され、刑務作業を科される刑罰。無期と有期があり、有期禁錮の場合は1月以上20年以下収容される。
なお、2025年6月1日からは、懲役と禁錮が一つにまとめられて、拘禁刑が適用されるようになります。
【財産刑】
財産刑のうち、没収は付加刑であるため、主刑とは別に没収だけを言い渡すことはできません。財産刑の軽重は、「科料」「罰金」の順に重くなっています。
- 科料:1000円以上1万円未満
- 罰金:1万円以上
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(3)執行猶予付き判決との違い
それでは、実刑判決と執行猶予付き判決との違いはなんでしょうか。
いずれも有罪判決であり、前科が残るという点は共通しています。しかし、実刑判決の場合には、言い渡された刑罰が直ちに執行されるのに対して、執行猶予付き判決の場合、一定期間刑の執行が猶予されることになります。
たとえば、「懲役2年、執行猶予3年」という有罪判決が言い渡された場合を考えてみましょう。
この場合、3年間は懲役刑の執行が猶予され、その期間中に犯罪を起こさなければ、懲役2年の刑罰は消滅し、刑務所に収監されることはなくなります。
【執行猶予が付される条件】
なお、有罪判決に執行猶予が付される条件として、言い渡しを受けた刑が3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金であることが必要です。そのうえで、以下のいずれかに該当していなければなりません。
- 前に禁錮以上の刑を受けてない者
- 前に禁錮以上の刑を受けていても、その執行を終わった日または執行の免除から5年以内に禁錮以上の刑を受けていない者
2、実刑判決を受ける可能性があるケースとは?
それでは、執行猶予が付されず実刑判決を受けるのは、どのようなケースなのでしょうか。ここでは、実刑判決が言い渡される可能性が高いケースについて解説していきます。
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(1)法定刑が重い犯罪の場合
まず、法定刑が重い罪を犯した場合には、実刑判決が言い渡される可能性が高くなります。前述の通り、執行猶予が付けられるのは、「3年以上の懲役もしくは禁錮」または「50万円以下の罰金」の言い渡しを受けた場合のみです。
したがって、それよりも重い刑罰を言い渡された場合には執行猶予が付されることはありません。
法定刑が重く実刑判決が言い渡される可能性が高い犯罪としては、次のようなものが挙げられます。
- 殺人罪:死刑または無期もしくは5年以上の懲役
- 現住建造物等放火罪:死刑または無期もしくは5年以上の懲役
- 強盗罪:5年以上の有期懲役
- 不同意性交等罪:5年以上の有期拘禁刑
- 傷害致死罪:3年以上の有期懲役
なお、法定刑が3年を超える場合でも、酌量減軽によって執行猶予可能な量刑の範囲におさまる可能性はあります。
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(2)同種の犯罪を繰り返している場合
以下のようなケースでは、執行猶予を付けることができません。
- 前に禁錮以上の刑を受けたことがある場合
- 禁錮以上の刑の執行または執行の免除から5年以内に禁錮以上の刑を受けた場合
そのため、今回起こした事件とは別に、以前に懲役刑や禁錮刑の言い渡しを受けていた場合には、実刑判決を受けることになります。
また、上記に該当しない場合であっても、過去に刑務所に入れられたり、同種の犯罪を繰り返し起こしていたりした場合には、「遵法精神に欠ける」「再犯のおそれが高い」として実刑を受ける可能性があります。 -
(3)犯行態様が悪質な場合
犯行態様が悪質な場合や、犯罪の結果が重大な場合には、実刑判決を受ける可能性が大きくなります。
計画的であったり、複数による組織的犯罪である、被害総額が甚大・被害者が大きなけがを負ったケースについては、執行猶予が付されず実刑判決となる可能性があります。
また、被害弁償をしなかったり、事件について謝罪していなかったりする場合にも、反省していないとして実刑判決となる場合があります。 -
(4)執行猶予中に再犯した場合
執行猶予中に再犯を起こした場合には、実刑判決となる可能性が高いでしょう。
再度の執行猶予については、より条件が厳しくなります。
また、執行猶予期間中に禁錮以上の刑が確定した場合には、執行猶予が取り消されることになります。この場合、禁錮刑や懲役刑が執行されることになるため、刑務所に収監されることになります。
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- ※被害者からのご相談は有料となる場合があります。
3、実刑判決が出されるまでの流れとは?
実刑判決が出されるまでの手続きの流れはどうなっているのでしょうか。
ここでは、刑事事件を起こして警察に逮捕されてから、刑事裁判で実刑判決が下されるまでの全体の流れについて解説していきます。
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(1)逮捕・勾留
警察官に逮捕された場合には、48時間以内に取り調べが行われ、検察官に送致(送検)されるか否かが判断されます。検察官に事件が送致された場合には、送致から24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留するか否かが判断されます。
裁判所が被疑者の勾留を決定した場合には、最長で20日間の身体拘束が継続する可能性があります。
一方で、逮捕・勾留の必要性がないと判断された場合には、在宅事件に切り替わり、日常生活を送りながら刑事手続きが進んでいくことになります。 -
(2)起訴または不起訴
被疑者が勾留されている期間に、検察官は捜査を行い、被疑者を起訴または不起訴することになります。被疑者が起訴された場合には、被告人となり、裁判所で刑事裁判を受ける必要があります。
ただし、事案が明白で簡易な事件については略式起訴となり、刑事裁判も略式手続きとなることがあります。この場合、公判は開かれずに、検察官の提出した書類を裁判官が書面審理をして、判決が下されることになります。 -
(3)刑事裁判を受ける
検察官が公訴を提起してから、1か月〜2か月程度で刑事裁判が開かれます。勾留されている被告人については、保釈されない限り、裁判まで身体拘束を受けることになります。
刑事裁判では、検察官と弁護士がそれぞれ証拠等を開示・主張等を行い、提示された情報をもとに裁判所が有罪・無罪を判断します。
裁判官により判決が言い渡され、判決の翌日から数えて14日が経過すると判決が確定します。このとき、判決に不服がある場合は14日以内に控訴しなければなりません。
判決が確定した時点で、執行猶予がついていなければ実刑判決が確定します。実刑判決が確定すれば、懲役や禁錮などの場合には、刑務所に移送され収監されることになります。
4、実刑判決を回避するための3つのポイント
実刑判決を回避するためにはどうすればいいのでしょうか。
ここでは刑事事件を起こして逮捕された・されそうな場合に、実刑判決を回避するために重要な3つのポイントについて解説していきます。
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(1)すぐに刑事事件に強い弁護士に依頼する
まず、逮捕された場合には、すぐに刑事事件に強い弁護士へ依頼をしましょう。
前述の通り、逮捕から72時間で勾留されるか否かが判断されることになります。刑事事件に強い弁護士に依頼することで、身体拘束からの早期解放を訴えかけてもらうことが可能です。
また、不起訴獲得を目指すためにも、弁護士へ依頼し弁護活動に動いてもらう必要があります。不起訴になれば、刑事裁判を受ける必要はないため、実刑判決を受けることもありません。 -
(2)被害者との示談を成立させる
実刑判決を回避するためには、事件の被害者と示談を成立させることも重要なポイントです。被害者と示談が成立した場合には、検察官が不起訴処分とする可能性が高まります。
また、起訴された場合であっても、有利な情状として執行猶予が付される可能性が高まるため、実刑判決を回避できると期待できます。
ただし、示談の成立は加害者の反省や被害弁償の成立、被害者の許す意思(宥恕意思)等を示しますが、必ず不起訴処分や執行猶予判決を得られるわけではありません。あくまで、検察官や裁判官の判断に、一定の影響を与えることになります。 -
(3)家族に身元引受人になってもらう
家族に身元引受人になってもらうことも重要です。
家族からの手厚いサポートが期待できる場合には、再犯の危険性が減少したとして執行猶予が付される可能性があります。
同居の家族が本人を監督し、更生をサポートすることを誓約していることを捜査機関や裁判官に示すことで、実刑判決を免れる可能性があります。
5、まとめ
実刑判決とは、執行猶予が付されていないことから、判決が確定することで直ちに刑罰が執行される有罪判決のことです。懲役刑や禁錮刑の場合、実刑判決を言い渡されることで、すぐに刑務所に収監されることになります。
実刑判決を回避するためには、逮捕されたらすぐに弁護士に依頼することが大切です。刑事事件に強い弁護士に依頼することで、不起訴や執行猶予の獲得を目指した弁護活動を行ってもらうことができます。
事件を起こして警察に逮捕されそうな場合や、ご家族が逮捕された場合には、ベリーベスト法律事務所へお問い合わせください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
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