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逮捕後、実名報道されたくない! 報道の基準は? 回避できるの?


刑事事件を起こしてしまった場合、氏名や職業・学校、事件概要などが報道されるのでしょうか。まだ報道されていない場合、実名報道されるのはどのようなタイミングなのでしょうか。
実名報道されたら、日常生活や家族にも大きな影響を及ぼすことになります。そのため、実名報道されることを避けたいと考えている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、実名報道の影響や、実名報道される事件、実名報道されない理由などとあわせて、実名報道を回避するための対処法についても、ベリーベスト法律事務所の弁護士が分かりやすく解説していきます。
1、実名報道されたらどうなる?
そもそも、実名報道とは、テレビや新聞、ネットニュースなどで刑事事件を報道するときに、被疑者(報道では 容疑者などとされていることもあります。)や共犯者などの氏名や経歴などを明らかにして報道することを指します。
実名報道されれば、事件を起こした人が「どこの誰か」ということが広く知れ渡ることになることはご存じのとおりです。
刑事事件を起こして実名報道がされた場合には、日常生活にどのような影響があるのでしょうか。
ここでは、実名報道をされた場合の影響について解説していきます。
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(1)実名報道を決めるのは、各種報道機関の判断
実名報道がされるタイミングについては、各種報道機関の判断に委ねられています。
実名報道されるタイミングとしては以下のケースが多いです。
タイミング
- 検察官が起訴したとき
- 裁判所が判決を言い渡したとき
- 被疑者が逮捕されたタイミング
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(2)会社や学校を解雇・退学されるおそれがある
まず、刑事事件で実名報道がされると、会社を解雇されたり、学校を辞めさせられる可能性があります。
社会人の場合、会社への影響
実名報道がされる場合、容疑者の氏名や年齢のみならず、勤務先の会社名や役所についてもあわせて報道される場合があります。
そして、多くの会社では、就業規則や服務規程に「業務の円滑な運営に支障をきたすおそれがあるとき」や「会社の信用や名誉を著しく毀損したとき」には、懲戒解雇ができることを規定しています。
学生の場合、学校への影響
また、高校生や大学生が犯罪を行った場合には、退学処分になる可能性があります。
学校教育法では、学校側が教育上必要であると判断した場合には、学生を退学処分にすることができると規定されています。
なお、会社や学校を懲戒解雇・退学させられる場合には、合理的な理由に基づき、相当な範囲でなければならないため、事案によっては、処分が違法、無効となるケースがあることも知っておきましょう。
合理的な理由がなく解雇や退学をされそうなときは弁護士に相談すべきです。 -
(3)転職が難しくなるおそれがある
実名報道されると、転職や再就職をするハードルが高くなる可能性があります。
従業員の採用面接をする際、企業によっては求職者の名前をインターネットで検索して情報を収集するところもあります。実名報道されていれば、ネットニュースなどの記事を簡単に見つけることが可能です。
求職者が過去に事件を起こしたという事実が明らかになった場合、採用担当者が当該人物の採用を見送るという判断をする可能性が高まります。 -
(4)時間がたってもインターネットに情報が残る
実名報道がされてしまうと、インターネット上に半永久的に情報が残されるリスクがあります。いわゆるデジタルタトゥーと呼ばれるものです。
過去の犯罪報道については、報道された当時は公共性が高いものであったとしても、時間が経過とともに「忘れられるべき」ではないかという議論は、かねてより行われています。
WEBサイトやネット掲示板上に情報が固定化されてしまうことで、いつまでも「あの事件を起こした人だ」と周囲から後ろ指を指され続ける懸念があることは否定できません。
このような事態は、適切に罪を償い更生をしている方であればなおさら、非常に精神的な負担が大きいものとなるでしょう。 -
(5)家族も引越しを余儀なくされるおそれがある
実名報道により個人が特定された場合には、その家族の影響にも影響が出てくる可能性があります。「犯人の家族」として、周囲から好奇の目でみられたり、誹謗中傷を受けたりするおそれがあることは否定できません。
家族の生活環境に悪影響が生じた場合には、仕事や学校を変えたり、引越しを余儀なくされたりするケースはよく耳にするのではないでしょうか。
さらに、子どもへの影響を避けるために、配偶者から離婚を請求されてしまうことがあります。
2、実名報道される可能性が高い4つのケース
すべての刑事事件が実名報道されるわけではありません。実名報道されるのはどのような事件なのでしょうか。
ここでは、実名報道される可能性がある事件について解説していきます。
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(1)殺人などの重大な刑事事件
人が亡くなった事件や、凶悪な犯罪、法定刑が重い事件など、重大な刑事事件の場合には、実名報道される可能性が高いと考えられます。
具体的には、以下のような重大な刑事事件については、実名報道される可能性が高いでしょう。
例
- 殺人事件
- 強盗傷害・強盗殺人事件
- 現住建造物等放火罪
- 不同意性交等致死傷事件(旧 強制性交等致死傷事件)
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(2)被害者が多数いる事件
多数の被害者がいる事件や、多額の被害を出した事件は公共性が高いとして、実名報道される可能性があります。
具体的には、以下のようなケースは実名報道されやすい事件です。
例
- 被害総額が高額である窃盗
- 業務上横領事件
- 多数の被害者がいるケース
- 未成年者が被害に遭っている性犯罪
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(3)社会的な地位・関心が高い職業の人が起こした事件
社会的に地位の高い人による犯罪や、社会的な関心が高い人物が起こした事件についても、実名報道される可能性があります。
社会的な信用が高い職業の者が起こした刑事事件の場合、軽微な事件であっても公共性が高いと判断されやすく、結果、実名報道される可能性があります。
例
- 医者
- 弁護士
- 公務員
- 教師
- 芸能人
- 大手企業の社員
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(4)社会的に問題になっている組織犯罪
以下のような組織的犯罪については、社会的な関心が高い事件として実名報道されやすいでしょう。
組織犯罪は被害者が多く、報道機関は注意喚起を促すために報道するケースが多いです。
例
- オレオレ詐欺
- SNSやアプリなどを悪用した特殊詐欺
- 闇バイト
- ※お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- ※被害者からのご相談は有料となる場合があります。
3、重大事件でも実名報道されにくい3つのケース
他方で、重大事件のように見える事件であっても実名報道がされない事件があると感じておられる方がいるようです。
なぜ実名報道がされないのか、具体的な理由について解説します。
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(1)未成年による事件
未成年者が起こした事件については、実名報道されない可能性が高いといえます。
成人年齢は18歳からとなりましたが、少年法第61条には、少年が起こした犯罪については、本人を推知できる報道を禁止しています。
少年法における「少年」とは、20歳未満の者を指します。
少年はいまだ成長の途上にあり、刑事事件を起こした場合であっても適切な教育や処遇によって更生が期待できることから、個人を特定できるような報道はすべきではないと考えられているのです。
ただし、18歳・19歳の「特定少年」に該当する方が逆送されて起訴された場合については実名報道される可能性があります。
逆送とは、本来少年事件は家庭裁判所で処分が決定しますが、重大事件(殺人や強制性交等罪、強盗罪など)の場合は家庭裁判所が事件を検察に送致することです。
送致を受けた検察が起訴し、刑事裁判が行われることになった場合は、実名報道される可能性が出てきます。 -
(2)精神障害者による事件
精神障害者が起こした刑事事件についても、実名報道されない可能性が高いでしょう。
犯罪を行った人に刑事責任を問うことができるのは、法律に違反する行為を自ら選択して行動したからです。
そのため、行為者に責任能力がない場合には、非難可能性がないとして、刑事責任を問うことができません。
刑法第39条1項は、「心神喪失者の行為」を処罰できないと規定されています。
したがって、精神障害者が起こした事件については、実名報道が避けられる傾向にあります。 -
(3)逮捕されていない事件
刑事事件が実名報道されるタイミングとして、警察に逮捕された時点が多いことから、逮捕されていない事件については、実名報道されない可能性があります。
特に、被疑者が身体拘束を受けておらず、在宅事件として処理されている事件は、比較的公共性が低い事件であるとして、報道されない・匿名報道される傾向があるでしょう。
4、実名報道を回避するための対処法とは?
実名報道されないようにするためには、どうすればいいのでしょうか。
ここでは、実名報道を回避するための対処法について解説していきます。
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(1)事件の被害者と示談を成立させる
実名報道を回避するためには、事件の被害者と示談を成立させることが重要です。
被害者との示談が成立した場合には、被害弁償が済んでいるとして、警察に逮捕される可能性が小さくなります。事件として立件されたとしても在宅事件の場合には、実名報道されない可能性がより高まります。 -
(2)逮捕を回避するための弁護活動をしてもらう
逮捕を回避するためには、被害者との示談を成立させるほか、自ら捜査機関に事件を申告して自首をしたり、身元引受人を用意したりしておくことが有効です。
容疑者が逮捕されるのは、逃亡または証拠隠滅のおそれがあるためです。
自ら犯行を認めて出頭して、捜査機関に処遇を委ねている場合には、逮捕の必要性がないと判断される可能性も十分あります。
ただし、自首する場合には、事前に弁護士に相談したうえで、同行してもらい、取り調べに対するアドバイスを受けておくことが重要です。 -
(3)逮捕された場合の対応を依頼する
逮捕された場合であっても、逮捕後の対応を弁護士にお願いすることができます。
弁護士に、捜査機関や各社マスコミに対して、実名報道を控えるように意見書を提出してもらうことが考えられます。
また、会社や大学を解雇・退学させられそうな場合には、弁護士に交渉してもらうことも考えられます。
ただし、最終的に報道を控えてもらうことができるかは、事件の大きさや内容にもよります。
具体的には、逮捕や起訴を回避できた場合には、懲戒事由や退学事由に該当しないとして、寛大な措置を講じてもらえるように交渉してもらうことが考えられます。
5、実名報道が心配な場合は、弁護士に相談を
刑事事件を起こして実名報道された場合には、会社や学校を辞めさせられたり、いつまでも誹謗中傷を受けて、家族にも悪影響が生じたりするリスクがあります。
ただし、重大な刑事事件や社会的に関心の高い事件でなければ、実名報道の心配はないケースがあることは否定できません。
特に、未成年者や障害者が起こした事件については実名報道されない傾向があります。
実名報道を回避するためには、弁護士に相談のうえ、示談交渉などの弁護活動をしてもらうことが重要となるでしょう。
また、実名報道をされてもされなくても、刑事事件の被疑者になると、ご本人だけでなくご家族に至るまで何らかの影響を受けてしまうことがあります。
なるべく早い段階で刑事事件についての知見が豊富な弁護士に対応を依頼すべきです。
ベリーベスト法律事務所では、元検事の弁護士をはじめとした刑事事件専門チームに所属する弁護士が、弁護活動を行います。
事件を起こしてしまい、警察から出頭の要請を受けているケースや、ご家族が逮捕されてしまったなどでお悩みの場合には、ご相談ください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。