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性的虐待(強姦)で問われる刑罰とは? 執行猶予はつくのか?
性的虐待(強姦)による事件は、被害者に多大な精神的、身体的負担を与えます。そのため、平成29年6月に刑法が一部改正され、同年7月から施行されました。処罰が厳格化されたと同時に性的虐待(強姦)に該当する行為の範囲も広くなり、被害者の告訴がなくとも起訴できる非親告罪へと変わりました。
この記事では、性的虐待における強姦とはどのような行為を指すのかについてご紹介します。
また身内が他人に性的虐待を行ってしまった場合、どのような罪に問われ、どのような処罰を受けるのか、また執行猶予はあるのかといった疑問にも触れていきます。不起訴処分や執行猶予になるために、ご家族としてできることについても確認しましょう。
令和5年7月13日に強制性交罪は「不同意性交等罪」へ改正されました。
1、性的虐待の強姦とは
性的虐待とは上下関係が発生する間柄において、上位の立場に立つ者が、その立場の力関係を悪用もしくは乱用し、下位の者の権利や人権などを無視して行う、性的な侵害行為です。
性的虐待とは犯罪名ではなく、一般用語として使用されている言葉です。つまり、性的虐待は法律で明確に規定されているではありません。ただし、道義上許されない行為である点に変わりなく、また様態によっては刑法上の強姦(ごうかん)罪に該当し得る点も忘れてはなりません。
具体的に、性的虐待にあたる強姦がどのような立場間で行われるのかは、以下をご確認ください。
- 親から子どもに対するもの(性的児童虐待)
- 夫婦間(DV)
- ビジネスにおける仕事の発注者と受注者(枕営業)
- 職場における上司と部下、先輩と後輩
- 教師や教授と学生
- 施設管理者やスタッフと高齢者や障害者
性的虐待は、行為の内容や状況などによって問われる罪が異なります。たとえば刑法177条の強制性交等罪(きょうせいせいこうとうざい)や刑法179条の監護者性交等罪(かんごしゃせいこうとうざい)が適用されます。
強制性交等罪とは、刑法改正前は強姦(ごうかん)罪と呼ばれていた犯罪です。13歳以上の者に、脅迫や暴行をすることで無理やり「性交等」をはたらいた場合に成立します。13歳未満の者に対しては、手段や同意の有無を問わず性交等をすると成立します。
監護者性交等罪では、被害者は18歳未満の子どもであり、加害者はその子どもを監護、保護する立場にある親などです。親という立場を利用して性交等を行うと処罰対象となります。わいせつな行為をした場合には監護者わいせつ罪に問われます。
2、性的虐待の刑罰とは
性的虐待をはたらいた場合の刑罰は、強制性交等罪も監護者性交等罪も5年以上20年以下の懲役刑です。法改正前の旧強姦(ごうかん)罪では3年以上であったため、処罰は厳格化されたといえます。
前述した通り、強制性交等罪においては13歳以上の者に対して性交等をはたらく際には、暴行や脅迫があったことが犯罪成立の要件となっています。しかし監護者性交等罪では、18歳未満の子どもに対して性交等をはたらく際、脅迫や暴行などをしていなくても犯罪が成立します。
また、強制性交等罪の被害者は平成29年の刑法改正により女性だけに限定されなくなりました。現在では男性が被害者である場合も犯罪が成立し、法に問われることとなっています。オーラルセックスやアナルセックスも性交等に含まれます。また異性間のみならず同性間でも成立します。 性犯罪が多様化していることに法律が対応するようになったのです。
さらに法改正前は、旧強姦(ごうかん)罪は親告罪であり、起訴するには被害者の告訴が必要でした。しかし改正後は、非親告罪となり、被害者からの告訴がなくても加害者は逮捕され、処罰されることとなっています。 それまで、被害に遭ってしまった方が自ら告訴することは、加害者からの仕返しに対する恐れや、被害者のプライバシーを守る観点から難しいと考えられていました。非親告罪にすることで、泣き寝入りするしかなかった被害者を救う道が開かれたのです。
監護者性交等罪も非親告罪です。実の親や義理の親、子どもを監護する立場の者がその影響力に乗じて性的虐待を行うことから、被害者が告訴することは困難だと考えられるからです。
3、性的虐待による強姦で起訴された場合の執行猶予は?
性的虐待による強姦で起訴された場合、原則として執行猶予はつきません。執行猶予は3年以下の懲役刑に対して適用されるものだからです。強制性交等罪、監護者性交等罪はいずれも5年以上の懲役刑であることから対象外となります。 刑事事件の場合、初犯であれば執行猶予がつくものもありますが、性的虐待による強姦の場合は処罰が厳格化されたことから執行猶予はつかないのが基本であり、前科もついてしまいます。前科がつけば加害者本人やご家族へさまざまな影響を与えるでしょう。
前科がつかないようにするためには、不起訴となることが条件です。親告罪だったときには、被害者からの告訴をもって起訴されていたため、被害者との示談が成立すれば不起訴になることもありました。しかし非親告罪となったことから、起訴をするかどうかの判断は検察にゆだねられることになっています。交渉によって示談が成立し、被害者が事件を不起訴にしてほしいと嘆願書を提出したとしても、必ずしも不起訴になるとは限らないのです。
ただし、示談は決して無意味なわけではなく、非親告化された現在でも必要不可欠です。被害者の処罰感情を少しでも減らしてもらい、示談を成立させることで、情状酌量の余地があるとして、判決時の量刑が3年以下となる可能性が生じるからです。
量刑が懲役3年以下となれば、執行猶予がつくこともあり得ます。さらに、事件が初犯であること、計画的犯行でないことに加えて、加害者本人がいかに反省しているのかを検察側や裁判官に訴えることが大切です。検察や裁判官に反省の深さを感じてもらえば、情状酌量の余地が生まれます。
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4、もしも身内が性的虐待で逮捕されたときにご家族ができること
もしも身内が性的虐待で逮捕されてしまったとき、加害者のご家族としてはできるだけ早く自宅に帰らせてあげたい、できれば示談を成立させて不起訴としたいと思うでしょう。 犯罪の性質からして確実に不起訴にするということは難しい場合もありますが、万が一起訴されたとしても、示談を成立させることにより情状酌量の余地があるとして執行猶予付き判決を得ることは可能です。
そのためには、まずは被害者に対して、心からの謝罪することが大切です。ただし、事件の特性上、加害者本人はもちろん、たとえご家族であっても会いたくないと言われる可能性が高いものです。もし会ってもらえたとしても、そこから示談交渉に進むには時間が必要でしょう。 そこで、謝罪と示談交渉を行うには、性犯罪事件に詳しい弁護士事務所に相談し、代わりに対応してもらうことが賢明です。 被害者としても、第三者である弁護士であれば話を聞いてくれる可能性がありますし、被害者の心情をくみつつできるだけスムーズに示談交渉を進めてもらうことができます。
また、被害者が児童の場合の示談交渉の相手は、通常、被害者の親となります。この場合、大切な子どもを傷つけられたという心情が強く、交渉が難航する可能性が高くなります。加害者本人はもとより、ご家族が単独で対応することは避け、性犯罪加害者の弁護実績が豊富な弁護士に相談するようにしましょう。
5、まとめ
性的虐待における強姦は強制性交等罪や監督者性交等罪などに問われます。刑罰は懲役刑5年以上であることから、執行猶予はなく実刑判決が下る可能性も高いといえるでしょう。情状酌量の余地があるとして不起訴処分や執行猶予付き判決を勝ち取るには、被害者に心からの謝罪を行い、宥恕(ゆうじょ)意思を得たうえで示談を成立させることが欠かせません。しかし現実的に、加害者本人やご家族がそれを行うのは非常に厳しいものであるため、できるだけ早いタイミングで弁護士へ相談されることが大切です。
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