- 性・風俗事件
- 盗撮
- 刑罰
盗撮をするとどのような罪や刑罰が適用される? 初犯と再犯の違いは?
スマートフォンのカメラで日常を撮影し、画像や動画を家族・友人らと共有するなどして手軽に楽しめるよう時代になりました。しかし一方では、盗撮行為が多発している現状もあり、全国各地で盗撮事件による逮捕者がでています。
盗撮はモラルの問題だけでなく、法令で規制された犯罪行為です。たとえ自己が楽しむ目的であっても盗撮行為をすれば刑罰を科せられ、社会的な制裁を受けるおそれがあると知っておかなくてはなりません。
では、盗撮は具体的にどのような刑罰を受けるのでしょうか。この記事では、盗撮行為で問われる罪や刑罰の内容について解説します。初犯と再犯の違いや、量刑が重くなりやすい行為もあわせて見ていきましょう。
1、盗撮はどのような罪に問われるのか
盗撮とは、被写体や管理者の許可を得ずに撮影する行為を指します。
撮影にはいたらなくても、その目的でカメラを差し向けたり、設置したりする行為も盗撮にあたります。
具体的には次のような根拠で処罰されることになります。
- 撮影罪
- 迷惑防止条例違反
- 軽犯罪法違反
- 住居侵入罪
- 著作権侵害
- 児童ポルノ規制法違反
盗撮行為の具体例としては、「エスカレーターで女性のスカートの中を撮影する行為」や「公衆トイレにカメラを設置し下半身を撮影する行為」などが該当します。
もっとも、人が衣服を身につけていれば勝手に撮影してもよい、とはなりません。衣服の上からの撮影でも卑わいな行為として処罰される場合がありますし、そうでなくても肖像権やプライバシー権の侵害として損害賠償を請求される可能性は残ります。
また、上映された映画や展示された芸術作品などを許可なく撮影する行為も盗撮ですので、対象が人でなくても処罰される可能性があることは覚えておきましょう。
2、盗撮における各法令の刑罰
盗撮を処罰する法令ごとに、概要と刑罰の内容を解説します。
-
(1)撮影罪
撮影罪(正式名称:性的姿態等撮影罪)は、刑法改正により令和5年7月13日に施行された法律です。これまで盗撮は、後述する迷惑防止条例違反などによって処罰されてきましたが、撮影罪が新設されたことにより、今後盗撮行為をはたらくと、原則として撮影罪により処罰されます。
撮影罪は、正当な理由がないにもかかわらず、ひそかに性的姿態等を撮影した場合に罪に問われます。
性的姿態等とは、以下に該当するものです。
- 人の性器・肛門、もしくはその周辺部・臀部(でんぶ)・胸部にあたる性的な部位、または性的な部位を覆っている下着
- わいせつな行為または性交等(性交・肛門性交・口腔(こうくう)性交)がされている間における人の姿態
また、以下の行為も撮影罪の処罰の対象となります。
- 不同意性交等罪にあたる行為および事由によって、被害者が同意しない意思を形成、表明、もしくは全うすることが困難な状態にさせる、または被害者がそのような状態にあることに乗じて、性的姿態等を撮影する
- 被害者に、その行為が性的なものではないと誤信をさせたり、特定の者以外は閲覧しないと誤信をさせたり、または被害者が誤信していることに乗じて、性的姿態等を撮影する
- 正当な理由なく、13歳未満または13歳以上16歳未満の子どもの性的姿態等を撮影する
※子どもの年齢が13歳以上16歳未満の場合、5歳以上年長の者が撮影すると処罰の対
象となります
撮影罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」です。迷惑防止条例違反などと比較すると、重い刑罰が科せられます。
-
(2)迷惑防止条例違反
迷惑防止条例とは、各都道府県が定める条例の通称です。都道府県によって名称や内容が異なりますので、盗撮事件を起こした都道府県の条例を確認する必要があります。
東京都を例にとると、規制される場所における下着や身体を撮影する行為や、カメラなどを差し向けたり設置したりする行為を禁じています(第5条第1項第2号)。
刑罰は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」です。 -
(3)軽犯罪法違反
軽犯罪法第1条第23項では、住居、浴場、更衣場、便所など、人が通常衣服をつけないでいるような場所を、正当な理由がなくのぞき見ることを禁じています。
違反すると「拘留または科料」を科されます。
拘留とは1日以上30日未満の期間、刑務所で拘束される罰です。科料とは1000円以上1万円未満の金銭を徴収される罰です。 -
(4)住居侵入罪
正当な理由なく人の住居などに侵入すると、住居侵入罪(刑法第130条)が成立します。
盗撮をする目的で人の住居や敷地内、ホテルの宿泊者の部屋などに立ち入ることも「正当な理由」がないものとして住居侵入罪にあたります。
刑罰は「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」です。
住居に侵入したうえに盗撮をしていると同時に2つの罪を犯していることになりますが、この場合は重いほうの刑が適用されます。 -
(5)著作権侵害
映画やテレビ番組、音楽や芸術作品などの著作物を許可なく使用すると著作権侵害になるため、これらを盗撮すると処罰される可能性があります。
著作権侵害にあたる場合、著作権法第119条では「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金または併科」が科されると明記されています。
なお、映画の場合は、盗撮によって多大な被害が発生していることから、著作権法のみならず「映画の盗撮の防止に関する法律」によっても、録画や音声の録音が禁じられています。 -
(6)児童ポルノ禁止法違反
盗撮した相手が18歳未満の児童だった場合、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」、いわゆる児童ポルノ禁止法違反として罪に問われます。
盗撮は第7条5項の児童ポルノ製造にあたり、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」を科されます。
弁護士との電話相談が無料でできる
刑事事件緊急相談ダイヤル
- お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- 警察が未介入の事件のご相談は来所が必要です。
- 被害者からのご相談は有料となる場合があります。
3、初犯と再犯の刑罰の違い
盗撮が初犯だった場合、逮捕や起訴を免れる、あるいは罪が軽くなるとの期待があるかもしれません。一方で、再犯の場合はどれだけ罪が重くなるのかとの不安もあるでしょう。
初犯と再犯では刑罰にどのような違いがあるのかを説明します。
-
(1)初犯の場合の刑罰
結論として、初犯であれば許されるという規定は存在しません。
したがって、初犯であっても逮捕、起訴されるケースがあることは心得ておきましょう。
もっとも、初犯で、犯行様態も悪質でなく、かつ被害者との示談が成立しているなどの条件がそろえば、不起訴処分(起訴猶予)の可能性はでてきます。仮に起訴された場合でも、量刑判断において考慮され、執行猶予がつく可能性があります。 -
(2)再犯の場合の刑罰
再犯とは、法的には懲役を終えた日や執行猶予を受けてから5年以内に罪を犯すことを指します。刑法第57条では「再犯の刑はその罪について定めた刑の2倍以下とする」としていますので、刑罰が重くなる分、量刑も重くなりやすいと考えられます。
① 執行猶予期間中の再犯について
特に、執行猶予期間中の再犯は注意を要します。
新たに犯した行為によって禁錮以上の実刑判決を受けると、前に犯した罪の執行猶予が取り消されます。その結果として、前の罪で言い渡された刑期と、新たな罪で言い渡された刑期を合算した期間、刑務所に収監されることになります。
② 執行猶予期間を終えた後の再犯について
執行猶予期間を終えた後の再犯については、執行猶予を受けてから5年以内の場合には新たな罪に執行猶予はつかず、実刑となる可能性が高くなります。
これは、そもそも執行猶予がつくには「執行を終わった日や執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」という条件があるからです(刑法第25条)。
ただし、いずれの場合も、新たに犯した罪で言い渡される処分によっては、執行猶予の取り消しを免れる場合や、再度の執行猶予がつく場合もあります。
なお、過去にも盗撮で逮捕された経験があるというケースの場合もまた、法的には再犯とは呼びませんが、通常、初犯と比較して量刑が重く傾きます。反省していない、更生できなかったと評価されるためです。
さらには、前に罪を犯してからの期間も悪質性の評価に影響します。前の事件から間もない時期に盗撮すれば、反省の意思がなく悪質性が高いと判断される可能性が高いでしょう。
したがって、今回起こした盗撮事件でしっかりと被害者への謝罪や弁済を行い、不起訴処分や減軽を目指すことが非常に重要です。
4、刑罰の重さが変わる可能性がある行為
一定の行為をすると、より重い刑罰が適用されたり、量刑が厳しくなったりするおそれがあります。
まず考えられるのが、盗撮の犯行を隠ぺいする行為です。たとえば、シャッター音を消して盗撮する、撮影で使用したカメラを隠す、繰り返し盗撮するなどの行為は、悪質性が高いため、被害者が示談に応じにくくなります。
さらに、逮捕される直前に削除するなどの行為が露呈した場合は証拠隠滅を図ったとみられる可能性が高いでしょう。
いずれにしても、示談が不成立となれば、情状酌量してもらうための大きな材料を失うため、結果的に量刑が重くなる可能性が高まります。悪質な行為に対しては検察官、裁判官の心証も悪くなるでしょう。
さらに、盗撮した画像や動画のアップロードも、処分が重く傾く悪質な行為です。たとえば人の陰部を撮影してアップロードすれば、刑法のわいせつ物頒布罪が適用される可能性があります。罰則は「2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料、または懲役および罰金の併科」です(刑法第175条)。
アップロードした画像や動画の被写体が18歳未満の場合は、児童ポルノ禁止法における不特定多数への児童ポルノの提供に該当します。「5年以下の懲役または500万円以下の罰金または併科」という非常に重い罰が待っています(第7条第6項)。
5、まとめ
盗撮行為をはたらくと、原則撮影罪として処罰されます。初犯であっても悪質性が高い場合は実刑となる可能性があるため、速やかに示談を成立させるなど適切に対処しなくてはなりません。しかし加害者やその家族が被害者と示談交渉を行うことは難しいため、弁護士のサポートが不可欠です。そのため盗撮事件を起こして逮捕されてしまった場合には、早急に弁護士に相談しましょう。
ご自身や身近な方が盗撮をして逮捕された、警察から連絡がきているという場合などはベリーベスト法律事務所へご相談ください。刑事弁護の実績が豊富な弁護士が今後の見通しをアドバイスし、ご希望に添った結果となるよう尽力します。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。