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児童ポルノ禁止法で起こり得る冤罪とは? 違反で逮捕されるケースと警察の捜査
「子どもの性被害」が大きな問題となっています。中でも児童ポルノ事件は平成30年に検挙件数3097件、検挙人員2315人を記録しており、平成21年の統計と比較すると3倍以上の被害が発生しています。
警察による取り締まりも強化されているなか、どのような行為が児童ポルノ事件として処罰されるのか心配になる方も多いことでしょう。また、無実の罪で処罰されてしまう「冤罪(えんざい)」事件の存在も気になるところです。
本コラムでは、児童ポルノ禁止法の概要や起こり得る冤罪のケースについて解説します。
1、児童ポルノ禁止法とは?
児童ポルノ禁止法とはどのような行為を規制する法律なのでしょうか?
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(1)児童ポルノの定義
この法律で規制されている「児童ポルノ」とは、18歳未満の男女を対象とした写真や動画など視覚によって認識できる方法で、次の姿態が描写されたものやそのデータを指します。
具体的には、以下のようなものが児童ポルノとみなされる可能性があります。
児童ポルノとみなされる可能性がある行為
- 児童を相手にしている、または児童同士による性交または性交類似行為
- 他人が児童の性器を触る、児童が他人の性器を触る行為で、性欲を興奮させ又は刺激させるもの
- 衣服の全部または一部を着けない児童の性的な部分が露出・強調されたもので、性欲を興奮させ又は刺激させるもの
たとえば、児童の全裸を写した画像や児童と性交する動画などは児童ポルノに該当します。
ただし、アニメや漫画などの仮想児童ポルノは「準児童ポルノ」と呼ばれており、規制に向けた動きはありますが、令和2年1月現在において法規制は受けていません。 -
(2)児童ポルノ禁止法違反に該当する行為と罰則
児童ポルノ禁止法は、正式には「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」という名称がつけられています。
児童に対する性的な搾取・虐待を防ぐことを目的とした法律です。
児童ポルノ禁止法で規制されているものとして、次の行為が挙げられています。
それぞれの禁止行為と刑罰を確認しておきましょう。
① 単純所持
自己の性的好奇心を満たす目的での所持や保管は禁止されています。
違反した場合の罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
② 提供・製造・所持・運搬・輸出入・保管
児童ポルノの提供やこれを目的とした製造・所持・運搬・輸出入・保管も禁じられています。
単純所持よりも被害が甚大になるため、3年以下の懲役または300万円以下の罰金という重たい刑罰が科せられています。
③ 不特定多数への提供・公然と陳列
近年でもっとも問題となるケースがこの「不特定多数への提供・公然と陳列」でしょう。インターネットでアップロードするなどの方法は不特定多数の人が児童ポルノを閲覧することになり、取り返しのつかないほど被害が拡散します。
この目的でも製造・所持・運搬・輸出入・保管が禁じられており、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処されます。
④ 買春・盗撮
児童ポルノ製造を目的とした買春は1年以上10年以下の懲役、同じく盗撮は3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。
2、児童ポルノ禁止法違反の発覚と警察の捜査
児童ポルノ禁止法違反事件が発覚するケースや、警察がどのように捜査をすすめていくのかをみていきましょう。
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(1)どのようにして発覚するのか?
児童ポルノ禁止法違反事件の多くは、被害児童からの告白によって発覚します。
家出した児童を保護した際の事情聴取で情報を得るケースや、補導した児童が自らすすんで供述するケースが考えられるでしょう。
また、各都道府県警察によるサイバーパトロールによって発覚するケースも少なくありません。最近では、SNSのコミュニティーで児童ポルノに該当する情報を警察に通報するものもあるため、警察だけでなく一般の目による監視も強化されているといえるでしょう。
そのほか、児童ポルノに関係のない犯罪の捜査過程において発覚するケースもあります。 -
(2)警察の捜査方法
児童ポルノ禁止法違反事件を認知した警察は、容疑者を特定したうえで裁判所に捜索差押許可状を請求し、容疑者宅の捜索を行います。これが一般的にいう「家宅捜索」です。
ある日突然、令状をもった警察官が自宅に押しかけ、児童ポルノに該当するデータが保存されたパソコンやスマートフォンが押収され、履歴などの解析が行われることが多いようです。
また、児童ポルノに該当する動画を配信している違法サイトやアダルトビデオ業者が摘発された際には、ユーザー登録者や購入者のリストも押収されます。
リストに基づいていわゆる「芋づる式」で摘発を受けるため、自分では特に違法行為を犯していないつもりでも捜査対象になってしまうことがあります。
3、児童ポルノ禁止法違反で逮捕される?
児童ポルノ禁止法違反事件を起こしてしまった場合、必ず警察に逮捕されてしまうのでしょうか?
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(1)逮捕の要件
一般的に「逮捕=犯人として警察に捕まった」というイメージがあるかもしれませんが、逮捕の時点では犯人と断定されたわけではありません。
逮捕とは、被疑者の身柄を必要に応じて捜査機関におくことで取り調べの実効を高めるための手続きです。つまり、逮捕されたとしても「いまだ捜査中」の段階であって、刑罰や処罰とは別問題なのです。
そもそも逮捕には「逃亡または証拠隠滅のおそれ」という要件があり、これを満たしていなければできません。つまり、逃亡するおそれがなく、証拠隠滅も疑われないケースでは、たとえ児童ポルノ禁止法で規制されている行為があったとしても逮捕されないということになります。
警察の捜査は「任意捜査による」という基本があり、必要外に逮捕することは認められません。
したがって、逮捕の要件を満たしていなければ逮捕されないまま在宅事件扱いとして取り調べを受け、書類送検される可能性があります。真摯に取り調べに応じる姿勢があれば、重たい懲役刑を避けられることも期待できるでしょう。
ただし、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことをアピールする間もなく警察官が自宅に押しかけてきて逮捕されるおそれがあるため、安心はできません。 -
(2)児童ポルノ禁止法で逮捕されるおそれが高いケース
罪名や事件の内容にかかわらず、逮捕の要件は「逃亡または証拠隠滅のおそれ」がある場合に限られます。
それでも、次のようなケースの児童ポルノ禁止法違反事件では、被害程度が重大で悪質性も高いため、逮捕されるおそれが高まります。
逮捕されるおそれが高くなるケースの一例
- 不特定多数への販売を目的とした児童ポルノ製造
- 盗撮・強制性交等・強制わいせつなどを伴う児童ポルノ製造
- 被害者が多数にわたる児童ポルノ製造
児童ポルノ禁止法で規制されている行為のうち、単純所持などは悪質性が高くないため逮捕されるおそれはある程度低いと考えられます。
一方で、自らの利益のために児童を性的搾取する製造などのケースでは、重たい処罰をみすえて逮捕されるおそれが高まります。
こうしたケースでは、弁護士に相談して出頭への同行を依頼するなどの対策を講じる必要があるでしょう。
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4、「冤罪では?」と思うかもしれないケースと成立要件
児童ポルノ禁止法違反事件では、しばしば無実の罪で刑罰が下されてしまう「冤罪事件」が問題となります。
冤罪ではとご本人が思う可能性があるケースと、罪に問われる可能性がある状況について解説します。
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(1)未成年だと知らなかったケース
児童ポルノは「18歳未満」が対象となることは周知のとおりです。
相手が「成人している」と偽っていたり、身分証を偽造していたりしたために、知らないうちに児童ポルノ禁止法に違反してしまったということもあるでしょう。
しかし、児童ポルノ禁止法には「18歳未満とは知らなかった」という理由で製造などの罪を免れないという規定があります。
ただ知らなかったというだけでは罪を免れることは難しいでしょう。
他方、知らなかったことに過失がない場合は例外とされています。
つまり、18歳未満とは知らなかったことを証明できる証拠がなければ、罪に問われる可能性があるでしょう。 -
(2)自分の子どもや親戚などの写真だったケース
自分の子どもや親戚の日常を撮影したものが児童ポルノに該当してしまうケースもありますが、関係性が証明できないと冤罪の原因となります。
ただし、たとえ自分の子どもや親戚などのものでも、販売や提供などの事実があれば罪に問われるでしょう。 -
(3)知らないうちに保存されていたケース
悪質なサイトなどにアクセスしてパソコンやスマートフォンがウイルスや悪質なプログラムに侵されてしまうと、自分でも知らないうちに端末に児童ポルノが保存されてしまうことがあります。
「勝手に保存されていた」と供述しても信用してもらえないことが多いですが、アクセスログや広告の履歴などで「保管した」ことを覆すことができれば罪には問われないでしょう。 -
(4)冤罪を防ぐための対処法
たとえ身に覚えがない疑いでも、警察の厳しい取り調べに耐えかねて自認してしまうケースは少なくありません。
ひとたび犯行を認める供述をしてしまえば、これを覆すのは非常に困難です。
児童ポルノ禁止法違反事件における冤罪を防ぐには、早急に弁護士を依頼し、取り調べに際してのアドバイスを受けることをおすすめします。
もし身に覚えがあるのであれば、弁護士に相談したうえで早急に被害者との示談を進めることを強くおすすめします。
示談交渉は、加害者本人やその家族が行うと、新たなトラブルを呼び込んでしまう可能性があります。そもそも、被害者側の連絡先を捜査機関が教えることはないため、示談自体ができないこともあります。
被害者の処罰感情を刺激しないためにも、第三者である弁護士に依頼することを強くおすすめします。
5、まとめ
18歳未満のわいせつな画像や動画などを所持していると、児童ポルノ禁止法に違反してしまうおそれがあります。法改正によって規制が厳しくなった背景もあり、突然警察官が自宅に押しかけて捜索や逮捕を受けることも十分に予想されるでしょう。
しかし、相手が18歳未満とは知らなかった、いつの間にか端末にデータが保存されていたなどのケースも考えられます。
無実の罪で疑いをかけられてしまっているなどのケースでは、冤罪を防ぐためにも児童ポルノ禁止法違反事件の弁護実績が豊富なベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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