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弁護士コラム

2024年01月25日
  • 性・風俗事件
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不同意わいせつ等致死傷(旧強制わいせつ等致死傷)に問われる行為とは? 構成要件を解説

不同意わいせつ等致死傷(旧強制わいせつ等致死傷)に問われる行為とは? 構成要件を解説
不同意わいせつ等致死傷(旧強制わいせつ等致死傷)に問われる行為とは? 構成要件を解説

令和5年10月、路上で女性を押し倒してわいせつな行為をはたらき、女性に怪我をさせたとして不同意わいせつ致傷の疑いで男が逮捕されました。

不同意わいせつ等致死傷罪は、性犯罪のなかでもとりわけ重たい刑罰が規定されている犯罪です。有罪判決が下されれば高い確率で実刑となり、刑務所に収監されてしまうため、早急な対処が必要になります。

本コラムでは、不同意わいせつ等致死傷罪の構成要件や特徴に注目しながら、不同意わいせつ等致死傷の被疑で逮捕された場合の対処法を弁護士が解説します。

令和5年7月13日に強制わいせつ罪は「不同意わいせつ罪」へ、強制性交罪は「不同意性交等罪」へ改正されました。

目次

  1. 1、不同意わいせつ等致死傷罪(旧強制わいせつ等致死傷罪)とは|構成要件を解説
    1. (1)不同意わいせつ等致死傷罪の構成要件
    2. (2)不同意わいせつ罪とは
    3. (3)監護者わいせつ罪とは
  2. 2、罪にあたる具体的な行為|間接的に生じた怪我も罪状に含まれる
  3. 3、不同意わいせつ等致死傷罪は告訴がなくても起訴される可能性がある
    1. (1)非親告罪とは
    2. (2)起訴されると裁判員制度で刑罰が決まる
  4. 4、不同意わいせつ等致死傷罪で逮捕されたら、被害者との示談交渉が重要
    1. (1)示談は被害者への謝罪の意味がある
    2. (2)示談の効果
  5. 5、まとめ

1、不同意わいせつ等致死傷罪(旧強制わいせつ等致死傷罪)とは|構成要件を解説

令和5年7月に刑法が改正され、強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪は「不同意わいせつ罪」へと統合されましたそれに伴い、強制わいせつ等致死傷罪も「不同意わいせつ等致死傷罪」へ改正されています

では、不同意わいせつ等致死傷罪とはどのような犯罪なのでしょうか。犯罪が成立する構成要件について解説します。

  1. (1)不同意わいせつ等致死傷罪の構成要件

    不同意わいせつ等致死傷罪は、不同意わいせつ罪および監護者わいせつ罪にあたる行為をはたらく過程で、被害者に対して怪我を負わせたり、被害者を死亡させたりした場合に成立します(刑法第181条1項)。相手に怪我を負わせた場合は不同意わいせつ致傷罪、相手を死亡させた場合は不同意わいせつ致死罪となります。

    また不同意わいせつ等致死傷罪は、未遂も罰することが規定されているので、わいせつ行為が未遂に終わっても、被害者に死傷の結果が生じていれば不同意わいせつ等致死傷罪に問われます
    なお法定刑は「無期または3年以上の懲役」です。

    上述のとおり、不同意わいせつ等致死傷罪は不同意わいせつ罪、監護者わいせつ罪またはそれらの未遂を犯したうえで相手を負傷・死亡させると成立します。では不同意わいせつ罪、監護者わいせつ罪とはどのような犯罪なのか、以下で詳しく解説します。

  2. (2)不同意わいせつ罪とは

    不同意わいせつ罪は、以下の8つのいずれかの行為や事由によって、相手が同意しない意思を形成したり、表明したり、もしくは全うすることが困難な状態にさせたり、あるいはその状態にあることに乗じてわいせつな行為をした場合に成立します(刑法第176条)


    • ① 暴行もしくは脅迫を用いること、またはそれらを受けたこと
    • ② 心身の障害を生じさせること、またはそれがあること
    • ③ アルコールもしくは薬物を摂取させること、またはそれらの影響があること
    • ④ 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること、またはその状態にあること
    • ⑤ 同意しない意思を形成し、表明し、全うするいとまがないこと
    • ⑥ 予想と異なる事態に直面させて恐怖もしくは驚愕(きょうがく)させること、またはその事態に直面して恐怖、驚愕していること
    • ⑦ 虐待に起因する心理的反応を生じさせること、またはその心理的反応があること
    • ⑧ 経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること、またはそれを憂慮していること


    また、不同意わいせつ罪では、その行為がわいせつではないと信じ込ませたり人違いをさせたり、相手の「誤信」を利用してわいせつな行為を行うことも処罰の対象です。

  3. (3)監護者わいせつ罪とは

    監護者わいせつ罪は、「十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者」を処罰の対象とする犯罪です(刑法第179条)。

    その者を現に監護する者とは、18歳未満の者の生活全般について継続して保護・監督する者として考えられています。そのため、親や養親、同居する親の交際相手などが該当します。一般的に、18歳未満の者は、監護者に対して経済的・精神的に依存している状況が多くあるため、そのような状況を利用して監護者がわいせつな行為をした場合に成立します

2、罪にあたる具体的な行為|間接的に生じた怪我も罪状に含まれる

以下のような行為は不同意わいせつ致死傷罪にあたります。


  • 路上ですれ違った女性に抱き着き胸をもみ、その際に転倒して負傷させた
  • 酒に酔って抵抗できない相手にわいせつ行為をはたらいたところ、抵抗されたので首を絞めて死亡させた
  • 自らが監護する18歳未満の子どもに対して、わいせつ行為をはたらいた際に負傷させた
など


また不同意わいせつ等致死傷は、直接的な行為によって負傷・死亡させたケースに限らず、間接的に生じた負傷・死亡であっても成立します。
たとえば、不同意わいせつにあたる行為をはたらき、抵抗した被害者がその場を逃れる際に転倒して負傷したような場合でも、不同意わいせつ等致死傷に問われる可能性があります。

被害者に怪我を負わせてしまった場合は、怪我の程度が問題となりますが、刑法第181条では「人を死傷させた者」と規定されているのみで、怪我の程度は問題となっていません。
つまり、被害者にかすり傷ひとつでもつけば、不同意わいせつ等致死傷罪は成立する可能性があるのです

3、不同意わいせつ等致死傷罪は告訴がなくても起訴される可能性がある

不同意わいせつ等致死傷罪にあたる犯罪は「親告罪」ではありません。
親告罪にあたらない犯罪を「非親告罪」といいますが、非親告罪にあたる犯罪の場合は起訴される割合が高まることに注意が必要です。

  1. (1)非親告罪とは

    「親告罪」とは、検察官が起訴するための条件として、被害者の「告訴」が必要な犯罪です。
    事情聴取や裁判の過程で被害者がつらい被害を想起してしまう、事件化されることで被害者の社会的な名誉や信用に損害がおよぶおそれがある事件、または当事者間で解決を図ることが望ましいような事件などは、告訴がないと検察官が起訴できません。

    これに対して、「非親告罪」は被害者の告訴を必要としない犯罪です。
    刑法のほか、特別法によって規定されている多くの犯罪は非親告罪に該当し、被害者の告訴がなくても検察官が起訴できます。不同意わいせつ等致傷罪にあたる犯罪は、以前は親告罪にあたるものもありましたが、性犯罪の厳罰化によって非親告罪になりました。

  2. (2)起訴されると裁判員制度で刑罰が決まる

    不同意わいせつ等致傷罪は、無期懲役に処されるおそれのある犯罪です。法定刑に無期懲役が規定されている犯罪は「裁判員制度」の対象となります

    裁判員制度とは、特定の重大犯罪を対象とした事件の刑事裁判で、満20歳以上の国民から無作為に選出した裁判員が、審理に参加する制度です。裁判員は裁判官と共同で、有罪・無罪の判断および「どの程度の刑罰が適切か」という量刑判断をおこないます。
    不同意わいせつ等致死傷罪で起訴されると法律の知識も刑事裁判の経験もない一般人が、裁判に参加するという点を意識しておくべきでしょう。

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4、不同意わいせつ等致死傷罪で逮捕されたら、被害者との示談交渉が重要

不同意わいせつ等致死傷罪の疑いで逮捕されてしまった場合は、被害者との示談交渉の成否が、身柄の措置や刑罰に大きな影響を与えます。

  1. (1)示談は被害者への謝罪の意味がある

    示談とは、刑事手続きや裁判によらず、被害者と加害者の間で話し合いによって事件を解決する方法です。加害者が被害者に対して謝罪する意味合いが大きく、謝罪はもちろんのこと、精神的損害や治療費などをあわせた示談金を支払います。

  2. (2)示談の効果

    示談交渉が成功すれば、逮捕されて身柄拘束を受けている段階でも、検察官が起訴を断念して釈放される可能性が高くなります。また、起訴されたあとでも、示談が成立すれば量刑判断において有利にはたらきます。

    ただし、強制わいせつ等致死傷罪をはじめとした性犯罪の被害者は、加害者との接触を強く避ける傾向があります。強い処罰感情を持っていると同時に、つらかった被害を想起してしまうため、示談交渉をはじめることすら難しいケースも少なくありません。

    不同意わいせつ等致死傷に関する事件で被害者との示談成立を目指すのであれば、弁護士へ依頼することを強くおすすめします。公正な第三者である弁護士が代理人として交渉の場に立つことで、被害者が警戒心を解き、示談交渉に応じてくれる可能性も高まります。
    また、性犯罪の示談交渉では、被害者が相場を大幅に超えた高額な示談金を提示する可能性もあります。
    数多くの性犯罪事件を対応してきた実績のある弁護士に依頼すれば、適正な示談金の相場も熟知しているので、示談金の負担が過度に重くなるような事態を避けられることが期待できるでしょう。

5、まとめ

強制わいせつ等致死傷罪などの性犯罪は、重い刑罰が規定されているうえに被害者の処罰感情が強く、検察官が起訴に踏み切るケースが多いため、早急な対処が必要です。

逮捕・起訴・刑罰を回避するためには、弁護士に示談交渉を依頼するのが賢明でしょう。不同意わいせつ等致死傷罪にあたる行為をしてしまった場合は、不同意わいせつ等致死傷罪をはじめとした性犯罪事件の対応実績が豊富な、ベリーベスト法律事務所にお任せください。

本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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