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児童ポルノ法違反で逮捕される行為とは? 前科をつけないためにできること
令和3年3月、元人気ユーチューバーの男が児童ポルノ法違反の疑いで逮捕される事件がありました。男は自分のファンだった当時15歳の女子生徒に裸の写真を撮らせ、送らせたようです。
逮捕された男の行為は児童ポルノの「製造」にあたる行為ですが、児童ポルノ法ではこれ以外にもさまざまな禁止行為を定めています。平成26年の児童ポルノ法改正では単純所持も処罰対象に含まれたことから、逮捕の不安におびえている方もいるのではないでしょうか。
本コラムでは、児童ポルノ法の概要や違反行為、罰則、時効などの基本事項を説明するとともに、逮捕や前科を避けるためにどのような行動を起こすべきかについて、弁護士が解説します。
1、児童ポルノ法(児童ポルノ禁止法、児童買春禁止法)とは
いわゆる「児童ポルノ法」とは、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」の略称です。児童ポルノ禁止法や児童買春禁止法などと呼ばれる場合もあります。
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(1)児童ポルノ法とは
児童に対する性的搾取や性的虐待は、児童の権利を著しく侵害する重大な行為です。未成熟な心身は傷つきやすく、トラウマ(心的外傷)による再被害を生じさせるおそれもあります。
インターネットが発展した現代では、画像や動画は簡単に複製され、インターネット上から完全に消し去ることは困難です。児童は生涯にわたり児童ポルノの存在に苦しむことになってしまいます。
こうした事情を背景として、児童の権利を守るために平成11年に制定されたのが児童ポルノ法です。この法律は以下の2つを定めています。
- 児童買春や児童ポルノに係る行為を禁止して処罰規定を定めること
- 児童買春や児童ポルノに係る行為によって心身に有害な影響を受けた児童を保護するための措置を定めること
同法は平成16年に最初の改正があり罰則の強化などが行われました。その後、平成26年6月に再び改正され、児童ポルノの単純所持や盗撮による児童ポルノ製造行為を禁止する規定が追加されました。
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(2)法律で定義されている「児童」の範囲
児童ポルノ法における児童とは、18歳未満の者をいいます。性別は関係ないので対象が男子でも女子でも同法の保護を受けます。
相手が18歳未満だと知らなかった場合は、故意がないので児童ポルノ法違反は成立しません。ただし、18歳未満だと確定的には知らなかったとしても、「もしかすると18歳未満かもしれない」という程度の認識があれば故意が認められます。これを未必の故意といいます。
故意・未必の故意があったかどうかは内面の問題なので、客観的事実をもとに判断されます。たとえば、児童ポルノの販売サイトに「18歳以上年齢確認済み」などと明記されていれば、児童が18歳だと知らなかったことにつき故意がなかったと認められる可能性があります。
一方で、次のようなケースでは故意または未必の故意があったと判断されることがあります。
- 相手の年齢を確認していない
- 18歳以上確認済みと書いてあるが、明らかに10代前半と見られる児童の画像だった
2、「児童ポルノ」および「児童買春」の意味・定義
ここで、「児童ポルノ」と「児童買春」とは何を指すのか、意味や定義を確認しましょう。
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(1)「児童ポルノ」とは
児童ポルノ法第2条第3項では、児童ポルノを「写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物」であって、以下のような児童の姿態を「視覚により認識することができる方法により描写したもの」と定義しています。
- 児童を相手とし、または児童による性交・性交類似行為
- 他人が児童の性器などを触る行為または児童が他人の性器などを触る行為であって、性欲を興奮させまたは刺激するもの
- 衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器やその周辺部、尻でん部、胸部など)が露出・強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させまたは刺激するもの
たとえば児童が性交している様子や児童が他人の性器を触っている様子、裸や着替え中の児童を撮影した動画や写真、画像などが児童ポルノにあたります。
一方で、両親や祖父母が、水着を着用してプールに入っている子どもや孫、親子で入浴している様子を撮った動画や写真は児童ポルノとはいえません。
これらは親たちが思い出や子どもの成長記録として撮影するものであって、「殊更に児童の性的な部位が露出・強調されているもの」とはいえず、「性欲を興奮させまたは刺激するもの」にもあたらないからです。
また児童ポルノにあたるのは、実在する人物が被写体になっている場合です。したがって、18歳未満という設定で、かつ性欲を興奮させまたは刺激するものであっても、漫画やアニメなどの二次元作品のイラストやデータなどは児童ポルノに該当しません。ただし、実在する児童の写真を下書きにしてCG加工したものは児童ポルノとして摘発された例もあるため注意が必要です。 -
(2)「児童買春」とは
児童ポルノ法第2条第2項では、児童買春を「対償を供与し、またはその供与の約束をして、当該児童に対し性交等をすること」と定義しています。
対償の供与とは、現金を与える、バッグやアクセサリーを買い与える、食事をおごるなどの行為です。実際に供与しなくても、その約束をして性交等をすれば児童買春にあたります。
対償を供与する相手は、児童本人だけでなく、児童に対して性交等の周旋をした者や児童の保護者または児童を支配下に置いている者も含まれます。性交等とは、性交または性交類似行為のほか、児童の性器を触る、児童に自己の性器を触らせるなどの行為も含みます。
なお、対償の供与がなければ児童買春にはあたりませんが、自治体が定める青少年保護育成条例による処罰の対象になります。
3、どこからが犯罪? 児童ポルノ法で違反とされる行為と罰則
児童ポルノ法違反となる行為と罰則について、具体例を挙げながら解説します。
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(1)児童ポルノの単純所持
自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持すると、単純所持罪が成立します(第7条第1項)。
以前、児童ポルノの所持は他人に提供・販売する目的がある場合のみを処罰の対象とし、自己の性欲を満たすために単純に持っている場合は処罰の対象外でした。しかし、児童ポルノの供給側を処罰するだけでは児童ポルノの根絶につながらず、需要側も処罰する必要性が高いとの考えから、平成26年改正の際に新設されています。
「自己の性的好奇心を満たす目的で」との要件があるのは、たとえば嫌がらせやパソコンのウイルス感染などにより、予期せず児童ポルノを所持してしまったケースを除外するためです。もっとも、その後にその状況を認容して所持していれば単純所持罪が成立します。
単純所持罪の典型は、誰にも提供するつもりはなく、自宅のパソコンやスマートフォンに児童ポルノをダウンロードして保存していたケースです。また18歳未満の恋人の同意を得て性交等の様子や裸体などを撮影して保存していた場合でも、児童ポルノ所持にあたるおそれがあります。
単純所持罪の罰則は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」です。 -
(2)児童ポルノの提供
特定少数へ児童ポルノを提供すると、提供罪が成立します(第7条第2項)。
児童ポルノのDVDを個人へ販売する、児童ポルノをインターネットやメールで第三者へ送信するなどのケースが該当します。
罰則は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」です。特定少数への提供目的で所持や製造した場合も同じ罰則が適用されます(同第3項)。 -
(3)児童ポルノの製造
写真を撮る、動画を撮影するなどの方法で児童ポルノを製造すると製造罪が成立します(第7条第4項)。
具体的には、アイドルやモデルの撮影会と称して児童の裸の写真を撮るようなケースがこれにあたります。
近年は、SNSなどを通じて知り合った児童に自分の裸を撮影させ、メールやLINEなどで送信させる事件が社会問題になっています。いわゆる「自画撮り」画像を送信させた側は製造罪に問われるおそれがあります。
つまり、児童の同意があって写真や動画を撮影した場合でも製造罪は成立します。
また従前、児童にわいせつな姿態をとらせるなどして意図的に児童ポルノを製造した場合のみが処罰の対象でしたが、平成26年の改正により「盗撮による製造罪」が新設されました(同第5項)。
児童に知られず、盗撮によって児童ポルノを製造する行為も、単純製造と同じく悪質であるとして設けられたものです。たとえば、小学校の教員が学校のトイレに隠しカメラを設置して盗撮するケース、銭湯で児童の裸を盗撮するケースなどが該当します。
単純製造罪および盗撮による製造罪の罰則は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」です。 -
(4)児童ポルノの公然陳列
不特定もしくは多数の者に児童ポルノを提供し、または公然と陳列すると公然陳列罪が成立します(第7条第6項)。
たとえば、インターネットの掲示板に児童ポルノをアップロードして第三者がダウンロードできる状態にする、児童ポルノを自分のSNSやブログに投稿するなどのケースが該当します。
公然陳列罪の罰則は「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または併科」です。特定少数に提供する場合と比較して、より多くの児童の権利を侵害し、児童を性的対象とする風潮を助長するおそれが高いことから重く罰せられます。 -
(5)児童ポルノの輸出入
児童ポルノを外国に輸出し、または外国から輸入した場合は、輸出罪または輸入罪が成立します(第7条第3項、7項、8項)。
罰則は、特定少数への提供目的の場合は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」、不特定もしくは多数の者への提供または陳列目的の場合は「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または併科」です。
また児童ポルノは関税法により輸出入が禁止されているため、関税法違反も成立します(第69条の2第1項2号、69条の11第1項8号)。児童ポルノの輸出入に係る関税法違反の罰則は「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金または併科」です(第108条の4第2項)。 -
(6)児童買春
児童に対価を与えて性交などをすると児童買春罪が成立します(第4条)。
児童買春罪の罰則は「5年以下の懲役または300万円以下の罰金」です。
自らが児童買春をしない場合でも、児童買春の周旋および勧誘した場合は「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科」となります(第5条第1項、第6条第1項)。
児童買春の周旋および勧誘を事業として行った場合は「7年以下の懲役および1000万円以下の罰金」と、さらに重く罰せられます(第5条第2項、第6条第2項)。
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4、児童ポルノ法違反による検挙件数と、違反行為の割合
児童ポルノ法違反事件では、どのような違反行為が多く検挙されているのでしょうか?
警察庁の「令和2年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」によれば、児童ポルノ事犯の検挙件数は2757件、児童買春事犯(児童福祉法および条例違反は除く)が637件でした。
また児童ポルノ法違反による検挙件数の内訳(罪種別)は次のとおりです。
- 単純所持……398件
- 特定少数提供目的……9件
- 不特定多数提供・公然陳列目的……14件
【製造事犯】1540件
- 単純製造……1304件
- 盗撮製造……220件
- 提供等目的製造……16件
【提供・公然陳列事犯】796件
- 提供……325件
- 公然陳列……471件
このうち製造事犯の検挙件数が1540件ともっとも多く、児童ポルノ事犯全体の約55.9%を占めています。また児童ポルノ事犯の被害児童1320人のうち511人(38.7%)は、いわゆる「自画撮り被害」によるものです。
さらに児童ポルノ法事犯の検挙件数の推移を見ると、平成23年の1455件から年々増加し、平成30年には3097件と過去最多を更新しています。
令和2年は前年を下回りましたが、毎年多くの事件が検挙されている状況に変わりはありません。現在発覚していない事件でも、今後は検挙されるおそれがあると考えておくべきでしょう。
5、児童ポルノ法違反が発覚する主な理由
児童ポルノ法違反事件では、自分では気を付けているつもりでも、思わぬところから犯罪が発覚するケースがあります。具体的にどのような経緯で発覚するのかを罪名別に見てみましょう。
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(1)児童ポルノの「所持」や「提供」が発覚するきっかけ
- 児童ポルノをインターネットの掲示板で公開したところ、警察のサイバーパトロールで発覚した
- 過去に児童ポルノのDVDを購入した販売サイトや業者が摘発され、購入名簿から芋づる式に捜査対象となった
- 職務質問を受けた際の任意の所持品検査で、スマホ内にある児童ポルノが見つかった
インターネット上に流通する児童ポルノについては、警察がサイバーパトロールを通じて早期に把握し、検挙するなどの措置を行っています。そのため、ただ持っていた、特定少数に提供したなどのケースでも発覚するおそれは十分にあるといえます。
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(2)児童ポルノの「製造」が発覚するきっかけ
- 親が児童の様子を不審に感じてスマホを見たところ、自分の裸の写真を他人に送った形跡があった
- 写真を撮られたことを不安に感じた児童が親に相談して発覚し、被害届が提出された
- トイレの個室に小型カメラを設置して盗撮していたところ、児童や教員がカメラを発見し、警察に通報して捜査が開始された
- 児童買春など別の犯罪で逮捕され、押収されたスマホから児童ポルノが見つかった
児童ポルノ製造が発覚する経緯は多数あります。特に自画撮りさせたうえで送信させる製造事犯は、被疑者側の証拠を削除しても、被害児童側の画像やメッセージの履歴、証言などから発覚するおそれが高いでしょう。
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(3)児童買春が発覚するきっかけ
- 児童がおこづかいの範囲では買えないブランド品や衣服を身につけていたため、親が不審に感じて本人を問いただす、スマホをチェックするなどして発覚した
- 児童と一緒にホテルを出てきたところ、ホテル街をパトロール中の警察官に職務質問された
- 児童が補導され、スマホの連絡先登録などから被疑者が特定された
- 現金の支払いを約束して児童と性交等をしたが現金を支払わなかったため、児童自身が通報して発覚した
児童買春では、被害児童の親など周囲の大人が心配して児童を追及し、児童がそれを認めて警察に相談に行くケースが多くあります。また児童本人が親や友人に打ち明け、警察に相談して捜査が開始されるケースも典型的です。
6、児童ポルノ法違反の時効は何年?
児童ポルノ法違反をした自覚がある方は、時効の成立についても気になるでしょう。時効とは何かを説明したうえで、児童ポルノ法違反の時効年数や起算日、停止について確認します。
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(1)そもそも「時効」とは?
一般に、刑事事件の時効というと公訴時効のことを指します。
公訴時効とは、一定の期間の経過により検察官が起訴できなくなる制度です。公訴時効が成立すると、罪に問われて裁判にかけられることがありません。検察官が起訴できないことから捜査の目的も果たせないため、警察が逮捕することもないでしょう。
公訴時効と混同しやすい概念に告訴期間があります。告訴期間とは、起訴にあたり告訴を要件とする親告罪において、告訴人が告訴できなくなる期間をいいます。告訴期間は犯人を知ってから6か月です。ただし児童ポルノ法違反は非親告罪なので告訴期間は関係ありません。
このほかに、民事上の消滅時効もあります。消滅時効とは権利が一定期間行使されないことにより、その権利が消滅する期間をいいます。児童ポルノ法違反では消滅時効が完成しない限り、被害児童側から不法行為による損害賠償を請求されるおそれがあります。 -
(2)児童ポルノ法違反に対する時効
児童ポルノ法違反の公訴時効は該当する犯罪によって3年または5年にわかれます。
- 単純所持・提供目的の所持……3年
- 提供……3年
- 単純製造・盗撮による製造……3年
- 公然陳列……5年
- 輸出入……5年
- 児童買春……5年
ただし、上記はあくまでも該当の犯罪のみが成立する場合の公訴時効です。該当の犯罪より重い罪が成立するときは時効期間も長くなる場合があります。たとえば13歳未満の児童に対する児童買春は、児童の同意の有無を問わず、強制性交等罪や強制わいせつ罪が成立します。強制性交等罪の公訴時効は10年、強制わいせつ罪の時効は7年です。
なお、民事上の消滅時効が完成するのは被害児童またはその法定代理人が損害および加害者を知ったときから3年または不法行為のときから20年です。 -
(3)公訴時効の起算点は「犯罪行為が終わったときから」
公訴時効の起算点は、犯罪行為が終わったときです。たとえば児童ポルノの提供であれば、提供し終わってから3年が経過すると時効により訴追されません。
ただし、犯罪行為が「終わったとき」なので、犯罪行為が継続している場合には時効のカウントはスタートしません。たとえば児童ポルノを所持し続けている場合は犯罪行為が終わったとはいえず、時効は成立しません。 -
(4)時効は停止する場合がある
公訴時効には、時効の進行が一時的にストップする「停止」の事由が存在します。
- 共犯者が起訴された場合
- 犯人が国外にいる期間
- 逃げ隠れしているため起訴状の謄本の送達もしくは略式命令の告知ができない場合
たとえば児童買春の時効は5年ですが、児童買春をしてから4年が経過してから国外へ行き、その1年後に帰国しても、時効はまだ成立していません。
なお、時効の進行がリセットされる「更新」(中断)は、民事上の消滅時効にはありますが、公訴時効にはありません。
7、児童ポルノ法違反で逮捕された場合の手続きの流れ
児童ポルノ法違反で逮捕された場合、どのような流れで刑事手続きが進められるのでしょうか?
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(1)警察による取り調べ
警察に逮捕されると警察の留置場に身柄を置かれ、必要に応じて取調室に連れて行かれて取り調べを受けます。
児童ポルノ法違反は、保護されるべき児童の権利を侵害する重大犯罪であるため、警察も厳しい姿勢で取り調べるでしょう。警察の取り調べでは、警察のプレッシャーに耐えられずにやってもいないことまで供述してしまい、自身に不利な供述調書を取られるおそれがあります。逮捕される前に弁護士に相談のうえ、適切かつ冷静に対応することが大切です。
警察は逮捕から48時間以内に取り調べを終え、事件を検察官へ引き継ぎます(送致)。 -
(2)検察官による取り調べ
送致されると、今度は検察庁の執務室に連れて行かれ、検察官からの取り調べを受けます。
検察官からも警察と同じような質問を受けますが、検察官の取り調べは起訴・不起訴を判断するためのものであり、一次的な捜査のための警察の取り調べとは目的が異なります。同じことを質問されてうんざりするかもしれませんが、起訴されるかどうかに関わる重要な取り調べだと認識し、警察の取り調べと同様に冷静に対応しましょう。 -
(3)検察官による勾留請求、裁判官による勾留決定
検察官は送致から24時間以内に取り調べを終え、勾留を請求するか否かを判断します。
勾留とは、逮捕に引き続く身体拘束で、原則10日間、最長20日間、警察の留置場に身柄を置かれる手続です。
検察官が勾留を請求し、裁判官がこれを認めて勾留決定がなされれば、勾留され、警察に身柄が置かれる状態が継続することになります。
児童ポルノ法違反事件では証拠隠滅のおそれが高いと判断され、勾留が許可されるケースも少なくありません。 -
(4)検察官による起訴・不起訴の決定
検察官は上記の勾留の期間内に、起訴または不起訴を判断します。
起訴されると被疑者は被告人へと呼び名が変わり、その後行われる刑事裁判を待つ身となります。
不起訴になれば即日で身柄を釈放され、刑事裁判は開かれません。裁判で有罪判決が下されることもないので、前科もつきません。もっとも、不起訴の理由が起訴猶予(犯罪の証明ができるが諸事情を考慮して起訴しないとする処分)の場合は、余罪の判明などにより後に起訴される可能性は残ります。 -
(5)刑事裁判
起訴された後は公開の法廷で刑事裁判を受けます。
事件の内容にもよりますが、単純な自白事件であれば、通常は1回の期日で審理が結審し、その2~3週間後に判決が言い渡されます。判決に不服がある場合は、判決が言い渡された日の翌日から14日以内に高等裁判所へ控訴して争うことができます。控訴しなければ判決が確定します。
一方、事案が明白で簡易な事件であって、100万円以下の罰金または科料に相当する事件では、公開の裁判によらない略式裁判で処理される場合もあります。児童ポルノ法違反事件でも、初犯である、犯行様態が悪質でないなどの事情があれば、略式裁判になる可能性があります。罪を認めることが条件となり、必ず前科がつきますが、早期に審理が終わるため身柄拘束による負担が少ないのが特徴です。
8、前科がつくのは避けられる? 児童ポルノ法違反をしてしまったときにやるべきこと
児童ポルノ法違反で有罪判決が下ると前科がつくことになります。
また懲役の実刑判決だった場合には刑務所に収監され、一般社会と隔離された生活を送らなければなりません。前科を回避し、あるいは刑を少しでも軽くするために何をするべきなのでしょうか?
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(1)発覚前(逮捕前)にできる対応
逮捕前にできることのひとつに、自首があります。
自首は任意的減軽事由なので、裁判になった際に刑が軽くなる可能性が上がりますが、裁判前の手続きにも影響します。
まず、自首をすると逃亡・証拠隠滅のおそれが低いとして逮捕されず、在宅捜査となる可能性があります。また検察官が起訴・不起訴を判断する際に、自首をした事実が有利に評価される可能性も高まります。自首により本人の反省が認められ、再犯のおそれがないと判断されると、不起訴処分となる可能性も出てくるでしょう。
ただし、自首をするべき事案なのか、法的に自首が成立する段階なのかなど、慎重な判断が必要な問題でもあります。場合によっては、被害児童との示談を優先させたほうがよい可能性や、そもそも相手が18歳以上で児童ポルノ法違反に該当しない可能性もあります。
自己判断で自首をする前に、児童ポルノ法違反をしてしまった段階で早めに弁護士へ相談し、アドバイスを仰ぐことをおすすめします。 -
(2)被害児童側との示談交渉
児童ポルノ法違反事件では、被害児童との示談を成立させることが重要になることもあります。示談が成立すると、逮捕前であれば逮捕の回避、起訴前であれば起訴の回避、起訴後であっても量刑判断に際して考慮され、刑が減軽される可能性を高められます。
児童ポルノ法違反事件では、示談の相手は児童の親権者です。被害児童とも示談はできますが、親権者は未成年がした法律行為に同意する権利を有しており、同意がない未成年者の法律行為はあとで取り消すことができます(民法第5条第1項、2項)。そのため、はじめから児童の親権者と示談をしておく必要があるのです。
しかし、児童ポルノ法違反事件の示談には、非常に高いハードルが存在します。自分の子どもが性犯罪の被害に遭ったと分かれば、親は激怒しているのが通常でしょう。高額の示談金でなければ納得しないケース、お金の問題ではないとして示談金がいくらでも示談に応じないケースなどが考えられます。また、そもそも児童や両親の連絡先が分からないというケースも多くあります。
これらのハードルをクリアできる可能性があるのは弁護士だけです。法律の知識や示談交渉の経験がある弁護士が相手であれば、被害児童側の精神的な負担が減り、示談に応じてくれる可能性が高まります。連絡先についても、弁護士が捜査機関を通じて被害児童側にコンタクトを取ると、弁護士にだけという条件付きで教えてくれるケースが多数あります。 -
(3)再犯防止策や反省の態度を示す
示談が成立しない場合は、反省の気持ちを表すために、弁護士会や慈善団体などへ贖罪寄付をする方法もあります。ほかにも、家族が本人を監督する、性依存症の治療を開始するなど、再犯防止の環境を整え、検察官や裁判官に示すことも重要です。
再犯のおそれが低いと判断されると、不起訴処分や執行猶予付き判決を得られる可能性が生じます。
9、児童ポルノ法違反による不利益をできるだけ小さくするには、早めに弁護士へ相談を
児童ポルノ法違反で逮捕・勾留されると最長で23日間もの身柄拘束が続くことから、会社を欠勤しなければならず、場合によっては解雇などの不利益を被るリスクがあります。また有罪判決が下れば、一定の職業や海外渡航で制限がかかるなど、前科が付くことによる不利益も生じます。
このような不利益をできるだけ小さくするためには、早期に弁護士へ相談し、法的な観点からのアドバイスを受けることが大切です。弁護士は自首のアドバイスや示談交渉のほかにも、次のような活動を通じて被疑者をサポートします。
- 取り調べに際してのアドバイスを提供し、不利な供述調書を取られないようにする
- 検察官や裁判官に対して勾留するべきではない旨の意見書を提出し、勾留を防ぐ
- 検察官に対して、本人の反省や再犯防止策を示し、不起訴処分にするよう働きかける
- 検察官や裁判官に対して被疑者の逃亡・証拠隠滅のおそれがない旨を主張し、勾留の延長をしないよう働きかける
10、まとめ
児童ポルノの所持や製造、輸出入、児童買春などをすれば、児童ポルノ法違反が成立します。児童ポルノは削除が容易なうえに、被害児童に接触して証拠画像の削除などを強要するおそれがあるため、逮捕・勾留されるおそれも十分にあります。
児童ポルノ法違反の容疑をかけられてしまった場合は、もう二度と同じ行為をしないことが大切ですが、逮捕や前科、重すぎる刑を回避したいとお考えであれば弁護士のサポートは不可欠です。刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所が力を尽くします。まずはご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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