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不同意性交等罪の時効は何年? 時効成立を待つリスクと注意点
多くの方がご存じのとおり、犯罪には時効があります。そのため、時効が完成すれば刑罰を受けることはありません。
性犯罪を起こした方の中には、不同意性交等罪の公訴時効は何年なのか、また、時効の完成を待とうと考えたときにどのようなリスクがあるのか、疑問や不安を抱いている方もいるでしょう。
本コラムでは、不同意性交等罪の時効や性犯罪でのトラブルを弁護士に相談すべき理由などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、不同意性交等罪の時効は何年?
不同意性交等罪とは、「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせ」または、相手がそのような状態にあることに「乗じて」性交等をする犯罪です(刑法第177条1項)。暴行または脅迫、心身の障害など特定の原因に、自由な意思決定が困難な状態で性交等をした場合に処罰されます(同法第176条1項各号)。
1章では、不同意性交等罪の時効について解説していきます。
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(1)そもそも公訴時効とは?
公訴時効とは、犯罪が発生してから一定期間が経過することで、裁判所に対して検察官が有罪判決を請求すること(起訴・公訴提起)ができなくなる制度です。
刑事訴訟法において、時効が完成したときは「判決で免訴の言渡をしなければならない」と規定されています(刑事訴訟法第337条4号)。免訴判決とは、刑事裁判において有罪・無罪に関わらず、公訴権が消滅したことを理由に刑事裁判を打ち切る判決のことです。
このように時効が完成した事件は、たとえ起訴したとしても実体的な審理は何も行われず裁判が打ち切られることになるため、そもそも起訴が行われることはありません。 -
(2)不同意性交等罪の公訴時効は15年
公訴時効の期間は、刑法などの法律で規定されている刑罰の種類や刑の重さに応じて異なります。令和5年(2023年)6月23日から施行されている改正刑事訴訟法において、性犯罪については、以下のとおり公訴時効が延長されました。
改正法の施行前 改正法の施行後 同意わいせつ等致傷、強盗・不同意性交等の罪など 15年 20年 不同意性交等罪、監護者性交等の罪 10年 5年 不同意わいせつ、監護者わいせつの罪 7年 12年
性犯罪については、被害者の精神状態や第三者が把握しづらいという理由から、立件が可能になる前に時効が完成してしまうという問題がありました。
そこで、適切な訴追の可能性を確保するために法律が改正され、不同意性交等罪の公訴時効は15年となっています(刑事訴訟法第250条3項2号)。不同意性交等により被害者がケガを負った不同意性交等致傷罪の場合には、公訴時効は20年です(同項1号)。 -
(3)刑事事件と民事事件の時効の違い
不同意性交事件を起こした場合には、刑事責任を負うほか、被害者に対して民事責任を負うことになり、性犯罪の被害者に対して、不法行為に基づく慰謝料等の賠償責任が発生します(民法第709条)。
刑事責任は、公訴時効が完成することで刑罰に処される可能性が消滅しますが、民事責任については、消滅時効が完成することで被害者の損害賠償請求権がなくなります。
たとえば、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、次の期間を経過することで完成します(民法第724条)。
- 被害者または法定代理人が損害および加害者を知った時から3年
- 不法行為のときから20年
ただし、人の生命又は身体を害する不法行為として評価されると、知った時から5年になります(民法724条の2)。
不同意性交等罪の公訴時効である15年が経過していた場合であっても、民事上の時効である20年は、まだ経過していないというケースもゼロではありません。
2、不同意性交等罪の時効成立を待つリスク
不同意性交等事件を起こしてしまった場合、公訴時効の経過を待つべきかと考える方もいるでしょう。2章では、不同意性交等罪で時効の成立を待つことのリスクについて、解説していきます。
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(1)性犯罪の検挙率は高い
そもそも、性犯罪の検挙率は非常に高く、時効が成立する前に逮捕されるリスクがあります。
不同意性交等罪に改正される前の強制性交等罪に関して、法務省が公表する「令和4年版 犯罪白書」によると、令和3年は認知件数1388件、検挙件数1330件となっており、検挙率が95.8%と非常に高いことが分かります。
したがって、不同意性交等事件を起こした場合、高確率で検挙されるリスクがあるといえるでしょう。 -
(2)忘れた頃に突然逮捕される
不同意性交等事件は、15年が経過しなければ時効は完成しません。そのため、事件から相当時間が経っている場合でも、ある日突然、警察に逮捕されてしまうリスクがあります。
事件の犯人として警察に特定されると、早朝に逮捕状を持った警察官が自宅にやってきて、通常逮捕される可能性があります。逮捕された場合には、自由に外部と連絡をとることができなくなるため、勤務先や知人に電話することもできません。 -
(3)事件から長期間経過していても捜査は続いている
不同意性交事件で被害者が負傷した場合などでは、公訴時効は20年とさらに長くなります。
また、事件当時に被害者がまだ幼かったような場合には、成長するまで性被害を自認できない可能性も少なくありません。そのため、性犯罪の場合には、事件から相当年数が経過してから警察に被害申告されるケースも散見されます。
このように、事件から数年経過していたとしても、警察による捜査が開始・継続している可能性があるため、逮捕の不安は残るでしょう。
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3、不同意性交等罪の時効に関する3つの注意点
不同意性交事件を起こしてしまった場合、時効に関するルールについて正確に理解しておくことが重要です。3章では、不同意性交等罪の時効に関する3つの注意点を解説していきます。
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(1)改正前の犯罪にも延長された時効が適用される
改正前に行われた性犯罪についても、改正後の延長された公訴時効期間が適用される点に注意が必要です。
性犯罪の公訴時効を延長する改正法は公布日から即日施行されており、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」の附則では、以下のように規定されています。
- 改正された公訴時効の規定は、「施行の際既に公訴の時効が完成している罪については、適用しない」(附則第5条1項)
- 「施行の際その公訴の時効が完成していない罪についても、適用する」(同2項)
したがって、令和5年(2023年)6月23日時点で公訴時効が完成していない不同意性交等罪は、10年ではなく15年が公訴時効です。
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(2)被害者が18歳になるまで時効はスタートしない
不同意性交事件の被害者が18歳未満である場合には、事件から被害者が18歳になるまでの間、時効期間は経過しません(刑事訴訟法250条4項)。つまり、事件発生から成年になるまでの期間が時効期間に追加されることになります。
これは、心身ともに未熟な子どもや若年者は、性犯罪の被害を保護者などの第三者に申告することが難しいと考えられるためです。 -
(3)公訴時効がストップする場合がある
以下のような事情がある場合には、公訴時効の進行が停止されます。
- 起訴された場合
- 被疑者が逃亡している場合
- 被疑者が国外にいる場合
国外へ逃亡していたり、逃げ隠れているために有効に起訴状の謄本送達もしくは略式命令の告知ができなかったりする場合には、その期間の時効の進行が停止します。
4、不同意性交等罪の時効成立を待たずに弁護士に相談すべき理由
不同意性交事件を起こした場合には、時効を待たずに弁護士に相談すべきです。そのように言われる理由について、解説します。
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(1)被害者との示談交渉を任せられる
不同意性交事件の被害者と示談が成立した場合には、不起訴や軽い量刑の判決を獲得できる可能性が高まります。そのため、示談交渉を適切に進めることは重要です。
弁護士は、あなたの代わりに被害者との示談交渉を進められるだけでなく、被害者との示談成立においては、示談書を取り交わし、宥恕(ゆうじょ)条項や清算条項などを書面にまとめることができます。 -
(2)自首に同行してもらえる
警察に自らの犯罪を申告して自首することで、逃亡・罪証隠滅のおそれがないことを示し、逮捕などの身体拘束や起訴されることを回避できる可能性もあります。
ただし、自首によって必ず逮捕を回避できるとは限りませんので、弁護士に同行してもらい、身元引受人がいること等を示して、逮捕の必要がないことを適切に説明してもらうことが必要です。 -
(3)不起訴や減刑のための弁護活動をお願いできる
逮捕・起訴されたとしても、弁護士に依頼しておくことで不起訴獲得や減刑のための弁護活動を行ってもらうことができます。
性犯罪の場合に不起訴を獲得するためには、被害者との示談のほか、医療機関の再犯防止プログラムに参加するなど、再犯のおそれがないことを捜査機関に示すことも重要です。
5、まとめ
不同意性交等罪の時効は15年です。性犯罪の検挙率は非常に高く、時効の経過を待っていても、突然警察に逮捕されてしまうリスクがあります。
不同意性交事件を起こしてしまった場合には、弁護士に相談して、被害者との示談交渉や弁護活動などで適切に対応してもらうことが重要です。
「性犯罪を起こしたことが原因で逮捕されるかもしれない」と不安な方は、ベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。刑事事件専門チームの弁護士が不安な気持ちに寄り添いながら、サポートいたします。
※本コラムは公開日当時の内容です。
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