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煽り運転で検挙されると逮捕される? 検挙・逮捕・確保の違いも解説
平成30年の新語・流行語大賞にノミネートまでされてしまった「煽り運転」ですが、摘発件数も増加しています。
煽り運転で検挙・逮捕されたという報道もめずらしくないように感じられますが、乱暴な運転をしていると煽り運転の容疑者として検挙されてしまうのでしょうか? 煽り運転による「検挙」と「逮捕」の違いも気になるところです。
本コラムでは煽り運転で検挙されるとどうなってしまうのかを「検挙」と「逮捕」の違いも交えて解説します。
1、煽り運転で検挙される可能性
「煽り運転」に対する世間の目が厳しくなっているのは、多くの方が感じていることでしょう。テレビニュースなどでは悪質な煽り運転の映像が流れ、ドライバーが検挙されたという報道が世間をにぎわせています。
煽り運転をすると、やはり警察に検挙されてしまうのでしょうか?
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(1)煽り運転の検挙数は増加している
警察庁が公表している令和元年版交通安全白書によると、平成30年中の高速道路における車間距離不保持の取り締まり件数は1万1793件でした。これは、前年となる平成29年の6139件と比べると約2倍にあたる件数です。
警察庁は「さまざまな法令を駆使して徹底した捜査をおこなうように」と全国警察に通達しており、平成30年6月には全国の高速道路で一斉取り締まりがおこなわれ、多くの悪質ドライバーが取り締まりを受けました。
このような背景をふまえれば、煽り運転に対する取り締まりはますます強化されていくのは確実であり、今後はさらに厳しい対応となることは容易に想像できます。煽り運転をしていれば、警察に検挙されるリスクは非常に高くなるといえるでしょう。 -
(2)煽り運転の検挙数が増加している理由
煽り運転の検挙数が増加したのは、次のような理由が考えられます。
まず、ドライブレコーダーやスマートフォンの普及によって、悪質な煽り運転の証拠が映像として記録できる環境が整っていることが挙げられます。警察への提出だけでなく、なかにはTwitterなどのSNSや動画投稿サイトに掲載されたことが発端となって検挙された事例もあります。
警察の煽り運転対策が強化されたことも、大きな理由といえるでしょう。
警察庁からの通達によって、全国の都道府県警察で煽り運転の取り締まりが強化されています。たとえば、岡山県警ではホームページ上に「岡山県 あおり運転110番 鬼退治ボックス」を開設して情報提供を呼びかけています。令和元年11月に開設したところ、早くも同年12月には初の違反告知に結びついたそうです。
また、栃木県警の高速隊員が開発した「ホークアイ」と呼ばれる車間距離測定装置は距離の正確な測定が可能なので、煽り運転の証拠として活用される可能性があるでしょう。
さらに、これまで煽り運転を取り締まる直接の規制がなかったことをふまえて、令和2年以降には法規制が設けられる動きもあります。
※ 令和2年6月より、あおり運転は厳罰化されています。詳しくは以下のコラムをご覧ください。
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2、煽り運転で検挙されると逮捕される?
煽り運転に関する報道で気になるのが「検挙」や「逮捕」のほか「摘発」といったさまざまな用語が使われている点です。一般的には「警察に捕まった」というイメージでまとめられそうですが、用語の違いによって処分や対応に違いがあるのでしょうか?
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(1)「検挙」と「逮捕」の違い
「検挙」とは、一般に、警察や検察庁など捜査機関が、被疑者を突き止めることなどを指します。法律用語ではありませんが、報道などでもよく使われる用語です。
なお、一般的に報道等で使用される「検挙」の場合は、逮捕にまで至っていないケースが多いでしょう。
「逮捕」とは、捜査機関が被疑者の身柄を拘束することを指します。
逮捕といえば「犯人が捕まった」とイメージしがちですが、逮捕は捜査のために必要な身柄拘束であって、まだ犯人と証明されてはいません。もちろん、逮捕は捜査の途中段階であるため、逮捕されると直ちに前科がつくわけではありません。 -
(2)確保・逮捕・送致・摘発の違い
逮捕、検挙以外にも紛らわしい用語があります。ひとつずつ、説明していきましょう。
- 確保 確保は法律用語ではありません。意味合いとしては、警察の監視下におかれることを指します。煽り運転の容疑者として警察官に詮議されている状態は「確保」となります。任意同行した場合に使われることもあるでしょう。
- 逮捕 「逮捕」とは、被疑者を比較的短時間にわたって拘束する強制処分をいいます。被疑者が逮捕されると、警察署に連行され、取り調べが行われます。逮捕には時間制限があり、逮捕されてから48時間以内に警察から検察庁に被疑者の身柄が引き渡されます。検察庁は被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内に被疑者を引き続き勾留するか、釈放するかを決めなければいけません。
- 勾留 「勾留」とは、逮捕された被疑者の身柄を引き続き拘束する処分です。検察官の請求を受けて裁判所が命令を出すことによって行われます。勾留は検察官が請求した日を含めて最大10日間ですが、さらに10日間まで延長できるので、最大で20日間続くことになります。
- 送致 警察から検察庁に事件を引き継ぐことを「送致」といいます。警察は被疑者を裁判所に起訴するかどうかを決定する権限を持たないので、検察官にその委ねることになります。
- 摘発 摘発は、犯罪の事実を世間に公表することを意味しています。たとえば、警察が煽り運転をしたと疑われる人物を確保した事実を世間に公表した場合などに使われます。
まだ身柄の自由は保障されている段階ですが、煽り運転を犯した疑いが晴れない限り任意の取り調べが続くため、自由な行動は難しくなります。
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(3)逮捕されるケース
追跡してきたパトカーから逃走したり、確保されても氏名を供述しなかったりすれば「逃亡または証拠隠滅のおそれ」があると判断され、逮捕される可能性が高まるでしょう。
また、被害者がドライブレコーダーの映像を提出したことによって被害が発覚したケースの場合は、現場から逃走したとされる可能性があり、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕される可能性が高まると考えられます。 -
(4)逮捕されないケース
ニュースなどでは煽り運転で逮捕された事例が大々的に報道されていますが、煽り運転をして警察に確保されたからといって、必ずしも逮捕されるわけではありません。
被害者に実質的な損害が生じておらず、警察官の任意同行に素直に応じて聴取を受ければ、逃走・証拠隠滅のおそれが弱くなるため逮捕されずに済む可能性があります。
また、事件として捜査を受けることになっても、在宅のままで取り調べを受けて書類送検されるケースも考えられるでしょう。
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3、煽り運転で逮捕されてしまった場合の対応
煽り運転の疑いで警察に逮捕されてしまった場合、どのような対応をとればよいのでしょうか?
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(1)無実なら否認する
もし、危険を回避するためにやむを得ない状況だったにもかかわらず、煽り運転の容疑をかけられた場合などは、当時の状況をしっかりと思い出して、やむを得ない状況だったこと、煽り運転をする意思がなかったことをはっきりと伝えるようにしましょう。
中途半端に認めたような供述をしてしまうと、その内容で自白調書が作成されるおそれがあります。
威圧的な取り調べを受けて、自白を強要された場合も同様です。ひとたび作成された供述調書の内容を覆すのは困難なので、自分が供述した内容が正しく記録されていないと感じたら必ず訂正をしてもらいましょう。
なお、署名押印のある供述調書は、刑事裁判において証拠として使用される可能性がありますので、自分の言い分と違うと思ったら、署名押印を拒否することも有用です。刑事訴訟法198条5項ただし書きでも、調書への署名押印を拒否できることが規定されています。 -
(2)認めて捜査に協力する
ドライブレコーダーによって煽り運転の様子が記録されているなど、証拠が明らかなケースや、自分自身が「煽り運転と疑われる行為があった」と認めている場合には、取り調べに誠実に対応し、捜査へ協力する姿勢をとることが大切と言えます。
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(3)被害者との示談成立を目指す
煽り運転が事実であれば、被害者との示談交渉を進めることを検討しましょう。
被害者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料や実際に被害者に生じた損害に対し、賠償を含めた示談金を支払うのはもちろんですが、再犯防止に向けた対策を提示することも大切です。
煽り運転は、同様の行為を何度も繰り返してしまうケースも少なくなく、本人の努力だけでは改善できない可能性もあります。カウンセリングを受けるなど、根本的な部分から再犯防止に取り組んでいる事実も、反省をくみ取ってもらうという趣旨や、ご自身の人生のためにも重要です。
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4、まとめ
煽り運転に対する警察の取り締まり体制が強化されているため、煽り運転の検挙率は大幅に上がっています。
しかし、煽り運転をしたからといって、必ずしも逮捕されるわけではありません。
また、逮捕されてしまった場合は、煽り運転をした事実に相違がないのであれば、素直に認めて再犯防止と反省の姿勢を示し、示談を進めることで不起訴処分となる可能性があります。
ベリーベスト法律事務所では、煽り運転をしてしまった方や、煽り運転で逮捕されそうな方を全力でサポートします。特に、逮捕されてしまった場合は、早急な対応が必要です。まずは、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。解決に向けて、迅速に対応します。
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