- 交通事故・交通違反
- 飲酒
- 逮捕
- 勾留
飲酒運転で人身事故! 逮捕された場合の罰金や勾留期間はどのくらい?
飲酒運転が厳罰化され、事故の発生件数や死傷者数は減少傾向にあります。警察庁の発表によると、令和元年中に発生した飲酒運転による交通事故の件数は3047件で、前年と比べて308件(9.2%)減少しました。
これらは厳罰化を含めた対策が功を奏していると評価されています。そのため、飲酒した状態で人身事故の加害者になってしまうと、通常の事故よりも厳しく処罰される傾向があります。
本記事では、飲酒して自動車を運転した際に人身事故を起こしてしまった方の家族向けに、逮捕や身柄拘束の期間、刑罰などについて解説します。
1、酒酔い運転と酒気帯び運転の違い
一般的に飲酒運転の事故が報道される際は「飲酒運転」と表現されることが多いですが、法律では「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」に分けられます。どちらに該当するかによって刑罰の重さが変わってくるので、それぞれにどのような違いがあるか見ていきましょう。
-
(1)酒気帯び運転
道路交通法第65条1項で「何人(なんぴと)も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と、お酒を飲んだ状態での運転を禁止しています。ビールや日本酒などアルコール飲料を飲むだけではなく、アルコールを含んだ料理やお菓子を口にしたあとでの運転も避けた方が無難です。
飲酒運転を判断する際の基準値として一般的に利用されているのが、呼気(吐き出した息)に含まれるアルコール濃度です。呼気1Lあたり0.15mg以上のアルコールを含んだ状態で正常に運転できている場合は「酒気帯び運転」と判断されます。この基準値は缶ビール1本程度で簡単に超えてしまいます。基準値を下回る場合は警告のみで、酒気帯び運転として検挙される可能性は低いでしょう。
参考程度ですが、アルコールが完全に抜けるためには、アルコール度数5%のビール500mLや12%のワイン200mL(ワイングラス2杯)で最低で5時間程度が必要といわれています。酔いが覚める感覚と、実際にお酒が抜けきる時間は違うので注意が必要です。 -
(2)酒酔い運転
アルコールの影響によって正常な運転ができない状態でありながらも自動車を運転する行為が「酒酔い運転」です。これには基準値がなく、酔いの程度によって判断されます。具体的にはまっすぐ歩けない、ろれつが回らないなどの状態が挙げられます。
酒酔い運転と判断される人の多くは酒気帯び運転の基準値を超えていますが、お酒に弱い人の中には酒気帯び運転の基準値以下でも「酒酔い運転」と判断されてしまうケースがあります。個人の体質やその日の体調によっては時間がたっても悪酔い状態が続き、足元がおぼつかないケースもあるでしょう。このように基準値を下回っていてもまっすぐに歩けない、ろれつが回らないなどの状態であれば酒酔い運転にあたります。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
2、飲酒運転で問われる罪とは?
飲酒運転が道路交通法に違反することは広く知られていますが、内容や常習性、人身事故の有無などによって罰則が異なります。ここでは各違反によって問われる罪について解説します。
-
(1)道路交通法違反
- 酒気帯び運転(道路交通法第117条の2の2第3号) 呼気1Lあたり0.15mg以上、または血液1mLあたり0.3mg以上のアルコールが検出される状態で自動車を運転すると酒気帯び運転になります。罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
- 酒酔い運転(道路交通法第117条の2第1号) アルコール量にかかわらず、アルコールの影響によって正常な運転ができない状態で自動車などを運転すると酒酔い運転になります。罰則は5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
-
(2)自動車運転処罰法(人身事故の場合)
以前は被害者を死傷させてしまった交通事故は刑法によって罰せられてきました。しかし、飲酒運転や無免許運転など悪質かつ危険な運転行為にもかかわらず、刑罰が軽い罪にしか問えないケースがあったため、新たに「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(略称:自動車運転処罰法)」が整備されました。
- 過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法第5条) 自動車の運転に必要な注意を怠って人を死傷させた場合は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科せられます。無免許運転の場合は、10年以下の懲役に処されます。
- 危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法第2条および第3条) 事故を起こすと考えられる速度での運転や、運転する技能がないのにもかかわらず自動車を運転した際に、人を負傷させると15年以下の懲役が科せられます。被害者が死亡した場合は1年以上の有期懲役に処されます。
- アルコール等影響発覚免脱罪(自動車運転処罰法第4条) 飲酒運転で人身事故を引き起こした際に、飲酒による事故であることを隠そうとするとアルコール等影響発覚免脱罪に問われます。以前は事故現場から離れて酔いを覚ましてから出頭する、急いで帰宅して飲酒をし「事故後に酒を飲んだ」と反論する行為がまかり通ることもあり、悪質なひき逃げの原因となってきました。
また、アルコールを飲むなど、走行中に正常な運転に支障が生じると考えられる状態で自動車を運転した結果、運転が困難な状態に陥って人を負傷させた場合は12年以下の懲役、人を死亡させた場合は15年以下の懲役に処されます。
そこで、自動車運転処罰法では、アルコールの影響による事故であることを隠す行為も処罰の対象として規定されました。罰則は12年以下の懲役と非常に重く、拘留期間も長くなる傾向があります。 -
(3)同乗者等に対する刑事罰
飲酒運転を助長・容認する行為は、道路交通法によって禁止されています。特に「車両提供罪」「酒類提供罪」「飲酒同乗罪」は「周辺者三罪」と呼ばれ、厳しい罰則が規定されています。
- 車両提供罪(道路交通法第65条2項) 飲酒をしていることを知っているにもかかわらず、自動車を貸してしまうと罪に問われます。運転者が「酒酔い運転」をした場合は5 年以下の懲役または 100 万円以下の罰金、「酒気帯び運転」をすると3 年以下の懲役または 50 万円以下の罰金に処されます。
- 酒類提供罪・飲酒同乗罪(同条3項および4項) 居酒屋で「運転する人はいますか?」と聞かれることがあります。これは運転することを知りながらお酒を提供し、その運転者が酒気帯び運転をした場合、お酒を提供した人に2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるためです。提供された人が酒酔い運転をした場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
-
(4)飲酒運転による刑事罰以外の処罰など
懲役や禁錮、罰金といった刑事罰のほかにも、飲酒運転には行政上の罰則として違反点数が以下のとおり規定されています。
- 酒気帯び運転(アルコール濃度0.15mg以上0.25mg以下)……13点
- 酒気帯び運転(アルコール濃度0.25mg以上)……25点
- 酒酔い運転……35点
基準値が軽度の酒気帯び運転でも90日間の免許停止、酒酔い運転は一発取り消しで3年間は免許を再取得できません。他にも事故を起こした場合には被害者への補償として損害賠償請求をされることがあります。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
3、飲酒運転で逮捕された場合の流れ
警察に逮捕されると48時間を上限に身柄が拘束されたのち、身柄が検察官に送致されます。送致を受けた検察官は24時間以内に身柄拘束の延長である「勾留」の要否を判断し、原則10日間、最長で20日間まで勾留が続きます。
飲酒運転の場合は、事実が単純であるため検察官に身柄付きで送致せず、48時間で釈放されるケースもあります。しかし、飲酒運転で人を死傷させた場合や、アルコール等影響発覚免脱罪にあたる場合などは、取り調べを尽くすために最長の20日間にわたる勾留を受ける可能性が高いです。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
4、まとめ
お酒を飲んで自動車を運転する行為は飲酒運転と呼ばれますが、体内のアルコール保有量や酔いの程度によって酒気帯び運転・酒酔い運転に分けられます。また、飲酒運転で人を死傷させてしまった場合は自動車運転処罰法によって厳しく処罰されるほか、アルコールの影響であることの発覚を免れようとする行為も処罰の対象です。
少しの飲酒であれば大丈夫だと軽い気持ちで飲酒運転を行い、重大な事故を起こすケースも少なくありません。いかなる理由があっても、飲酒運転は決して許されるものではないのです。
飲酒運転の取り締まりを受けて家族が逮捕された、飲酒運転で事故を起こして逃げてしまったなどお困りの方は、飲酒運転をはじめとした交通事故トラブルの解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。